2016年10月15日

◆ 続々・三浦九段の不正疑惑(将棋)

 前項・前々項の続き。補足的に、取りこぼしたことを少し書く。

 ──

 棋譜の補充


 三浦・渡辺 戦の棋譜は、下記にある。
  → ▲三浦弘行九段 × △渡辺明竜王

 これについて、前項では次の場面を示した。

kifu-mw39.png

 この手の少し後で、先手は ▲3四馬 と歩を取る。なぜこの手を指したか? こう解釈した人がいる。
 「歩を取ることで、駒得1点となる。これはいかにもコンピュータらしい手だ。たとえ1点でも駒得をすることを重視するのは、コンピュータらしい」

 この見解に、「なるほど」と賛同する人がいるので、解説しておく。
 上のように「駒得1点を重視する」というのは、大昔のコンピュータ・ソフトの話だ。今どきのソフトは、そんなことは決してやらない。やるのは、評価関数による局面計算だけだ。駒得1点なんて、まったく問題にならない。

 ではなぜ、先手は ▲3四馬 と歩を取ったのか? それは、先手が駒得するためではなくて、後手陣の防御壁を崩すためだ。
 ▲3四馬 の局面では、後手は歩切れである。しかも、2〜5筋で、歩の屋根がなくなっている。これによって後手陣の防御網はズタズタにされてしまった。
 つまり、相手の防護力を大幅に引き下げることで、自分の評価値を上げている。これが ▲3四馬 の目的だ。自分の駒得ではなくて、後手陣の防御の評価点を大幅に引き下げるのが目的だ。

 このあと、どうなったか? 防御陣を剥がされた後手は、このままでは戦えない。あっさり2〜5筋で防御陣を破られそうだ。
 そこで、それを防ぐため、守りの要である5二の金を上げて、5四まで持ち上げた。つまり、3枚ぐらいの歩のかわりを、5四の金が果たす羽目になった。(比喩で言えば、前線の見張りが3人殺されたので、強力な副将が前線に上がった。)

 これでいいか? いや、このせいで、王将のそばは(金がいなくなって)すっかり手薄になった。かくて、飛車打ちには非常に弱くなった。そこで、それを知った先手は、飛車交換を挑んだ。
 結局、戦いの決め手である「飛車交換」を導いたことが、▲3四馬の効果だった。

 ▲3四馬には、これほどにも重要性があるのだ。それは「歩を取って1点の駒得を稼ぐのが目的だ」なんてこととは違う。戦いの決め手である「飛車交換」を導いたことが、▲3四馬の効果だったのだ。

 ──

 なお、一般に、コンピュータ将棋では、「駒の損得」は重視されない。重視されるのは、「駒の効率」だ。この件は、重要なので、かつて三浦九段の電王戦の解説で、詳しく説明した。
  → 電王戦 第5局の考察(三浦弘行八段 vs GPS将棋)

 ここで示したように、「コンピュータらしさ」(駒の効率を高めること)とは、ほど遠い指し方をするのが、三浦八段(当時)だった。そのあげく、あっさり負けた。
 こういう過去の事実をきちんと押さえておこう。

 本サイトの目的


 本サイトで私はいろいろと解説しているが、何か勘違いしている人が多いようだ。
 私は別に、「三浦九段は黒だ」と決めつけたいわけではない。彼に恨みがあるわけではない。むしろ、彼を守りたいと思っている。そのことは、前項を見ればわかるだろう。
 彼を守ろうとして、彼の味方をしている人は、結果的には彼を破滅させる道を進ませようとしているのだ。その愚を私は指摘した。

 では、本サイトでは、私は何を主張したいか? 
 答えを言おう。私は、何も主張したくない。私の個人的見解などはない。私の将棋解釈というようなものもない。あるとすれば、先の電王戦の解釈だ。これは、私の独自の解釈だ。
  → 電王戦 第5局の考察(三浦弘行八段 vs GPS将棋)

