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「人工透析患者には多額の費用がかかる」という問題がある。そこで、これを過激なタイトルで訴えた長谷川豊という人が、ネットで炎上騒ぎを起こした。
本文では「こんな状況を放置している官僚は問題だ」という平凡なことを書いているのだが、タイトルでは「患者を殺せ」という過激なタイトルを使ったために、あちこちで非難され、炎上騒ぎを起こした。
→ 長谷川豊 患者 殺せ - Google 検索
本人の弁解によると、あえて炎上を狙って、「日本死ね」というブログ(保育園問題を訴えた記事)を真似したつもりらしい。

しかし、「日本死ね」ならシャレになるが、「患者を殺せ」ではシャレにならない。あまりにも表現が拙いので、非難されて当然だろう。そこで頭を下げておけばまだしも、あえて強弁して自己正当化をしたせいで、とうとう番組を降ろされてしまった。失職。
ま、それはどうでもいい。本項の話題は、医療だ。
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長谷川豊の記事は、これだ。(タイトルは変更済み。)
→ 医者の言うことを何年も無視し続けて自業自得で人工透析になった患者の費用まで全額国負担でなければいけないのか?今のシステムは日本を亡ぼすだけだ!!
一部抜粋しよう。
ちなみに、透析患者には一人年間500万円かかります。
日本人の平均年収以上ですね。
必死に払ってる保険料、そうやって食いつぶされ続けているのです。

まあ、確かにかなりの金がかかる。40歳で発症して、80歳までかかるとしたら、40年間。年間 500万円で、総計 2億円になる。たいそうな金額だ。1人の人間にかける医療費としては、確かに問題視するにたる金額だ。
とはいえ、「確率的に病気になった人には医療費を負担してあげる」という福祉制度を前提とするなら、運の悪い人に多額の費用がかかるのはやむを得ない、とも言える。(別に、節制しないせいで透析を受ける羽目になった人ばかりではない。たいていは先天的な遺伝子上の理由がある。)
とはいえ、こういうことは社会福祉制度の問題だから、本項では扱わないことにしよう。「右派か左派か」という政治の問題は、本ブログの範囲外だ。
本ブログでは、科学的なことを扱う。
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科学的に言えば、人工透析の患者の医療費費用は、劇的に引き下げることができる。その方法は、こうだ。
「 iPS 細胞の技術を使って、人工臓器を作成すればいい」
つまり、人工臓器としての腎臓を使えばいいのだ。仮に、この腎臓が遺伝子的に問題があるとしても、その遺伝子だけを「遺伝子治療」で改良することができる。その技術が、最近も話題の「遺伝子編集技術」だ。
基本となるのは、遺伝子操作技術となる CRISPR-Cas9 である。これは、次のようなものだ。
・ 遺伝子の任意の点を、ちょん切れる。
・ ちょん切ったところ(隙間)に、新たな遺伝子を挿入できる。
つまり、切ったり、くっつけたり、できるわけだ。ハサミとノリの双方があることになる。これによって、遺伝子の加工が自由自在にできるようになった。
( → 遺伝子ドライブとは?: Open ブログ )
この技術と iPS 細胞の技術を使えば、欠陥のない人工臓器をいくらでも作れる。そうなれば、人工透析は不要になるのだ。人工臓器と手術の費用に 1000万円ぐらいがかかるとしても、それで一生の問題が解決する。合計 2億円もかかることはない。圧倒的に費用を縮減できる。

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「だったら、さっさとそうすればいい」
と思うだろう。もちろん、その研究は進んでいた。実用化に近づくところまで進んでいた。ここで述べたとおりだ。
→ 眼の形成(自己組織化): Open ブログ
一部引用しよう。
眼はいかにして形成されるか? この問題は、ダーウィン以来の問題だ。それに対して、「自己組織化」という概念で見事に証明したのが、笹井芳樹(理研CDB 副センター長)だ。
眼というのは複雑な器官である。それは非常に多数の神経束で結びつけられたもので、神経束の一方には脳があり、他方には網膜がある。網膜は眼球と一体化しており、眼球には水晶体や網膜や虹彩などが含まれている。
要するに、複雑な器官と神経とが一体化している、きわめて複雑な器官だ。
これはどうやって形成されたのか? その複雑さにダーウィンが感嘆して以来、生物学では「謎」とされてきた。「これを解明したらノーベル賞」とまで言われた。
