2017年04月17日

◆ 自動ブレーキの認定制度(問題点)

 自動ブレーキの認定制度を国が導入しようとしている。好ましいことのように見えるが、問題点がある。

 ──

 日産セレナの事故に触発されたせいでもないだろうが、自動ブレーキの認定制度を国が導入しようとしている。

 このことは、先月からすでに検討していた。
  → 自動ブレーキに認定制度 国交省など、17年度にも
  → 衝突被害を軽減、後付け警報装置の評価…国土交通省が制度化を検討

 それがようやく正式に決まったそうだ。
 国土交通省は、車の「自動ブレーキ」の性能を認定する制度を来年度に導入する方針を決めた。現在各メーカーが示している性能は「自称」で、試験の条件などにばらつきがある。国として「お墨付き」を与えることで、消費者が安心して車を選べるようにする。
 国際基準作成には数年はかかるため、先行して国内用の認定制度をつくることにした。
 認定の基準は「事故被害の軽減効果が高いレベル」(国交省担当者)とし、具体的には今後詰める。基準をクリアした車は国交省がホームページで公表する。性能確認済みの「認証マーク」を広告などに使用できるようにすることで、メーカーに対し、安全性向上への開発を促す。
( → 自動ブレーキの性能認定制度、来年度導入へ 国交省:朝日新聞 2017-04-17

 これを読むと、「おお、素晴らしい」と思う人が多いだろうが、実は、駄目だ。方向性としては正しいのだが、実際にやる具体策が穴だらけなので、欠陥制度となってしまっている。

 国交省のこの制度は、日産の自動ブレーキと同様だ。「名ばかりの GT 」みたいに、「名ばかりの自動ブレーキ」(欠陥品)を作ったのが、日産自動車だ。それと同様に、「名ばかりの認定制度」を作るのが、国交省だ。
 名前だけは立派な制度を作っても、その制度が穴だらけのザル制度では、何の意味もないのだ。むしろ、欠陥品に「立派です」というふうにお墨付きを与えることで、詐欺に加担しているのも同然だ。国家公認の詐欺制度。呆れる。
( ※ トンデモマニアが、「水素水」とか「EM菌」とかのインチキ健康食品を やり玉に挙げているが、自動ブレーキの方がずっと悪質だ。人間の生命に関わるし、金も巨額だからだ。はるかに大きな詐欺だと言える。しかも、政府が詐欺に加担しようとする。)


autobrake.gif


 問題は、四つある。以下、小分けして述べよう。

 (1) 単眼カメラ方式

 自動ブレーキには、ステレオカメラやミリ波レーダーを使ったものもある。これらについては、十分な性能があることが確認されている。
 一方、「単眼カメラ」だけとか、「単眼カメラと赤外線レーダー」とかでは、性能が不十分であることが多い。その理由は、単眼カメラ方式が、(輪郭抽出という過程で)低コントラストの状況を認識できないからだ。特に、薄暗い状況で、黒や灰色の先行車を、認識できないことが多い。
 そのせいで、実際に、日産自動車(単眼カメラだけ)では、衝突事故を起こしてしまった。
  → 自動ブレーキが不作動(日産セレナ)

    ( ※ 衝突事故について「販売所員のミスのせいだ」と報道されることもある。だが、それは誤報だ。販売所員のミスは、「自動ブレーキを信頼してしまったこと」だけだ。自動ブレーキの性能が不完全であることには、販売所員には責任はまったくない。仮に責任があるとしたら、販売所員でなく、開発者と経営者の方だ。)

 この問題については、下記項目で詳しく論じた。
  → 単眼カメラ方式の欠陥(自動運転)


 (2) 対人衝突試験の不備 (横断歩道・赤信号)

 前方の先行車や障害物への衝突回避だけでなく、歩行者への衝突回避の試験もなされている。下記のように。





 ここでは、歩行者を発見するのは、歩行者から 10メートルぐらい前の地点だ。しかし、この距離は長すぎる。試験としては不適切だ。
 むしろ、歩行者からの距離を1メートルぐらいにするべきだ。つまり、自動車が1メートルの距離に近づいた時点で、いきなり自動車の前に飛び出すべきだ。
 なぜか? そうすることが妥当であると、道交法 38条で規定されているからだ。次のように。
 「横断歩道の手前で先行車が停止しているときには、後続車は必ず一時停止する必要がある」

 試験の状況は、明らかに横断歩道を横断中の歩行者に対するものであるから、試験車は先行車の横で一時停止することが必要なのだ。そして、そのことを守っているかどうかを調べるには、「1メートル手前でいきなり飛び出す」という条件を設定することが必要なのだ。
 もちろん、これをパスできないような自動ブレーキ車は欠陥品であるので、認定制度では「不合格」とするべきだ。(現実に横断歩道を横断中の子供を轢き殺してしまうだろう。そんなものに「合格」を認定する制度の方がおかしい。)

 なお、このような試験を導入するためには、試験においては「横断歩道で横断中」というふうに状況設定する必要がある。
 このあとで、
  ・ 横断歩道の白い縞模様を認識して、一時停止する
  ・ 横断歩道の上の赤信号を認識して、一時停止する

 という機能が実装されることになる。

 対人の自動ブレーキを認定するのであれば、上記のようにするべきだ。
 ひるがえって、そうなっていない現在の衝突回避試験は、試験として欠陥があると言える。
 この問題については、下記項目で詳しく論じた。
  → 自動ブレーキと横断歩道

