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( ※ 本項の実際の掲載日は 2016-09-06 です。)
岩泉町で洪水の被害が大きくなったのは、人間が川の水位を見ていたからだ。川の水位を見て、「まだまだ大丈夫。避難警報を出すのは、危険が迫ってからせばいい」と思っていた。ここに根源がある。
とはいえ、それは話の核心だ。その前に、現実の状況を見よう。現実には、とんでもないお間抜けがあった。
水位が避難勧告を出す基準に達していたのに、それを報告しなかったせいで、避難勧告を出せなかったのだ。なぜ? 電話が忙しかったから。(馬鹿丸出し)
《 水位が避難勧告基準、町長に報告せず 》
台風10号による豪雨で15人が死亡した岩手県岩泉町で、台風上陸当日の8月30日、小本川の水位が避難勧告を出す基準に達していたのに、町の担当者が電話対応などに追われ、発令者である町長に報告されていなかったことが分かった。
町によると、避難勧告などを出す業務を担当していたのは町の災害警戒本部の職員3人で、パソコンで小本川の赤鹿水位観測所の水位を監視していた。県が設置した同観測所は、小本川沿いに立つグループホームから直線で約2キロ下流にある。
( → 読売新聞 2016-09-05 )
紙の新聞の記事によると、水位を知って避難勧告を出すのにかかる時間は、たったの1〜2分。なのに、なぜそうしなかったか? 電話が次々とかかってくるので、その対応に手を取られて、避難勧告を出せなかったという。
ふうむ。電話なんか、単に出なければいいだけだと思うのだが、それだけの知恵もないらしい。電話に手間を取られて、避難勧告は出さず。結果的には、死者 15人以上。
人の命よりも、電話が大事、というわけ。今の風潮かもね。
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上の話は、まるで冗談か漫才みたいな、お間抜けな話だ。では、このお間抜けを解決すれば、大丈夫だったか?
いや、違う。実を言うと、このときに避難勧告を出しても、無意味だったようだ。間抜けであろうと、間抜けでなかろうと、どっちみち多大な被害は避けられなかったようだ。なぜか? もっと重大な根源的な問題があったからだ。
そのことは、次の記事を見るとわかる。
9人の遺体が見つかった高齢者グループホーム「楽ん楽ん」から下流約3.5キロにある赤鹿橋の水位はグラフの通り。30日午後6時から午後7時にかけ約2メートル急上昇して5.10メートルに。午後8時に6.6メートルを超えて水位がピークとなった。
堤防高は4.87メートル。30日午後7時ごろから31日午前0時ごろまで堤防高を超える水位が続いた。
( → 河北新報 )
つまり、水位の上昇があまりにも急激で、もともと時間の余裕はなかったのだ。避難勧告を出しても出さなくても、水位の上昇が急激だから、逃げ出そうと思ったころには、もはやまわりは濁流だらけだった、ということになる。時間にして、10分か 20分の余裕が得られただけだ。それで助かった人もいるかもしれないが、行政の間抜けさを思うと、10分か 20分の余裕は内部連絡でつぶされてしまうだろうから、意味がない。つまり、どっちみち手遅れだったのだ。
比喩的に言えば、こうだ。「狼を見たら警報する」というシステムがあったとしよう。実際には、狼を見た人が電話をしていたので、警報を発さずに、村人は食い殺された。では、電話をしないで、警報を発すれば、村人は助かったか? いや、警報を発しても、手遅れだ。なぜなら、狼は人間よりも足が速いからだ。狼を発見したあとで人間が逃げ出しても、人間はどっちみち食い殺されてしまう。人間が逃げ出すとしたら、狼を発見したあとではなく、狼を発見する前である必要があるのだ。
洪水もまた同じ。(洪水 ≒ 狼)
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では、どうすればいいか? 川が増水してから避難勧告を出しても手遅れだとすれば、川が増水する前に避難勧告を出せばいい。では、どうやって?
