2017年01月31日

◆ 食品廃棄を減らすには

 食品廃棄を減らすにはどうすればいいか? うまい案がある。

 ──

 食品廃棄が問題だ、という朝日の記事がある。

 まだ食べられるのに、捨てられる食べ物。それが食品ロスだ。日本では年間632万トン。国連食糧農業機関によると、世界では生産された食料の3分の1にあたる13億トンが毎年廃棄される一方で、9人に1人が栄養不足に苦しんでいる。

 昨年のクリスマス翌日。サンタクロースとマスカットで飾られたロールケーキが、「グシャッ」と潰され歯車にのみ込まれていく。
 神奈川県相模原市の「日本フードエコロジーセンター」(高橋巧一社長)にはスーパーや食品工場から廃棄食品が持ち込まれる。
 140リットル入りの容器から食べ物が破砕機へ流れ落ちた。色つやのいいリンゴや黄色のパプリカ。容器にぎゅうぎゅうに詰め込まれ、大きな四角い塊になった大量のおにぎり。有名デパートのローストチキンとロブスターも投げ込まれた。
( → フードロスに立ち向かう:朝日新聞 2017-01-31

 クリスマスのケーキが大量に売れ残っているのをどうしているのだろう? ……と疑問に思っていたが、すべて廃棄しているわけだ。実に、もったいない。
 すべて廃棄する、ということは、要するに、値引き販売しないということだ。昔ならば、余ったクリスマスケーキは値引き販売していたものだが、近年はそういうことはなくなった。大量に並べて、大量に廃棄する。そのせいで、コストアップするので、余計に価格が高くなるわけだ。(捨てる分を見込んでいるので。)
 無駄の極み。もったいない。

food_syokuhin_haikibutsu.png

 ──

 では、どうすればいいか? 簡単だ。値引き販売すればいい。そうすれば、安値であっても、とにかく売れる。売れれば、ゴミは出ない。
 だから、「値引き販売すればいい」とわかる。( 売れない物は値下げしろ、という市場原理でもある。)

 こうして、正解はわかる。別に、私が言うまでもなく、誰でもわかる。簡単だ。
 ところが、現実には、それがなされていない。では、どうしてか? ここが問題だ。

 ──

 理由は、二つある。
 
 (1) 値下げすることで、「値下げする」というイメージができるのを嫌う。これには、二つの意味がある。
 一つは、「店が安売り店(ディスカウントストア)だと思われたくない」という、店のブランドイメージ。
 もう一つは、「その商品が安売りされると思われたくない」という、商品のブランドイメージ。
 こういうふうに、店と商品の双方で、(安売りしないという)ブランドイメージを維持したがる。だから、値下げしない。(たとえ損をしても。)

 (2) 損をした分は、損金処理ができるので、あまり損をしたことにならない。赤字の分は、経費として処理できる。赤字の分を、いくらか回収できる。定価 1000円のものを 300円で売っても、廃棄しても、1000円に比べれば、大差がない。だったら、廃棄したあとで、損金処理してしまえ……というわけだ。
 これはつまり、経費の処理が「食品ロスに有利である」「食品ロスを優遇する」というふうになっているわけだ。

 ──

 とすれば、対策は簡単だ。こうだ。
 「食品廃棄をした分については、損金処理を制限する。現状では、損した分を 100% まるまる控除できるようになっているが、これを 90% ぐらいまでに制限する」
 「食品を廃棄すると、廃棄コストについても、100% まるまる控除できるようになっているが、これを 80% ぐらいまでに制限する」


 換言すれば、こうだ。
 「食品廃棄については、商品の価格について 10%の課税」
 「食品廃棄については、廃棄コストについて 20%の課税」

 このようになると、食品廃棄は圧倒的に高コストになるので、店は食品廃棄をしたがらなくなる。結果的に、次のようになる。
  ・ 値引き販売が増える。稀には 70〜90%の値引きも起こる。
  ・ 商品の品切れが増える。(見込みで用意する量が減るから。)


 どちらかと言えば、後者が重要だ。現状では、現実の需要よりも、はるかに多い量が店頭に出る。クリスマスケーキが典型だ。結果的に、大量に余りが出る。それが、廃棄される。
 一方、上記提案のように「食品廃棄に課税される」というふうになれば、廃棄を減らすために、店頭に並べられる商品が減る。そのせいで、一部の商品では品切れが生じるだろう。特にに、予想以上の人気商品では、品切れが起こるはずだ。
 このような「品切れ」は、「販売機会の喪失」ということで、店の経営者はひどくいやがることが多い。しかし、「品切れ」というのは、起こるのが当然なのだ。そうわきまえた方がいい。

