2016年10月12日

◆ エタノール燃料電池車(日産)

 水素のかわりにエタノールを使う燃料電池車を日産が開発した。

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 水素のかわりにエタノールを使う燃料電池車を日産が開発した。
  → 日産、世界初となる固体酸化物型燃料電池(SOFC)を採用
  → バイオエタノールを水素に改質して電気を発生させる新たな燃料電池自動車

 エタノールは、水素と違って炭酸ガスを発生するのだが、エタノールとしてバイオエタノールを使えば、炭素の発生量は増えない(カーボンニュートラルだ)という理屈。






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 これはなかな優れているのだが、批判もある。
 「水素ステーションなしで済むから、これが普及すると、水素ステーションの建設意欲がしぼむ。そのせいで、水素ステーションありの燃料電池車の普及を拒む」
 というわけ。
  → 日産の新型バイオ車…国の基本計画と逆行、燃料電池車普及を阻害か

 これは、本末転倒な話。
 「難点を解決した新技術が普及すると、難点だらけの高コストな技術が普及されない。そのためには、低コストの技術の普及を阻止するべきだ」
 というわけ。滅茶苦茶の極みだ。(どっちがいいかは、市場任せにしろ、というのが普通だろうに。)

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 さて。以上は前置きだ。このあとで、私の見解が来る。二つある。
  ・ エタノールの燃料電池車は、水素の燃料電池車よりも良い。
  ・ エタノールを使うなら、エタノールハイブリッドが良い。


 以下、順に述べよう。

 エタノールの燃料電池車は、水素の燃料電池車よりも良い


 上記の批判では、
 「エタノールの燃料電池車は、水素の燃料電池車の普及を遅らせる」」
 という趣旨だった。しかし、それでいい、というのが私の見解だ。
 なぜか? 遠い将来ならともかく、近い将来では、水素ステーションの普及なんて、とうてい非現実的だからだ。
 実際、これを理由に、「水素ステーションの普及が無理だから、水素ステーションを必要とする燃料電池車なんか開発しない」というのが、欧州の主流の考え方だ。
  → 欧州車、電気シフト鮮明 VW不正でディーゼルから転換

 なのに、それに反して、水素ステーション方式の燃料電池車を開発しているのは、日本のメーカーぐらいだ。より正確には、トヨタとホンダだけだ。実は、ひところは日産も頑張っていたが、途中で切り替えて、電気自動車一辺倒に転じたようだ。
( ※ 米国メーカーは燃料電池車に熱中しているようだが、もともとたいして技術力はないようだ。トヨタやホンダがすでに販売中である[ 動画 ]のと違って、未発売だ。)

 また、水素ステーションの話を別としても、コスト面や効率などから、「燃料電池車は駄目だ」と言いたい。これは、本サイトでは昔からずっと言っていたことだ。古いところでは下記だ。
  → 燃料電池
  → 燃料電池車の休眠
  → 燃料電池の死

 1番目の項目には、面白い話が引用してある。
 トヨタは1997年の東京モーターショーに燃料電池自動車の試作車を発表し、2005年までに量産化することを宣言した。

 まあ、こんな感じで、昔から「近いうちに燃料電池車を実現します」と言ってい他のだが、いつまでたっても、量産化はされない。

 ※ トヨタ・ミライは、量産ではなく、手作りである。
    → トヨタ「MIRAI」、生産台数は1日3台 担当者が手作業
    → 2016年は2,000台程度、さらに2017年には3,000台程度に拡大
   来年になっても、1日 10台程度。まだ手作りですね。

 ともあれ、水素の燃料電池車なんて、まだまだまともには実用化されない。多額の補助金をもらっても、かろうじて手作り生産されるという程度だ。トヨタみたいに年間 1000万台も生産する会社においては、水素の燃料電池車なんて、無視してもいい量だ。スズメの涙か。
 あと 10年たっても、水素の燃料電池車が大々的に普及することはあるまい。10年後で言えば、本命は、電気自動車だろう。対抗が、エタノールの燃料電池車だろう。

 なお、電気自動車は、そう遠からず、ガソリン車を台数で上回るかもしれない。実際、テスラの電気自動車は、ガソリン車に十分対抗できる。
 《 テスラ・タイプ3、あっという間に30万台を受注! 》
 日本ではあまり報じられないものの、テスラ・モデル3に30万台近いバックオーダーが入ったという。
 やはりガソリンエンジンの代替になる300km以上の航続距離を持ちながら、3万5千ドル(実際はオプションなど加えると4万2千ドルくらいになるそうな)とリーズナブルなことだと思う。リーフと違いデザインだって素晴らしい。
 リーフやボルトを買うならモデル3にする、と言う人は少なくないだろう。私自身、リーフ300万円でモデル3が350万円なら迷わない。航続距離の差を考えれば、モデル3の方が圧倒的にお買い得だからだ。
( → 自動車評論家 国沢光宏





