2016年11月08日

◆ 認可外保育所の危険性の放置

 認可外保育所の危険性が放置されている。そのせいで、何度も何度も、死者が出る。

 ──

 神奈川県平塚市の認可外保育所で乳児を死なせた事件があった。
  → 4カ月の男児にけが負わせ死亡させた疑い 保育士を逮捕


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 これについて、背景を追う記事がある。
 《 夜間保育、手薄な現場 国の基準満たさず、170カ所で行政指導 》
 神奈川県平塚市の認可外保育所で乳児を死なせたとして、元保育士の男が傷害致死容疑で逮捕された事件は、夜間保育の現場で人手が足りていない現状を浮き彫りにした。
 厚生労働省によると、宿泊を伴う保育をするなど「ベビーホテル」と呼ばれる認可外保育所のうち1134カ所を2014年度に調べたところ、約半数が職員の健康管理などで国の基準を満たしていなかった。
 昨年暮れ、生後4カ月の出縄望翔(いでなわりんと)ちゃんが頭の骨を折って死亡した平塚市の「ちびっこBOY」。県は08年以降、保育士が1人で子どもの面倒を見ていたとして、スタッフを複数配置するよう児童福祉法に基づいて3回もこの施設に勧告していた。
 ちびっこBOYのような認可外の保育所は行政から運営費の補助がほぼない。一方、厚労省によると、認可保育所では90人の定員の場合、年間約1千万円の夜間保育加算があるという。
 経営上の理由から、認可外保育所では職員の数に対して子どもの数を増やす傾向があると言われている。04〜15年に保育施設で起きた死亡事故のうち、認可外が約7割を占めるというデータもある。
( → 朝日新聞 2016-11-08

 死亡事故で危険度を見ると、次のようになる。
 《 無認可保育園の子どもの死亡事故発生率は認可保育園の30〜45倍 》
 2013年の認可保育所の子どもの数は236万5,349人で、認可外保育所は19万5,711人。認可保育所の死亡事故件数4人は、10万人あたりにすると0.169で、認可外保育所の同15人は同7.664。認可外保育所の10万人あたりの死亡事故率は認可保育所の45.3倍にのぼるのです。同じ計算で、直近の2014年(上記が厚労省のサイトにある子どもの数)を見ると、認可保育所は0.207で、認可外保育所は6.196。同30倍にのぼります。
( → 公的保育の民営化・規制緩和が子どもの命を奪い続けている

 これほどにもひどいのだが、実数はもっと上らしい(もっと危険らしい)という記事もある。下記の通り。
 《 公表の基準なく「自治体の判断」 》
 事故が起きた場合は、どんな仕組みで情報公開されるのだろうか。
 認可保育所では、死亡事故や重傷事故が起きた場合、自治体に報告するよう義務づけられている。一方、認可外施設の場合は、報告に法的拘束力はない。内閣府によると、2015年、保育施設で亡くなったと報告されたのは14人。うち、9人は認可外保育施設で起きている。
 しかし、朝日新聞のデータベースで検索してみると、どの施設で何があったか、公になっていないケースの方が多い。
 厚労省の担当者によると、公表について「基準はなく、自治体の判断による」という。発生時に警察や自治体が発表することもあるが、当事者からの情報提供で初めて公になることは少なくない。
( → 「おかしい、ただの病死ではない」保育施設の死亡事故、なぜ非公表? - withnews(ウィズニュース)

 認可外施設における死亡事故は、隠蔽されているわけだ。それを残らず計数したら、とんでもない倍率(危険度)になるかもしれない。

 ──

 以上のことから、国や自治体がなすべきことはわかる。こうだ。
 「認可外保育所に対する補助金を大幅に増やす。とりあえずは、ミニ保育所として認可するようにして、ミニ保育所の形で大幅に補助金を増やす」

 ところが、国や自治体が実際にやっていることは、何か? 「認可保育所」という最高級レベルの超リッチな施設を増やすことだけだ。
 で、そういう施設を実際に増やしているのならまだいいのだが、実際には、「近隣住民の反対のせいで建設できません」と言って、「認可保育所」も建設しないでいる。

 ──

 以上をまとめれば、こうだ。
  ・ やるべきこと …… 認可外保育所に金を出す
  ・ 現実のこと  …… 認可保育所の建設を断念する
             (理由は近隣住民の反対)


 これは、どう考えても、「わざとやっている」としか思えないな。「認可保育所を建設します」と言って、それを断念すれば、近隣住民のせいにして、1円も出さずに済む。こうして、ポーズだけ取って、1円も出さずに済ます。本来ならば、その浮いた金で、認可外施設に金を出せるのに、金を出さないで、「まじめにやっています」というフリだけをする。

 人々は自治体のインチキ(ペテン)にだまされているようなものだ。
 「近隣住民のエゴだ!」
 というふうに、住民同士で避難してばかり。かくて、自治体は、1円も出さずに済んで、内心でペロリと舌を出すわけだ。 (馬鹿をだますのはチョロイもんだ)
 とでも思っているのだろう。


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 [ 付記 ]
 参考情報がある。東京都杉並区の田中良区長の発言だ。
 「認可保育所を建設するより、育休制度を充実させた方が、社会的コストは軽減される」
 というもの。
  → コスト高いから育休延長論? 待機児童対策、労使は反発:朝日新聞 2016年10月26日
 ここから一部抜粋すると、こうある。
  朝日新聞が東京23区に取材したところ、6区が2015年度の決算を元に認可保育所の年齢別1人当たりの運営コストを試算していた。自治体ごとに計算方法が違い単純比較できないが、0歳児は月約45万〜37万7千円。
 区長らの要望の背景には、それだけのお金をかけるなら育休をとってもらった方が「経済的」との考えがある。例えば、公・私立の認可保育所、認定こども園、小規模保育所を対象に試算した江東区の0歳児のコストは月39万1千円。保護者が支払う保育料は平均3万1千円で、36万円は国と都、区が負担している。
 一方で、主に労使が折半する雇用保険で支払われる育休給付金は、15年度の平均受給額が月13万5千円。

 区長の言うことは、もっとものように見える。(私が前に言った「補助金を親に直接給付せよ」という提案にちょっと似ている。)
 だが、よく見てほしい。育休給付金を出すのは、区ではなく、雇用保険だ。区は1円も払わない。要するに、「多大な額を払うのがいやだから、少しの額を払う」のではなく、「1円も払いたくない」と言っているわけだ。呆れる。
 どうせ「多大な額を払うのがいやだ」と思うのなら、せめて、認可外施設に少額を払えばいいのに、そうすることもない。ほとんど金を払わない。(冒頭記事に書いてある通り。)

 かくて、危険な認可外保育園は放置され、子供たちは次々と死んでいく。
 一方で、世の中の親たちは、「子供を保育所に預けて、自分は働きたい」と思うばかりだから、「保育所を建設せよ」と要求するばかりだ。
 危険な認可外保育園に放置される子供たちのことを考える人は、ほとんどいない。……本サイトを除いては。

 
posted by 管理人 at 19:37 | Comment(0) | 一般(雑学)3 | 更新情報をチェックする
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