2017年02月19日

◆ ロボットは雇用を奪うか?

 「ロボットは雇用を奪う」という話がある。ビル・ゲイツは「ロボットに課税するべきだ」とも言った。妥当か?
 
 ──

 「ロボットは雇用を奪う」という話がある。
  → ロボットやAIに人間の仕事が奪われる【テクノ失業の恐怖】
  → ロボットやAIが人の仕事・雇用を奪う日が近いらしい
  → ロボットが人間の仕事を奪うことを示唆する3つの研究結果
  → Oxford 大学が認定 10年で「消える職業」「なくなる仕事」
  → ロボットは人間の仕事を奪う夢をみるのだろうか?
  → ロボットが雇用奪う?「自分の職は大丈夫」8割
  → 未来の仕事はロボットが奪う?グーグルCEOの意見と考えるべき事
  → 人間の仕事を奪う事態は起こりそうにないとするOECDの調査結果
  → 米自動化団体「ロボットが雇用を奪うという考えは、誤解」
  → ロボットは人間の仕事を奪うだけでなく、生み出していくもの
  → 「ロボットの売上が上昇している時、失業率は低下している」
  → 人工知能に仕事を奪われた人類には、4種類の仕事が残される

 AI が雇用を奪う、という話もある。
  → 人工知能は仕事を奪うのか?
  → 人工知能が雇用を奪うテクノ失業について
  → AIが職場を奪う 雇用240万人減、GDP50兆円増 平成42年試算
  → 機械・人工知能・AIが奪う、なくなる職業・仕事のランキング
  → AIに仕事を奪われる職業と奪われにくい職業を10個ずつ見れば
  → AIが奪う仕事に未来の芽
  → グーグルCEO「20年後、現在の仕事のほとんどが機械で代行される」


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 一方で、これを心配するビル・ゲイツが、「ロボットに課税せよ」と言い出した。
 《 ビル・ゲイツ氏、「働くロボットへの課税で人間を守るべき」 》
同氏は、ロボットは将来、例えば倉庫作業や運転などの人間の仕事を確実に奪うことになるが、その置き換え速度を抑制するためにもロボット課税は有効だと語った。
 現在働いて税金を支払っている人間がロボットに置き換えられた場合、ロボットに同等の税金を課すべきだという。
 その税金で、人間の方がロボットより適している新たな職を作れると同氏は言う。高齢者支援や教育関連などの、共感や理解の能力を必要とする仕事はまだまだ人間を必要とすると同氏は考える。
( → ITmedia NEWS

 たとえば、今は人間が部品の選別をしているとする。その作業を人間がやっていれば、人間への給料に「所得税・住民税」がかかるし、社会保険料の企業負担分という「実質的な税」もかかる。
 一方、これをロボットに置き換えれば、上記の税金がすべてかからなくなる。(設備投資はコストとなって非課税なので。)……これは不公平だろう。この方針が進めば、税収は大幅に減少するからだ。

 この意味で、ビル・ゲイツの案は、それなりに妥当性がある。

 ──

 とはいえ、話を戻すと、「ロボットが雇用を奪う」というのは、(個別の産業では成立しても)国全体では成立しそうにない。なぜか? こう言えるからだ。
 「ロボットが雇用を奪っても、国全体の生産量が変わらないのであれば、国全体では貧しくならない。むしろ、遊んでも所得が得られる、という理想状態に近づく」


 つまり、国全体で見れば、所得の量が変わらないのだから、「ロボットが採用された分、人間が失業する」のではなくて、「ロボットが採用された分、人間は遊んで所得を得られる」ことになるわけだ。めでたし、めでたし。

 ただし、実際には、そうは事が運ばない。むしろ、こうなる。
 「ロボットが増えたことで儲かるのは、資本家だけ。労働者は失業して、所得をなくす」


 だとすれば、次のようにすればいい。
 「資本家の富を奪って、労働者に(失業手当みたいな形で)配分する。こうすれば、労働者は、遊んで所得を得る、という形に近づく」

 要するに、「富の再分配」をすればいいのだ。
 これが正解だ。これが実現すれば、「ロボットのせいで雇用が奪われる」のではなく、「ロボットのおかげで、遊んで暮らせる」という社会に近づく。

 とはいえ、現実には、そううまくは行かない。たとえば、アメリカでは、「金持ち減税」で「貧富の格差を拡大する」というトランプや共和党が政府を牛耳っている。「貧富の格差をなくす」どころか、その逆だ。
 
 ──

 「貧富の格差をなくすことが大事だ」というのは、ピケティの言ったことだ。これを理解して、ここを是正すれば、人類の未来は明るい。逆に、これを理解せず、ここを是正しなければ、人類の未来は暗い。
 そして、現実には、人類の未来は暗くなりそうだ。ただしそれは、ロボットが増えていくせいではない。人類が「貧富の差の拡大」という問題を解決できないからだ。
 馬鹿と挟みは使いよう。ロボットも同様だ。うまく使えば、人類の役に立つのだが、下手に使えば、失業者を増やすだけとなる。
 そして、その責任は、ロボットにあるのではなく、人類にある。人類の愚かさが、ロボットをうまく使いこなせない結果に導くのだ。
( ※ アメリカにおける拳銃みたいなものだ。うまく使えば役立つが、下手に使えば自分を傷つけるだけだ。)



