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先日も横浜市で同様の事故があったばかりで、先に言及した。
→ 横浜の集団登校事故/大川小の津波被災
今回の事故は、これと同様か? 調べてみると、事情は大幅に異なるとわかった。むしろ、もっと前にあった京都府亀岡市の集団登校事故にそっくりだ。これも先に言及した。
→ 集団登校は安全か?(2012年04月24日)
ともあれ、今回の八街市の集団登校事故について考察しよう。
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これについては、読売新聞の画像が有益だった。画像はネットにはないが、言葉で示すと、次の趣旨だ。
・ 自動車は蛇行している。
・ 蛇行の経路は 左 右 左
・ 最初は左の歩道に向かい、あわてて右に切る。そこで、
対向車線に入りそうになったので、あわてて左に切る。
すると、その左側の歩道に子供がいた。
子
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/
\
↑
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ここで、問題だ。なぜ自動車は蛇行したのか? 特に、最初に左側にハンドルを切ったのは、どうしてか?
これについては、ニュースでは報道がまったくなかった。「なぜ蛇行したのかを警察は検証する」というような話ばかりだ。要領を得ない。原因不明だ。
そこで、「困ったときの Openブログ」という声に従って、私がさっそく調べてみた。

名探偵は現場に行く。ただしこの名探偵は、アームチェア・ディテクティブ なので、自分では行かずに、Google マップで調べるだけだ。それでも、ちゃんと現場がわかる。
ここが現場だ。右の歩道が、集団登校していた場所。この車線を、先の方から手前の方に走ってきた自動車が、蛇行して、画面右端のあたりにいた小学生に突っ込んだ。
さて。この画像をよく見ると、画面の奥の横断歩道のあたりで、道路が蛇行しているのがわかる。そこに移動すると、こうなる。
先の方に移ってから、この交差点を振り返って見ると、こうなる。
道路の白線が左に曲がっているのがわかる。つまり、自動車が最初にハンドルを左に切ったのは、ただの運転ミスによるのではない。もともと道路がそういうふうになっているのだ。(必ずハンドルを左に切る必要がある。)
そのあと、運転者は、操作をミスった。これは、運転経験が短いことと、おしゃべりをしていたこととの、双方が理由だろう。また、左に小学生の集団を見たので、あわてて「やばい」と思って右に過剰にハンドルを切ったのだろう。そのあと、右に切りすぎたのがまずかったと思って、左に切り直したのだろう。
実は、これは、不思議でも何でもない。運転未熟な初心者ならば、よくやることだ。私もこの手の運転ミスを失敗したのが、すごくトラウマになっている。(そのミスをしたのは、5歳ごろで、遊園地のゴーカートに乗ったとき。何十年たっても忘れられない。)
あと、小学生のころに、ゲームセンターでミニチュア自動車の運転ゲームをやったときにも、同様にハンドル操作ミスをした。
要するに、過剰にハンドルを切りすぎるというのは、しばしばあることなのだ。どうしてかというと、ハンドルを切るのよりも、実際の自動車の方向転換は遅れるからだ。そのせいで、慣れないと、蛇行してしまう。
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これで、だいたいの原因はわかった。
問題は、どうして道路はこういうふうにもともと左に曲がるようになっているか、だ。
画像をよく見ると、次のことがわかる。
・ 交差点の入口で、白線は左に曲がっている。
・ かなり先の方では、白線はふたたび右に曲がっている。
・ その中間領域では、車線は三つになっている。
・ 中間の車線は、右折車用の停車領域である。
4車線道路ならばよくあることだが、右折車用に、専用の停車領域を設けているわけだ。(その場合は4車線が5車線になる。)
しかるに、この交差点では、2車線道路でありながら、同様のことをしている。そのせいで、反対車線(つまり事故車の車線)の側では、交差点で不自然に左に曲がることを要求されるわけだ。
とすれば、これは、交通システムそのものが狂っている、とも言える。
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こういう問題を避けるには、どうすればいいか? 通常は、次の方法を取る。
「その交差点を右折禁止にする。少し先に行ってから、左折して、さらに左折を2度繰り返すことで、合計3回の左折をしてもらう。これで、右折したのと同じことになる」