その方法を教えよう。こうだ。
「気象庁の予報にしたがって、降水(の地域と量)の予報を見る」
具体的には、気象庁の予報は、ここにある。
→ 東北の雨雲の動き(予想)
この予報を見れば、現在から6時間後まで、降水の地域と量を予想してもらえる。
実際、あの台風の当日、私はこの予報を見ていた。だから、 「これから台風は宮城県から岩手県の東岸を経て、下北半島を斜めに縦断し、津軽海峡を抜けて、日本海に移る」
という経路を前もって知ることができた。当然ながら、岩手県東部にはものすごい量の降雨があるとわかっていた。そして、実際に、そうなった。リアルタイムでツイッターを見ていると、「ただ今下北半島(むつ市)で、ものすごい豪雨です」というツイートを見ることもできた。
こういう情報を、各地で知っていれば、川のある地域では、川が増水する前に避難勧告を出すことができる。
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この方法は、先の「現地の水位を見て、将来の水位を予想する」という方式よりも、圧倒的に優れている。
なぜか? 未来は過去の延長上にはないがゆえに、「過去から未来を予想する」という方式は不正確だからだ。未来を予測するには、「過去のグラフの直線の先だ」という方法もあるが、この方法はあまりにも不正確だ。未来は突発的に変動することがあるのだ。川の水位は突然急上昇することがあるのだ。
一方、天気予報を見ていれば、「降水量が突発的に急上昇する」ということを十分に予想できる。それまで雨雲の色がなかったところに、急激に赤色(降水量多大)の色がかぶされば、そこでは急激に降水量が増えると予想できるし、その地域と下流では急激に水位が上昇すると予想できる。
だからこそ、「気象予報で未来の水位を予想する」という方式が妥当なのだ。
なお、この予想では、降水量や水位の正確な数値は不要である。「莫大な降水量がある」という情報を知るだけでいい。正確な数値を知る必要はないのだ。
また、どの地域で避難するべきかは、降水量だけに依存するわけではない。現地の地形や、現地の防水対策で、避難の必要度は異なる。
例示して言えば、今回の被害に遭った岩泉町は、堤防も貧弱だし、家は川のそばにあるし、川は蛇行しているし、流木のつっかえる橋はあるし、……というふうに、条件は非常に悪かった。こういう地域では、「多大な降水量が予想されている」という時点で、すぐに避難すべきなのだ。
なのに、現実には、「水位が上がったら避難警報を出す」という方針を取った。この方針が根本的に間違っていたのだ。
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避難の判断が現地任せである限りは、現地の人は「推移を見て避難の有無を決める」というふうにしがちだ。
しかし、そうではなく、「気象予報によって決める」というふうにするべきなのだ。
避難関数 = 降水量 × 洪水対策の弱さ
という感じで避難関数を出すといい。降水量は、気象庁のデータを得られる。各地域ごとに現地の降水量を得られるし、また、各地域ごとに上流の降水量も得られる。
洪水対策の弱さは、地域ごとに国交省の診断を受けるとよさそうだ。「岩泉町のこの地域は対策レベルが1(最貧弱)なので、危険度は 10(最大)だ」というふうに。
こういう判定は、自動化もできる。各地域の危険度をあらかじめ入力しておけば、気象庁の降水量予想と連動させることで、自動的に勧告を出せる。たとえば、「岩泉町のこの地域は危険度が 99% です。すぐさま避難してください」というふうに勧告を出せる。それも、台風が直撃する3時間以上前に。しかも、予報が当たる精度は非常に高い。
このようにするべきだ、というのが、私の提案だ。(結論)
[ 付記 ]
「予報が当たる精度」と述べたが、これは、「実際に氾濫したら当たり」なのではなく、「水位が危険水準にまで近づいたら当たり」である。実際に氾濫するかどうかまでは、当たらなくていい。「危険があれば避難する」という行動を取れればいい。
目的は、危険に気づかずに水死者が出るのを避けることである。一方、「予報が空回りしたせいで、避難して、無駄手間を食ったぞ」という住民の苦情を避けることは、目的とはならない。氾濫が起こらなくても、水位が十分に高くなったのを知るだけで、「避難して良かった」と思うはずだ。
どうなんですかねえ。そういうのがくり返されると、「正常化バイアス」というのが効いてきて、「どうせ今度も外れるから逃げなくてもいいや」なんてことになりかねない。
あと、挙げている「東北の雨雲の動き」ですが、これホントに気象庁の予報ですか?Yahoo傘下のどっかの民間企業が「予報業務許可事業者」の資格を取ってやってることではないのですか?