それを見事に解明したのが、笹井芳樹だ。彼はもともと細胞の「自己組織化」をテーマとして、ES細胞の研究をしていたのだが、その副産物という形で、この問題を解明した。というのは、「眼はいかにして形成されるか?」という問題の解答は、「自己組織化」という概念で説明されるからだ。
簡単に言えば、こうだ。眼の形成に当たっては、その複雑な組織の一つ一つについて、遺伝子が設計図を備えているわけではない。かわりに、眼の形成をするための細胞の作り方だけを、遺伝子は情報としてもっている。そして、遺伝子に従って細胞が形成されたあとで、その細胞の能力(= 自己組織化の能力)によって、細胞から眼が形成されていく。
こういうふうにして、「自己組織化」という概念で、眼の形成は説明された。ただ、説明だけなら、ただの仮説にすぎない。その仮説を見事に実証したのが、笹井芳樹だ。彼はマウスの ES細胞から、実際に複雑な眼球の立体構造を形成させた。その過程では、「誘導因子」のようなものだけが作用することで、ただの ES細胞から複雑な眼球の組織までが自動的に形成されるに至った。
この成果は実に偉大なことであった。このことがあるから、人間の再生医療は実用化が近いのだ。たとえば、ただの細胞培養であるなら、肝臓の組織培養とか、皮膚組織の培養とか、そういうことは容易にできると推察される。
ところが、それだけでなく、複雑な眼の器官ですら、再生医療によって可能なのだ。
複雑な眼の器官ですら、人工的に作ることができる。なぜなら、生物には「自己組織化」という機能があるからだ。遺伝子にもともと備わったその機能を発現させるだけでいい。人があれこれと組み合わせたりちょん切ったりする必要はなく、遺伝子に任せてほったらかしておくだけで、組織が自動的に形成されるのだ。
これは実に偉大な発見だった。その発見はノーベル賞にも値する。彼がどんどん研究を進めれば、腎臓だけでなく、他の臓器も次々と人工臓器が作成できるようになっただろう。
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ところが、今となっては、その夢はしぼんだ。なぜか? 人々が(冤罪によって)笹井さんと小保方さんを批判したからだ。ただの実験ミスや認識ミスにすぎなかった問題を、「意図的な悪意ある捏造」と見なして、攻撃した。そのせいで、世界的な天才の命を奪ってしまった。
しかも、その天才は、莫大な数の人々の命を救ってくれるはずだったのだ。人々の命を救ってくれるはずの人を死なせたことで、人々は自分たちの命が救われるすべを奪われたのだ。あるいは、莫大な金額を払う羽目になったのだ。
この件は下記でも述べた。
→ 改革委と理事長の責任(STAP・笹井): Open ブログ
一部抜粋しよう。
どうやって臓器を誕生させるか?
仮に、皮膚とか肝臓とかの細胞ならば、その細胞を増殖させるだけでいいだろう。単に同じ細胞がたくさんできるだけだ。
しかしながら、心臓とか肺とか指とか足とか、そういう臓器や肉体器官をつくるには、「その細胞を増殖させる」という方式では無理だ。単に細胞を培養するだけでは、ES細胞や iPS細胞から、臓器や肉体器官をつくることはできないのだ。ここで、再生医療の研究は、壁にぶつかった。
そこに登場したのが、スーパースターである笹井さんだ。彼は何と、ES細胞から臓器を作り出してしまったのだ! その方法が「自己組織化」である。つまり、遺伝子をうまくコントロールすることで、胎児が自分の組織を作るように、細胞が自発的に組織を作るように仕向けたのだ。しかも、そこでは、特定の臓器だけを形成できるから、「個体を死なせる」「個体を損なう」というような問題は生じない。(個体はもともと存在していないからだ。)
こうして彼はまさしく「臓器を再生する」ということが人類にとって可能であることを示した。そして、そのことは、iPS細胞が実用化されたあとでは、必要不可欠になる技術なのである。
現時点では iPS 細胞は、皮膚のシートぐらいしかできていない。臓器を作るのは、はるか遠い先の課題だ。とはいえ、それは、ES細胞を用いることで、笹井さんが道を切り開いてくれたのだ。そして、その方法を応用するだけで、iPS細胞から再生臓器が形成されるはずなのである。
つまり、iPS細胞による皮膚の移植が成功してから数年後に、笹井さんの自己組織化の技術を使って、iPS細胞から再生臓器が形成されるはずなのである。そのことで、人類の再生医療は大幅な進歩を得るはずなのだ。それによって助かる人命の数は途方もな医療になるだろう。非常に多くの人が恩恵を得るはずだ。
