2016年08月25日

◆ セレナの自動運転は旧式技術だ

 日産セレナの自動運転が話題になっているが、この技術は Mobileye 社の技術。もはや旧式の技術であり、古すぎる。

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 日産セレナの自動運転が話題になっているが、この技術は Mobileye 社の技術であることが公式に語られた。
 (自動運転 ACC は)単眼カメラでの対応は難しかったはず。だからこそ、日産はこの測距技術に独自のアルゴリズムを持つイスラエルの「モービルアイ」社の技術を採用したのだ。
( → 記事

 Mobileye 社の技術というのは、下記のようなもの。
  → 動画

 次の画像もある。(見なくてもいい。)





 動画では四角い枠を出しているが、それは表示されるものだけだ。その前処理として、(画像における)対象の特徴抽出をして、対象の輪郭線を得ているようだ。
 そして、その輪郭線の動きを、画像のなかで計測して、視野における3次元位置を推定しているようだ。
( ※ このことは、自分が静止しているときにはわからないが、自分が移動しているときにはわかる。こちらが等速直線運動をしているときに、対象がどういうふうに形状を変化させるかを知ると、対象の形状と3次元位置がわかる。)

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 以上が、日産セレナの取っている自動運転の技術だ。また、多くの自動車会社が、同じ技術を導入している。(イスラエルの会社から買っているわけだ。自社では開発できないので。情けないね。)
 この Mobileye 社の技術は、実用化には最も近いと見なされてきた。そして今回、日産はこの方式を取ったわけだ。
 では、この方式は有望か? 「否」というのが、私の判定である。この方式は、短期的には実用化に最も近い位置にあったが、その能力が限定されている。そのせいで、高速道路には使えるが、一般の市街地には使えない、と思える。
 なぜか? 市街地の状況は、高速道路のように単純ではなくて、非常に変化に富んでいるからだ。
 
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 では、市街地のように複雑な状況があるところでは、何が有望か? それは、 Mobileye 社の技術とはまったく異なるものだ。では、何か? AI 技術だ。もっとわかりやすく言えば、ディープラーニング技術だ。
 ディープラーニング技術による自動運転というのは、すでにあちこちで開発中だ。
  → ディープラーニング 自動運転 - Google 検索

 この分野では、Google 、トヨタ、NVIDIA が先行しているとわかる。 NVIDIA の例では、こうだ。





 見ればわかるように、高速道路以外でも自動運転となっている。このことは、Google も同様だ。トヨタも開発中だ。

 いずれにせよ、状況が多大である市街地では、ディープラーニング技術なしでは安全な自動運転は不可能だ、と思った方がいい。
 換言すれば、ディープラーニング技術のない Mobileye 社の技術では、高速道路の自動運転は早期に実現できても、市街地の自動運転はとうてい無理なのだ。
 ということは、日産がいくら他社に先んじて自動運転車を先行販売したところで、そんなことには何の意味もない、とわかる。なるほど、あと2〜3年ぐらいは、「高速道路の自動運転」という形で、日産は他社に先行するかもしれない。しかし、その後、いったん「市街地の自動運転」という段階に入ると、日産の技術は旧式技術であるがゆえに、市街地には対応できなくなって、取り残されてしまうのだ。

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 実は、現状は、もっとひどい。日産は、この未完成な自動運転車を、市街地でも働かせることを想定している。「市街地では使わないようにしてください」と言っているだけだ。現実には、市街地でも使う人が多数発生するはずだ。
 で、日産としては、「ハンドルに手を添えていてください。あくまで自動運転は補助的です」と弁解することで、責任を免れようとしている。だが、日産が責任を免れたとしても、事故が起こらなくなるわけではない。今後続々と、事故が起こるだろう。たとえば、
 「日産セレナに乗って、自動運転をしながらポケモンGO をしていたら、死亡事故を起こした」
 というふうなことだ。
 ポケモンGO による死亡事故は、すでに起こっている。
  → ポケモンGO」初の死亡事故
 で、日産セレナが自動運転車を発売して、市街地でも使うことが想定されている以上、今後は続々と、「自動運転の最中の死亡事故」が起こるだろう。
 たとえば、「暗い背景のなかを歩いている黒い歩行者」などは、日産の単眼カメラでは検出不可能だから、必然的に事故が起こるはずだ。こういうことが今後は続々と起こるだろう。
 また、市街地では、「道路上に白線がない場所のカーブ」というところでも、日産の自動運転車は自動運転が無効になりそうだ。

