2017年01月29日

◆ 自衛隊の PKO は有効か?

 自衛隊の PKO は南スーダンで道路建設などをしているが、これは有効か? 

 ──

 自衛隊の PKO は南スーダンで道路建設などをしている。これは有効だ、というのが、政府の見解だ。
  ・ 自衛隊も PKO をすることで、国際貢献をアピールできる。
  ・ 武力行使には至らない平和的活動なので、批判を浴びない。


 うまいことばかりのように見える。だが、詭弁ふうでもある。
 「お金を払わないで済む無料のスマホゲームです」
 みたいな話だ。たしかにスマホゲームは、出費もなしに利益を得られるが、それで得られる利益は、ごく限られたものであるにすぎない。まともな利益を得ようとすると、無料が取り消され、高額課金される。なのに、「無料でたっぷり楽しめます」と宣伝するのは、詐欺みたいなものだ。
 自衛隊の PKO も似たようなものだ。たしかに武力行使をしないので、武力行使による損失はなしで済むが、プラスとしての効果も限定的だ。現地で平和維持に積極的に貢献しているわけではない。
( ※ そもそも駐留地は、戦闘が起こらないような安全地帯だ。仮に戦闘が起これば、さっさと逃げ出すだけかもしれない。自衛することはあっても、積極的に介入するつもりはないので。)

 ──

 それでもまあ、道路建設は、現地の生活や経済を向上させるので、経済的な意義があるように見える。日本政府も、戦闘抑止の「平和維持」ではなくて、「民生的な向上」ということを訴えている。「道路建設や橋の補修など、インフラ整備をしています」というふうに。
  → 防衛省・自衛隊:南スーダン国際平和協力業務(PKO)
  → 国際平和協力業務の実績一覧
  → Q6.現地で自衛隊施設部隊は具体的にどのような活動を行っているのですか。
  → 「自衛隊PKO〜南スーダンの現状と新任務の課題〜」 | NHK




 しかし、である。私はここで疑問に感じた。
 「たかが道路建設なんていうことのために、自衛隊を派遣するのでは、あまりにもコストがかかって、コスパが悪いのでは? どうせなら、現地の建設会社に任せた方が、人件費や宿舎の点でも、圧倒的に低コストで済むのでは?」

 まあ、当然の疑問ですよね。実際、現地では自衛隊と同様のことを、現地の民間会社が請け負っていることもある。わざわざ自衛隊が出るまでもないのだ。むしろ、金だけ与えて、あとは現地の民間会社に任せた方が、現地の産業育成の点でも効果的だ、と思える。
 経済活動としてみるなら、経済的にコスパを考えて、そういう判断になる。

 ──

 そう思っていたのが、今日までは特に書かずにいた。ところが今日、似た趣旨の記事を朝日に見つけた。引用しよう。
 「日本は全体を見ていないのでは」と指摘するのは、東京外国語大学特任助教のモハメド・オマル・アブディンさん。スーダン出身の国際政治研究者だ。「地元の人たちが一番ほしいのは治安。あの国にいるかぎり、いつ撃たれるか、いつ娘たちがレイプされるかわからないという状況です。考えてみてください。そんな切迫した日々の中で、自衛隊が造る道路に人々の関心は向きません」
 高い技術力を生かして、現地の人たちへの重機操作などの訓練支援に重心を移すのもいいと考える。
 アブディンさんは、日本の出番は「今ではなく、次の段階」という。南スーダンがインフラを再建するときに、その指導役になる。
 「武器を持つことでメシを食ってきた戦闘員たちが除隊される。彼らがよりよい生活ができるようにしなければ社会は安定しない。復興建設はそのためでもあります。自衛隊が道路を造る必要はなく、現地の人たちがそんな仕事に就けるよう助ける」
 たしかにそれは、インフラだけでなく社会の再建にも貢献しそうだ。

( → (日曜に想う)編集委員・大野博人:朝日新聞 2017-01-29

 次の二点が重要だ。
  ・ 自衛隊が道路を造る必要はない。
  ・ 現地の人たちがそんな仕事に就けるよう助ける

 前者は、私が上で述べたことに合致する。
 後者は、「民間会社が建設事業をできるように、人員を要請する。技術者も要請する」ということだ。なるほど。「魚を与えるのではなく、釣り具を与える」というのに似ているが、「釣り具の使い方を教える」(重機操作の訓練支援などをする)という技術指導をするわけだ。これならたしかに、「自衛隊自身が道路建設をする」というのよりも有効だろう。

