2017年02月22日

◆ 左折時の交通事故の原因は?

 交差点でトラックが左折したときに、子供を轢いてしまった、という交通事故を考察する。

 ──

 朝日新聞の「子供の事故死」シリーズ。今回は、左折時の事故死。
 母親の背後で衝突音が聞こえた。振り返ると、大型トラックが横断歩道の上に止まり、車体の下で自転車がひしゃげていた。真花さんは亡くなった。
 トラックの運転手は交差点を左に曲がろうとした際に確認を怠ったとされ、禁錮2年執行猶予5年の判決を言い渡された。
( → 「お母さん青だよ」左折車に… 信号守っても防げぬ事故:朝日新聞 2017-02-22

 青信号で横断歩道を渡っても、左折車が横断歩道に侵入して、歩行者を轢いてしまった……という事例。

 これへの対策として、朝日は「歩車分離方式の信号」を提唱する。(下記)


sasetu.gif


 実際、事故のあとで署名が起こって、歩車分離方式の信号にしたら、以後は事故が起こっていないそうだ。その意味で、対策としては間違っていない。

 ただし、「歩車分離方式の信号」には、難点がある。渋滞が起こりやすいのだ。
 日本では交差点事故で子どもを亡くした親らが普及を呼びかけ、警察庁が02年に推進する指針を作った。だが、全国の整備率は 4.20%(昨年3月末現在)にとどまる。渋滞や信号待ちが増えるという声も強い。

 実際、このような信号が設置されているのは、大きな交差点だけだ。または、事故が起こりやすい交差点だけだ。たとえば、今回の場所がそうだ。



https://goo.gl/maps/v7m6FSRW2Em


 一方、普通の(小さめの)交差点では、いちいち「歩車分離方式の信号」なんかにしたら、信号待ちの時間がやたらと増えて、面倒で仕方ない。こんなことをしたら、信号無視をする人が激増するだろう。
 実際、前日項目 の「対向車線を走る高校生」(伊丹市)という交通法規無視も、信号の間隔がやたらと長すぎた(または高校生がせっかちすぎた)ことが理由だった。信号待ちの時間を増やすような方針は、最善ではないのである。

 ──

 実は、この事故では、根本的な問題がある。こうだ。
 「左折時の自動車は、通常、いったん停止するか徐行するかであって、横断歩道を渡る歩行者にはすごく注意するはずだ。なのにどうして、この運転手は注意しなかったのか? そんな馬鹿なことがどうして起こったのか?」
 
 こういう根本的な問題がある。この問題を避けて考えては、本質を見失うはずだ。
 そこで、調べてみる。ググれば、事情は一発でわかる。当時の事故が見つかるからだ。
  → 【子供の交通死亡事故】 目立つ横断中巻き込み
 産経 2016.5.5 の記事だ。ここには、こう記してある。
 昨年11月から今年1月にかけて開かれた事故の刑事裁判。男性運転手の安全確認が不十分だったことが明らかにされた。助手席側のアンダーウインドー(足もとの小窓)が、置かれたマットで4年前からふさがれていた。「アンダーウインドーをのぞくと視線を下にずらすことになるので、ミラーで確認するくせがあった」。男性運転手はそう主張したが、検察は「遮蔽していなければ被害者を発見することが可能だった」と糾弾した。

 つまり、注意しなかったのではない。注意しても見えないように、小窓をふさいでしまったのだ。自分の勝手で。

 このトラックの車種もわかっている。
 キユーソー便の現行スーパードルフィンプロフィアFR系冷凍車にひかれました。
( →  東京都多摩市で少女が大型トラックに轢かれ

 メーカーサイト で写真を得ることができる。


img_fs.jpg


 助手席の足元に、小窓がある。ここから歩行者を見ることができるのだが、記事にあるように、「助手席側のアンダーウインドー(足もとの小窓)が、置かれたマットで4年前からふさがれていた」ということだ。つまり、わざと見えなくしていた。
 ここでは、安全性をつぶしてしまっている。比喩的に言えば、「安全装置の自動ブレーキ機能を勝手に OFF にする」というようなものだ。これは悪質である。この悪質さが、事故の原因だ。
 