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 未完成な単眼カメラ方式の Mobileye 社の技術で市街地運転を想定するなんて、あまりにも危険である。にもかかわらず、日産はこの方式の市販車を強行発売した。では、なぜ? 
 それは日産が、こう信じているからだ。
 「大量生産をした会社が市場を制覇する。だから、他社に先んじて大量生産をすれば、今後の市場で圧倒的に優位に立つ」
 
 日産は(というよりゴーン社長は)、以上の発想のもとで、電気自動車に注力した。ハイブリッドの開発を停止して、電気自動車で圧倒的なシェアを得ようとした。
 で、その結果は? 惨敗である。市場の急成長したハイブリッドの市場では、トヨタやホンダのはるか後塵を拝している。トヨタに比べれば、ゴミみたいに小さなシェアしか取っていない。その一方で、電気自動車は、目標数をはるかに下回っている。あろうことか、素人会社であるテスラ車にも完敗している状況だ。情けない。
 それだけではない。「自動車用のリチウムイオン電池では世界制覇する」と目論んで、NEC と電池会社を設立したが、もはや時代遅れとなったせいで、この会社をパナソニック(など)に売却しようとしている。
  → 日産、EV用バッテリー生産事業を売却へ
  → 日産がEV向け電池撤退 NECとの子会社売却へ
 要するに、日産の「EVで先行して市場制覇」という夢は、あっけなく塵のごとく砕けてしまったのだ。

 ──

 では、日産は、どうしてこういう愚かな失敗をしたか? それは、別項の太陽光電池の話と同様だ。
  → 大量生産と価格低下(太陽光発電)
 大量生産をすれば、市場を制覇すると同時に、コストダウンの効果を得るので、数の優位性を取る。こうして、市場を先行したものが、永続的にトップの位置を得ることができる……というふうに想定した。
 
 しかし、そんなことがあるはずがないのだ。発展途上の分野では、市場を制覇したものが勝つのではなく、新技術を開発したものが勝つ。これが事実だ。なのに、日産は(ゴーンは)それを理解できなかった。新技術の開発に投資するかわりに、大量の生産設備に投資した。その結果は? 設備が単に遊休しただけだった。莫大な生産量が可能な設備は、単に遊んでいるだけだった。その一方で、技術開発は、惨憺たるありさまだった。ろくに技術開発費を投じないせいで、日産のリチウムイオン電池の特許件数は、あまり多くない。パナソニックやサムスンに比べると、いくらか負けている状態だ。
 というわけで、「技術を開発するより、大量の生産設備に設備投資をする」という方針で、日産はEV生産に突き進んで、失敗した。
 それと同じことを、自動運転でもやっている。「技術開発よりも大量生産で市場制覇を」と狙って、技術開発をおろそかにしている。

 ──

 一方、他社はどうか? 
 トヨタは米国の自動運転技術でトップクラスの研究者たちを買収した。
  → トヨタ、AI研究加速−グーグル傘下のボストン・ダイナミクス買収、自動運転など応用
  → トヨタ、自動運転技術の米企業から全従業員を採用
 ホンダもまた、AI技術に熱心だ。
  → ホンダ、人工知能研究の拠点を 赤坂に設立すると発表
 その一方で、日産は、AIにはろくに関心がないようだ。ググっても、まともな情報は出てこない。
  → 日産 AI - Google 検索
 このように会社のAI情報がネット上にないというのは、トヨタやホンダでは考えられないことだ。両社にはAI関係の情報がネット上にたくさんあるのだから。特に、トヨタはAIに熱心だ。

