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IoT が話題になっている。
→ 日米が「IoT」の国際標準策定で協力へ
→ IoT 規格、出遅れ挽回=米独主導に「待った」−日本勢

IoT(物のインターネット)
まあ、IoT は時代の流れだし、推進することは大いに好ましいのだが、一つ、見失われている点がある。障害者の視点だ。
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これがどういう問題を引き起こすかは、次のサイトに例がある。(2013年の例で、ちょっと古いが。)
→ 家電量販店で、大量にリモコンを借りてきて一つ一つ環境制御装置に登録できるか試してみる
重度の障害者は、手足をろくに動かせないので、電化製品を遣うために、環境制御装置というものを使う。
→ 環境制御装置一覧
非常に高額のものが多い。そこで、安価な市販品を代用することがある。音声認識装置と併用した、汎用リモコンだ。
→ iRemocon
→ Kotoshiro (iRemocon用音声認識アプリ)
ところが、これを試してみたら、最新型のエアコンは使えないという。コマンドが複雑化しているので、信号が長大になり、上記のリモコンでは操作できなくなってしまったという。
→ 環境制御装置(iRemocon)に登録してみた結果…
というわけで、せっかく買った最新型のエアコンが、身障者には操作できない、ただの「鉄の箱」になってしまった。何ともひどい結果だ。 (^^);
ところが、上記の人がたまたまそばにある装置を使ったら、うまく作動したという。
どういうことか?
その装置は、古いエアコン(同一メーカー)のリモコンだった。古いエアコンのリモコンの信号でも、新しいエアコンを操作できるわけだ。
しかも、大事なことは、「古いエアコンのリモコンは、短い信号を使っている」ということだ。だから、この古い信号を、身障者の環境制御装置に登録できる。というわけで、
環境制御装置を使って、古いリモコンの信号(のコピー)を発信して、新しいエアコンを操作できるようになったという。
ただし、新しいエアコンにのみ加わった新機能は、操作できないという。
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この人は、たまたま古いリモコンをもっていたから、うまく行った。そうでなければ? ……たぶん、万能型のリモコンを買って、その「古い機種の信号」というのを使えばいいのだろう。そうすれば、古いリモコンをもっているのと同じことになる。

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しかし、ですよ。こんなふうに身障者に迷惑をかけるのは、とんでもないことだ。この人はたまたま電気の知識があったからいいが、たいていの重度身障者は、困ってしまうだろう。エアコンも使えないわけだ。
また、重度身障者でなくても、体をあまり動かせない高齢者や介護老人や病人というものは、かなりいるはずだ。そういう人たちにとっても、問題が生じる。
そして、この問題のすべては、電器メーカーにある。「古い機種では可能であったことが、最新型の機種ではできなくなる」なんて、あまりにもひどすぎる。
では、こういうことは、なぜ起こったか?
それは、「身障者のために」という視点が、最初から欠けていたことだ。
業界では「 IoT はすばらしい」なんて言っているが、そこでは身障者の視点がまったくかけているせいで、状況は以前よりも悪化してしまっている。「エアコンもまともに使えない」というふうになってしまっている。
というわけで、結論としては、
「 IoT というふうに浮かれてばかりいないで、身障者の視点も考えろ」
というふうになる。
そして、これは、高齢者や介護老人や病人が増えている現代社会では、とても重要なことなのだ。
【 関連サイト 】
→ 障害×AI/IoT=イノベーション 「障害者」の視点が、日本のスマート技術を飛躍させる!
身障者のことを考えることが、自社の技術をも向上させる。他人のためにと思ってやることが、自分のためにもなる。「情けは人のためならず」だ。
( ※ 「他人のためでなく自分のためになる」の意。)
→ 米国における IoT(モノのインターネット)に関する取り組みの現状ジェトロ・ニューヨーク事務所 による。ただしなぜか、IPA のサイトにある。
ググったら出てきたので、ここに掲載するが、「障害者」という語は1箇所しか出てこない。残念。
→ AI(人工知能)は、障害者支援の夢を見るか?
IoT でなく AI の方だが、こっちはまだしも身障者の話がある。
なお、「おれは関係ないね」と思う人が多いだろうが、年を取れば、多くの人が体の自由が利かなくなる。他人事だとは思わない方がいいね。