2017年03月13日

◆ 白と黄色は明るさが同じ

 白と黄色は明るさが(ほぼ)同じである……という話。ウソみたいだが、ホント。

 ──

 赤や緑や青に比べて、黄色は明るく感じられる。白と同じぐらい明るい。下を見ればわかる。


       



 これは、「青があってもなくても、明るさには影響しない」ということだ。
 ちょっと聞いたところでは、そんな話は、理屈の上では、おかしい。液晶の三原色でも、赤・緑・青の三つの要素の明るさは同じであって、「青だけは明るさがない」ということはありえないからだ。

 ところが、ここで人間の視覚認識という生物学が関係すると、話は一転する。


Cone-response.png
  ※ R は暗所でのみ働く桿体細胞
  ※ 出典は Wikipedia



 今日の朝日新聞の記事に書いてあったが、次のようになる。
  ・ 人間の網膜には、三つの錐体がある。
  ・ それぞれ、青・緑・赤の帯域で感度が高い。
  ・ 明るさを感じるときには、青の錐体は影響しない。

 つまり、青の帯域で感度の高い錐体(S錐体)でどれほど青を感じ取っても、それは人間の感じる「明るさ」には影響しない。「明るさ」に影響するのは、緑の帯域で感度の高い錐体(M錐体)と、赤の帯域で感度の高い錐体(L錐体)だけだ。
 したがって、青色成分の欠けた黄色という色は、青があってもなくても明るさが同じだというわけで、白と明るさが同じである……というふうになる。

 ウソみたいではあるが、実感では、「まさしくそうだ」となる。さまざまな色のなかで、黄色だけは、白と同じぐらい明るい。
 その理由がわからなかったのだが、本日の朝日の記事で理解できた。

  → 光の補色 青+黄…2色でも白色光:朝日新聞 2017-03-13

 ※ 「輝度」(明るさ)は、「赤 + 緑」になっているそうだ。
   細胞レベルの錐体でそうなっている。上記記事の図にあるが、
   下記ページでも説明されている。
    → Visolve - 色覚のしくみ



 [ 付記1 ]
 原理はわかった。ただし、どうしてそういう変な生物学的構造になっているのか……ということまではわからなかった。生物の神秘ですかね。
 ま、進化的には、そういうのが自然だったのかもしれない。

 [ 付記2 ]
 進化的には、生物はもともと4色視覚だったが、哺乳類は夜行性になったときに、2色(2錐体)を失い、2色(2錐体)の視覚となった。その後、赤錐体から分離する形で、緑錐体ができて、3色視覚になった。
  → 錐体細胞 - Wikipedia
  → なぜ霊長類はまた3色型色覚を獲得したのか

 このことからすると、もともとは赤錐体だけが明るさを感じていた、というふうにも理解できる。

 [ 付記3 ]
 興味深いことだが、人類の言葉の歴史を見ると、当初は、
   赤色 = 明るい
 というふうに認識されることが多い。日本語でも「あか」という後は、当初は、「赤」と「明」の双方の意味があった。ここでは「あお」は「くらい」という意味をも持った。(「くらい」と「くろい」もいっしょ。発音が似ている。)
  → 緑と青の関係 - 知恵袋/ベストアンサー

 そのことは、人類の視覚の歴史で、赤が最初にあったことと、対応している感じだ。(偶然の一致かもしれないが。それでも、興味深い。)

 [ 付記4 ]
 冒頭の図(色の付いた丸)をみるとわかるが、右の三つでは、黄色が最も明るく、次が水色で、次がピンクだ。つまり、こうだ。
  ・ 緑の成分があれば、かなり明るく感じられる。(黄色、水色)
  ・ 緑の成分がなければ、かなり暗く感じられる。(ピンク)


 これは次のことを意味する。
  ・ 青の錐体は、明るさにはほとんど影響しない。
  ・ 赤の錐体は、明るさへの影響はやや弱い。
  ・ 緑の錐体は、明るさへの影響が最も強い。


 [ 付記5 ]
 色覚異常では、赤緑色盲のことが多い。これは、緑または赤の、どちらかの錐体がかけている場合だ。
  → 色覚異常 - Wikipedia

 そのような人には、世界がどう見えるか、というシミュレーション。
  → 色のない世界ってどんなもの? 色覚異常の見え方を疑似体験
  → ゴッホの絵は 色覚異常の人が見た世界がわかる比較画像
  → ゴッホの本当のすごさを知った日 (おすすめ記事)

 [ 付記6 ]
 色覚異常(赤緑色盲)の人には、色がまったくわからないかというと、そうでもないようだ。視野の中心部だけなら色がわかるので、日常生活では不便はしない、ということもあるらしい。個人差も大きいようだが。(團伊玖磨の体験談。)
 
posted by 管理人 at 21:52 | Comment(4) | 科学トピック | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
淡黄色のヘッドライトは認識性が高い理由の一つが分かった
Posted by 先生 at 2017年03月13日 23:54
昔、虹色の順番を覚えるのに、色度図を見ながら
R →(Y)→G→(C)→B→(Mg)と
左回りに覚えた。色度図を思いうかべると、記憶が再現されて、それなりに役にたちました。
色が2色あれば、3色を復元できるとされるのを巧みに利用したのが、アナログカラーTVだとおもいます。
Posted by senjyu at 2017年03月14日 11:51
>そのことは、人類の視覚の歴史で、赤が最初にあったことと、対応している感じ

→火を使っていたことと何か関係があるのでしょうか。 
Posted by 通りすがり at 2017年03月14日 13:14
色座標YxyやL*a*b*などの比視感度で述べられている内容です。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%AF%94%E8%A6%96%E6%84%9F%E5%BA%A6

こちらの等色関数の解説もお役に立つでしょう。
http://www.ccs-inc.co.jp/s2_ps/s1/s_04/column/light_color/vol14.html

色彩情報も役に立つと思われます。
http://www.wakayama-u.ac.jp/~chen/education/image/2012/L7.pdf

淡黄色光源はフォグランプの代用です。
短波長の光(青・紫)は散乱されやすく(レイリー散乱、またはミー散乱)後方や側方に拡散するため濁って見え、光の到達距離が下がります。しかし長波長の光は散乱されないので遠くまで見えます。かといって赤い光にするとブレーキランプやテールランプと混同するため青と紫がカットされ補色である黄色が使われています。

そういう意味では青信号は近くで気づけばよく、赤信号は遠くから見えなければならないので、信号を考えた人はすごいと思います。
Posted by 京都の人 at 2017年03月14日 23:25
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