2016年09月26日

◆ 遺伝子ドライブとは?

 遺伝子ドライブとは何か? 解説しよう。

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 現時点では、ネット上に情報がない。Wikipedia (日本語版)にも項目がない。そこで私が簡単に解説する。

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 基本となるのは、遺伝子操作技術となる CRISPR-Cas9 である。これは、次のようなものだ。
  ・ 遺伝子の任意の点を、ちょん切れる。
  ・ ちょん切ったところ(隙間)に、新たな遺伝子を挿入できる。


 つまり、切ったり、くっつけたり、できるわけだ。ハサミとノリの双方があることになる。これによって、遺伝子の加工が自由自在にできるようになった。
( ※ 場所の指定には、RNA を使う。)

 詳細は、下記。
  → ノーベル賞候補・ゲノム編集技術「CRISPR/Cas9システム」 - むしブロ

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 さて。遺伝子ドライブとは何か? 
 上記の CRISPR-Cas9 の方法で、既存の遺伝子に対して、「自分自身をコピーする機能」という能力を持つ部分を挿入できる。次のように。


 元 ━━━━━━━━━━━
 新 ━━━━━━━━━━━━━━



 元の DNA は、青と緑がつながっている形だった。
 この中間位置を切って、その隙間に、赤を挿入する。 CRISPR-Cas9 を使えば、そうすることができる。

 さて。この赤の部分は、「自分自身をコピーする機能」という能力を持つことがある。(それが遺伝子ドライブだ。)すると、どうなるか?

 この新 DNA が単体で存在している間は、何も生じない。しかし、新 DNA のそばに、元の DNA が存在すると、新 DNA の赤は、「自分自身をコピーする機能」によって、新 DNA の赤を、元の DNA にコピーする。



 (1)
 元 ━━━━━━━━━━━

 新 ━━━━━━━━━━━━━━


 (2)
 元 ━━━━━━   ━━━━━
          ↑
 新 ━━━━━━━━━━━━━━


 (3)
 元 ━━━━━━━━━━━━━━

 新 ━━━━━━━━━━━━━━



 以上のようにして、新たに挿入した遺伝子を、元からある遺伝子に自動複製することができる。「自動複製」というのは、人間の操作なしに、DNA が勝手にそういう操作(自己コピー)をするからだ。

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 以上のことは、英語版 Wikipedia にも記述がある。下記の図が用いられている。


gene_drive.png

 該当箇所を引用すると、次の通り。( Excite による機械翻訳も記す。)
Molecular mechanisms

At the molecular level, endonuclease gene drives work by cutting chromosomes that do not encode the drive at a specific site, inducing the cell to repair the damage by copying the drive sequence onto the damaged chromosome. This is derived from genome editing techniques and similarly relies on the fact that double strand breaks are most frequently repaired by homologous recombination if a template is present, and less often by non-homologous end joining. The cell then has two copies of the drive sequence. To achieve this behavior, endonuclease gene drives consist in two nested elements:

 分子のレベルでは、エンドヌクレアーゼ遺伝子ドライブは、具体的なサイトでドライブをエンコードしない染色体を切って作動し、細胞が、損われた染色体の上にドライブ連続をコピーして損害を修理することを説得する。これはゲノム編集テクニックから引き出されて、同様に、最も頻繁に2倍の糸破壊がもしテンプレートの存在相同の再結合、およびそれほどしばしば 非相同の終わりとの参加での に修理されるという事実に頼っている。セルはその時ドライブ連続の2つのコピーを持っている。この行動を達成するために、エンドヌクレアーゼ遺伝子ドライブは、2つのネスティングされた要素に存在する:

either a homing endonuclease or a RNA-guided endonuclease (e.g. Cas9 or Cpf1) and its guide RNA, that cuts the target sequence in recipient cells
a template sequence used by the DNA repair machinery after the target sequence is cut. To achieve the self propagating nature of gene drives, this repair template contains at least the endonuclease sequence. Because the template must be used to repair a double-strand break at the cutting site, its sides are homologous to the sequences that are adjacent to the cutting site in the host genome. By targeting the gene drive to a gene coding sequence, this gene will be inactivated; additional sequences can be introduced in the gene drive to encode new functions.

