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記事を引用しよう。
《 東芝半導体出資に「日本連合」案 技術流出防ぐ狙い 》
東芝が進めている半導体子会社の売却で、日本の大企業が連合を組んで出資する構想があることが分かった。経済産業省などが呼びかけて1社あたり100億円規模の資金を集め、政府系のファンドや日本政策投資銀行も活用して数千億円を用意する。だが、実現性は不透明だ。
東芝が3月末に実施した1次入札では台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業が3兆円に近い額を提示して金額面で優位に立っている。一方、経産省は安全保障にもかかわる半導体技術が中国や台湾に流出することを警戒。1次入札に参加した米国系の企業やファンドに相乗りして出資を目指すとみられる。一定の出資比率を得ることで、技術流出を防ぐ発言権を持つ狙いがある。
( → 朝日新聞 2017-04-08 )
1社あたり 100億円で3兆円をめざすなら、300社の参加が必要だ。半分を政府が持つとしても、150社。
一方、政府の狙い通り、民間が 5000億円なら、政府が2兆円以上を出すことになる。これでは国営化だろう。呆れる。
で、それだけ巨額の金を投入したあとで、その2兆円はどうなるか? ただの紙屑になってしまいそうだ。
危険視する声は、はてなブックマークにもある。
yuki_honjyo 失敗する奴やん...
sauvage 日の丸なんたらとか国策合弁とか、もう嫌な予感しかしない。エルピーダの総括が先では…
hiroomi ”経済産業省も支援する形で、東芝や経済界が大手企業を中心に共同出資の打診を始めた”限りなく傾きそう。
( → はてなブックマーク - 東芝半導体に官民「日本連合」 )
過去の事例を見るには、株価を見ればいい。
ルネサスは、こうだ。

政府の主導によって設立されたルネサスは、株価がこれほどにも暴落した。要するに、会社の価値を大幅に棄損した。金の大部分を、ドブに捨てたも同然だ。
エルピーダはどうか? もっとひどい。最終的には倒産して、株価は1円となった。(紙屑を1円で買う人がいたらしい。記念品ですかね。)
こうして、政府主導によるルネサスとエルピーダは、どちらも最悪の結果となった。
一方、シャープはどうか? 私はずっと前から「シャープは鴻海に買収されるべきだ」と言っていた。
具体的には、どこかの会社に売却してしまえばいい。この件は、以前の項目で述べた。
→ シャープ 大幅減資の本質
ここでは、「鴻海に売却せよ」と述べている。
似た趣旨のことは、前にも述べた。
→ シャープ再建の具体策 (2012年09月03日)
ここでも、鴻海への売却を勧めている。昔から首尾一貫して、同じことを言っているわけだ。
( → シャープは大幅赤字でゾンビ化 )
現実には、私のお薦め通りで、鴻海がシャープを買収した。
で、その結果は? 株価はこうなった。

つまり、ゴミ屑みたいだった会社が、まともな株価になってきた。時価総額が 2.3兆円となると、もはや立派な大企業である。
ちなみに、パナソニックの時価総額が 3.1兆円。日立の時価総額が 2.8兆円。富士通の時価総額が 1.4兆円。NEC の時価総額が 0.7兆円。
経産省は、経営の揺らいでいる 富士通、NEC、パナソニックなどに出資を期待しているようだが、お門違いも甚だしいだろう。これらの企業は、出資するどころか、どこかの会社に出資してもらいたい側だ。青息吐息なんだから。
それにしても、東芝の半導体子会社が、鴻海に買収されれば、立派な日本企業として生き残れるのに、あえて日本企業に買収させて、2兆円を紙屑にしてしまおう(ルネサスやエルピーダの二の舞にしよう)……というのだから、経産省には呆れるしかない。
それほどにも、天下り先がほしいのか? そのために2兆円の血税を浪費し、日本企業には5000億円の損失を与えたいのか?
下手をすると、 富士通、NEC、パナソニック、日立が、みんな連鎖倒産するぞ。平気なのは、親方日の丸の経産省だけだ。国民の税金を使って、2兆円のギャンブルですってしまおう、というわけ。

