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日産ノート e-Power は、シリーズ方式のハイブリッドだ。これについては、前に言及した。
→ 日産ノートのハイブリッド
その趣旨は、下記。
・ シリーズ方式は、構造がシンプルで、もともと有力だ。
・ ただし効率が低くなるのが難点で、実用化しなかった。
・ 今回は、効率を上げる半導体技術の進歩があったのだろう。
シリーズ方式は、構造がシンプルで、コストも低めになるので、もともと有力だった。ただし、エンジン出力をモーター発電に回して、その電気でさらにモーター駆動をするので、途中で電気を使うことのロスが発生する。そのせいで、効率が悪化する。これでは燃費が悪化してしまう。しかし、半導体技術の進歩で、効率低下を少なくすることができたので、今回は実用化されたのだろう……という趣旨。
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うまいことずくめのようだが、難点もある。市街地走行のときは、上の方式で十分なのだが、高速走行のときには、定速走行となる(回生エネルギーがない)ので、ハイブリッドの効果はない。その一方で、発電の効率でロスが生じるので、高速燃費が悪くなる。これでは、欧州ではまったく受け入れられない。かくて、ノート e-Power は日本専用となり、欧州では販売されない。(販売しても、高速燃費が通常よりも悪いので、売れるわけがない。)
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この問題を解決するには、次のようにすればいい。
「高速走行のときに限り、エンジン直結にして、モーター駆動をしない」
これは「パラレル方式」の一種だ。モーターとエンジンとを切り替えるからだ。ただし、次の点で異なる。
・ 市街地走行では、エンジン直結をしない。
・ 変速機は存在しない。(1段変速である。)
1段変速というのは、変速機がないということだ。変速機のない自転車と同様だ。(ただし、回転数を落とすためのギアだけは存在する。それがあるだけだ。)
変速機(トランスミッション)が存在しなければ、そのためのコストも重量もなくなる。その意味で、とても有利である。
一方で、高速走行のときには、シリーズ方式の難点(効率の低下)はない。問題解決。だから、欧州でも売れる。
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さらに、次の美点もある。
「エンジン出力とモーター出力の双方を併用できる。両者を合わせた出力はとても高くなる」
シリーズ方式では、通常は、駆動用モーターの出力が最大出力だ。また、高速走行時には、エンジンの発電能力(と効率との積)が、最大出力だ。この値は、ノート e-Power では、やや小さめだ。そのせいで、出力不足を感じることがある。
特に、高速走行時に、弱い上り坂を走っていて、追い越し加速をしたいときには、明らかに出力不足となる。「こんなにパワーがないのか」とがっかりした人もいる。
ところが、である。本項で述べた方式なら、高速走行時にはパラレルになる。基本的な出力はエンジン出力となり、それが直結で車輪を動かす。一方、追加的に、モーター駆動も加わる。これがもろに加速力に効く。というわけで、きわめて大きな加速力を出せるわけだ。
( ※ 出力の併用は、高速走行時に限られる。ゼロヨンみたいな低速時には有効ではないので、ゼロヨンで急加速ができるわけではない。)
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というわけで、本項で述べた方式(部分的なパラレル:1段変速のパラレル)は、高速走行のときに「効率アップ」と「出力アップ」という二つの効果があることになる。
あくまで高速走行時に限定した効果なので、市街地走行の多い日本ではあまり有効ではあるまい。一方、欧州や、米国の郊外では、かなり有効となるだろう。
その意味で、国内販売限定の ノート e-Power と違って、上記の方式ならば、世界的に販売することが可能となるだろう。しかも、コストアップは、あまり多額にならない。(変速機がないからだ。)
この方式が、次のハイブリッドとして有力だ、と思う。
[ 付記 ]
この方式は、とりあえず私が考えたが、独創的ではないし、当り前なので、とっくに業界で考察済みだろう。そのうち日産から発売されそうだ。
本項は、提案というよりは、将来についての予想だ。
【 追記 】
ついでだが、新型のトヨタ・カムリのエンジンは、熱効率が 40% もあるそうだ。(ハイブリッドの方は 41% )
→ トヨタ、熱効率40%以上を達成した新2.5リッターエンジン
この熱効率は、ディーゼル(37〜40%)と同程度だ。圧倒的な数値とも言える。