最終的には、車椅子の人などはいなくなるかもしれない。なぜなら、たとえ足がちょん切れても、新たな足を生やすことができるようになるかもしれないからだ。少なくともそれは夢物語ではない。笹井さんの開発した技術を使えば、手のない人には手を、足のない人には足を、目のない人には目を、髪のない人には髪を、それぞれ与えることができるのである。それほどにも素晴らしい技術開発をした。そして、今もなお、その技術開発に邁進している。(世界のトップレレベルだ。)
なのに、その最高の研究者を失ったのだ。これは再生医療にとって、途方もない痛手である。下手をすると、「ES細胞では再生臓器ができたが、iPS細胞では再生臓器ができない」というふうになりかねない。そこのところの最高の研究者は笹井さんなのだから、その笹井さんを失えば、この分野の研究は大幅に低迷してしまうのだ。
再生医療の分野で笹井さんを失ったことは、人類にとってあまりにも大きな痛手だ。

笹井芳樹 - Wikipedia
【 関連項目 】
STAP細胞事件の真相については、下記項目で示した。
→ STAP細胞事件の真犯人: Open ブログ
一部抜粋しよう。
ここまで見れば、物事の本質がわかる。
今回の問題が起こったのは、誰かが意図的に捏造をしたからではない。「研究全体の統括者と、実験の遂行者とが、別々の人物である」ということがあった。そのことから、ミス実験が正常実験だと勘違いされてしまったのだ。
とすれば、すべての根源は、「研究全体の統括者と、実験の遂行者とが、別々の人物である」ということだったのだ。
これは一種のヒューマンエラーである。組織の統括者が誰であるかよくわからないほど無責任な体制だった。かくて、責任の所在がはっきりとしないまま、デタラメがまかり通る。……こういうことは、よくあることだ。
結論としては、STAP細胞の事件は、「船頭多くして舟陸に上がる」という形で理解できる。船頭が一人で統括していれば、何事も起こらなかっただろう。ところが、船頭が二人いて、責任体制もはっきりしないまま、それぞれが勝手な思い込みで、ずさんな行動を取った。そのあげく、舟は陸に上がってしまったのだ。
こうして、今回の事件は、「船頭多くして舟陸に上がる」という形で、本質を理解できる。
つまり、これは、犯罪ではなくて、事故の一種なのである。
( ※ 二人羽織のようなものだ。頭と手が分離している。)
……というのも、STAP事件に似ている。
という南堂さんのポリシを真似するなら、臓器移植です。
死体腎を腎不全患者に移植すればいい。新鮮な方が成功率が高いから、脳死移植の方が望ましい。
燃やされているものを活用するんだから、コストは手術代と術後のフォローだけです。
HLAタイピングや免疫抑制剤の進歩で、移植成功率は上がり、フォローも楽になりました。術式もほぼ確立されています。
現状では、腎臓移植ドナーに金は支払われませんから、誰もやりたくない。
よって、腎臓に価格をつけて、買い取ればいいのです。
死者に金が渡っても意味がないから、臓器移植ドナーとして登録するだけで、定期的に金が支払われるようにすればいい。脳死移植を承諾したら、謝礼を高くする。
腎臓そのものを取引するのではないから、インドみたいに、まだ生きている人が、自分の腎臓を売るような非人道的なことは起きません。
たしかにそうですね。
ただ、この件は私も前に書いたことがあるぞ……と思って調べたら、下記。
→ http://openblog.seesaa.net/article/435847908.html
臓器移植法はすでに成立しているが、死後に提供するドナーが少ない。
上記提案は「お金を払う」ですが、死後にお金をもらっても誰も喜ばないから、実効性はほとんどないでしょう。
もっとううまい方法がある。「提供した人だけが提供してもらえる」(※)というシステム。上記リンクに記してあります。
※ すでに提供したというより、死後に提供する意思をすでに示した人。
>死者に金が渡っても意味がないから、臓器移植ドナーとして登録するだけで、定期的に金が支払われるようにすればいい。脳死移植を承諾したら、謝礼を高くする。
Posted by 管理人 at 2016年10月07日 08:00
上記提案は「お金を払う」ですが、死後にお金をもらっても誰も喜ばないから、実効性はほとんどないでしょう。
「お金」は生前?死後?
移植の承諾者に金を払うというのも、変な話。他人の臓器で金儲けなんて、倫理的におかしい。そんなことをするくらいなら、(自分の臓器による)臓器売買の方がまだ倫理的だ。
「自分が出すなら他人に出してもらえる。自分が出さないなら他人に出してもらえない」という制度の方が、はるかに合理的だ。
なお、これは、死刑廃止論の場合と同様だ。
→ http://nando.seesaa.net/article/157741980.html