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「日産が駄目になったわけ」という話は、すでに何度か述べた。理由は二つだ。
・ 社内の英語公用語化
・ コストカット最優先
以下では順に述べよう。
(1) 社内の英語公用語化
「社内の英語公用語化で日産は駄目になった」
という話は、前に述べたことがある。そちらを参照。
→ 英語の社内公用語化は?
一部抜粋すると、下記だ。
英語の社内公用語化を推進したら、社員は英語がペラペラになったのではなく、英語ができないまま口を噤んでしまったのだ。
これは前項で述べたことに似てる。
・ 「魚が陸に上がっても、魚に足は生えない。魚が干からびるだけだ」
この比喩と同様のことが、日産にも起こった。日産の社員は、新たな環境に適するように進化するのではなくて、新たな環境に適応できないまま、干からびてしまった。ちょうど、陸にほうりだされた魚が、足を生やす代わりに、干からびてしまうように。
もう一度繰り返す。
英語の社内公用語化を推進したら、社員は英語がペラペラになったのではなく、英語ができないまま口を噤んでしまった。……これが日産で起こったことだ。
こういう状況では、会社が間違った方針を取ったときに、変更することは困難となる。
トップのあたりが「この方針を取るぞ」と決めたら、その方針がどれほどまずくても、一般社員は異を立てにくい。かくて、駄目な方針が変更されなくなる。(是正されなくなる。)
日産で言うと、次の例が典型的だ。
・ ゴーン社長が「電気自動車優先で、ハイブリッドはやらない」
という方針を取ったとき、変更できなかった。
・ 変なグリルの統一デザインを決めたが、変更できなかった。
・ 単眼カメラを決めたとき、他の方式に変更できなかった。
(2) コストカット最優先
ゴーン社長はやたらとコストカットばかりを狙うので、技術的には劣ったものを選択してしまう。「安かろう、悪かろう」ということだ。それが日産の方針だ。
このことは、前にも何度か述べた。
→ ゴーン経営とトヨタ経営
→ セレナの自動運転は旧式技術だ
→ 単眼カメラ方式の限界(自動運転)
これらの項目ですでに何度か述べたように、日産のゴーン社長はコストカットを最優先にして、技術を軽視する。
そして、そのことが、自動ブレーキにも当てはまる。「コストが安いから」という理由で、「カメラが2台のステレオカメラよりも、カメラが1台で済む単眼カメラを選ぶ」という決断をした。
その後、「単眼カメラだけでは駄目だ。ミリ波レーダーも必要だ」ということが判明したので、マツダやトヨタやホンダは、ミリ波レーダーも併用した。しかるに日産だけは、ミリ波レーダーを採用しなかった。なぜか? 安全性よりもコストを至上命題とするからだ。
「単眼カメラを選んだのは、コストが安いからだ。なのに、ミリ波レーダーを併用したのでは、ステレオカメラと同様のコストになってしまう。これでは単眼カメラを選んだ意味がない。だから、コストダウンのためには、ミリ波レーダーを併用しない」
こういう発想で、「単眼カメラだけ」という方式を選んだのだろう。ここではあくまでコストカット意識ばかりがあり、安全意識はないがしろにされている。
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実は、日産のこの体質は、他の面でも明らかとなっている。
下記は、米国の自動車の耐久性(故障率の低さ)のデータだ。

出典:J.D. パワー
見ればわかるように、日産・三菱・インフィニティが業界でも最低レベルのクラスだ。
これは何を意味するかというと、日産の自動車技術の開発力の低さを意味するのではなくて、日産の使っている部品が粗悪品ばかりだということを意味する。要するに、部品を(低コストな)粗悪品ばかりにしている、ということだ。
印象的に言えば、「日産の使っている部品は中国製の粗悪部品ばかりだ」という感じだ。実際に中国製ということはないのだが、韓国製の部品をかなり輸入しているし、粗悪品が多いのは事実であるようだ。
日産の九州工場も韓国製部品をたくさん使っている。NV350キャラバンは40%輸入部品。ノートも45%に達すると言うから驚く。
