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現代の戦争は、航空戦力と海上戦力が主力であり、陸上戦力は副次的だ。実際、アメリカがイラクやアフガンで戦っているときも、航空戦力が主力であり、陸上戦力は副次的だ。
実際には、陸軍も活躍したが、その主体は、(特殊部隊を除くと)陸軍のヘリや低速プロペラ航空機であって、戦車や自走砲はあまり活躍しなかった。(これらが活躍したのは、戦争が終わったあとの、都市警備などだった。戦争よりも、戦争後の治安維持が目的となる。)
というわけで、陸上戦力は、ほとんどが無駄であると言える。
※ 後述の [ 付記 ] を参照。
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そこで、無駄な戦力である陸上自衛隊を縮小して、その分、航空自衛隊や海上自衛隊を拡大したい。……こういう構想は、軍事専門家なら、みんな考えている。軍事常識と言える。
しかし、その軍事常識が、現実には実行しがたい。なぜか? いくつか理由がある。
・ 陸上自衛隊の隊員規模は大きいので、削減に反対の声が出る。
・ 陸上自衛隊は、災害派遣のときに有益である。
・ 航空自衛隊や海上自衛隊は、兵器によって定員の上限がある。
特に、最後の点が重要だ。航空自衛隊や海上自衛隊は、兵器が有限だ。なのに、兵器もなしに、人間だけをやたらと増やすことができない。一方、陸上自衛隊ならば、銃剣と銃弾ぐらいがあれば歩兵になれるので、(ほとんど兵器なしに)人員を多数にすることができる。

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そこで提案しよう。こうだ。
「陸上自衛隊の定員を5万人減らして、即応自衛官を 10万人増やす」
これならば、人件費を大幅に減らすとともに、いざというとき(災害派遣のとき)の人数を増やすことができる。一石二鳥だ。
現状では、陸上自衛隊の定員は約 15万人。即応自衛官は、陸海空あわせて 8000人程度。
→ 防衛省・自衛隊:防衛省・自衛隊の人員構成
陸上自衛隊の定員を 10万人程度まで(5万人だけ)削減して、一方で、即応自衛官(陸上)を 10万人ぐらい増やしたい。
こうすれば、いざというときに、20万人ぐらいの対応力ができる。現状の 15万人よりも、5万人だけ増える。しかも、コストは大幅に減る。
※ 即応自衛官のコストは
→ 即応予備自衛官 - Wikipedia
以上が、私の提案だ。
なお、この提案は、前に述べた下記項目と関連する。
→ 即応自衛官の不足 (2016年06月07日)
【 補説 】
ついでに、次のことも提案しておく。
(1) 任期の短縮
陸上自衛隊員(正規隊員)の任期は、短縮した方がいい。3〜4年ぐらいで退職してもらうといい。大卒で3年、高卒で4年が目安となる。
任期を短縮すれば、毎年、大量の退職者が生じる。15万人のうち4分の1が退職するとすると、4万人弱が毎年退職することになる。これだけの退職者が出れば、そのうちの何割かを即応自衛官とすることで、即応自衛官 10万人という規模を維持することは可能だろう。
※ あとで調べたら、現状でも、それといくらか似た状態らしい。
→ 2任期で辞めさせられるってマジですか?
(2) 工兵の拡大
陸上自衛隊員(正規隊員)の主要任務は、歩兵よりも、工兵の方がいい。理由は下記。
・ 海外 PKO などで、工兵の任務が増えている。
・ 重機の操作などの技能を学べば、建設会社に就職できる。
特に、後者が重要だ。自衛隊で重機の操作を学んだあとで、建設会社に就職するようになれば、一石二鳥となる。
「本人はきちんと技能を得て、ちゃんと就職できる」
「建設業界は、重機などの人手不足を解消できる」
なお、オマケで言うと、次の利点もある。
・ ゴジラが襲来したとき、重機で退治できる。
[ 付記1 ]
現代の戦争では、陸上戦力は重要ではない。
米国ならば、外国を侵略ないし支配することもあるので、戦車などの活躍の場もありそうだ。

しかし日本は、専守防衛なので、戦争中に戦車の活躍の場面はなさそうだ。敵軍の戦車が日本に攻めてくるとしたら、すでに日本が制空権を失った状態(航空戦力が壊滅した状態)であって、敗北が確定した状態である。この場合には、無駄な抵抗をしないで、さっさと降伏するのが最善だ。ゆえに、敗北が決定したあとで無駄な抵抗をするだけの陸上戦力は、単に敗北後の被害を拡大するだけの意味しかない、有害なものである。ない方がマシだ、とさえ言える。
その一例が、オスプレイだ。これが日本に導入された理由は、陸上自衛隊の予算が余っているので、何とか 3000億円を使いたいと思って、こういう超高額なヘリコプターを買うことになった。
どうせ 3000億円も出すなら、航空戦力のユーロファイターでも買えばよほど有効なのに、ポンコツの F15 と F4 しかないような状態で、中国の最新鋭の Su-35 と張り合うことになる。現状では、航空戦力では、日本は中国に圧倒的に劣っている。