 日産リーフはこれまでの累積生産台数がようやく 20万台。5年かけて、全世界で、この数字。テスラ3は、(たぶん)アメリカだけなのに、3日間で 32万台。
 少なくともテスラに関する限り、電気自動車は新たな時代に入ったと言える。普通のガソリン車よりももっとよく売れるという感じだ。(3日間で 32万台なんて、ガソリン車でも聞いたことがない。)
 
 というわけで、ガソリン社以上にコスパの良い電気自動車がすでに開発された以上は、水素の燃料電池車なんて、出番はないと言えるだろう。機能的に上回る点は何もない一方で、水素ステーションがろくにないという致命的な欠点ばかりがあるからだ。

 ※ 唯一、長所と言えたのが航続距離だが、それももはや電気自動車が追いつきつつある。また、レンジエクステンダー式の PHV にすれば、もともと航続距離の問題は解決される。

 なお、この節の標題は
 「エタノールの燃料電池車は、水素の燃料電池車よりも良い」
 だったが、エタノールの方が特に優れているというよりは、水素の方がダメダメすぎる。電気自動車が圧倒的に強い状況で、水素の方はまったく対抗できそうにない。(特に水素ステーションの点が致命的だ。)
 さらに、もう一つオマケで言うと、水素ステーションを使う方式は、「水素の圧縮と膨張」というところで、ものすごくエネルギーを浪費するので、実用的でない。総合的なエネルギー効率が低いのだ。エネルギーの無駄。この意味でも、実用的でない。

 一方、エタノールの方はどうかというと、水素の燃料電池車よりは、いくらかマシである。
( ※ とはいえ、コスト的には、こちらもおよそ現実的ではない。現実レベルで言えば、エタノールであれ、水素であれ、燃料電池車はコスト的にまったく現実的でない。白金を使うという燃料電池の技術のところで、どうしようもない難点がある。)

 エタノールを使うなら、エタノールハイブリッドが良い


 すでに知られているのは、エタノールの燃料電池車だ。(冒頭で示した日産のもの。)
 しかし、私は別のものを提案したい。こうだ。
 「エタノールを使う内燃機関で発電した、シリーズ方式のハイブリッド」

 ここで、「シリーズ方式のハイブリッド」というのは、先に紹介したものだ。(次期・日産ノートHV )
  → 日産ノートのハイブリッド: Open ブログ

 これのエンジンは、普通のガソリン・エンジンであるらしい。(ただし、ミラーサイクルだと思えるが。)
 ここで、ガソリン・エンジンのかわりに、エタノール・エンジンを使えばいい、というのが、私の提案だ。

 その意図は、下記。
  ・ バイオエタノールを使えば、カーボン・ニュートラルである。
  ・ シリーズ方式のハイブリッドならば、エンジンの負担が少ない。


 後者(エンジンの負担が少ないこと)は、電池とモーターを介することで、エンジンの回転数の変動が少なくて済むからだ。
 次の図を参照。


note-e.jpg
出典:価格コム・読者投稿


 この図から明らかなように、エンジンが作動するのは、運転中の一部の時間だけだ。全体の3割ぐらいの時間。この時間は、エンジン発電の電力と、電池の電力とで、モーター走行しているようだ。一方、他の時間帯は、電池の電力だけでモーター走行しているようだ。(モーターはリーフのモーターと同じ。)
 エンジンが作動する時間帯は、一部だけなのだから、その間だけ、ほぼ理想的な状態で燃焼させているのだろう。当然、燃料の効率は高いだろうし、排ガスはきれいであるはずだ。
 換言すれば、エンジンに異常な負荷がかかったときのように、異常燃焼の黒煙を排出したりはしないはずだ。
 要するに、モーターと電池を介するハイブリッド方式にすることで、エンジンは理想的な燃焼状態だけを使えるので、排ガスはクリーンになるし、燃費も向上する。いいことずくめだ。
 そのことゆえ、シリーズ方式のハイブリッドなら、現行のガソリン車よりも圧倒的に良くなる。
 しかも、エタノールを使うことにすれば、安定した燃焼というメリットをさらに享受できる。
 また、燃費が良くなることで、「ガソリンよりもエネルギー密度が低いので、ガソリンよりも航続距離が短くなる」というエタノールの欠点を補うことができる。