東芝本体が WH で2兆円ぐらいの損失をこうむったようだが、日本政府はそれに輪をかけて馬鹿げた損失を発生させようとしている。
森友学園では、数億円の無駄遣い。
豊洲市場では、数百億円の無駄遣い。
東芝の半導体子会社では、2兆円の無駄遣いだ。
森友学園や豊洲市場で大騒ぎしているが、むしろ、経産省の馬鹿げた無駄遣いにこそ、大騒ぎするべきだろう。とんでもない規模だ。

【 追記 】
朝日新聞に続報がある。
半導体事業は好不調の波が激しい上、国際競争力を保つには年2千億〜3千億円の設備投資が求められ、出資する側にはかなりの負担が続くことが予想される。電機大手の多くが「半導体から手を引いてきた」(幹部)というのが実情で、1次入札に参加した日本企業はゼロだった。
( → 東芝半導体出資に「日本連合」案 技術流出防ぐ狙い:朝日新聞 2017-04-09 )
記事にあるように、「年2千億〜3千億円の設備投資が求められ、出資する側にはかなりの負担が続くことが予想される」とのことだ。
出資した企業は、それでおしまいではない。最初に 5000億円を投資したあと、2年ごとに同額の追加出資を次々と要請されそうだ。(借金という手もあるが、借金だけで済むはずがない。)
この分野は「多額の投資ゲーム」みたいな面がある。多額の投資ができなくなったら、その時点で「ゲームから退場」となる。(投資について)「諦めたらそこで試合終了ですよ」というわけだ。
ま、日本企業の場合は、最初から諦めているから、問題はない。問題は、経産省だ。負けるとわかっている試合に出て、大損をする。民間企業は自分の金を失いたくないが、経産省は国民の金を勝手に使えるから、いくらでも金を失うことができる。
税金を使う2兆円のギャンブル遊びとは、放蕩息子の道楽もここまで来たか。

個々の労働者のスキルは高いのに。。。
長時間労働やサービス残業の問題なんて、経営者が本気で考えれば解決可能だろうと思います。というか、解決する義務がある。
東芝の従業員の雇用がどうなるかも気になりますね。
お役人の大部分は、そのほうが日本のためになるとまじめに考えて無能の善意から最悪の結果をもたらしてます。
ネズミが百匹集まっても、猫には対抗できない。猫が百匹集まっても、ライオンには対抗できない。
鴻海が東芝子会社を買収すれば、自社の一部門として、相乗効果を出せる。他部門の力を投入できるし、東芝子会社の効果が他部門に波及する。(シャープも同様だった。)
企業連合が東芝子会社を買収しても、相乗効果は皆無。単に出資するという金銭効果だけ。相乗効果がないから、ライバルには負けてしまって、東芝子会社は将来的には倒産するしかない。
結論。
鴻海が買収した場合には、東芝子会社の価値は3兆円近くになる。
企業連合が買収した場合には、東芝子会社の価値は5000億円ぐらいしかない。実際に購入するには2.5兆円程度が必要。差額の2兆円は国が出資して、その後、実際価値の5000億円にまで減少するので、2兆円はドブに捨てられてしまう。
ちなみに、鴻海の時価総額は4兆円。東芝子会社を買収すれば、会社規模は倍近くに増えてしまう。そのために3兆円の借金が必要のように見えるが、実は、倒産寸前のシャープを買収して、その株価が大幅上昇したから、シャープの株価上昇による利益だけで、1兆円以上をボロ儲けした計算になる。東芝子会社の買収でも、経営建て直しで、利益は大幅に上昇しそうだ。シャープと東芝の買収で、株価上昇の利益を2兆円ぐらい得られそうだ。それで東芝の子会社を買えるから、実質的には、タダみたいな出資で、東芝子会社を入手できる。
成長能力のある会社にとっては、そういう手品みたいなことが可能だ。逆に、成長能力のない日本企業は、そういうことができない。しょせんは 成長能力・経営能力 の差。
タイムスタンプは 下記 ↓
そこで技術流出の可能性がある(実際中国に工場を建てたサムスンは結構やられたそうだ)
あと、東芝のフラッシュメモリは単独事業ではないので、パートナーの意向も無視できない
中国が関わると、米国政府から横やりが入る可能性もある(パートナーは米国企業)