──
宅配ロッカー(宅配ボックス)の共同利用を推進するために、政府が補助金を出すそうだ。前項で述べたが、再掲しよう。
《 宅配ロッカー設置に国が補助金 》
配送員の負担軽減と宅配サービスの効率化に向け、政府は駅や商業施設など外出先で荷物を受け取れる「宅配ロッカー」の普及を促す。平成29年度から、ロッカーを設置した事業者に対し、他の業者も使用できることを条件に費用の50%を補助する制度を始める。ヤマト運輸は同制度を活用して、34年までに宅配ロッカーを5千カ所設置する計画を前倒しする。
( → 産経ニュース 2017-03-09 )
これを見ると、次の趣旨だと思える。
・ 宅配ロッカーを普及させる。
・ 現状では各社の共同利用はなされていない。
・ だから共同利用を推進する。
・ ヤマトは自社のロッカーを他社に開放すべきだ。
これを前提として、政府は補助金を出すわけだ。
しかし、これはとんだ見当違いだ。現状は、こうなっている。
・ ヤマトは宅配ロッカーを大幅増にする方針を出している。
・ それはヤマトのロッカーではなく、PUDO のロッカーだ。
・ PUDO のロッカーは各社の共同利用が可能だ。
・ だから、共同利用を推進する必要はない。(実現済み)
この現実を理解すれば、政府の方針は次のことだとわかる。
「 PUDO という宅配ロッカーの会社のために、その事業費の半額を補助する」
特定の会社に限って、多額の税金を投入する、というわけだ。
もう、こうなると、
みたいな不正支出に近い。
──
ちなみに、PUDO という宅配ロッカーは、下記。
→ オープン型宅配便ロッカーネットワーク | パックシティジャパン
一部抜粋。
PUDOステーションを通じてオープン型宅配便ロッカーネットワークを構築していきます。
PUDOステーションは駅、スーパー、お店、商店、駐車場、 アパートなどあらゆるお客様にとって便利な場所に設置をしてまいります。
なお、現状では、利用している会社は、ヤマト運輸ぐらいらしい。佐川や、ゆうパックは、使えないようだ。
また、ヤマトは「自社で配備していきます」と言っているが、実質的には、PUDO の宅配ロッカーを使っているだけらしい。
→ ヤマトの宅配ロッカー(公式ページ)
これは、公式ページだが、そこには PUDO の写真があるだけだ。

ま、当り前だよね。こんな別事業は、外部の別会社に任せるのが、賢明だ。自社でやったりしたら、面倒で大変すぎる。
ともあれ、政府のやっていることは、「 PUDO の事業に多額の補助金を出すこと」でしかない。
なのに政府は、「ヤマトに共同利用を促すために、多額の税金を投入する」というつもりのようだ。何かを促すつもりでいるが、すでに実現済みのことのために金を投入する。まったくの無駄金だ。
現実を理解していないと、架空の妄想のために、多額の金を出すことになる。
( ※ 引用記事を読むと、政府は「事業者」としてヤマト運輸などに金を出すつもりのようだ。しかし現実には、宅配ロッカーを設置する事業者は PUDO の会社だ。政府は現実を根本的に誤解している。)
[ 付記1 ]
「宅配ロッカーの共同利用」
という方針そのものは、妥当である。
これによって、何らかの効率化が起こることを期待する人も多いだろうが、それはまあ、二の次だ。
大事なのは、次のことだ。
「ヤマトのシェアは 50%程度なので、宅配ロッカーの共同利用が進めば、使える宅配ロッカーの数はヤマト単独の2倍になる。したがって、面積あたりの密度が倍になる。その分、自宅のそばに宅配ロッカーができる」
つまり、利用者にとっては、「宅配ロッカーの配置場所が、自宅の近くになる」というメリットがある。
また、利用者が増えると、宅配ロッカーを設置しやすくなるので、宅配ロッカーの総数が増える。その意味でも、「宅配ロッカーの配置場所が、自宅の近くになる」というメリットが生じる。
この意味で、「宅配ロッカーの共同利用を推進する」という政府の方針そのものは、妥当である。
ただし、それは、税金を投入して実施するようなことじゃない。単に「 PUDO を使え」と口先介入するだけでいい。それだけですべては解決する。税金を浪費するべきではないのだ。
[ 付記2 ]
PUDO というのは、何かと思ったら、ヤマト運輸とフランスのネオポストが共同で設立した合弁会社「Packcity Japan」が運用するオープン型宅配ロッカーのことだそうだ。
→ ヤマトホールディングス・プレスリリース
[ 余談 ]
週刊新潮の最新号によると、宅配便について興味深い話がある。
Amazon の宅配では、再配達率がとても高いそうだ。昼間は不在で、夜間でも不在のことが多いそうだ。
これは当然だろう。通販を使うような人は、自分では買い物には行けないような人が多い。昼間は忙しいのだから、昼間は不在となり、再配達率が高くなる。
一方、普通の宅配ならば、昼間に主婦が在宅であることも多い。これなら再配達は少なめだ。
要するに、Amazon などの通販の宅配では、一般の宅配よりも、再配達の比率が高い。ならば、料金を上げるべきなのだが、実際には、料金は安い。( 300円以下かも。Amazonで設定された宅配料金は、基本が 350円だが、2000円以上の買物だと無料だ。実際にヤマトに払っている金も、相当安いはずだ。)
この点では、ヤマトの経営陣の見込みが、相当狂っていたことになるね。
《 加筆 》
300円以下であることは確認された。次の記事がある。
佐川は、「送料無料」を維持するため運賃の切り下げを迫るアマゾンとの取引を自ら打ち切ったのだ。12年に行われた運賃見直しの際、当時270円前後だった運賃を20円ほど上げようとの腹積もりで交渉に臨んだと、佐川の営業マンは語る。
「けれどアマゾンは、宅配便の運賃をさらに下げ、しかもメール便でも『判取り』(受領印をもらうこと)をするよう要求してきました」
これは、宅配便と Amazon」という項目で、すでに掲載した。
【 関連項目 】
「政府が宅配ボックスに補助金を出そうとしているが、これは馬鹿げている。盗人に追銭だ」
という趣旨の話は、次の項目でも記している。(前半で)
→ 宅配の再配達
この項目の後半では、代案として、IT技術で通知する、という案を示している。
その案は、下記ではほぼ実現しているらしい。
【 関連サイト 】
宅配荷物の追跡や再配達を依頼できるアプリ「ウケトル」というのがあるそうだ。
→ 再配達を1割削減した「ウケトル」はパンク寸前の宅配業界を救うか
クロネコメンバーズで会員登録すると、その情報をヤマトに教えることができます。
それ以外の場合だと、勝手に配達中止するわけには行かないんでしょう。苦情が来そうだから。
タイムスタンプは 下記 ↓