これが普通だ。
しかるに、現場の地図を見ると、それが不可能だとわかる。ここは碁盤の目状にはなって折らず、合計3回の左折などはできないのだ。
郵便局方向から南下した自動車は、ユニット産業のところで右折する。
その代案として、左折を3回しようと思っても、その先には左折する交差点がない。強いて言えば、 V 字形に左折・逆行する場所があるだけだ。
ここを V 字形に左折・逆行するなんて、まともではない。そんなことをする運転手はいないだろう。
というわけで、左折を3回というのは無理だ。となると、例の交差点で右折するしかない。すると、右折車用の中間車線が必要となる。すると、対向車線は左側にハンドルを切る必要が生じる。すると、初心者はあわてて、運転ミスをする。蛇行する。そのあとは、歩道に突っ込む。
以上をまとめれば、「起こるべくして起こった事故」と言える。わざわざ事故を起こすように設計してあったわけだ。これまで同種の事故がなかったことの方が不思議だ。
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では、対策は? ガードレールを設置するのも一案だが、「ここは交通事故が起こるのが当然だ」というふうに見なした方がいい。そのあとで、
・ 自動車には、急激な減速を強制する
・ 歩行者には、別の安全な道路を用意する
というふうにするのがいい。
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集団登校に戻って言えば、
「歩行者には、別の安全な道路を用意する」
ということ、つまり、
「裏道を通るようにさせる」
ということが大事だ。
横浜の集団登校の事故では、裏道があった。だから、単に集団登校の経路を変更するだけで済んだ。
今回の事故ではどうか? 実は、裏道は存在しない。このあたりで領域を貫通する道路は、この国道だけであり、他のすべては途中でちょん切られている袋小路みたいなのばかりだ。あるいは、変な方につながっているだけだ。いずれにせよ、肝心の小学校まで行くための道筋は、この危険な国道だけしかない。
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こういう問題は、京都の集団事故の場合と同様である。他に道路がないから、危険な道路を通らざるを得ないのだ。
→ 集団登校は安全か?(2012年04月24日)
ではなぜ、他に道路がないのか? その理由は、上記項目に書いてある。転載しよう。
[ 付記1 ]
根源的に言うと、田舎の道というのは、あまり整備されていない。都会ならば、人口が密集しているので、道は碁盤の目のようになっていることが多い。しかし田舎の道は、串のような形になっていることが多い。次のように。
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これはどうしてかというと、もともと人の通る道路があって、道路脇に人家ができたからだ。で、人の通る道路があれば、他に道路はいらないから、裏道なんてものは存在しない。単に田畑があるだけだ。
ところが、あとで自動車が通るようになると、この道を自動車がのさばるようになった。そのせいで、歩車道の分離していない狭い道を、自動車が我が物顔で通るようになった。「借りたあとで乗っ取る」ような形で。
こういう背景があるのだから、自動車の出した金で、人間のための裏道を新たに作るべきなのだ。
歩行者のための「貫く道」は、なかったのではない。ちゃんとあった。しかしその道は、自動車に奪われた。だから、歩行者のための道は、なくなってしまったのだ。
これは、比喩的に言えば、パレスチナ人みたいなものだ。もともとパレスチナ人が住んでいたが、世界中からユダヤ人が来て、土地を奪ったから、パレスチナ人のための土地はなくなった。そして次々と人が死んでいく。
これがつまり、「自動手に道路を奪われた歩行者」の運命である。その犠牲となったのが、今回の子供たちだ。
もちろん、京都と千葉だけでない。日本中の各地で、同様のことが起こっている。これからも何度も死者は生じるだろう。歩行者のための道を奪われた以上は、当然のことだ。
そして、それを解決するための方法は、ただ一つしかない。
「歩行者から道を奪った自動車が、裏の田んぼのあたりに、歩行者用の道を整備すること」
だ。これは、ごく安価な費用でできる。どうせ田んぼぐらいしかないのだから、そこに道を作ることぐらいは簡単だ。(農家に対する補償は必要だが、何だったら、付近の農地ごと買収してもいい。どうせ農地は安い。)
このくらいの費用は、自動車の道路整備費を使えば、ごく簡単にできる。だから、政策としては、解決は簡単だ。
しかし、政府は、それをしない。なぜか? こうだ。