※ 漫画の「空母いぶき」では F-35 が配備されているが、
あれはただのフィクションだ。現実は F15 と F4 だ。
http://amzn.to/2dd4u3w
以上の件(オスプレイ購入のせいで日本の航空戦力は中国に負けるという話)は、下記で述べた。
→ オスプレイ導入の是非
[ 付記2 ]
「戦車は無効だ」という点については、石破・元防衛相が指摘している。
《 石破氏:ゴジラを攻撃した戦車はどこから来たか 》
神奈川方面からゴジラが東京にやって来た。すると多摩川の河川敷に、最新鋭の戦車がズラーッと並んでいたでしょう。あの戦車、どこから、どうやって来たんでしょうね。
本州にはあんな数の戦車がないんですけどね。日本では、最新鋭の戦車はだいたい北海道に配備してある。だからリアルさを追求するのであれば、北海道から多摩川までどうやって持ってきたのかも見たかった気はしますね。空輸するにも、日本は戦車を大量に運ぶだけの飛行機を持っていませんから。
だから私は防衛庁長官・防衛大臣の時代に、「戦車を600両も持ってどうするのだ?」と尋ねたことがありました。最新鋭の戦車を北海道ばかりに配備していることに対しても「ロシアが戦車で攻めてくる可能性があるのか?」「北海道で戦車同士が打ち合うことが本当に起きるのか」と聞きました。私の考えでは、ゼロとは言えないけど、まず起こらない。
では皇居があり、国会議事堂があり、霞ヶ関があり、丸の内がある東京はどうやって守るのか。もちろん東京だけが大事とは考えていませんが、首都中枢を守るのは国家防衛の基本の一つでしょう。北海道から戦車が駆けつける頃には、みんな終わっている。
そうしたら「大臣は戦車がお嫌いですか?」と言われました。でも好きとか嫌いとか、そういう問題じゃないだろうと。
( → 日経トレンディネット )
日本の防衛省というものが、いかに荒唐無稽であるか、よくわかる。「ロシアは必ず北海道を攻めてくる」と想定して、その想定のもとでのプランしか考えていない。そして、ロシアが北海道をスルーしたら、とたんにすべては瓦解する。
プランが瓦解するだけならまだしも、同時に日本も瓦解してしまうんだが。
[ 付記3 ]
「ロシアが日本(特に東京)を攻めてくることなんかないだろ」
と思うかもしれないが、さにあらず。現状では、トランプが大統領になる可能性も、4割ぐらいはありそうだ。で、トランプは、「日本のために戦争するくらいなら、日本をロシアにくれてやる。米国民が犠牲になるのはまっぴらだ」と言いかねない。
現実には、日本をロシアにくれてやったら、米国は大損する。高度な技術力を奪われて、ロシアの軍事力が大幅に増強されるからだ。
(似たことは、第二次大戦中にもあった。ドイツがチェコを侵略したのを、欧州諸国は傍観した。しかしチェコは高度な工業力があったので、チェコを奪ったドイツは工業力により軍事力を飛躍的に向上させた。そのあと、ドイツはフランスを占領し、イギリスを攻撃し、ロシアを攻撃した。)
で、トランプも危ないが、プーチンはもっと危ない。何しろ、彼は北方領土占領を正当化している。その理由は、「戦争で正当に奪ったものだ」ということだ。(ま、侵略主義を満々で主張している。)
で、そのロシアと日本は、和平条約を結んでいないので、いまだに交戦状態にあることになる。とすれば、ロシアはいつでも日本を侵略できるのだ。
一方、日本はサンフランシスコ条約で、領土を放棄し、かつ、戦争に終止符を打った。
となると、日本は戦争ができないのに、ロシアは戦争を続けることができる。となれば、ロシアはいつでも日本を攻撃して侵略できるのだ。
ところで、災害時、建設業関係にばかり即応隊がいたら人道支援が進む代わりに災害復旧が遅れません? 今はいいけど、将来の話をすると電気ガス水道というインフラは全部地下にあるから復旧時に誰かが道路を掘り起こしてあげないといけない。
その任務も自衛隊が負う感じ? そうすると人道支援に遅れが出るような?
自衛隊上がりの地方役所員や警察も同時に増やしたらどうですか? そうすれば警察も人道支援に当たれるでしょ
災害時に建設産業で人手不足になるかも……という話は考えていて、書こうとしたのだが、書き忘れていました。そこで、ここに書きます。
建設業の就労者数は 500万人もいる。
http://j.mp/2ddR3An
このあと、毎年3万人ずつ自衛隊から参入すれば、20年間で 60万人になる。いくらかやめるとしても、40〜50万人ぐらいは残りそうだ。
そこから、一時的に10万人が抜けても、差し引きして、 30〜40万人、現状より増えている。現状より改善こそすれ、悪化はしない。
まあ、実際建設業に対して優先的に斡旋してるみたいですし、この2回の震災で制度の問題も浮き彫りになりました。偉い人が話し合って改善されると良いですね。