 一方、前項や前々項で述べたことは、私の独自の解釈なんかではないし、私の主張でもない。では、何か? こうだ。
 「三浦九段に対して、将棋連盟が処分を下したことに対して、その背景を探る」

 つまり、人々が「どういうことかわからないよ〜」と困っているので、「それはこういうことですよ」というふうに、背景を解説しているのだ。


question_boy.png


 そして、それを読んだ人のうち、アマ有段者クラスの人ならば、たいていが、
 「これは黒だ。真っ黒だ」
 と判定できるようになった。
 そういうふうに道筋を付けたことが、私の目的だ。


yamanobori_man.png

 比喩的に言えば、山頂に至るまでの山道を整備することだ。山道がなければ、山頂に登るのは非常に困難だ。登山のプロならば(重装備によって)可能だが、素人には無理だ。
 そこで、山頂までの山道を整備する。そうすれば、この山道をたどることによって、体力のある人ならば誰でも山頂に達することができる。そして山頂における眺めを知ることができる。「そうか、こういう展望を得られるのか」というふうに新たな知見を得る。


kiminonaha-san.jpg


 一方、体力のない人(将棋の棋力の不十分な人)には、たとえ山頂までの道筋を用意されても、山頂にまで登ることは不可能だ。本人は登っているつもりでも、いつのまにか脱落している。当然、山頂における展望を得ることはできない。(途中で脱落しているからだ。)

 ま、山道を用意したからといって、登ろうとした人の全員が山頂にまで達する必要はない。全員のうちの何割かは、山頂に到達できる。そこで、新たな展望や知見を知る。そういう人々がたくさんいれば、本サイトの目的は達成されたことになる。
 実際、すでに5万に近いアクセスがある。人数で数えても、その半分ぐらいの人数の人が見たはずだ。そしてまた、そのうち半分ぐらいの人は、山頂にまで到達したと思える。
 とすれば、本サイトで解説したことの効果は、十分にあったことになる。

 一方、本サイトの話を読んでも、「黒だという絶対的な確証は得られないぞ」と文句を言う人もいる。
 まあ、それは仕方ない。本項は「万人を、有無を言わせず説得する」というタイプの記事ではない。本項は科学的な論文ではない。「十分な棋力と将棋センスのある人に向けて、たどるべき道筋を与える」というだけのものだ。そこで脱落する人がたくさんいるのは、仕方がない。
 本サイトの話を読んで、「よくわかった。頭がクリアになった」という人がたくさんいる。(ツイッターにも書かれている。)そういう事実があるのであれば、著者としても満足だ。
 一方、理解できない人がいるのは、「それは当然だろう」と言うしかない。本サイトの話は、数学的な証明でもないし、科学的な証明でもない。どちらかと言えば、芸術的な理解についての話に近い。
( ※ センスのない人には、わかってもらえるはずがない。)
 

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posted by 管理人 at 20:05| Comment(13) |  将棋 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
3四馬の狙いって1五歩〜1二歩、2四歩を見せて相手の攻めの催促じゃないの?横歩取りで部分的によく見る形になるからソフトらしさとか違和感とか全くないよ。結果的にその催促された攻めが絶妙に受け流されただけで。

山道整備も必要ですが、つながっていればいいやで作ると道に踏み入ってもらえませんよ。三浦渡辺戦の4四角成のあたりでソフト使ってると匂わせてたのは有段者なら「こいつ正気か?」ってなりますから。
4五桂を2二銀〜4四歩の流れをその先にどうなるか考えずに指すわけがない。どこまで考えてるかとなると4四角成までは研究済みなのかってふつうなりますからね。
Posted by ななし? at 2016年10月15日 22:22
> 4四角成までは研究済み