ていうかこのサイト、私もよく利用しますが、1時間先や2時間先はともかく、6時間先ともなるとほとんどデタラメと言っていいほどおかしな予報を表示することがあります。特に風が一定方向に吹いていない(渦をまいている)台風の時などは予報精度が落ちるようです。
参考:1993年に「自由化」され資格さえあれば誰でも気象予報が出せるようになった模様。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%BA%88%E5%A0%B1%E6%A5%AD%E5%8B%99%E8%A8%B1%E5%8F%AF%E4%BA%8B%E6%A5%AD%E8%80%85
ただし、リードタイム1時間でみると、今の精度では、避難指示の空振り率が9割くらいになってしまいそうなので(事例が少ないので実証は不十分ですが、当地方の一級河川、二級河川でのここ5年の動向ではそれくらいになりそうです)、せめて空振り率7割くらいまでは持っていける見込みはほしい。
昨年の台風の際、気象庁もウェザーニュースも毎時間降雨予想を上方修正して、結局、避難勧告が夜中になってしまったことが・・・(被害が出なくてよかった)。
つい昨日も発令された大雨警報が1時間もしないうちに解除に(降雨10mm以下で完全に予想外れ)。
実際に災害が発生しないとニュースにならないし、気象庁(&河川事務所等)はかなり安全側で警報出しているので(その姿勢は正解ですが)、ニュース時点でそうした機関がなにも出していないことはまずありません。
その裏には、10倍くらいの空振り(うちの地方では)があります。
レーダーによる雨量予測を警報に既に取り入れ、実践投入されている土砂災害警戒情報(土壌雨量指数ベース)でも、予測が不安定で、10分おきに閾値の超過ー割込を繰り返すような状況はよくあります。
という訳で、国交省(またはウェザーニュースさん)はその方面の研究に投資してもらえると嬉しいです(上記の数字レベルに達したら採用したい)。
あと、行政職員が馬鹿だと(おおむね真理、そうでない場合もあるが)、災害以外でも色々と困るので、それを改める提案があるといいのですが。
経験的には、馬鹿に馬鹿と言って改められることはなく、それを聞いた周りの方々が、言われた方か言った方か両方から離れるという効果しか生まないので(本項の趣旨でないことは承知)。
本文中に述べたように「水位が危険域に達した」ことをもって「当たり」とするなら、10割近い「当たり」です。
「氾濫するか否か」で「当たり」を決めるのなら、「当たり」の率は大幅に下がりますが、それは別に問題ではない。行動については、期待値の問題。
洪水なのに逃げなければ → 死ぬので期待値はマイナス無限大。
洪水でないのに逃げれば → 余分な手間は散歩と同程度。
期待値を計算すれば、洪水が当たる確率が 0.01%だとしても、警告にしたがって逃げた方が得です。
はずれたとしても、年に1〜2回、散歩する手間が増えるだけ。どうってことない。
> 行政職員が馬鹿だと(おおむね真理、そうでない場合もあるが)、災害以外でも色々と困るので、それを改める提案があるといいのですが。
自治体職員は、気象の専門知識がないので、自治体職員に判断を任せること自体が駄目だ、と本日の新聞に書いてある。
→ 読売・朝刊・3面
だから、専門の防災相を設置すべきだ、というのが、私の提案。
→ http://openblog.seesaa.net/article/441574910.html
気象庁のサイトに行けば、すぐに同じデータが見つかります。ちょっと探しにくいが。
→ http://www.jma.go.jp/jp/radame/
スパコンによる大規模な予想なので、すごくコストがかかっている。年間、何十億円か何百億円か。民間会社が支払えるようなコストではない。国税で負担しているんです。
なお、これを利用するのは無料。莫大な価値のあるものを無料で利用できるのに、わざわざ別の予報をするはずがない。やれば信頼をなくすだけ。自殺行為。