 市場経済では、人気商品や不人気商品が出るのは当然だ。そのあと、需給に応じて、値上げや値下げをするのが当然だ。
 ところが、現実の店は、値上げや値下げを極端にいやがる。あくまでも価格を維持したがる。そのせいで、品切れは食品廃棄が起こるのだ。……ここに根源がある、と理解しよう。

 ──

 ついでだが、「需給に応じて、値上げや値下げをする」というのを実行している店がある。それは、ホテルの「アパホテル」だ。需給に応じて、価格を柔軟に上げ下げする。客が多い金曜・土曜の価格は高く、客の少ない平日は価格が安い。こういうふうに需給に応じて価格を変動させる。
 これだけだったら、「損得なしで、たいして儲からない」と思えるだろう。ところが、現実には、ボロ儲けだ。アパホテルは、「売上高利益率が 30%」という、滅茶苦茶に高い利益率を誇っている。これほど高い利益率を誇る会社は、滅多にない。(アップルぐらいだろう。)
 ではなぜ、アパホテルは、それほどにも儲かるのか? 価格をうまく変動させるからか? 金曜・土曜に大幅に価格を上げて暴利を取るからか? 違う。アパホテルが儲かるのは、金曜・土曜に大幅に価格を上げたからではなく、平日に価格を下げたからだ。このことで、部屋が空室になることがなくなり、稼働率が大幅に上昇したからだ。
 通常のホテルは、平日には空室になっている部屋がいっぱいある。一方、アパホテルは、平日には値下げするので、空室がほとんどない。空室では売上げがゼロだが、値下げすれば売上げはちゃんと出る。
 こうして、「値下げしてボロ儲けする」という商法が成立するわけだ。

 ──

 スーパーも同様である。
 クリスマスケーキを廃棄すれば、ホテルが空室になるのと同様で、その分の売上げがゼロとなる。
 クリスマスケーキを値引きすれば、ホテルを値下げするのと同様で、その分の売上げが発生する。
 クリスマスケーキの発注量を減らせば、ホテルの部屋数を減らすのと同様で、空室の発生そのものを抑止できる。

 いずれにせよ、アパホテルと同じ商法を取れば、食品廃棄は減るし、店の利益率は大幅に上昇する。
 なのに、そういうことができないでいるから、日本のスーパーは、やたらと食品廃棄をしながら、ひどく低い利益率に苦しんでいるのである。
 ここには、経営の愚かさがある。ここを理解することが大切だ。朝日の記事みたいに、「エコのために食品廃棄を減らしましょう」なんて言っているようでは方向違いとなる。「自社の利益率を上げるために食品廃棄を減らしましょう」というふうにするべきなのだ。
 そして、新聞は「現状ではいかに無駄なことをしているか」という真実を示すべきなのだ。
 愚かな妄想で無駄をしている経営者に、真実を教えて上げること。それこそが、マスコミのやるべきことだ。

( ※ 一方、「エコのキャンペーンをしましょう」なんていう朝日の発想は、「自己流の発想に洗脳しよう」というのも同然だ。それは「虚偽を信じる経営者に、別の虚偽を信じさせる」というだけのことだ。それほとんど新興宗教の勧誘に近い。これでは根本的に狂っていると言える。)



 [ 付記 ]
 損金参入率を 100% から 80〜90% に引き下げる……というふうに述べたが、これはもっと大幅に引き下げて、50%ぐらいにしてもいいだろう。
 「そんなのは会計的におかしい!」 
 という理屈も出そうだが、そんなことはない。そもそも、経費というのは、「売上げを得るためにかかった経費」だ。食品廃棄については、売上げがゼロなのだから、その分については、経費を認める必要はない。
 現状ではすべての商品をひっくるめて経費を認めているが、
  ・ 売上げのある分
  ・ 売上げのない分(廃棄した分)
 に分けて考えれば、前者については経費を認めていいが、後者については経費を認める必要はない。
 こういうふうに分離することで、無駄な事業に対する優遇措置を排除できるのだ。
( ※ 現状では、無駄な事業に対する優遇措置があることになる。他事業における税の減免という形で。)