 ──

 結論。

 日産は、自動運転の実用化で、他社に先んじている。しかしそれは、日産が技術的に先行しているということを意味しない。むしろ、逆だ。日産は、大量生産と大量販売をすることだけに熱中しており、技術開発をないがしろにしている。自動運転の技術は、自社技術でなく、イスラエルの会社に任せきりだ。さらに、その技術は、ディープラーニング技術ではないので、将来性がない。つまり、高速道路では使えても、市街地ではまともに使えない。
 このように不完全な技術は、本来は発売するべきではないのだが、日産は強行発売した。そのせいで、今後、日産の自動運転車による事故が起こりそうだ。それでも日産は、「自社のせいではありません。あくまで補助的な装置なので、主体は運転者にあります」と述べることで、責任を免れようとしている。
 なるほど。それで法的な責任は免れることができるだろう。しかし、自動車会社の目的は、事故の責任を免れることではないはずだ。事故を起こさないようにすることであるはずだ。なのに、日産は、その本来の目的をないがしろにして、未完成な危険な技術を強行発売した。そのことで、「自社は先進的です」と訴えることができるというつもりなのだろう。だが、ユーザーを欺いて自社の商売に役立てるという点では、PCデポも同様だ。
 日産は、PCデポと同類の会社にまで、落ちぶれてしまった。そして、そのすべては、「技術を大事にする」という日産の社是を否定して、「コストを大事にする」という方針を取った、ゴーン社長にある。技術音痴の文系社長が会社の方針を決めると、こういうデタラメなことになる。
( ※ これは、ジョブズが会社の方針を決めたアップルとは、対極的な方針だ。逆に、最もよく似ているのは、出井時代のソニーだろう。出井社長はソニーを壊滅的に破壊してしまったが、それとちょっと同じようなことを、ゴーン社長はやっている。なお、その最悪の方針は、「英語の社内公用語化」だ。これで日産は惨憺たるありさまになった。今回も、単眼カメラ方式に否定的な人は社内にたくさんいたはずだが、たぶん英語ができないせいで、黙っているしかなかった。かくて、英語のできる人たちの主導で、とんでもない技術が推進された。)
 


 [ 余談 ]
 「 Mobileye 社の技術は、もはや旧式技術だ」
 というふうに述べた。これについて疑問に思う人もいるだろう。
 「まだ出たばかりの新技術が、もはや旧式技術だとは、これいかに?」
 ま、不思議に思うかもしれないが、そういうことは、たまにある。その代表例が、戦艦大和だ。
 戦艦大和は、できたときには、世界最大かつ世界最新鋭の戦艦だった。しかしながら、できたときには、もはや旧式技術となっていた。時代は戦艦ではなくて、航空機だったのである。かくて、航空機の爆弾と魚雷を浴びて、あっけなく沈没した。戦果はゼロ。沈むためにだけ生まれてきたような戦艦。

 まるで日産セレナみたいだ……というと、ちょっとセレナの悪口がひどすぎるかな。 (^^);
 とはいえ、Mobileye 社の技術は、戦艦大和も同様なのだ。こんなものを搭載する神経が疑われる。2〜3年は市場に出るかもしれないが、その後は市場から消えてしまうだろう。
 日産は、どうせ他社から買うなら、NVIDIA から買うべきだったね。