 (3) 自動ブレーキと保険料

 自動ブレーキの性能はさまざまだが、保険料(の割引率)は一律である。たとえば、次のものはいずれも同様になる。
 × まともに作動しない数年前の自動ブレーキ
 × 低コントラスト下ではまともに作動しないセレナの自動ブレーキ
 ◯ ちゃんと作動するアイサイト(スバル)の自動ブレーキ
 ◯ ちゃんと作動するベンツ Eクラスの自動ブレーキ


 これらのものには、性能に大差がある。ならば当然、自動ブレーキの保険料の割引率にも大差があってしかるべきだ。なのに、実際には、どれもこれも「自動ブレーキだ」という理屈で、同様の割引率となっている。呆れる。
 これでは、「性能の劣悪な自動ブレーキを普及させる」という効果しかない。こんなことでは、「安かろう、悪かろう」の粗悪品を普及させるばかりだ。国は詐欺師に加担しているのも同然だ。状況が改善するどころか、状況が悪化する。
 この問題については、下記項目で詳しく論じた。
  → 日産の危険な自動ブレーキを排除せよ
  ※ 粗悪品を排除するため、保険料に差を付けよ、という趣旨。

 (4) 現在の認定制度がある

 国交省は「自動ブレーキの性能を認定する制度」を新たに導入すると言っている(記事参照)。だが、そのような制度はすでに実質的に存在する。また、すでに公開済みだ。下記にある。
  → 独立行政法人 JNCAP|予防安全性能アセスメント

 これは、独立行政法人 JNCAP がやっているのだから、国家予算でなされていることであり、政府のやっていることだ。
( ※ 予算を見ると、収入の大半は政府からの補助金と交付金だ。一部に事業収入もあるが。 → 出典

 政府は「新たに認定制度を導入する」とのことだが、自分がすでにやっていることを理解できていないのか? 自分が何をやっているかも理解できないほど、頭が壊れてしまっているのだろうか?

( ※ それとも、すでにやっていることを隠して、屋上屋を架する形で事業化するために、予算を二重取りするつもりなのだろうか? だとしたら、詐欺師の加担をするどころか、国交省そのものが詐欺をしていることになる。……ジョークふうだが、笑えない。)
( ※ よく考えると、「認証マーク」を制定することで、「マーク料」を徴収する団体に、天下りすることが目的だろう。つまり、利権確保だ。このことは、自転車の「防犯登録料」という前例がある。詳細は → 別項「自転車の防犯登録料は?」)

 ──

 結論。

 政府が導入しようとする「自動ブレーキの認定制度」は、欠陥だらけだ。方向性としては正しいが、実際にやっていることはまったく駄目だ。正しく直すべき。



 【 関連項目 】
 自動ブレーキは、単眼カメラ方式は駄目だが、ステレオカメラ方式ならば良い、というのが、本サイトの結論だ。
 「単眼カメラとミリ波レーダー」という方式も、悪くはないのだが、ミリ波レーダーは、人間を検知する能力が弱いので、人間への衝突回避能力は弱い。そこが難点となる。
  ・ 単眼カメラは低コントラストに弱い。
  ・ ミリ波レーダーは対人衝突に弱い。

 この二つの問題がある。それらをともに解決できるのはステレオカメラだけだ、というふうに、下記項目で述べている。
   → 夕方事故と自動ブレーキ



 【 関連サイト 】
 関連情報だが、朝日の記事(冒頭)には、次の話もある。
 《 追突事故発生率は3分の1 》
 自動ブレーキの装備車の追突事故の発生率は、非装備車の3分の1――。国土交通省の調査で、自動ブレーキの事故防止効果が明らかになった。
 自動ブレーキが全車搭載の乗用車の車種と、全車非装備の車種を選び、約3千万台を対象に 2015年の事故発生率を比較した。それによると、1千台当たりの昼間の追突事故は装備車が 0.35 件、非装備車が3倍強の 1.14 件だった。夜間は装備車が 0.18 件、非装備車が 0.51 件だった。
( → 自動ブレーキの性能認定制度、来年度導入へ 国交省:朝日新聞 2017-04-17

 このことからしても、自動ブレーキが重要だということはわかる。
 だからこそ、本サイトでは何度も自動ブレーキについて論じている。(日産自動車が嫌いだから、ではない。お間違えなく。)

posted by 管理人 at 19:39| Comment(4) | 安全・事故 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
 次の記事があった。転載(一部抜粋)する。

 ──

現在販売している「歩行者を見られる自動ブレーキ」は大半が昼間限定。夜間、光量が少なくなると信頼性低くなるため機能をカットしている。こらもうトヨタのレーダー+カメラ式や、世界最高レベルの歩行者感知能力持つマツダCX-5のレーダー+カメラ式も同じ。

そもそもロービームだと歩行者の下半身しか見えないため、人か物体かの判別が出来ないのだった。明るいレンズ持つアイサイトのみ、ドライバーが見えている範囲なら歩行者を判別可能である。

→ http://j.mp/2o6KPtP


Posted by 管理人 at 2017年04月20日 18:03
自動ブレーキとはちょっと違うのですが、アクセルとブレーキのご操作を根本的に解消しうる製品を開発している会社のサイトを見つけました。個人的にこれはなかなかの優れものではないかと思っております。管理人さんはいかがお考えでしょうか?http://www.onepedal.co.jp/products/
Posted by やまさん at 2017年05月09日 00:02
> アクセルとブレーキのご操作を根本的に解消しうる製品

 ナルセペダル(ワンペダル)については、言及済みです。もっと良い方式を私が提案している。
 http://openblog.seesaa.net/article/435851387.html
Posted by 管理人 at 2017年05月09日 05:50
管理人さん

早速の返信ありがとうございます。
その記事を見落としてました。
大変勉強になりました。
Posted by やまさん at 2017年05月09日 15:50
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