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MRJ の開発の遅れについては、これまでも何度か述べてきた。2015年04月13日の項目では、こう記した。
三菱航空機は 10日、初飛行を今年5月から 9〜10月に延期すると発表した。
2017年4〜6月に納入する計画は変更しない。
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【 追記 】( 2015-12-17 )
納入開始が、従来の予定より1年以上遅い 2018年後半になる見通しになった。
三菱航空機は、11月11日に初飛行を果たした時点では、最初の販売先である全日本空輸への納入開始を17年4〜6月としていた。
( → MRJ の開発の遅れ )
これは1年余り前の話だ。それから1年以上たって、今になると、 2020年まで遅れるという報道が出た。
《 国産旅客機 MRJ 航空会社への納入 2020年半ばに延期 》
「来年半ば」としていた航空会社への納入時期が、「2020年半ば」に延期されることが明らかになりました。納入の延期は5回目となります。
MRJは、主要部品の電子機器で不具合が起こるおそれがあることがわかり、設計の見直しが必要となったということです。
( → | NHKニュース )
2018年半ばの予定が、2年も遅れて、2020年半ばになるそうだ。しかも、これで打ち止めではない。このあとさらに、何度も何度も延期が続きそうだ。ひょっとすると、2022〜2023年ごろになるかも。
「そんなアホな」
と思う人もいるかもしれないが、そもそも当初の予定では、 2013年に納入のはずだったのだ。
2009年9月、胴体と主翼の設計変更にともない2008年9月の時点で 2011年初飛行、2013年に納入と発表していた予定を、初飛行を2012年第2四半期に、初号機納入を2014年第1四半期に見直した。
( → MRJ - Wikipedia )
2013年に納入する予定が、4度の延期で、2018年の納入に遅れていた。そして今回、5度目の延期で、2020年の納入だ。
これを聞いて思い出すのは何か? オオカミ少年だ。
オオカミが来た!
5度も嘘をついたやつの、新たな約束を信用する方がどうかしている、ということになる。
[ 付記 ]
ここで述べたいことは、「三菱はざまあみろ」というようなことではない。「すべては私の予想通り」ということだ。
私は早くは 2007年06月20日に、この計画を否定的に評価した。
→ 三菱の小型ジェット機 MRJ
この後半に、【 後日記 】 がある。
2011年8月現在の状況では、予想通り、MRJ は大失敗のようだ。
世界市場 4000機のうちの 1000機を販売したい、というのが目論見。
現実には、百機をいくらか上回る程度で、採算台数の 350機の半分にも満たない。このあと何年間かをかけても、350機にはなりそうにない。大幅赤字になりそうだ。
数年後には、さらに新鋭機が出現するらしいので、MRJ は時代遅れの古い機種となる。そうなったらもう誰も買わないだろう。
出た時点ですでに時代遅れの機種だったのだから、結局は、私の予想通りとなりそうだ。
これのあとは、冒頭で紹介した項目(MRJ の開発の遅れ)がある。
さらにいくつか、項目があるので、下記で見つかる。
→ MRJ - サイト内 検索
では、どうすればよかったか……という話は、下記項目の最後([ 付記 ])にある。要するに、国産にこだわらなければ良かった。
→ MRJ は失敗するだろう
国産にやたらとこだわったせいで、技術的にはろくでもないものに仕上がった。それでいて、国内部品の比率は、ボーイング787の比率(35%)にも劣る 30%しかない。愚の骨頂とは、このことだ。
本来ならば、私が項目を書いた 2007年の時点で、プロジェクトを中止するべきだった。そうしなかったせいで、開発費ばかりがやたらとふくらんで、事業としては成立しそうにない。
原発で会社の存続が危ぶまれる東芝と、似たり寄ったりの状況だ。三菱重工がつぶれたら、そのあとどうなる? 台湾の会社にでも、買収してもらうか? (シャープみたいに。)
[ 付記 ]
上の引用部では「採算台数の 350機」と記したが、これは 2011年時点でのことだ。
その後、開発費が大幅に上昇したので、採算台数は大幅に跳ね上がっている。500機では済みそうにない。600〜800機ぐらい売らないと、採算割れになりそうだ。
一方で、受注台数は 350機ぐらいには達したようだが、500機にはとても届きそうにない。(ライバル機ばかりがどんどん売れている状況だ。) かくて、大幅赤字は確定ということかも。
三菱重工が倒産なら……という話は、すぐ上に述べた通り。
【 追記 】
追加情報。開発費が大幅超過になる。
納入時期を二年延期して二〇二〇年半ばにすると正式発表した。現在三千億円規模と想定している開発費は、三〜四割に当たる約一千億円増加し、四千億〜五千億円程度になる見通しだ。
( → 東京新聞 2017-01-24 )
3000億〜4000億円とみられた開発コストに関しても、宮永社長は「3〜4割増える」との見通しを表明。開発当初の見積もり(1500億〜1800億円)の3倍程度に膨らみ、5000億円を超える可能性を示唆した。
