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ガソリン直噴エンジンは、(ポンピングロスがなくて)燃費がいいので、トヨタ・カムリの新・直4エンジンや、日産の新・V6エンジンなどで採用されている。しかしながら、噴射したガソリンから微粒子が生じやすい、という難点がある。……以上は、先の項目で示したとおり。
→ ガソリン直噴と PM2.5
ここでは、燃費と排ガス(つまりコストと環境)で、「あちらが立てばこちらが立たず」という関係にある。排反関係。
ところが、この問題を解決する技術がある。それは HCCI というエンジン技術だ。内容は、簡単に言うと、次の通り。
「直噴のかわりに、普通の気化方式を使う。その上で、高い圧縮比で、自己着火によって点火する。ディーゼルエンジンのように」
詳細な解説は、下記。
→ https://newcars.jp/news/mazda-hcci-2018/
しかしながら、一見したところ、この方式には問題があると思える。
「ディーゼルエンジンならば、高圧縮の空気に燃料を噴射するので、ノッキングが起こらない。しかし、もともと空気に燃料が含まれていたら、ノッキングを起こすはずだ」
そうですよね。やっぱりね。
ところが、この点をうまくいろいろと調節することで、ノッキングを起こらないようにする……というのが、HCCI エンジンだ。
この方式は、昔から知られていたが、実際には「うまく調節するのが技術的に困難だ」という理由で、実用化できなかった。
ところが、(飛ばしの)日経新聞によると、マツダが実用化に成功して、2018年度末に発売する予定だという。
マツダは燃費を従来比約3割高めた新型エンジンを2018年度末に導入する。点火ではなく圧縮によってガソリンを燃やす技術を世界で初めて実用化し、主力車に搭載する。同社は環境規制強化に対応するため電気自動車(EV)の開発も進めているが、当面は世界の新車販売台数の大半をエンジン車が占めるとみている。エンジンの改良を続け、主力分野での競争力を高める。
( → 日本経済新聞 2017/1/9 )
これが本当かというと、(飛ばしの)日経新聞の報道だから、あまりアテにならない。眉に唾を付けて聞く方が良さそうだ。
一方、日産自動車もまた、同様の技術を開発しているという。
《 HCCIの実用化に向けて 》
HCCIの領域拡大のために、燃焼室内の温度をコントロールすることが非常に重要です。日産は、これを実現する下記の技術開発に取組んでいます。
( → HCCI (Homogeneous-Charge Compression Ignition:予混合圧縮着火) | 日産 )
この技術のキモは、「ノッキングを起こさないように、温度や空気や混合比などを微妙に調節する」ということだ。それぞれをうまく調節することで、何とかノッキングを起こさないようにしたい、ということらしい。
ま、コンピュータを使えば、ある程度は何とかなりそうだ。とはいえ、原理的には、難しそうだ。
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ここで私の見解を言うと、次のようになる。
「いくら HCCI 技術を開発しようと、アクセルを踏み込んで加速するとき(高負荷状態)では、ノッキングは起こりやすい。原理的にノッキングが起こりやすいのだから、容易に解決ができるはずがない。つまり、マツダや日産のやっていることは、ほとんど不可能に近い。日経の記事も、ただの飛ばし記事だ。どうせはずれるだろう」
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ただし、である.ここで話が終わってしまっては、つまらない。ここは何としても、「困ったときの Openブログ」と叫ぶべきだ。
すると、こういう解決策が出る。
「高負荷のときに問題が生じるのであるのならば、高負荷の状態をやめてしまえばいい。つまり、エンジンをなるべく定常回転させればいい。そのためには、日産ハイブリッドの e-Power の方式を採用すればいい」
これは実は、前出項目の方法と同じだ。
→ ディーゼル車の e-Power
ここでは、ディーゼル微粒子を出さなくするために、「ディーゼルエンジンを定常回転させる」という方式を提案した。それが、ディーゼル車に e-Power を採用するということだ。
同様に、HCCI エンジンにも、e-Power を採用すればいい。そうすれば、HCCI は、定常回転を保つことができるので、高負荷にはならない。したがって、ノッキングも起こさない。
かくて、「 e-Power の方式を採用する」ということで、HCCI エンジンをあっさり実用化することができる(だろう)。