( → 韓国製部品輸入急増: 国沢光宏 )
日産自身も、輸入部品を増やしていると公言している。
→ 日産トレーデイング:事業内容 | 部品ビジネス
まあ、輸入部品であっても、ちゃんとした品質のものであればいいのだが、日産の場合、タイ製のマーチを見てもわかるように、ひどい低品質の部品を多用している。粗悪品の塊という感じだ。それが、上のグラフにはっきりと出ている、と言えるだろう。
( ※ 一方、トヨタの品質は非常に高い。これは世評や実感からもわかる。とにかく、トヨタ車は故障しにくい、というのが、一般的な世評だろう。特に、アラブやアフリカでは、トヨタ車の評判が圧倒的だが、これも同様の理由だろう。)
というわけで、部品の品質を見ても、「日産車はコストダウンばかりを優先して、品質がひどく悪い」と言える。韓国車に比べると圧倒的に劣る。もしかしたら、中国車に近いレベルかもしれない。
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なお、日産はこれほどにもコストカットをしているが、それによって利益がどれほど増えたかというと、実は、まったく増えていない。「日産車は低品質だ」という世評が立ったので、大幅値引きをしないと売れなくなっており、値引きのせいで利益が激減しているのだ。2016年の記事にある。
→ 日産自、米国で販売の伸び追求−インセンティブ拡大に支えられる
多額のインセンティブ(値引き資金の提供)によって、販売台数は増えたが、費用の負担がかさんでいる。その結果は、のちに判明した。
《 日産自:米国で高水準の販売奨励金抑制へ、10−12月は営業大幅減益 》
米国市場で日本勢として最も多額の販売奨励金(インセンティブ)をつぎ込んでいる日産自動車は、昨年10ー12月の決算で円高などで大幅な営業減益。
( → Bloomberg )
低品質で有名な日産は、大幅値引きで利益が減少。
一方、高品質で有名なスバルは、売れて売れて仕方がなくて、在庫が足りなくなるありさまだ。おかげでボロ儲け。
1年ほど前の記事だが、次のように記したことがある。
スバルが何よりも圧倒的に優れているのは、安全性だ。衝突安全性もそうだし、走行安全性もそうだ。この点が、特に高級感の意味で、ブランド価値を与えているのだろう。
逆に言えば、「安全は金儲けになる」のである。たしかに安全装置は大幅にコストが上昇するが、その一方で、「高い金を払ってもその車がほしい」というユーザーに高価格で販売できる。これがスバルの経営手法だ。やたらとコストダウンばかりを狙うトヨタや日産とは正反対だ。
具体的に言うと、各社の利益率は、下記の通り。
→ 16年3月期見通し
見ればわかるように、富士重工の利益率は、圧倒的だ。トヨタよりもはるかに上だ。日産とホンダは最低レベルだ。
ちなみに、富士重工の経常利益は、4357億円。日産自動車の経常利益は、5875億円。大差はない。利益の額で見る限りは、富士重工は日産自動車と同程度の規模になっているわけだ。唖然。
というわけで、安全性に力を入れると、これほどにも大儲けできるわけだ。ここを理解できていないのが、他の会社だ。だから、不完全な自動ブレーキを出して、実車テストで恥をかいて、ブランド価値を下げてしまうわけだ。
( ※ ちなみに日産は、今回のブランド番付で、ベスト 10にも入らない。以前はインフィニティだけは入っていたのに、今ではインフィニティもこぼれた。マツダ以下だ。というか、韓国車にも遠く及ばない 21位、22位だ。情けないね。)
( → 自動車の自動ブレーキ )
日産が駄目になったわけは、上のことからもよくわかるだろう。
ただ、その張本人(ゴーン)が退任したことは、好ましいことだ。
日産自動車は、カルロス・ゴーン氏(62)が社長と最高経営責任者(CEO)を退任して会長に専任し、現共同CEOの西川広人氏(63)が4月1日付けで社長兼CEOに就く人事を23日、発表した。ゴーン氏は今後、日産とルノー、三菱自動車工業の3社の会長の立場から、アライアンス(企業連合)全体の経営を推進する役割を果たす。
( → ビジネスジャーナル 2017.02.25 )