 [ 付記1 ]
 ゲイツの案は、突拍子もないように思えるかもしれないが、そうでもない。似た例はある。それは、「自動車税」だ。
 自動車(だけ)は、設備みたいな必要経費であっても、自動車税がかかる。軽油税やガソリン税もかかる。こういう形で、社会的に負担をしている。
 とすれば、ロボット税というのも、あってもおかしくはない。
 とはいえ、「人型ロボットに限る」というわけにも行かないだろうから、「あらゆる(自動化の)機械設備にまんべんなく課税する」という形になりそうだが。
 となると、コンピュータにも課税されそうですね。

 [ 付記2 ]
 「ロボット税をかけない国に会社が集中してしまう」
 という問題が指摘されている。これに、うまい解決策はあるか? ある。
 次の方式を提案しよう。二本立てだ。
  ・ 製造のロボットには課税しない。
  ・ 物流・販売のロボットには課税する。

 前者のロボットは、製造機械の一種と見なす。実際、区別しがたい中間的なものも多いはずだ。(溶接ロボットとか、ネジ締めロボットとか。)
 後者のロボットは、人間の労役の代替と見なす。たとえば、スーパーのセルフレジ装置とか。これがあると、パートのレジ係が削減される。そういう意味で、単純労働者たる販売員の削減をもたらすものなので、課税する。

 以上の二本立てなら、対象は国内における販売・流通だけだから、国内製に比べて外国製の製品が有利になるということもない。(製造は内外ともに非課税。販売は内外ともに課税。)したがって、会社が外国に流出するという問題も発生しない。(流出してもしなくても、税額は同じだから。)

 [ 付記3 ]
 販売・流通以外のサービス業(のロボット)はどうかというと、これはすべて「課税」とする。
 たとえば、料理。料理は製品のように見えるかもしれない。だが、生ものであり、日持ちしないので、海外の輸入品と競合することもない。ゆえに、これは「工業製品ではない」と見なして、「課税」とする。
 一方、日持ちする菓子類は、輸入品と競合するので、「工業製品」と見なして、「非課税」とする。
(例。日持ちする冷凍アイスクリームの大量製造は第二次産業。すぐに溶けるソフトクリームの製造は第三次産業。)

 ついでだが、労働人口比率は、販売・流通などの第三次産業が7割弱である。
 第1次産業は315万人(15歳以上就業者数の 5.1%),第2次産業は1592万人(同 25.9%),第3次産業は4138万人(同 67.3%)となっている。
( → 統計局ホームページ/III 変化する産業・職業構造



 【 関連項目 】
 本項とよく似た趣旨の話は、前にも述べた。そちらを参照。
  → AI とディープラーニング 4
 この項目の最後のあたり(6)で、「遊んで暮らす」というような話が書いてあります。

 ──

 ちょっとだけ関連する話(余談ふう)もあります。
  → 家事をする女性ロボット


GAKKAISHI.jpg

出典

posted by 管理人 at 12:02| Comment(8) | コンピュータ_04 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
40年以上前の近未来小説だか手塚漫画でそういった話を読んだ記憶があります。それが何だったか未だ思い出せないままなんですが。

高度に自動化された未来において、多くの市民は働くことなく(職がなく)国家からの給付で豊かに暮らす一方、特定の選ばれた市民のみが労働することを許される、そんな社会を描いたものだったかと。

失業率の上昇による生活保護受給世帯の増加と、自動化の進展による不労所得世帯の増加は裏表です。勤労意欲の充足、生活の質如何でどちらにも転じてしまうかと。均衡点はみつかるものでしょうか。
Posted by 作業員 at 2017年02月19日 13:59
労働者は働かなくても遊んで暮らせる。
→働くと損。
→ロボットをメンテする労働者がいなくなる。
→ロボットが働かなくなる。
→ロボットが付加価値を生み出さなくなる。
→国全体の生産量が落ちる。
→それでも遊んで暮らす労働者に報酬を払う。
→国が財政破綻する。
ロボットが生み出す富を国民に平等に配分するシステムのは、共産主義と同じと思えます。
Posted by 滋賀の車オタク at 2017年02月19日 19:41
> ロボットが生み出す富を国民に平等に配分するシステム

 平等とは誰も言っていませんよ。貧富の格差を縮小する、と言っているだけで。
 100%と0%の間には、中間値があります。お忘れなく。
Posted by 管理人 at 2017年02月19日 19:46
 「AI が雇用を奪う、という話もある。」
 という箇所のリンク集を、加筆しました。
 タイムスタンプは 下記 ↓
Posted by 管理人 at 2017年02月19日 19:47
 最後に [ 付記2 ] を加筆しました。
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Posted by 管理人 at 2017年02月19日 20:03
 最後に [ 付記3 ] を加筆しました。
 タイムスタンプは 下記 ↓
Posted by 管理人 at 2017年02月19日 22:20
ベーシックインカムを導入するための下地ができてきたのかな、という感想をもちました。
Posted by 北海道の人 at 2017年02月20日 12:30
ロボットがやっている職種事態が減少し、ロボットを使う職種の労務費が発生するということですよね。
ロボットを使う職種に適した教育環境整備が必要だということですね。
大学もアメリカのように3年制の実務教育に特化したカレッジを増やすべきでは。
Posted by 35何前は現役 at 2017年02月26日 02:54
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