帰巣能力エンドヌクレアーゼまたはRNA-誘導されたエンドヌクレアーゼ(例えば、Cas9またはCpf1)、およびそれが、目標連続を、受領するセルに切開するそのガイドRNA
目標連続の後にDNA修理機械により使われたテンプレート連鎖は減らされる。遺伝子ドライブの自身伝達性質を達成するために、この修理テンプレートは少なくともエンドヌクレアーゼ連続を含んでいる。切断サイトで2本鎖の破壊を修理するために、テンプレートが使用されなければならないので、その側は、ホストのゲノムの切断サイトと隣接した連鎖のために相同である。遺伝子コード化連鎖に遺伝子ドライブをターゲットとすることによって、この遺伝子は不活性化される;追加の連鎖は、新しい機能をエンコードするために、遺伝子ドライブにおいて導入できる。

As a result, the gene drive insertion in the genome will re-occur in each organism that inherits one copy of the modification and one copy of the wild-type gene. If the gene drive is already present in the egg cell (e.g. when received from one parent), all the gametes of the individual will carry the gene drive (instead of 50% in the case of a normal gene).

結果として、ゲノムへの遺伝子ドライブ挿入物は、部分修正の1つのコピー、および野生型の遺伝子の1つのコピーを引き継ぐ個々の有機体に再存在する。もし卵子(例えば、1人の親から受け取られる時)ですでに遺伝子ドライブが存在するならば、個人のすべての配偶子は遺伝子ドライブを運ぶ(正常な遺伝子についての50%の代わりに)。


 ついでだが、Google の自動翻訳は下記ページ。
  → Google の自動翻訳(遺伝子ドライブ)

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 遺伝子ドライブを使うと、新たな遺伝子を(自己コピーによって)同一種の生物全体に急速に増やすことができる。その理由は、上記でわかるだろう。

 比喩で説明すると、「ゾンビの感染」である。人間がゾンビに感染すると、感染した人もゾンビになる。最初のゾンビは1固体だけであっても、ゾンビに感染した人もまたゾンビになるので、ゾンビは次々と増殖していく。ゾンビの自己複製。かくて、最初は1個体だけだったゾンビが、多くの人間に次々と感染していって、最終的にはすべての人間がゾンビになる。……というわけだ。

 ──

 これと同じことを、「蚊とマラリア」という形で実行しようという試みがある。「マラリア原虫を殺す遺伝子」を、遺伝子ドライブの形で次々と自己複製させることで、蚊の全体にその遺伝子をもたせよう、というものだ。この件は、次項で述べる。



 【 関連サイト 】

 わかりやすい情報サイトがある。
  → ジェニファー・カーン: 1つの生物種全体を永久に変えてしまう遺伝子編集技術

 一部抜粋しよう。
どうやって形質を 広めたらいいのか? 巧妙な方法が必要です。

2年前 ハーバード大の生物学者 ケヴィン・エスヴェルトは 対象の新しい遺伝子だけでなく カット&ペーストの機構も CRISPRに埋め込ませたら どうなるだろうと考えました 言い換えると CRISPR に自分自身も コピー&ペーストさせるということです 止まることを知らない遺伝子編集マシンが できることでしょう そしてそれが まさに起きたことでした エスヴェルトの作った CRISPR遺伝子ドライブは 形質が受け継がれることを 保証するだけでなく 生殖細胞に使われると 新しい遺伝子を すべての子の両方の染色体に 自動的にコピーするんです 一括置換のようなものです 科学用語で言うなら ヘテロ接合形質のホモ接合化です。

遺伝子ドライブが 注目に値し 強力で 恐ろしくもあるのは それが もはや成り立たない ところです 与えた形質が 飛べない蚊のような 大きな進化的欠点を 持つのでない限り CRISPR遺伝子ドライブは その形質が 集団のすべての個体に行き渡るまで 容赦なく広まり続けます うまく働く遺伝子ドライブを作るのは 簡単ではありませんが ジェームズやエスヴェルトは 可能だと考えています。

posted by 管理人 at 20:21 | Comment(1) | 生物・進化 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
すごい技術ですね。
自然選択や遺伝的浮動と関係なく、1世代毎に倍倍ゲームで増えていくわけですね。
遺伝子編集にこんな使い方があるとは気づきませんでした。
Posted by ishi at 2016年09月28日 07:41
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