なお、下記項目では、志賀社長を批判していた。
→ ゴーン経営とトヨタ経営
ところが、志賀社長は、2014年3月期にすでに更迭されていたそうだ。
→ 「糟糠の妻」志賀COOを切り捨てた日産ゴーン社長
で、ゴーン社長の後継者は、志賀社長ではなく、西川広人CEOである。で、西川広人というのはどういう人物かというと、経歴を見る限り、購買部などの出身であり、コストカットぐらいしか意識はなさそうだ。技術的なことなどまったくわかりそうにない。(学歴は東大経済学部卒。)
特にマイナス点が見出されるわけではないが、プラス面が見出されるわけでもないので、まったく期待はできそうにない。トヨタの社長に比べると、大差で負けているようだ。
西川広人が、自動ブレーキの問題を技術的に理解できるかというと、まず、無理でしょう。2ちゃんねらーの技術マニアに比べても、圧倒的に劣っているようだ。
( ※ 2ちゃんねるでは、日産の自動ブレーキのひどさについて、かなり話題にされている。誰もが日産に呆れているようだ。……そういう認識力は、日産の社長は持っていないはずだ。だから、セレナも放置している。)

今はなき 日産の標語
[ 付記 ]
日産の技術力そのものが劣っているわけではない。
ちなみに、米国のフルサイズセダンの評価では、トヨタ・アバロンなどの同級品を押しのけて、日産・マキシマが1位になっている。
→ Nissan Maxima Reviews - Nissan Maxima Price, Photos, and Specs - Car and Driver
コストをかけた準・高級品ならば、まともな商品を作れる、ということだろう。
逆に言えば、コストダウンを図る大衆品では、いかに粗悪品を作っていることやら。技術よりも、経営方針のせいで、会社が駄目になっている。購買部のせいだな。
で、購買部(という日産没落の張本人になる部門)の出身となる人が、新しい経営者になったわけだ。日産は、お先真っ暗だね。
昔:技術の日産
今:低品質の日産
金(ゼニ)のことばかり考えているような会社に、未来はない。
※ まともな会社は皆、「良い品を作ろう」と考える。
日産には、それがない。ひたすら、金(ゼニ)だ。
【 関連サイト 】
(1) 日産のコストカット
《 日産の調達責任者が今考えていること 》
「日産は(部品の値下げも含め)総コストを年5%下げる目標を掲げ、2015年度も進めている。継続的に競争力を上げることは必要だ。部品メーカーも同じ考えと思う」
( → 日刊工業新聞 )
トヨタはこれほどの無理強いはしていないようだ。5%でなく1%だけだ。
→ トヨタ、部品価格値下げ要請 上期1%未満? 昨年度下期並み
(2) リコール続出
《 日産、なんと72万台をリコール 下請け叩きの弊害か? 》
日産自動車は14日、バックドアに不具合があったとして、ワゴン車「セレナ」など12車種計72万7012台(2009年4月〜16年3月製造)のリコール(回収・無償修理)を国土交通省に届け出ました。
同省によると、不具合があったのはドアを支える金属製の棒状部品で、腐食により内部に封入したガスが漏れ、部品が外れる恐れがあるということです。
またリコールですか、減らないですね。今回は、ドアを支える金属製の棒状部品の腐食による不具合とのことなんですが、今の時代、そんな部品納入するの?って思ってしまいますね。しかも72万台って一体何よ?って規模です。
あまり思いたくはないですが、これも下請け会社への無理な値下げ要求、下請け叩きなどの弊害かな?とも感じます。
( → 駒桜のトレンドウォッチ! )
→ 日産 エクストレイル 1万8000台、ABSに不具合
→ 日産 アルティマ、34万台をリコール…走行中ドアが開くおそれ
→ 日産:リコール関連情報(公式)
(3) ボロボロにされても壊れないトヨタ車
鉄球でぶちのめされても、まだ走る。まるで荒唐無稽な漫画だ。
→ 出典・解説
タイムスタンプは 下記 ↓
最近の日産の営業マンは質が落ちたと嘆いてる
次は日産を捨てるらしい
不正ばっかだし企業体質も腐りきってる。
昔を思い出してほしいよ。
2019年もinfinitiは業界平均以上、日産も平均レベル。
あなたの主張と反しませんか?