 ──

 朝日の記事では、「歩車分離方式」を唱えている。しかし、それは、大きな交差点や、特別に危険な交差点にしか、適用できない。全国の大部分の交差点には適用できない。
 一方で、今回の事故の真の原因は、「助手席の小窓を見えなくするような、勝手な改造」が原因だ。こういうことをやっていたら、(歩車分離方式でない)大部分の交差点では危険が放置される。とすれば、朝日の提案では、大部分の危険性がないがしろにされる。
 朝日の記事は、事故の真の原因を見失っているので、正しい対策にはなっていないのだ。(それはそれで有効な対策ではあるが、今回のような事故を一般的に防ぐためには有益ではない。あくまで「この場所では有効だ」というだけの、限定的な方法だ。)

 ──

 では、どうすればいいか? 
 実は、上の産経の記事を見る前に、私はこう思った。
 「左折のときには、トラックからは歩行者が見えにくいはずだ。トラックには、助手席の小窓があるのだろうか?」
 そう思ったので、街中を通りながら、ダンプの助手席を見回した。すると、たいていの大型トラックには助手席側に小窓があった。(上の画像よりも、もっと大きめの小窓のことが多い。たとえば、これ。)
 「これなら大丈夫」
 と思った。だが、トラックをいくつか見ていくうちに、問題点を見つけた。助手席にいろいろと荷物を積み込んでいるせいで、この小窓の視界がふさがれてしまうのだ。
 これでは、上の事故を起こした運転手の場合と同様であって、危険極まりない。こういうことが放置されている、という現状がある。

 とすれば、有効な対策は、こうだ。
 「大型トラックには、助手席の小窓の設置を義務づける」
 「運転手には、助手席の小窓をふさがないように義務づける。必ず視界を確保することとする。違反した場合には、交通違反切符を切る」

 現状では、たぶん、こういう交通法規はないのだろう。だから、こういう交通法規を新設するべきだ。
 そして、そのことが、この事故死した少女への供養となるはずだ。

( ※ 助手席に人が着席すると、小窓の視界はふさがれる。だが、この点は問題ない。助手席に人がいれば、その人が左側の路上を見ているからだ。いざとなったら、助手席の人が運転手に警告する。)




 [ 付記 ]
 ちなみに、この運転手の罰は、こうだ。
 判決は「対人賠償無制限の保険に加入している」などとして禁錮2年、執行猶予5年だった。(産経)

 「禁錮2年執行猶予5年」というと、実質的には無罪も同然である。自分の悪質さのせいで子供の命を奪っておきながら、無罪も同然だ。今の裁判はどうなっているんだ? 
 
 また、「対人賠償無制限の保険に加入している」ということが軽い罰の理由となっているが、保険に加入していることがどうして軽い罰の理由となるのか? 禁錮3年が禁錮2年に減じられる、ということぐらいなら、まだわかる。しかし、「執行猶予」というのは、無罪も同然であり、あまりにも軽すぎる。自分の故意で危険な措置をしていながら、この判決だ。これでは、「未必の故意による殺人罪は、罰しない」といっているのも同然だ。呆れる。

 この判決は、「助手席の小窓をふさぐ」ということが、どれほど危険なことであるか、まったく理解していない。そして、そのことは、警察も同様だし、朝日新聞も同様だ。
 人々は誰もが、安全意識に鈍感すぎる。だからこそ、私が指摘するわけだ。


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jiko131.jpg

posted by 管理人 at 20:20 | Comment(14) | 安全・事故 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
いや、この小窓の視野ってものすごく狭いでしょ。
まだサイドミラーのほうがマシなレベル。
サイドミラーで不足だというならサイドにカメラつけてその画像を運転席で確認できるようにすべき。
(この手の大型車はバック時に後ろを確認するためのカメラはすでについてるはず。バスなんかでよく見る)
Posted by のぐー at 2017年02月23日 18:22
↑ 視野が狭くても、自動車は移動しているので、移動しながら見れば、左側の角地にいる歩行者はほとんどすべて視野に入ります。いっぺんに全部ではなく、(移動しながら)少しずつ全部。

