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活断層の上に家を建てて住めば、次の大地震が来たときに大被害が予想される。だからあえて危険を招いて人を死なせるために、(宅地復旧の費用を)税金で全額まかなおう……という政策だ。
これは、政府と自治体が実行しつつある政策だ。(私が推奨しているのではない。お間違えなく。)
朝日の記事から引用しよう。
熊本地震で被害を受けた宅地を復旧する際に、熊本県益城(ましき)町は、一定の条件を満たせば住民負担をゼロにする方針を固めた。国の補助に町費を上乗せして全額を公費で賄い、生活再建を後押しする。
大規模な造成地で、住宅2戸以上が関わる2メートル以上の擁壁が崩落した場合、宅地の復旧は国の補助対象となる。町は町費を上乗せして住民負担をなくす。また、高さ3メートル以上のがけ地の上にある宅地の復旧も国の補助対象で、町は対象となる約30カ所(戸数は未確認)の住民負担をゼロにする。液状化被害についても、町は来年度から調査を始め、被害が明らかになれば復旧を全額公費で賄う方針も固めた。
( → 益城の宅地復旧、住民負担ゼロへ :朝日新聞 2017-02-12 )
対象は次の三つ。
・ 擁壁が崩落した
・ がけ地の上
・ 液状化被害のある場所
よりによって、特別に危険な場所に住むようにさせよう、と狙って、そのためにに多額の税金を投入しよう、というわけだ。一種の殺人政策ですね。
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さて。益城町というのは、もともと活断層の上で、熊本地震では大被害が出た場所だ。
こんなところにはもともと住むべきではないし、近くに空地となっている田畑は膨大にあるのだから、活断層の上ではないところに引っ越すべきだ。そこなら活断層の上よりはずっと安全なのだから。……というのが、私の提案だった。
→ 地震の被災地から脱出するべきか?
この意見では「居住禁止」という言葉を使った。ここでは、単に「禁止する」というだけでなく、「禁止の代償として、新たな住居を無償または安価で提供する」という意味を含めていた。(一種の土地交換みたいなものだ。)
ところが、この意見に対して、「居住禁止」という言葉が気に障ったらしく、「居住禁止なんてとんでもない!」という反対意見がたくさん来た。
まあ、そういう気持ちはわからなくもない。だが、そういう意見に従ったせいで、結局は、冒頭のようになってしまった。つまり、特別危険な地域に住むように推奨するために、税金で全額負担する、という政策だ。
冒頭の報道を見ると、「爆弾か地雷原に住むようにさせるために税金を投入する」というようなものだから、「狂気の沙汰だ」と思うのが普通だろう。
しかしながら現実には、「いくら危険な地雷原であっても、長年住み慣れた土地の上に住みたいんだ」と思う人が多い。
ま、そう思う人は、それでいいのかもしれない。彼の生きている間には、ふたたび地震が来ることはないだろう。しかし、災害は忘れたころにやって来る。彼の孫が高齢者になったころ、その孫は、地震のせいで死ぬかもしれない。
「何で死ぬのかな? ああ、そうだ。爺さんがこの土地にこだわったから、三代続けてこの土地に住んでいるんだ。それで自分は死ぬんだな……」
と思いながら、絶命する。それが、三代後の孫の運命だ。
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トランプが狂人みたいな政策を実行していると、米国民を心配するのもいいが、日本人の狂気の政策こそ、心配した方がいい。私以外の誰も心配していないという、日本人の頭の構造こそ心配だ。
[ 付記1 ]
「居住禁止」に関して、前と同じ反論が来そうなので、あらかじめ注記しておく。本項は、
「日本中のすべての場所で、活断層の上では居住禁止にする。」
という趣旨ではない。
「すでに建物が倒壊しており、建物の再建が必要な場所」
という限定だ。つまり、益城町(≒ 熊本地震の被災地)だけだ。現状では居住困難な家が多いから、どうせなら引っ越してしまえ、というわけだ。
他の地域では、建物は倒壊していないのだから、再建の必要はないし、移転の必要もない。だから現在地を居住禁止にする必要もない。
両者の違いを理解してほしい。話を混同する人が多いので、注記しておく。
[ 付記2 ]
本件は「宅地の復旧」の費用。
一方、「建物の再建」のためには、別途、地震の被害者補償として大金が支出される。全壊と半壊とで、補償額は異なるが、これは被害者補償の一環として、場所にかかわりなく金が出る。
ひるがえって、今回の「宅地の復旧」では、危険な場所に限って、税金が支出される。
【 関連項目 】
熊本地震のときに書いた記事。居住禁止の話題。
→ 地震の被災地から脱出するべきか? (上記)
→ 瓦の住宅を居住禁止にせよ
芥川龍之介の『鼻』ではないですが、世間の人は「不幸や苦難に立ち向かう人」が好きで、「そこから逃れる人」は大嫌いです。あたかも「敵前逃亡」のように感じるのでしょう。だから震災いじめというか「(事実とは異なる)補償金とかで焼け太りやがって」と叩くのでしょう。もしかしたら益城町の人達にもそういうのがあるのかなと。「戦って得るものある」とか「試練になる」というものでは無いので、回避できるのであればそれに越したことはないとも思えるのですが。
新潟の大火で一軒だけ焼け残った家があります。中越地震とかがあったので通常の1.5倍程度の金をかけて地震に強い家にしたら、火災にも強くなったらしいです。本来なら「耐震・耐火の費用対効果」について考えるのでしょうが、その家の持ち主が「皆が不幸な中一軒だけ」みたいな形で叩かれるのではないか心配です。
昔の人は経験で土地を選んだ
今では他の土地の不動産業者がやってきて
安全よりも金をとる
どうしても、そういう土地に住みたいなら
地形はどうしようもないから
ひっくり返っても壊れない家をつくれよ
ただし、中の人間の命は保証できないけど
(衝撃でF1カーが壊れるのは、人の命を守るため)
金払って他の地域に引っ越しさせよ!!
と言ってた人もいましたね。チラッ
> 金払って他の地域に引っ越しさせよ!!
本項もそうですよ。ただし、危険地域限定。また、被災地(崩壊した地域)限定。