 【 関連項目 】

 食品廃棄については、前にも何度か論じた。
 下記は、本項と同趣旨の話。
  → ゴミ促進税制をやめよ

 他に、返品期間の問題について論じた。(生ものでなく日持ちする商品について。)
  → 食品廃棄の無駄
  → 食品廃棄物と返品
  → 食品廃棄でコストアップ

 その他、関連する話題。
  → コンビニの食品廃棄
  → レジ袋有料化と食品廃棄

posted by 管理人 at 22:39| Comment(7) | エネルギー・環境2 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
野放図な食品生産と廃棄を規制するため、フランスでは”食品廃棄禁止法””が2016年に成立しました。賞味期限切れなどで販売できなくなった食品の寄付を義務付け、罰金制度の制定と、法規制による食品廃棄の低減を目指しているようです。
食品廃棄に対する課税も同じ主旨かと思います。フランスで食品廃棄量がどう変化したか、先行例として興味のある処です。

恵方巻は去年も値引き販売を見かけましたが、確かにクリスマスケーキの値引き販売はあまり見かけません。値引き販売に抵抗のないスーパーと、日常的に売れ残り商品を処分していて廃棄を当然と認識している洋菓子店の違いによるものでしょうか。

生産量をコントロールするため、両者とも予約販売も行っているようですが、それでも供給過剰に陥るのが常です。予約販売による需要の予測が全くできていないように見受けられます。

食品廃棄に対する規制は、単に廃棄量の低減だけでなく、バイトへの販売ノルマ、自腹購入といった悪弊、本部の支店やフランチャイズ店への過剰量の仕入れの押し付けを絶つことにも効果的ではないでしょうか。

少なくとも、大手流通の経営側は、”廃棄するぐらい商品を並べなければ”という意識が根強くありますから...
Posted by 作業員 at 2017年02月01日 01:31
 「アパホテル」以外のたくさんのホテルが、休前日を大幅に高くして、平日の価格を大幅に値下げしてきたら、金〜日だけ営業するホテルが増えてくるでしよう。
 ホテルを使う方も、可能なら金曜泊や土曜泊をやめて、日曜泊〜木曜泊に変えていくでしょう。
 そうして、かなりの価格差がある状態で、需要と供給のアンバランスは有る程度解消されるでしょう。

 食品廃棄に関する損金処理を1割りか2割り減らしても大きな効果がないように思います。
 その程度では値引き販売が大きく広がるとは思えません。
 1割引きや2割り引きの販売では購買意欲を喚起するには不十分と思います。5割引きだと効果は大きいと思います。
 店側に半額にしても廃棄せずに売りたいと思わせるためには、どの程度の損金処理を認めたらいいのでしょう。(私にはわかりかねます。)

商品が売れなかった場合の税制での損金扱いや経費扱いを完全にやめたら、廃棄すると丸損になり、9割引してでも売った方がましなので、廃棄は激減するでしょう。
 
 しかし、消費期限の擬装(ごまかし)も多く生じそうです。擬装への対策も必要になるかと思います。
 
Posted by ishi at 2017年02月01日 09:02
アパホテルが、平日料金を安くしているとは知らなかった。
Posted by senjyu at 2017年02月01日 09:59
ケーキ屋さんの主な原価項目は、
a)原材料費
b)人件費
c)流通費
d)減価償却(リース・レンタル)費
e)広告宣伝費
 ・・・
x)廃棄費用(外注費)
といったところかと。
このx)が全体の原価に占める比率はごく僅かの筈で、この損金算入を1割や2割、あるいは5割否認したところで、
大した影響はないと思いますが・・・
Posted by 市井の人 at 2017年02月01日 11:11
値下げしない理由で忘れてはいけない点で,
売上げの大部分が予約販売である,
上代と下代の差益,

というあたりにヒントがありそうです。
Posted by 先生 at 2017年02月01日 11:17
アパに限らず、ネット予約サイトでは変動価格が当たり前では? LCCも目まぐるしく価格が変わります。JRも、大々的にやればいいのに。
クリスマスケーキ、26日に半額で売り出せば、パーティーを26日にやる人も増えるでしょう。
Posted by けろ at 2017年02月01日 12:37
> アパに限らず、ネット予約サイトでは変動価格が当たり前では?

 ここではネット商品でなく、食品ロスの話をしているので。
Posted by 管理人 at 2017年02月01日 12:42
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

過去ログ