 というか、左折する先の一部だけ見えるのでも十分なんですけどね。

 サイドミラーは、左前方は映しません。左後方でしょう。後輪の巻き込み防止。前輪は関係ない。
Posted by 管理人 at 2017年02月23日 18:49
管理人さん
>サイドミラーは、左前方は映しません。左後方でしょう。後輪の巻き込み防止。前輪は関係ない。
サイドアンダーミラーを知らないんだ〜〜〜〜
のぐーさんはこれをいっているのではないかなとどら猫は愚考するんだな
このミラーはトラック・バス等に設置が義務化されているので、小型トラックを運転した人なら知ってるアイテムなんだなこれが。。。
Posted by どら猫 at 2017年02月23日 20:38
> サイドアンダーミラーを知らないんだ

知ってるけど、これは対象外だから、いちいち書かなかった。まともに読めば対象外だとわかるから、変にうるさい人以外は突っ込まないと思った。

サイドアンダーミラーは、前方にいる横断歩道の人が対象ではなくて、すぐ隣を走る原付や自転車や幼児が対象です。話が別。
Posted by 管理人 at 2017年02月23日 20:56
>知ってるけど、これは対象外だから、いちいち書かなかった。
知ってたら のぐー さんへのレスポンスで
>サイドミラーは、左前方は映しません。左後方でしょう。後輪の巻き込み防止。前輪は関係ない。
なんて『絶対』に書かないような気がするけどね、どら猫は、、
なあいいか、管理人さんがそうゆうならそれで・・・終わろっと
Posted by どら猫 at 2017年02月23日 21:16
 サイドミラーやサイドアンダーミラーは、後輪への巻き込み防止ですよ。仮に前輪だとしたら、前輪が前進するのではなくて、真横に進むことになる。それはありえない。
Posted by 管理人 at 2017年02月23日 21:42
>サイドミラーやサイドアンダーミラーは、後輪への巻き込み防止ですよ
だからわかっていないな〜〜〜
サイドアンダーミラーで判ると思ったんだがな。トラックの左側”ミラーセット”の内容をよく確認することをお勧めするよ
めんどくさいから通常纏めてサイドミラーと言っているけど、実際には複数のミラーの組み合わせだからこれ・・・
車体前方を確認する機能を受け持つミラーはどれかな〜〜。これが無いと、形式認定通らないんで販売できないんですよ〜〜〜
Posted by どら猫 at 2017年02月23日 21:58
誤解の無いように書くけど、管理人さんの
>「大型トラックには、助手席の小窓の設置を義務づける」
>「運転手には、助手席の小窓をふさがないように義務づける。必ず視界を確保することとする。違反した場合には、交通違反切符を切る」
の有効性を疑問視しているわけでは無いからね〜
Posted by どら猫 at 2017年02月23日 22:01
> 車体前方を確認する機能を受け持つミラー

それはそれなりに有効なこともあるけど、左折するときには関係ない。

なお、複数のミラーは、上のトラック画像にもあります。左右にいっぱいくっついているね。
このくらいはもともと知っているし、コメントを書くときにも留意しました。その上で「言及しない」と決めました。
Posted by 管理人 at 2017年02月23日 22:32
>左折するときには関係ない。
はぁ〜
このミラーセットの装着が義務化された背景なんだと思う・・・
左折時の事故多発に対してなんだけどね・・・
だめだこりゃ
Posted by どら猫 at 2017年02月23日 22:39
↑ 誤読しないで。

> 左折するときには関係ない。

は、ミラーセット(左方)の話じゃない。

> 車体前方を確認する機能を受け持つミラー

の話だよ。つまり、バンパー付近の死角を見るミラー。

http://j.mp/2kQf0Uu
Posted by 管理人 at 2017年02月23日 23:19
人を小ばかにするような言い回しは読んでて不快ですね。
Posted by q at 2017年02月25日 04:52
↑ 私が批判したのは、裁判所、警察、朝日新聞ですよね? 
 あなたの言っているのは、裁判所、警察、朝日新聞のミスを批判してはいけない、ということ? 
 批判を自分のこととして受け止めるというのは、あなたが、裁判所、警察、朝日新聞の人だということ? 
Posted by 管理人 at 2017年02月25日 06:18
どら猫 さんのコメントを読んだ印象を書いたのですが、誤解をあたえてしまったようです。
Posted by q at 2017年02月25日 06:33
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