2017年05月14日

◆ 共謀罪と未決勾留

 共謀罪が駄目なのは、未決勾留という問題があるからだ。このせいで一般人が不当に被害を受ける。

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 共謀罪の立法化に当たって、政府は「一般人は対象外」というふうに説明した。
 《 法務副大臣「一般人は捜査対象外」 「共謀罪」で答弁修正 》
 犯罪を計画段階で処罰する「共謀罪」の構成要件を改め「テロ等準備罪」を新設する組織犯罪処罰法改正案をめぐり、盛山正仁法務副大臣は28日の衆院法務委員会で「通常の社会生活を送っている方々は捜査の対象にならない」と述べた。21日には「対象にならないことにはならないが、ボリュームとしては大変限られる」と述べ、金田勝年法相の答弁との食い違いが指摘されていた。
( → 日本経済新聞 017/4/28

 《 共謀罪」告発、一般人は捜査対象外? 野党が追及 》
  「共謀罪」の趣旨を含む組織的犯罪処罰法の改正案をめぐり、金田勝年法相は8日の衆院予算委員会で、「一般人は刑事告発をされても捜査の対象にならない」との見解を示した。「一般人は捜査の対象外」と強調する政府見解に合わせるあまり、捜査実務と矛盾した答弁を続ける金田氏に野党側は、「法務大臣の任にふさわしくない」と批判を強めている。
( → 「朝日新聞 017年5月9日

 実を言うと、捜査対象になるかどうかは、あまり問題ではない。本人が知らないところでこっそり捜査されたとしても、本人には実害がほとんどない(ことが多い)からだ。通常、捜査は本人にはバレないように捜査するはずだから、実害もなくて、たいして問題視する必要もなさそうだ。

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 一方で、一般人に多大な被害がかかることがある。それは、「未決勾留」だ。たとえ無実であっても、警察が「怪しい」と思うと、警察は証拠もなしに勝手に逮捕して、そのあとはしきりに「自白しろ。自白しなければ釈放しないぞ。釈放してほしければ自白しろ」と強いる。
 これが日本の「自白偏重主義」である。その手法が「未決勾留の長期化」つまり「保釈を認めないこと」である。それというのも、「保釈すると証拠湮滅の恐れがある」というメチャクチャな理屈だ。なるほど、初期の一週間ぐらいならば、その理屈は成立する。しかし、初期の一週間ぐらいが過ぎれば、すでに警察が証拠を得ているはずだから、証拠湮滅の恐れなど心配する必要はない。なのに、それを名分として、長期にわたって拘留する。
 これは、「保釈を認める」という法制度をないがしろにするものだ。「犯罪者を処罰する」というのはいいとしても、「犯罪者だと疑われた一般人を処罰する」というふうに独裁専制国家のようになっている。ここではもはや実質的に、「法治国家」であることを否定している。


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出典:留置場(警察庁)


 
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 実際の具体例を示そう。本サイトでも未決勾留のひどさについては何度か述べたので、過去記事から見つかる。
 
 (1) 痴漢冤罪

 痴漢冤罪で長期拘留される、という事例はしばしば報道された。本サイトでも一例を示した。三鷹市の事例だ。
  → 痴漢冤罪の理由
 この被害者も長期拘留された。期間は下記に記してある。
  → 三鷹署に逮捕され、28日間も拘留される

 (2) 掲示板のいたずら書き

 ネット上の掲示板でいたずら書きをした人が長期拘留された。
 ただの冗談で「小女子(こうなご)を焼き殺す おいしくいただいちゃいます」と掲示板に書いただけの市民を、逮捕してしまったのだ。「小女子(こおなご) イカナゴの別名」と記して、冗談であると明示していたにもかかわらず、だ。(しかも1時間後には「ごめんなさい」と言って、訂正・謝罪している。)
( → 精神異常者による大量殺人

 この人は約3カ月も勾留されていた。

 (3) ウイルスで誤認逮捕

 「掲示板で爆破予告をした」というのを、ウイルスを仕込んで他人の行為に見せかけた事件があった。(ゆうちゃん事件)
 ここでは、犯人の見せかけのせいで、警察は無実の他人を誤認逮捕した。その際、27日間も勾留していた。すでにパソコンを押収していたのに、「証拠湮滅の恐れ」というメチャクチャな理屈で、長期間の勾留。
  → 「ウイルスで誤認逮捕」の本質

 (4)地方アナの誤認逮捕

 これは、本サイトで紹介したことのない話だが、最近あった事例。広島の人気アナが、銀行で「窃盗犯だ」とされて、誤認逮捕された。物証は無実であることを示していたのに、「自白しろ」と強要されて、勾留 28日間。
  → 地方の人気アナが窃盗犯にデッチ上げられるまでの一部始終