posted by 管理人 at 23:34| Comment(7) | 安全・事故 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
辛口ですね。日産が気づくと面白いのですが、プライドが邪魔するのかな⁇
萌芽期に大量生産で市場制覇する施策は、かつてのパナソニックがやった二番手戦略ですね。市場開拓者の後追いだけど、少し安く、少し性能を上げて開拓者の製品を陳腐化させて市場から追い出す。
なお日産の電気自動車はカリフォルニアではそこそこ普及しているようです。テスラは高価ですから。むしろハイブリッドがエコカー指定から外されたトヨタが地団駄を踏んでいると思います。
世界戦略もあるので、今のニッサンの商品戦力が一概に間違っていると断言するのは煽り過ぎかもしれませんね。ま、意図してきつく書いてあるのでしょうけど。
Posted by 京都の人 at 2016年08月26日 07:47
素人考えですが、自動運転は、より良いRGB 信号を得るために、3眼カメラとなるように思います。さらに立体認識をするためにもう一眼ふやすようなことも想像されます。
自動ブレーキにかぎれば、前に紹介されていた東芝単眼方式が、薄暗くても認識しているのがわかり有望な感じがする。
Posted by senjyu at 2016年08月26日 14:31
日産の自動運転技術が時代遅れで技術力に問題があるとの管理人さんの見方に賛成します。さらに加えれば、日産、トヨタとも政治力もない。カリフォルニアでは、米メーカーのロビー活動に負けてハイブリッドをエコカーに入れられなかった。
自動運転では、例えdeep learningであっても、事故を起こすことは避けられない。何故なら、かなりのベテランドライバーでも事故を起こすのを見聞きするので。従って、自動運転のためには、見合った法整備や米国並みの運転しやすい道路整備が必要だが、日産には政治力が無いので(社長が日本語が不自由だというのもそれに入るが)、法整備なども出来ず、レベルの低い技術により社会に新たな問題を持ち込んだと思います。
Posted by 新道 at 2016年08月27日 04:46
> カリフォルニアでは、米メーカーのロビー活動に負けてハイブリッドをエコカーに入れられなかった。

この結果は、ロビー活動とはあまり関係ありません。
カリフォルニアのエコカーは、エコノミカルカーではなく、エコロジカルカーです。排ガスを見る限り、プリウスは他のガソリン車と比べて、燃費がいい分、炭酸ガスの排出量が少ないだけです。

一方、EV は炭酸ガスの排出はゼロなので、こちらが優遇されます。トヨタの mirai も優遇されます。

日本でも、ハイブリッドは税制ではまったく優遇されません。ハイブリッドに対する優遇はなくなりました。
 ※ 燃費がいい車に対する部分免税という制度はあるので、その適用は受けていますが。

ちなみに、電気自動車に対する優遇も、自治体レベルでは縮小しつつあります。
Posted by 管理人 at 2016年08月27日 06:38
日本でいうエコカーは
一般にはグリーンビーィクル又はグリーンカーと言いってますね。
Posted by 新道 at 2016年08月27日 21:20
 セレナの自動運転は、ワイパーを動かすと無効になるそうだ。雨天時には使えない。
 以下、引用。

 ──

スバルのアイサイトではワイパーが高速動作する時に初めて レーンキープ機能がOFFになりますが、 プロパイロットはこれがワイパーが動作したとたんに キャンセルになってしまうようです。

さらにワイパーが高速動作すると、 プロパイロットでは前車追従クルーズコントロールも キャンセルになるようです。

http://outdoor-kaz.net/2016/07/18/propilot-2/#
Posted by 管理人 at 2016年08月28日 13:50
先ほど新型セレナの試乗をしてきた。数年前のセレナのオーナーなので、差分が分かるが自動運転に絞ってレポりたい。

短距離でかつ市街地なので白線検知の車線拘束モードは試せなかった。やったのは自動追尾モードの
前車に合わせた加減速と停止、発進だけで、これは他車でもあるので新規性はないが便利に感じた。
ただ停止時はカックンブレーキっぽく改善の余地あり。(設定で直るかは不明)

意外だったのは自動運転のメカ的な知識が日産側に乏しかったこと。単なる営業マンでは深い知識はなくてもいいが
単眼式、クリープ、ファームウェアなどの言葉が通じない。どこに本装置の問題があるか、その改良のロードマップなど
メーカー側からのアナウンスを聞きたかったが無理なようだった。

(営業的には、現状のセレナは安全を優先し不十分な状態ですが、いずれデータを蓄積しソフトを書き換えて
よりスマートな制御になります 単眼式の弱点もソフトで補完します 今買っても心配は無用です。とでも言うのかと思っていた)
Posted by 検証家 at 2016年08月28日 16:29
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