ハイブリッド車の効率の高さは、独自のエンジンを使っていることも大きな影響があったが、それと同様の効果があることになる。
ここまで熱効率が高いエンジンを使うようになると、ハイブリッドとの差は、減速時のエネルギー回収の有無ぐらいしかない。こうなると、ハイブリッド車の高コスト(車両価格の高さ)を、ガソリン代で回収することも難しくなりそうだ。
トヨタのこのエンジンは、相当にすごいね。(提携したマツダの Skyactive を流用したのだろう、とも思えるが。)
あと、ガソリンエンジンでディーゼル並みの熱効率を実現したとなると、もはやディーゼルの出番はなくなるかも。
トヨタの上記エンジンは、ターボを使っていないので、今後、ダウンサイジング・ターボを使うと、さらに熱効率が上昇しそうだ。こうなると、ハイブリッド車よりも有利になるかもしれない。(市街地はともかく、高速道路で。)
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蛇足だが、トヨタはディーゼルエンジンで 44%という高い熱効率を達成した。
→ トヨタ、最大熱効率44%の新型2.8リッター直噴ターボディーゼル
これを 2016年中に量産する、と上記記事には書いてある。しかし、2017年現在、量産はされていない。いまだに実験室レベルだそうだ。
→ 熱効率44%台を実証(2016年10月4日)
【 補正 】
本項で提案した方式は、アコード・ハイブリッドと、アウトランダーPHEV で、すでに実現済みだ、という指摘がコメント欄であった。
調べたが、その通りであるようだ。詳細は調べていないので、どこかで小さな異同があるのかもしれないが。
> 圧縮比を12.0と高く設定したミラーサイクルを採用
http://www.excite.co.jp/News/car/20161205/Clicccar_422260.html
あと、気筒休止システムは、シリーズ方式では意味がないです。なぜなら、時間分割で、気筒のすべてを完全に止めている時間帯が多いからです。部分的な(半分ずつの)気筒休止システムよりも、はるかに効果が大きいでしょう。
トヨタの高効率な新エンジンの話。
トヨタの高効率なディーゼル・エンジンの話。
国産EVのゼロ発進時の蹴り出しは強烈ですが、中高速域ではご指摘の通り頭打ちになります。その速度域ではトランスミッションによる減速が不要になるので、エンジンのトルクを足してやるといいかもしれません。これってアコードの設定ですね(笑)
始めに三菱アウトランダー
次にホンダアコード
まあ普通にトヨタのTHS-Uがそれらより上だと
は思いますけどね。
自由度が手に入るのに、また出力軸と駆動軸を繋ぐのか〜〜
しかも『直結』???
高速走行の100〜140km前後の速度域変化に対してエンジン回転・負荷が
リニアに変化するってこと?
せっかく一番効率の良い回転数・負荷領域のみ使うことで燃費を稼いで
いるのにそれってどうなのかな〜〜
どちらも熱効率が低いんです。ガスタービンは、廃熱を別に利用した場合(温水利用など)には総合効率が上がりますが、発電だけでは効率が低い。
> 確かにもう実用化されてますね。
調べたら、その通りですね。
http://www.webcg.net/articles/-/29038?page=2
https://www.neomag.jp/newtopics/index_201401161.php
http://response.jp/article/2013/07/08/201748.html
> トヨタのTHS-Uがそれらより上
THS-Uは、モーター部分を止めることができないので、そこでロスが発生して、高速燃費が落ちます。これが、トヨタ・ハイブリッドが欧州で売れない理由。
> せっかく一番効率の良い回転数・負荷領域のみ使うことで燃費を稼いで
リッターカーなら、時速100km では 2000〜2500rpm ぐらいであり、最も熱効率のいい領域です。
http://greeco-channel.com/car/100kmh_rpm_ranking_kcar_new/
ま、回転数が不満なら、ギアを付ければ、回転数は最適化できる。あとはコストとの関連。
ただ、アコードの場合は、ギアなしでも、とても良い燃費となっているそうだ。(上記リンク。)
http://www.webcg.net/articles/-/29038?page=2
ほら、管理人さん自体が無意識に変速を前提で話をしているよ。
直結で100km/h最適ならば140km/hなら最適範囲から逸脱だよね〜〜
欧州での使用前提なら下手すりゃアウトバーン150km/hは考慮しなきゃだ〜め〜だ〜よ〜
途中で日本の高速道路事情に切り替わったのかな〜〜
それは、リッターカーではしんどいので、エンジンの排気量を上げるべきでしょう。欧州向けには 1.5リッターのエンジンを搭載すればいい。それだけ。
次のハイブリットシステムの話じゃないの???