>日産の使っている部品が粗悪品ばかりだということを意味する。要するに、部品を(低コストな)粗悪品ばかりにしている、ということだ。
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO27135290Q8A220C1000000/
https://clicccar.com/2019/02/20/704552/
>一方、高品質で有名なスバルは、売れて売れて仕方がなくて、在庫が足りなくなるありさまだ。おかげでボロ儲け。
後知恵でしかないですが、スバルはお金のかけ方を間違っていたようですね。
「その後は改善されたようだ」
という結論にしかならない。
あと、トヨタには大差で負けている。(2019年)
本田の話は、また別だが。
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米調査会社トゥルーカーの調べでは、5月に日産が車1台に出したインセンティブは3554ドル(約39万円)。スバル(1451ドル)やホンダ(1886ドル)、トヨタ自動車(2060ドル)など、他の日系メーカーに対し額の多さが際立つ。 「フリート」とはレンタカー会社など法人向けの大口販売で、日産はその比率が高い。
https://www.asahi.com/articles/DA3S14041994.html
米国市場で利益を出せないのはトヨタも変わらないことがわかります。それだけ最近の米国市場の状態はよくないということ。
トヨタ:約1.4%
日産:1.2%
ホンダ:3%(ただし直近数ヶ月はマイナス利益)
http://openblog.seesaa.net/article/465619151.html
http://openblog.seesaa.net/article/437882122.html
だから、米国における利益率は、見かけ上、低くなっている。
現実には、トヨタ本体は莫大な利益(利益率8%)を上げていて、その事業収益は米国市場に大きく依存しているのだから、米国での利益率が 1.4%であるはずがない。1.4% というのは、節税のために会計処理した、つじつま合わせの数字だろう。実態を反映していない。
(実際は8%の利益を得ているのに、米国の会社には 1.4% の利益を配分して、残りの大部分はタックスヘイブンに配分する。そこで少額の納税を済ませたことにすれば、二重課税を避ける形で、日本では免税となる。こうやって合法的に税のがれをする。)
日本事業限定では日産も利益率は10%近いですから。
上のリンク先にも書いてあるけど、日本事業じゃなくて、日本本社の分。それは外国で利益を計上したあとで、配当金の形で無税で本社の利益に計上される。本当は外国の事業で利益を上げているのだが、その利益を配当益の形にして、日本の本社の利益に計上しているだけ。
日産の日本事業では、利益はほとんど上がっていないのだが、外国事業の(子会社の)利益を本社に付け替えることで、日本本社の利益に計上される。
脱税ではないが、外国の方が法人税が低いので、節税の効果が出る。日本では利益額が大幅に増えるが、税金はろくに払っていない。
日本事業限定では日産も利益率は10%近いというのは日産の決算発表から持ってきています。
→ https://www.nikkei.com/article/DGXMZO44808860V10C19A5EA2000/
日本事業限定では日産も利益率は10%近い……のだとしたら、海外事業では赤字すれすれなのかな? それで全体では 2.7% になるのかな?
購買ゴリ押しの安部品、中華部品のせいで、このコロナ禍で一番生産がとまる事態に陥り、三菱水島にもその余波が広がりジリ貧に。
さらに英語屋新社長が現場知らずで、ここに書いてあるときよりも更に悪化しました。
今の状況を省みた記事を見たいです、楽しみにしてます。
→ https://diamond.jp/articles/-/228140
最も有力だった関潤 氏がどうして社長にならなかったのか? ……と不思議に思っていたが、この記事に説明があった。
以下、引用。
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複数の日産関係者の話を総合すると、関氏が辞任した最大の理由はジャンドミニク・スナール・仏ルノー会長による“関氏の排除”に嫌気が差したというものである。
日産幹部は、「スナール会長は自身に絶対服従をしない人間に対して独特のマウントをとる。関さんに対してもそうだった」と明かす。スナール会長は「関はアライアンスに否定的だ」と繰り返し発言していた。同幹部によれば、アライアンスに否定的という言葉は「スナール会長の意見・やり方とは違う」という意味なのだそうだ。
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そうだったのか。ルノーの横槍で、最善の人物を選べなかった。こうなると、崩壊するしかないね。ルノーもろとも、沈没する。
今にして思えば、フィアットの合併の可能性があったときが、唯一のチャンスだった。フランス政府がこれをつぶしたせいで、ルノーも日産もつぶれる結果に。
そのせいか車の作り方、売り方がわからん奴がさらに助長してしまった。
前に指摘された通りに英語屋がますますのさばってる
R&Dの役員は別にいるので勘違いしないように。
豊田章男社長も技術的なことはそんなにわかっていないと聞く。パフォーマーとしては優秀だけども。
まぁプログラムダイレクター卒だから技術分野は疎くてもええのかな。
とはいえ残った日産のトップ2人は購買畑の事務屋だからもっと酷いか。
トヨタはすくなくとも生産管理、工場経験しているからクルマの作りがわかってる