もちろんそうだが、その「研究済み」というのが、対局中のことだろう、というのが、私の推測。まあ、五分五分ではなく、六分四分ぐらいの可能性で。
あと、PC も含めるなら、9分1分ですね。
事前に自分が独自で発見したという可能性は、1割ぐらいしかないと思う。
だいたい、そんなに優秀なら、カンニングするはずがない。今までだって、大学入試でカンニングしたのは、劣等生ばかりです。
Posted by 管理人 at 2016年10月15日 22:26
昔、渡辺竜王が3連敗の後に4連勝で羽生の
挑戦を退けたシリーズの4局目の棋譜を並べて、
なんじゃこりゃーと衝撃を受けたのを思い出した。
Posted by どら猫 at 2016年10月15日 22:43
なんか自分の考えが伝え切れてないんかね。
>その「研究済み」というのが、対局中のことだろう
まず4五桂の直前は定跡形ですよね。そして応手は2二銀、4四銀、4二銀ぐらいしかありませんよね。ならその局面は用意できてますよね。で、本譜の4四歩までも簡単に想定できますよね。
そこからソフト回すなら家で回しません?下手したら完全に形勢が取り返せないところまでいってるんですよ。三浦渡辺戦の序盤で、対局中にソフトを使ってないといってる根拠は
非常に想定しやすい局面
勝ち負けがついてるかもしれない盤面
そもそものあの局面での桂跳ねが無理筋とされてる中で跳ねてからソフトを回すやつなんていないという考えです。
>事前に自分が独自で発見したという可能性は、1割ぐらいしかないと思う。
家でソフト相手に指した手を対局で使うのはソフト指しではないですよね?なら別にいいのでは。後、ソフト疑惑がかかる前のNHK杯で5二金型ではないですが桂跳ね速攻を指してましたし(郷田戦だったかな)、この戦型の第一人者というイメージがあるので1割ぐらいはけなしすぎかなと。
>今までだって、大学入試でカンニングしたのは、劣等生ばかりです。
疑惑中にも康光先生が早指しで吹き飛ばされてるんでその言い方は流れ弾くらう人がいるので変えた方が。
Posted by ななし? at 2016年10月15日 22:55
> 家でソフト相手に指した手を対局で使う

私が言っているのは、そうじゃない。家で自分が後手で、先手がソフト。そのソフトが、今回の先手の手を打ったので、それを真似した、という意味。発見したのは、自分ではなく、ソフト。

ま、悪くはないけどね。これを彼の実力と見なすべきではない。
(この件、前にも述べた。)

> 早指し

早指しなんて、当てにならん。奨励会クラスがA級に勝つことだって、しばしばあるだろうし。
Posted by 管理人 at 2016年10月16日 00:32
竜王戦3番勝負ですが、技巧で棋譜解析すると三浦九段の指した手は、特に長考後は一致率高くないですよ。全体的に棋譜解析しても一致率は平凡と言えるレベルです。
もう一点、三浦九段の不正の有無は現時点で証明されていないわけで、ようは噂レベルの内容をHPに公開しておられると、民事、刑事ともに名誉棄損の要件に該当する恐れがありますが大丈夫なのか?と心配になりますが…
Posted by 棋譜解析する者 at 2016年10月16日 02:00
>家で自分が後手で、先手がソフト。
あの形で4五桂と跳ねるソフトはなかった気が?というかあったらツツカナ新手やポナンザ新手のように誰が指そうが周りが気づいてソフトの名前が付いた新手になる。
あと、たびたび出てるが4四角成までは難しい手順ではない。5三桂成らず、5一玉までで読みを打ち切ってたのがもう2手指した局面が先手行けると発見されただけ。また都成新手のように今まで読みが打ち切られていたのを行けると再発見する定跡は奨励会員あたりでも平気で出ている。
>早指しなんて、当てにならん。奨励会クラスがA級に勝つことだって、しばしばあるだろうし。
管理人はどのあたりから三浦九段が不正し始めたと思ってるのですか?夏になって離席が増えだして疑われ始めたってことは今年になった時点ではA級の実力は持ってたはずなんですが?
Posted by ななし? at 2016年10月16日 07:11
> A級の実力は持ってた