 ──

 実は、この方針は、すでに一部で実施されている。
 南スーダンの隣国ケニアではPKOの一環として、陸自の教官団がケニア軍などを対象に、油圧ショベルなど重機の使い方を訓練している。あまり目立たないかもしれないが、平和憲法をもつ日本らしい貢献と言えるだろう。
( → (社説余滴)1万2千キロ彼方の自衛隊 小村田義之:朝日新聞 2016年11月25日
 アフリカの国連平和維持活動(PKO)を支援するため、日本の陸上自衛官17人が6日、ケニアの首都ナイロビで、PKOに派遣される可能性があるケニア軍の要員約30人に重機操作を教える訓練を始めた。7月下旬まで。
( → 陸自、アフリカPKO支援 ケニア軍に重機操作訓練 産経2016.6.6
 ケニアに派遣される陸上自衛隊員は教官を含む17人です。今年から本格始動したこの部隊は、ケニア軍の工作部隊に対し、5種類9台の重機を使い、操作方法や道路整備のやり方などを教育します。ケニアにある基地内の道路修繕などを行うことも想定されています。
( → 「日本の技術を伝授」ケニアに重機指導部隊を派遣へ:テレ朝ニュース  2016/05/27

 方針としてはこれが正しいだろう。ただし、規模が小さい。国全体に対して、5種類9台の重機では全然足りない。どうせなら、円借款でもして、大量の重機(中古)を渡して、それと同時に訓練をする方がいい。また、対象は、政府軍ではなくて、民間会社であるべきだ。
 産業復興を目的とするのなら、政府軍よりは、民間の建設会社を育成することの方が有効だろう。そしてまた、重機の操作を教えるのも、自衛隊である必要はない。何も危険地帯で教える必要はないのだ。安全地帯で、民間の技術者が教えれば十分だ。(日本人である必要もない。)
 日本がやるべきことは、そのために、金を払うことだけだ。自衛隊の派遣はまったく必要ない。

 日本が PKO をするべきでない、とは言わないが、どうせやるなら、軍事活動をするべきだろう。大量の武器をもっていって、現地の政府軍や反政府軍と戦闘活動をする、というふうな。……そういうことのために自衛隊を派遣する(そして大量の死者を出す)というのであれば、まだ意義はわかる。(やるべきだとは言っていない。意義はある、とだけ言っている。プラスはある、ということ。マイナスがあることを無視するわけではない。)
 一方で、自衛隊を派遣して、道路建設や技術指導をさせるなんて、無駄としか思えない。こんなことは、民間技術者でも足りる。そこでは、たしかにマイナスは生じないが、プラスもまたたいして生じないのだ。やたらとコストを食う割には。

 結論としては、「現状のような自衛隊の PKO は、コスパが悪すぎるので、やめるべきだ」と言える。日本は金だけ出せばいい。あとは、民間に任せた方がいい。その方が現地の人はずっと喜ぶ。また、自衛隊員に無駄仕事のストレスを与えなくて済む。
 自衛隊員は、そもそも、日本を守るために自衛隊に入ったはずだ。彼らが命を賭ける対象は、日本だけだ。さっさと日本に戻すべきだろう。政府の宣伝(国際貢献のPR)の道具に使われるのでは、かわいそうだ。
 


 [ 付記 ]
 じゃあどうして政府は海外 PKO に熱心なのか? 
 それは、わかりきったことだ。PKO 自体が目的ではない。自衛隊の海外派兵(自衛隊を米軍のために奉仕させること = 米国のために自衛隊員が死ぬこと)が、最終目的だ。こういうふうにして、米国に忠誠を誓えば、米国の覚えが良くなるので、日本を大切にしてくれるはずだ……という思惑。
 要するに、スネ夫がジャイアンのご機嫌取りをして、あれいやこれやと出費をするようなものだ。で、その一環として、自分の手駒である自衛隊員の命を差し出す。それが自衛隊の海外派兵であり、そのための手順となるのが自衛隊の PKO だ。
 つまり、自衛隊の PKO は、政府(スネ夫)のご機嫌取りの道具として、捨て駒になることだ。
 「おまえたちが捨て駒になってくれれば、おれがジャイアンからかわいがってもらえるんだ」
 というわけ。
 米国大統領が、いかにもジャイアンになってきたので、それにすり寄ろうとするスネ夫の方針は、ますます重要になってきた……とスネ夫は思っているのだろう。
 



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posted by 管理人 at 21:14| Comment(8) | 一般(雑学)4 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント

今の自衛隊員の多くが「PKOに行きたい」と志望理由に書くそうですよ?むしろ国内の災害派遣をいやがるそうです。まあ地味に思えちゃうんでしょう。

実際、海外に派遣された隊員の方が昇進もはやいそうだし、任期付き隊員の再就職のときも海外派遣された隊員の方が就職がよいそうです。

知り合いの幹部自衛官が「自衛隊の存在意義は第一義的に国内で貢献することにあるんだが、東日本大震災のような大規模災害ならともかく、水害や雪害への災害派遣はマスコミの扱いも小さいし、どうしても若い連中は海外派遣に惹かれちゃうんだよなあ。」と嘆いていらっしゃいました。
Posted by とおりがかり at 2017年01月29日 18:01
> PKOに行きたい」と志望理由に書くそうですよ

 建設工事だからでしょ。本文で示した通り。
 だいたい、「民間人でもできるような甘い仕事なんだから、民間人に任せよ」という趣旨。甘い仕事で高給(手当て)をもらえるんだから、志願者が多いのは不思議ではない。
( ※ ただし、独身者だけでしょう。妻子のいる場合には、万一の死亡のことを考えて、簡単には決断できない人が多いようです。戦死を心配する親との関係も微妙になるそうだ。)