これに伴い、投入資金を回収できる時期も、20年代後半から30年代に5年単位で後ずれする見通しとなった。
( → 時事ドットコム 2017-01-23 )
これで打ち止め、とは言えないのが、つらいところ。もっとひどくなる可能性は十分にある。
なお、延期の理由は下記。
延期のきっかけとなったのは、社外から招いた外国人技術者の指摘だった。昨夏、機体前方に集中していた飛行制御システムを、安全性を高めるために前後に分散させることなどを主張。その意見を受け入れ、2万本以上にのぼる配線を見直すため、延期を決めたという。
( → 朝日新聞 2017-01-24 )
この件については、「国産純血主義では駄目だ」と私が前に指摘しておいた。
MRJ は、三菱の自力開発(純血主義)にこだわらず、外部から米国人の技術者(航空機生産の経験者)を、雇用して導入するべきだった。そうすれば、未経験者がよくわからないまま何度も試行錯誤するという、無駄を踏まずに済んだはずだ。
( → MRJ は失敗するだろう )
その意見をちゃんと聞いておけば良かったのにね。2015年11月12日の記事なんだから、ちゃんと間に合った。なのに、試験飛行で失敗するまで、自己流にこだわったから、失敗続き。
シャープにせよ、三菱重工にせよ、日産自動車にせよ、私の言うことを聞かないから、大失敗続きだ。
心配しなくてもこの記事によれば東芝と同じぐらいのリスク持ちです
http://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/196799
以下、転載。
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「MRJの開発費は当初予定の2倍を超える3300億円以上とされ、そのうち500億円以上を国が負担している。当面の受注目標は1000機ですが、現時点では目標の5割にも満たず、そのうち半数はキャンセル可能です。これ以上、延期すれば、競合他社の攻勢も強まっていますし、受注に悪影響が出ることは避けられそうにありません。その上、開発コストがかさむことになれば、いよいよ“採算割れ”が現実味を帯びてきます」(経済ジャーナリスト・岩波拓哉氏)
10月末に発表した三菱重工の16年9月中間連結決算は、税引き後利益がマイナス189億円と、7年ぶりの赤字に。円高で輸出決算が悪化したこともあるが、膨らむ一方のMRJの開発コストも足を引っ張っている。そんなところに5度目の納入延期。採算割れもちらつくとなれば、シャレにならない。
止めるに止めれなくなっているような...止めると責任者探しが始まるでしょうし。ついこの間、客船事業から撤退したばかりですし。
旧来から続く日本の体質が見事に露呈した印象です。
例えば、ガダルカナル島の戦い、高速増殖炉の開発、核燃料再処理事業に通底したものを感じてしまいます。
その一方で過重労働を見る社会の目は厳しいものがありますし、未完状態が永遠に続くのかも...
かつても日産の飛翔体部門(さらにその昔はプリンス自動車、現IHIエアロスペース)が政府主導でIHIに譲渡されたことがありました。
造船部門はともかく、航空宇宙部門を引き取れるのは、川崎重工しかなさそうだ。(IHIやスバルは無理っぽい。)
だけど川崎重工も小さすぎる。豚が象を呑み込むようなもの。無理っぽい。
残る策はただ一つ。国営化だ。半導体でも似たような例があった。カネボウみたいな産業再生機構という手もある。これも国営化の一種か。(のちに売却。)
川崎はC-1、2、P-1とかなり遅延はあったものの一応自力開発に成功したし、P-3Cのライセンス生産も担当していました。
問題は戦闘機についてここ最近はほぼノータッチだったこと、宇宙部門についてはほぼ素人だということでしょう。宇宙部門については三菱とIHIエアロスペースがほぼ独占してきましたからね。
名古屋航空自衛隊工廠とか長崎海上自衛隊工廠とかもホラとしてはおもしろいですが。
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度重なる延期の理由は、設計の変更や検査態勢の不備など、さまざまだ。
重要な変更の判断がなぜここまで遅れたのか、首をかしげざるを得ない。
三菱重工では大型客船の建造が難航し、巨額の損失を出したばかりだ。原因や背景を分析した社内報告書は「他部門の助けを求めない気質や上意下達的な風土」を指摘した。技術の自前主義から生まれる過信、組織の縦割りによるプロジェクト管理の不備は、MRJにも当てはまるのではないか。
三菱重工は、……欧米メーカーなどで働いた経験を持つ技術者を数多く採用し、自前主義からの転換を進める構えだ。
製造業では、社外の技術やアイデアを積極的に取り込み、革新的な製品を生み出す「オープンイノベーション」が広がる。旅客機開発の経験不足を補うにはこうした発想が大切だろう。
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http://www.asahi.com/paper/editorial.html
国に保護された内弁慶企業では、ということです。日本の普遍的体質かもしれません。