なお、Yahoo 以外の他サイトも利用しています。公開中。
→ http://www.tenki.jp/radar/rainmesh.html
→ http://weathernews.jp/radar/#//c=0
> 1時間先や2時間先はともかく、6時間先ともなるとほとんどデタラメ
そりゃ、当り前。台風の進路予想の予報円を見れば一目瞭然。精度が高いのは1〜2時間後ぐらいです。
> 参考:1993年に「自由化」され資格さえあれば誰でも気象予報が出せるようになった模様。
それは誤り。「自由化」されたのは、予報ではなくて、予報についての解説だけです。予報内容を勝手に自己流で発表するのは違法です。
以下、引用
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予報業務は国民生活や企業活動等と深く関連しており、技術的な裏付けの無い予報が社会に発表されると、その予報に基いて行動した者に混乱や被害を与えるなど、社会の安寧を損なう恐れがあります。このため、気象業務法第17条の規定により、気象庁以外の者が予報業務を行おうとする場合は、気象庁長官の許可を受けなければならないこととし、予報業務を許可制としています。
気象庁の発表した予報や他の許可事業者が発表した予報を解説するだけであれば、予報業務許可は必要ありません。
http://www.jma.go.jp/jma/kishou/minkan/q_a_m.html
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のぐー さんは、ろくに調べもしないで、<del>デマ</del>情報を書くので困りもの。<del>デマ</del>を書く前に、ちょっとググりましょう。おかしな内容なので、「そんなことはありえない」という常識さえあれば、馬鹿げた話を書かずに済みます。常識があるだけでいい。
へえ?あなたこそ、私があげたwikipediaサイトをちゃんと読みましたか?
>気象庁長官の許可を受けなければならない
だからその許可を受けた民間企業が複数あって、てんでんばらぱらな予報をしてるんですけど。
(その許可を受けた業者のことを予報業務許可事業者と言う)
雨雲の動きの予報については私の勘違いだったようですが、明日の天気のレベルだと、複数のサイトで全然予報内容が違う事が多々あるのですが?
#明日の天気なんて本筋から外れまくってますが、デマとまで言われたら黙ってられない。
もちろん。私は、リンク先を読まないで文句を言う人とは違います。(読まないときもあるが、読まないときは反論しない。)
明日の天気は、気象庁の予報が絶対当たるわけじゃないので、気象予報士の個人差は認められます。当然。
私が否定したのは「自由化」の箇所だけです。お間違えなく。Wikipedia にもそう書いてあるでしょ。「解説予報業務は自由化された」って。予報じゃなくて、解説ね。
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私としては悪口を言う気はないのだが、あまりにも「ずさん」すぎる批判なので、対応に疲れる。
自分で調べればすぐにわかることを、私に調べさせないでほしい。ちょっと調べればすぐにわかることだ。いちいち文句を言う前に、自分で調べましょう。私はあなたの無料・家庭教師じゃない。
以上を一言でいえば「 ggrks 」となる。
>6,気象庁自身による説明も含めて、俗に「天気予報の自由化」「一般向け予報の解禁」と称されるが、制度論的には正確さを欠く表現である。
ここを踏まえた上で、カギ括弧つきで「自由化」と書いたのですが通じませんか。
それで人をデマ呼ばわりですか。
ちなみにこの部分は(っていうかこのページの趣旨は)解説予報業務じゃなくて予報業務を担当する予報業務許可事業者の説明ですよね?解説予報業務は話のついでにチラッと出てくるだけですし。
ともあれ、悪口を言う気はないと書きながら、「デマ」という悪口を書いたのは、私の至らない点でした。お詫びして、取り消します。申し訳ありません。