そうですね。今でももっていると思います。別項で「B級かC級」と書いたのは書きすぎで、誤り。訂正しました。

どうして彼はやったか、というのは、次の項目あたりで書く予定だが、未定。

いつからやったか、は、私の興味の関心外なので、考えるつもりはない。いつでもいい。
Posted by 管理人 at 2016年10月16日 09:21
訂正どうもです。
>いつからやったか
棋士仲間からは夏ごろから離席が増えて、勝ち将棋の棋譜の一致率がそれまでより平均的に上昇したのが調査依頼の原因のようですし、やってるとしたら連敗以降でそれまでは白だと思います(うたがわれた根拠の一部がそれまでの棋譜との違いだから)。
いつでもいいのは自分も同意なんですがコメント欄を見てると正直大きく勘違いしてる人いそうなんですよね。次の項目を立てるときにでも付け加えてくれると助かります。
Posted by ななし? at 2016年10月16日 15:02
 竜王戦に狙いを定めていたとすると、1月15日 の勝利のころからやっていたとしても、不思議ではない。「竜王戦で全部勝ち、他の棋戦では帳尻あわせのために負ける」という作戦だとしたら、1月15日 以後のすべての竜王戦が該当しそうだ。(三番勝負の1局を除く。)
 1月15日の分の情報がないので、時期については何とも言えません。

 なお、去年はB級で、今年はA級なので、去年は順位戦でやった可能性もある。ここも不明。

 2014年度は、前半が連敗で、後半が連勝なので、この年度が不正をしはじめた時期だと推測することもできる。
 http://kishi.a.la9.jp/2014R/1204.html
Posted by 管理人 at 2016年10月16日 15:50
http://i2chmeijin.blog.fc2.com/blog-entry-4583.html
別サイト持ち出してすみませんが、6月以前は竜王戦を含んでも一致率は低いです。ソフト指しながら一致率低くしてなおかつ勝つ技術があるなら夏以降の高一致率はちょっと考えにくいです。
あとそのころは不自然な離席とかはないです。流石に去年からやってたとしたら今まで離席が少なくてもやれてたのに夏からやれなくなった理由が必要そうです。
Posted by ななし?@名前つけよっかな? at 2016年10月16日 16:23
ずいぶん前の記事で恐縮ですが、気になりまして。


次のようにこちらで書かれてますが、


「歩を取ることで、駒得1点となる。これはいかにもコンピュータらしい手だ。たとえ1点でも駒得をすることを重視するのは、コンピュータらしい」


元記事では、
http://www.yomu-kokkai.com/entry/2016/10/14/124025

▲3四馬はなんとなく「ソフトっぽい」手ではある。というのも、人間は3歩以上だと、ほとんど歩の枚数を気にしないのに対し(歩が0か1かは気にする)、コンピューターはちゃんと歩を一点で数える。この局面、おそらくソフト的には駒得という判断だろう。
ただ、検討陣は候補に入れていたし、普通にある手ではある。この辺は棋風もあるのだろうけど。(森下先生なら迷わず取るだろう)
4四に馬がいると、後手から△3三銀と形を良くされてしまう(3四にいれば▲2三馬で先手優勢)ので、本譜のように▲5六馬と引きつける構想だったとすると自然かもしれない。


と書かれています。


自分には、かなり違うことを言っているように見えます。


文章の引用の際には主観が入りすぎないよう、ご注意されて方がいいのでは。
Posted by ななし?? at 2017年10月08日 14:47
> 元記事では、

 そのリンク、元記事じゃないでしょ。私は別に、その記事を元記事として示しているわけじゃありません。どこかよその話でしょ。よく聞く話だし。
Posted by 管理人 at 2017年10月08日 14:54
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