2017年05月07日

◆ 沖ノ島が世界遺産に指定

 沖ノ島が世界遺産(世界文化遺産)に指定される見込みとなったので、ちょっと事情を調べてみた。

 ──

 沖ノ島が世界遺産に指定される見込みとなった。ただし、8件中の4件のみ。
 文化庁は5日、世界文化遺産への登録を目指す古代遺跡「『神宿る島』宗像・沖ノ島と関連遺産群」(福岡県)について、国連教育科学文化機関(ユネスコ)の諮問機関が登録を求める勧告をしたと発表した。構成資産の半分の4件を除くことが条件。
( → 日本経済新聞 2017-05-07

 肝心の沖ノ島は認定されたが、その他の周辺的なものが除外されたことで、地元では戸惑いと反発が広がっているという。
  → 沖ノ島だけ、戸惑う地元 4資産復活求める 世界遺産登録へ:朝日新聞 2017-05-07
  → 上陸制限・女人禁制… 沖ノ島、保護と観光の両立は?:朝日新聞 2017-05-07

 どういうことかと思って調べてみたら、案の定だった。沖ノ島は私有地であり、神社の宗教施設となっているので、一般人は入れない。
 葦津敬之宮司は「世界遺産になっても沖ノ島は開示するものではない」と明言しており、一般開放はもとより、女人禁制の伝統的禁忌も継承される。このことについて女性権利団体などから抗議の声が上がり観光業界でも懸念が広がった。
 国内法的には、宗像大社の私有地内であり、所有者が立ち入りを拒否する権利があり、女性差別などの違憲(日本国憲法第14条への抵触)には当たらないとの見解がある。
( → 沖ノ島 - Wikipedia

 要するに、「世界遺産になったら、これの観光でいっしょに一儲け」と地元住民が目論んでいた。なのに、指定されるのは沖ノ島という本体だけであって、周辺の地元民には影響しなくなった。かくて「いっしょに一儲け」という、捕らぬ狸の皮算用は、水の泡となった。

 それだけのことだ。別に、騒ぐようなことじゃない。
 「世界遺産というのは、文化的なものだ」
 という本質を見失って、
 「世界遺産というのは、金儲けの道具だ」
 と勘違いした人々が、勝手に夢見て、勝手に失望した、というだけのことだ。
 こんなことで騒ぐのは、「何でもかんでも金儲けのタネにしよう」と考えている人々と、自民党だけだ。いちいち騒ぐようなことじゃない。



 [ 付記 ]
 それでもどうしても金儲けをしたいのならば、そのための方法はある。こうだ。
 「沖ノ島は私有地だから、これを買収する。宗教施設から、観光施設へと、転換する。ツアー客をどんどん招いて、観光産業を育てる」

 しかしこんなことをすると、どんどん俗化してしまう。日本中にある他の観光施設と大差なくなるだろう。元も子もない感じだ。

 どうせなら、(同じく世界遺産の)屋久島にでも行った方が良さそうだが、屋久島にも、観光の制限はある。それでいて、汚染は広がる。
 世界遺産登録後の観光客の増大によるゴミ増加、山岳トイレ、登山道とアクセス道路、山小屋の整備の遅れ、観光ガイドの質の低さなどが指摘されている。
 特に縄文杉見学の登山客は激増した。2010年の同コースの登山客は約9万人で、それまでの10年間で3倍近くに増えた。一方で登山客の増加は、登山道の劣化、ゴミ処理、山岳トイレ、ガイドの資質等々の地域社会的問題を招いた。屎尿処理は当初現地に埋設していたが、悪臭や水源汚染の問題が深刻化してきた。
 このような事態を受け、2011年6月屋久島町町長の日高十七郎がエコツーリズム全体構想の骨格をなす縄文杉コースの利用制限、永田浜への立ち入り制限などを規定した町条令案を町議会に提出した。具体的には、縄文杉への日帰り登山客を1日360人、宿泊客60人に制限するものであった。しかし6月21日本会議に先がけておこなわれた特別委員会で出席議員全員の反対で否決された。この背景には観光客倍増60万人を掲げ目先の利益に固執し続ける観光協会の影響が大きかった。
( → 屋久島 - Wikipedia

 屋久島は、観光による環境汚染が進みつつある。このままだと下手をすると、環境そのものが破壊されかねない。金の卵を産むガチョウそのものを殺してしまいかねない。
 やたらと観光を重視する日本人は、頭が悪すぎる。そのことは、マグロやウナギを捕りすぎて、絶滅寸前にしていることからもわかる。こんな馬鹿なことをやっているのは、日本だけだ。(北欧などでは、適切な資源管理をして、漁獲量を制限することで、資源量を増やしている。これが利口のやることだが、日本はできない。)

 沖ノ島の例を見ても、目先の金のことしか考えていない日本人は、「適切な観光利用」などはとてもできないだろう。だったら、強い制限をする方が、まだマシだろう。金の卵を産むガチョウを殺さずに済むからだ。




 《 注 》

 「世界遺産」( World Heritage )は「世界の文化遺産及び自然遺産の保護に関する条約」(Convention Concerning the Protection of the World Cultural and Natural Heritage)で定められたもの。文化遺産と自然遺産の双方が含まれる。



 【 関連サイト 】

 招致の公式サイトがある。
  → http://www.okinoshima-heritage.jp/know/

  ※ PR サイトのくせに、「右クリック禁止」だ。呆れる。
    何を考えているんだか。まともに引用もできない。



 【 関連動画 】







posted by 管理人 at 12:54| Comment(2) | 一般(雑学)4 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
これは名古屋、熊本等の城郭再建にも通底した話とみています。

地域の文化、自然、伝統といった無形物に例えば例えば"世界遺産"という付加価値をつけて観光資源化(=換金、マネタイズ)する手法でしょう。

問題はその一方で、世界の、日本の、人類の、社会の、等と普遍化されてそれを維持するために幅広く負担を強いられかねないことです。”貴重、希少な文化財、自然だからみんなで負担、保護しなければならない”公的機関認証の威を借りそんな方向に進むことを懸念します。
Posted by 作業員 at 2017年05月07日 14:27
> 目先の金のことしか考えていない日本人

経済的に貧しくなると、心(気持ち)までが貧しくなってしまう状況を端的に表しているように見えますね。
Posted by 反財務省 at 2017年05月07日 16:43
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