 というわけで、エタノールを使うのであれば、エタノールの燃料電池車よりは、エタノールのハイブリッド車をお薦めしたい。
 理由は? カーボン・ニュートラルという点で、ガソリン車よりも圧倒的に上で、燃料電池車に匹敵する。それでいて、コストはガソリン車とあまり変わらないからだ。
( ※ エタノールの燃料電池車は、コストがものすごく高いので、およそ現実的ではない。)

 《 加筆 》

 エタノール車がブラジル以外では普及していないのは、エタノールのエネルギー密度が低いことで、パワーが出ないからだろう。パワーが2割ダウンすると、エンジンが小さくなったのと同様で、パワー不足の安物自動車になった効果がある。
 通常、高いパワーを享受するために、高出力のエンジンを高価で購入する。なのに、高い金を払ったのが無効化するのだったら、馬鹿馬鹿しい。
 この問題は、シリーズ方式のハイブリッド車を使うことでほぼ解決する。出力は電池の方に頼るから、エンジンのパワー不足はあまり問題にならなくなる。エンジンパワーを拡大するかわりに、エンジンの稼働時間を長くすればいいだけだ。
( ※ おおざっぱには、そう言える。厳密には、ちょっと違うが。)
 というわけで、シリーズ方式のハイブリッドと、エタノール・エンジンは、相性がいい。



 [ 付記1 ]
 上のリーフのグラフは、明らかに日産の資料だと思えるが、どうやら、下記の販促資料が出典らしい。




 [ 付記2 ]
 日産のエタノール燃料電池車が発表されたのは、かなり前のことだ。だから、「情報が古いぞ」と思う読者もいるかもしれない。
 実は、私も前から着目していたのだが、特に紹介するほどのことはないな、と思っていたので、ことさら紹介しなかった。
 ただし、本日になって、
 「エタノールのハイブリッド車だと、いろいろとメリットがあるぞ」
 と思ったので、こちらをメインにして、項目を書いたのでした。日産のエタノール燃料電池車は、話の枕ふうだ。

 [ 付記3 ]
 シリーズ方式のハイブリッドでなく、PHV にしても、話は似たようなことになる。PHV の方が、どちらかと言えば、適している。ただ、PHV は、リチウム電池の量がかなり多くなるので、電気自動車に近くなり、コストが高くなる。そこが難点だ。
 シリーズ方式のハイブリッドだと、リチウム電池の量が少なめで済むので、コストが低くなる。メリットは小さくなるが、デメリットは大幅に低くなる。そこが美点だ。

posted by 管理人 at 22:24| Comment(6) | エネルギー・環境2 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
バイオエタノールは食糧危機を招くので反対。
単なる電池が一番でしょう。電池の積み替えと循環ができる様になってほしいものです。
Posted by 京都の人 at 2016年10月14日 12:38
 バイオエタノール原料は、食料と競合するのはまずいので、最近は捨てられるセルロース系の原料(廃棄物)を使うのが、研究の主流です。
  → http://j.mp/2dogdgo
Posted by 管理人 at 2016年10月14日 12:51
人間の食料の方が価値が高いのであれば食料に競合するソースからのバイオエタノールは経済的にアウトであるので、管理人の信奉する自由競争で全く問題ないのでは?
Posted by 通りすがり at 2016年10月16日 01:13
> 人間の食料の方が価値が高いのであれば

 話はそれほど単純じゃない。

  金持ちにとっての移動の自由 > 貧乏人にとっての食料

 というわけで、金持ちの移動の自由を満たすために、貧乏人が餓死することはある。
 主語が違う、ということね。ここに気づくべし。
Posted by 管理人 at 2016年10月29日 23:07
エタノール燃料電池を利用する最大のメリットはエネルギー変換効率が高いことではないのでしょうか。エタノールが持つ化学エネルギーを動力に変換するときに熱が副生しますが、この熱を利用できるからです。エタノールを水素と一酸化炭素に改質する際に熱が必要ですが、この用途に副生した熱を利用できるはずだからです。
ただ、利用する燃料電池はPEFCではなくSOFCなので、コストが高くなるのではないかと心配ですが。
Posted by 村井正治 at 2016年12月09日 18:41
わが国では、バイオエタノールを燃料にして自動車を駆動させても、そのことだけではCO2排出抑制にはなっていないはずです。
例えば、このエタノールを使って発電をして、得られた電力を電力系統に流し込んだら火力発電所での化石燃料の使用量が減るはずです。
火力発電所での化石燃料使用量を削減できる機会を犠牲にして自動車を駆動したら、間接的にCO2を排出していることと同じになるはずです。
Posted by 村井正治 at 2016年12月10日 08:27
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