リッターカー限定の話だったとは知らなかったな〜〜〜
ノート限定ならば、モータ出力UPの一択でしょ
エンジンが太くなれば、出せる速度も上がるよね
200km/hまでならエンジン回転数は倍・半分のレンジだな。やっぱり直結は効率悪すぎ。
あと、アッチの方じゃパンタだってアクセル70%開での連続高速走行ふつうだったよ
ましてや、エンジン太けりゃ150km/hじゃあ済まない
遅閉じミラーサイクルなのでバルブタイミングを変更しただけと考えられます
私が言ってるのは高回転しないのだからあらゆる部品が再設計できるのでは?ということです
潤滑や冷却も最適化できます。DOHCやめてOHVで十分かも
>気筒休止
気筒のすべてを完全に止めている時間帯が多いというのはバッテリー走行だからということでしょうか。それは結局
バッテリーの量に左右されます。高速走行時バッテリー切れで失速も考えられますね。バッテリーは加速時のみに使用しそれ以外はエンジンの発電のみで走行するようになるのではないかと思います。だから低速時高速時で排気量を変える必要があるのではないかと考えました。(今の技術では気筒休止でも空回りしていますから損失が大きいですが)
熱効率40% といっても 回転数によって大きく変動あるのではないでしょうか?
e-Power専用エンジンなら常にその回転数を使えるわけですから
フィットのハイブリッドについては、前に言及した。2013年10月06日の記事だ。
→ http://openblog.seesaa.net/article/435850160.html
ここで言及済みだったのだが、あまりにも複雑だったので、よく理解できないまま、忘れてしまっていた。
どら猫と申します。
>私が言ってるのは高回転しないのだからあらゆる部品が再設計できるのでは?ということです
ですよねぇ〜
構成部品の強度もそうですが、ほかにもちょっと考えただけで、
可変バルタイも不要、サージング対策のピストンの逃げも不要なら燃焼室を最適化
できるし、スワール発生用のスキッシュエリアも最適化できるな〜
後、忘れてはいけないのは低回転側も使用しないので、
バランサーシャフトも不要、当然これの駆動用エネルギーロスも発生しないと。
他にも色々最適化できそうですね
>熱効率40% といっても 回転数によって大きく変動あるのではないでしょうか?
ですよねぇ〜
停止時のアイドリング状態なんて、管理人さんの好きな物理学的に言ってしまえば
仕事をしていな状態ですから、熱効率は0%なんですねぇ〜
低速・低回転時の効率も押してはかるべしかな。
専用エンジンとなると、高い圧縮比にふさわしくて、低速回転専用となるような、ロングストロークエンジンでしょう。そういうのは、まだ見たことがない。ノートでも比率は 1.07 だし。(ちょっとだけロングストローク)
あとで調べたら、カローラの一部が超ロングストローク。
http://autoprove.net/2015/04/58189.html
日産では可変圧縮比エンジンが話題になりました。加給してやれば可変排気量エンジンですね
定回転でいいのでネガティブな要素が無くなり開発しやすいのではないでしょうか
かなり有望に思えてきました(笑)
トヨタやホンダも密かにe-Powerを開発し始めてるんじゃないかなぁ
変速機構がなくなれば大幅なコストダウンですから
→ http://j.mp/2kGJJlX
→ http://j.mp/2kfLfYM
→ http://biz-journal.jp/2014/11/post_7459.html
この問題は、1段変速のアコードでは発生していない。
私が本項で述べたのは、1段変速の方だから、フィットハイブリッドの方式は関係ない。やはり、シリーズ方式を基本として、大型のモーターを使うことが大切だ。