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 以上のことからわかるだろう。
 日本では、無実の一般人が容易に逮捕されて、ひどい目に遭う。つまり、「保釈」という法制度がまともに機能しておらず、警察の一存で勝手に「未決勾留」が長期間にわたってなされる。
 それというのも、日本では裁判所による抑制がまともに機能していないからだ。日本では、三権分立という形で司法の独立性は担保されて折らず、裁判所は行政府の下部組織に成り下がってしまっている。だから警察が「未決勾留したい」と言えば、いくらでも勝手に未決勾留を認める。これが実状だ。
 こういう実状があるからには、「共謀罪では一般人は捜査対象にはならない」なんていう言葉は何の信頼も置けないとわかるだろう。
 「共謀罪では一般人は捜査対象にはならない」というようなことは、さして問題ではない。「共謀罪であろうとなかろうと、無実の一般人が証拠もなしに勝手に長期間にわたって勾留される。(保釈という法制度が形骸化している)」
 という点が問題なのだ。
 そして、こういう問題がある以上、共謀罪の制定は、一般人を好き勝手に逮捕することに結びつく。なぜか? 共謀罪は、犯罪の実行について処罰するのではなく、犯罪の実行の意思について処罰するからだ。ここでは、証拠はもともと存在しないのが普通だから、いくらでも「逮捕して、勾留して、自白を強いる」ということがなされかねないからだ。

 ──

 以上のことは、実は、朝日新聞の本日記事で示されている。記事では「志布志事件」という事例を紹介している。この事例では、冤罪で勾留された人々が、長期にわたって拘留された。
 《 犯人に仕立てられる危うさ 「共謀罪」に冤罪事件元被告 》
 「共謀罪」の趣旨を盛り込んだ組織的犯罪処罰法改正案は、犯罪を実行前の計画段階で処罰するため、物証が少なく自白重視の捜査になる、との指摘がある。2003年の鹿児島県議選をめぐる冤罪事件「志布志事件」で無罪となった元被告たちは、取り調べで虚偽自白を迫られた自らの体験から「強引な捜査が行われるのでは」と危惧する。
 志布志事件では、警察からは「自白」を迫られ、否認すると395日間勾留された。取調官は「否認を続ければ(経営する)会社はつぶれる」「認めなければ娘も息子も逮捕する」などと怒鳴った。ともに逮捕された妻が自供したので罪を認めるように、と迫られたこともある。心が折れそうになったが、否認を貫いた。後で妻は自供しておらず、取調官がうそをついていたことを知った。
( → 朝日新聞 2017-05-14

 のちに、「すべては警察のでっち上げ」と判明した事件だ。
 朝日新聞社は入手した内部資料を元に、2006年1月からでっちあげの手口を暴露し、その後も本事件の報道に力を入れた。一連の報道により、2007年11月に朝日新聞は …… ジャーナリズム大賞を受賞した
( → 志布志事件 - Wikipedia

 朝日が暴露したから、警察のでっち上げは判明した。朝日がそうしていなければ、警察のでっち上げはバレないままだ。そして、そういう事例は、世の中にたくさんあるはずだ。
 これが現実である。とすれば、共謀罪を導入したら、もっとひどいことになるのは、目に見えている。
 現状では、「証拠が必要であるときに、(不当に)証拠もなしに逮捕する。あとは長期拘留して、ひたすら自白を強いる」だ。
 今後では、「証拠が必要でないときに、(正当に)証拠もなしに逮捕する。あとは長期拘留して、ひたすら自白を強いる」だ。
 当然、状況は悪化する。

 本日の朝日の記事を読めば、どこに問題があるかがわかる。それは、「共謀罪」単独ではなく、「共謀罪と未決勾留」という組み合わせだ。ここに問題がある。
 ただし、朝日は、事例を示すだけで、問題点がどこにあるかを示さなかった。単に「共謀罪は怖い」と書くだけで、「それ単独でなく、未決勾留と組み合わさったときが怖い」というふうには指摘しなかった。
 だからこそ私が、本質を示すのだ。「ここが問題なのだ」と。



 【 関連項目 】
 「未決勾留は問題がある」
 という話は、前に詳しく書いたことがある。
  → 「ウイルスで誤認逮捕」の本質

 上の項目は、本項とよく似た趣旨なので、ついでに読むといいだろう。
 
 
posted by 管理人 at 19:18| Comment(1) | 一般(雑学)4 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
未決勾留って恐ろしいですね。
Posted by 京都の人 at 2017年05月14日 23:40
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