それが私の見解だ。
さて。
e-Power の方式は、けっこうコストがかかる。そこで、もっと別の方式はないか? ……と思ったところ、別の技術もあると気づいた。日産の可変圧縮比エンジンだ。
これは、前にも解説したことがある。
→ 可変圧縮比エンジンが実用化
そこでちょっと思ったのだが、
「 HCCI と、可変圧縮比とを、併用する」
という方式もありそうだ。
HCCI では、ノッキングが起こりそうだという問題が生じる。だが、ノッキングが起こりそうなときは、圧縮比を下げてしまうことで、ノッキングを避けることができるだろう。
だから、この二つの技術を併用することには、メリットがありそうだ。
( ※ 実際には、そううまく行くかどうか不明だが、とりあえず、アイデアとして、ここに記しておく。)
【 関連項目 】
可変圧縮比エンジンについての解説。
→ 可変圧縮比エンジンが実用化
この項目は、前に書いたときには、「どういう仕組みになっているか、よくわからない」と記した。
しかしながら、本日、新たに考え直すと、どういう仕組みなのか、わかった。そこで、上記項目の最後に 【 追記 】 の形で、記しておいた。
その箇所を読むといいだろう。可変圧縮比エンジンがどういうしくみなのか、よくわかるはずだ。

https://www.webcartop.jp/2017/05/113178
こんなニュースを見かけましたが、いかがでしょうか。
超有名ですよ。エンジンの歴史では、東京五輪(過去)と同じぐらい有名。
知らないのは、素人だけ。
さらに言えば、後日談がある。兼坂弘の毒舌評論で、こき下ろされていた。燃費が悪いから。これも、業界内では有名な話。
さらに後日談がある。最近の F1 では、火炎着火式のエンジンというのが流行っている。これは CVCC の再来だと話題になっている。
ルマンをCVCCで制覇する話がありましたね
内燃機関 その存在理由 単純なリンク機構 ですよね
何故ロータリーが ダメなのか レポートされてますよね 個人的には大好きですが
金属で作られたもの ルブリケート 必要なんですよね
管理人さんが書いたことがそのまま記事にも書かれていました。
>しかし現在、CVCCの後継のような技術が登場しています。それはF1用エンジンです。直噴インジェクターの周りに空間を作り、そこに点火させるシステムが採用されているのです。CVCCを現代的にリファインしたようなシステムは、ジェットイグニッションシステムと呼ばれています。
HCCI は、可能な領域が狭いのが問題だが、マツダは HCCI と普通の方式を混合させて、適切に切り替えることで、切り抜けるらしい。
たぶんこうだ。
・ 定常走行では HCCI で低燃費走行。高速道路など。
・ 加速時にはノッキングが発生しやすいので、HCCI をやめて、普通の方式にする。
では、どうやって切り替えるのか? 圧縮比を下げる必要があるので、たぶん、ターボの圧力を下げるのだろう。
・ HCCI のときはターボをかける。
・ 普通方式のときはターボをかけない。
これで切り替えが可能となる。たぶん、そうするのだと思う。
( ※ 他に、排ガス循環を使う方式も考えられるが、ターボの方が良さそうだ。)
そこで
>圧縮比を下げる必要があるので、たぶん、ターボの圧力を下げるのだろう。
てだいぶ変じゃないかな〜
まあ、常識に反することができるから、マツダだけが実用化できたんでしょう。
常識にとらわれている会社は、そうはできなかった。
常識をぶちこわせ。スカイアクティブ。
加速するときは、ガソリンを増やすが、このとき圧縮比を下げても、単に空気の量が減るだけで、リーンバーンからストイキに近づく。空燃比が最適で、ガソリンの量が増えるのだから、パワーは増える。
きちんと理詰めで考えれば、何もおかしいことはない。
HCCI で圧縮比が高いのは、パワーのためではなく、燃費のため。そこを理解すれば、圧縮比を下げてもパワーは減らないとわかる。(燃費は悪くなるが。)
なるほど、わかったよー
話は変わるけど
管理人さんの話しているHCCIエンジンってターボ付きなの?
ターボ付いててHCCIで必要な可能な実圧縮比を安定して維持するって可能なの?
> 可能なの?
私の想像・推定です。それは 、
> Posted by 管理人 at 2017年09月03日 10:45
に書いてある通り。
つまり、「たぶん」と3回も書いてある。
それはわっかてるよ。
実際に実働しているエンジンなんて公開されていないんだから。
管理人さんの想像しているエンジンはターボ過給で
圧縮比を安定可能と考えるているのかなと思って、質問したわけなんだな。