「自動車から徴収した税金は、すべて自動車のために使う。歩行者から徴収した税金(一般財源)も、自動車のために使う」
つまり、この世の交通機関のなかで、自動車だけは特権的な地位にある。他の交通機関の乗客は、必ず(施設の土地代を含めて)コストと税金の双方を払う。一方、自動車だけは、払った税金を上回る金を道路建設に投入してもらえるので、コストの全額を負担しないで済む。自動車にだけは、国庫の補助金が投入されるのだ。
これほどにも、自動車(つまり車道)は優遇されている。そして、道路建設費のすべては、自動車のためにある。だから、歩行者専用道路のための金は存在しなくなる。
というわけで、歩行者のための裏道は建設されない。ゆえに、歩行者は危険な車道の脇を歩かざるを得ない。
パレスチナ人と同様に、流浪の民となり、危険にさらされて、死ぬしかないのだ。
それが、日本の歩行者の運命である。(ユダヤ人に土地を奪われた流浪の民のように。)
[ 付記1 ]
これに責任があるのは、日本のほとんどの政党だ。
・ 自民党 …… 自動車業界から、巨額の献金を受ける。
・ 民進党 …… 自動車労連から、そこそこの金を受け取る。
どっちにしても、自動車の利益団体に買収されている。かくて、歩行者の命は、ガソリン代よりも軽視される。
これを批判するのは、本サイトぐらいだ。
( ※ 同様の話題は、何度も書いているのだが、まったく世間では話のタネにもならない。小学生の命のことで対策まで考えているのは、本サイトぐらいだ。マスコミは警察の発表と流すだけで、根源までは考えない。)
[ 付記2 ]
簡単な解決策もある。
左にハンドルを切る手前(交差点の手前)で、道路を拡幅することだ。これによって、ハンドルを少し左に切るための領域(数十メートルの道路)が確保されるので、その領域のなかで少しずつ左にハンドルを切ればいい。これならば、交差点の直後であわてて左にハンドルを切る必要がなくなる。
そのためには、近くの私有地を少し買収する必要があるが、幸い、建物はない(店舗の駐車場や民家の庭になっている)ので、買収は容易だろう。だから買収して、道路の拡幅をすればいい。
[ 付記3 ]
元はと言えば、こういう田舎っぽいところ(道路も不十分なところ)に、大型のイオンなんかの設置を許容したのがまずい。
畑をつぶして、農地転用して、イオンの店舗の建設を許容したのだろうが、それがまずかったね。イオンの店舗を建てるのならば、道路のしっかり整備された市街地にするべきだった。
道路もろくにない田舎の畑地にイオンの店舗を建設すれば、交通インフラが貧困となり、交通事故が起こるのは、もともと当然だったと言える。
[ 付記4 ]
私としては、当面、次の対策を提案する。
「問題の交差点では、右折禁止にする。北方面から南下した自動車が、右折したい場合には、不可能だと思って、諦めてもらう」
「イオンとしては、その問題の対策を取りたければ、交差点の手前に、左折する道路を自分で建設すればいい。左折3回で、自分の敷地(裏側の駐車場)に入れるようにすればいい」
つまり、道路がなければ自分で道路を建設しろ、ということだ。現場は畑だらけなので、畑を買収して道路を建設することぐらい、簡単だろう。1000万円ぐらいで済みそうだ。そのくらいの出費をすればいい。どうせわざわざ土地の安いところを選んだのだから、そのくらいの出費はしてもいいだろう。
それがいやなら? 右折禁止の状態のまま、北方面から来る客は諦めてもらう。それでOK。
( ※ 現状では、イオンの売上げ確保のために、道路が危険な「右折可能」状態となっている。イオンの売上げ増加のために、子供の命が犠牲になった。本末転倒。)
三つ巴の紛争になっているんですね。
よくわかります
ちょっと的外れかな〜と思います。
うまいことを言おうとして、すべっている……という指摘なら妥当ですけど、まあ、いいじゃないの。
本項は固い話ばかりじゃなくて、ちょっとは面白おかしく書くのが、ポリシーなんだし。
冷静な分析記事ばかりだと、飽きてしまうでしょ? 本サイトは、NHK の3ちゃんねるじゃなくて、民放のワイドショーみたいなものだと思ってください。NHK のクローズアップ現代をワイドショーふうにしたもの。NHK と違って、料金は取りません。
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最後に [ 付記3 ] などを加筆しました。
集団登校は誘拐や、無謀な飛び出しなどは避けられます。しかし一旦事故が生じると被害が大きくなってしまいます。どっちを選んでも厳しいです。
やはり、車のない道を別途設けてそこを集団登下校するのがいいのでしょうね。
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