 なお、私は「自衛隊員は、PKO をやるなら、軍事活動をして、戦死を覚悟で戦え。血を流せ」と言っているんです。その条件で、再度、意思を聞くといいでしょうね。

 ついでですが、自衛隊の医療部隊は先進国のなかでも極端に貧弱です。まともに手術ができないので、銃弾を食らったら、外国の部隊の病院に運んでもらうしかない。
 「銃弾を食らったら助かりにくい」
 という体制になっている。隊員たちは、そういう実情を知っているのかな? 

 http://www.asahi.com/articles/ASK1S5GBXK1SUTIL030.html
Posted by 管理人 at 2017年01月29日 18:25
うーん、管理人さんて好戦的ですねー
あのね、国際社会ってヤクザの世界と似ていてね、とりあえず面子を出すことが大事って場面も多いんですよ。
ヤクザも下部団体から面子を集めてくるわけですが、何も鉄砲玉だけじゃなくて、ただサングラスかけてダークスーツ着てその場にいるだけでも意味があることがあるんです。

自衛隊だって鉄砲打って戦うだけが能じゃない、日の丸をしょった自衛隊員がスーダンにいるということ("Boots on the ground")が大事という局面もあるんですね。

今回の派遣とは別ですが、例としてアフガニスタンに各国が派遣した軍人さんの統計があるので転載しておきますが、およそ意味があるとも思えない人数を派遣している国は日本以外にもありますよ。
直接戦闘に参加すればより日本のプレゼンスを高めることができるかもしれませんが、管理人さんが指摘しているような救護体制の不備があるようなら戦闘に関わるのはリスクが大きすぎるでしょうね。

http://web.econ.keio.ac.jp/staff/nobu/iraq/casualty_A.htm
オーストリアの9人なんて戦力としての意味はないでしょう。でも「オーストリア軍がアフガンに派遣されていた」という事実は残るわけです。それが大事なんです。オーストリアの国際的な発言力が多少なりとも担保されるのです。

自衛隊の役割は第一義的に日本の国益を擁護し、その伸長を図る道具であることにあります。もちろん、アフリカのために役に立てばそれにこしたことはありませんが、それはあくまで二義的なものにすぎません。

Posted by とおりがかり at 2017年01月29日 20:53
↑ 誤読していますよ。

> うーん、管理人さんて好戦的ですね

 好戦的なわけがないでしょ。自衛隊の派遣には反対です。私は単に、
 「自衛隊を派遣するのなら、軍事目的でなくては無意味だ。民生用途に軍隊を出すなんて、ただの無駄だ」
 というふうに、論理を出しているだけです。
 比喩的に言うなら、医者を出すなら医療のために出すべきだ。医者を出してコンビニのレジ打ちをさせるなんて、論理的にナンセンスだ。……そういう論理的な間違いを指摘しているだけです。
 自衛隊は海外でドンパチしろ、なんて言っているわけじゃない。むしろ反対しています。
  → http://openblog.seesaa.net/article/435851138.html
  → http://openblog.seesaa.net/article/435851270.html

 ──

 一つ前のコメントに戻ると、

> PKOに行きたい」と志望理由に書くそうですよ

 というのは、私の話とは、関係がない。
 私の話は、「彼らが命を賭ける対象は、日本だけだ」ということ。(前出)
 現状の PKO (道路建設)は、命を賭ける話とはならないから、話のレベルが別だ。「PKOに行きたい」というのが、「命を賭けて戦いたい」というのなら、事情は異なるが、そういう話じゃないでしょ? 「PKO で道路建設をしたい」と思っている自衛隊員が多い、というだけだ。話を取り違えてはいけません。
 あなたの誤読。

> 自衛隊の役割は第一義的に日本の国益を擁護し、その伸長を図る道具であることにあります。

 これは、私が最後に書いた、スネ夫の話、そのまんまでしょう。たとえ話を普通表現に直しただけです。
 つまり、自衛隊は、平和のために働いているんじゃなくて、政府の道具として、政治的に利用されているだけなんです。世界平和なんて、何の関係もない。政治家の手駒にされているだけ。
Posted by 管理人 at 2017年01月29日 21:07
管理人様

集団的自衛権に関する過去の記事で度々引用されている「自衛隊への勧誘ページ」(http://openblog.meblog.biz/image/jieitai00.htm)ですが、当方の環境ではサーバーに接続することができず読むことができません。
すでに上記記事については公開を取りやめたのでしょうか。
Posted by 一読者 at 2017年01月31日 08:04
> 自衛隊への勧誘ページ

サイト移転にともなって、URL を変更しました。リンクがうまくつながらなくて、ごめんなさい。

http://openblog.up.seesaa.net/image/jieitai00.htm
Posted by 管理人 at 2017年01月31日 12:06
サヨク、安倍政権に国政選挙で4連敗ww
Posted by ライダイハン at 2017年02月04日 00:44
このページに限りませんが、読解力がないのにコメントする人多いですね...。
Posted by 読者 at 2017年02月04日 01:33
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