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本項のテーマは、こうだ。
「食べ物もろくに手に入らない生活困窮者を支援するために、食べ物を無償提供するフードバンクという事業がある。民間団体がやっているが、これを推進するため、自治体も努力している。だが、そのためには、費用がかかる。その費用は、どこから出すか? やたらと自治体が出費すると、生活保護の費用と同様に、自治体の出費費用がかさむ恐れはないか?」
これは、実は、杞憂ではない。実際、多くの自治体が、同様の心配をしている。だから、フードバンクは有効だとわかっていても、あまり普及しないのだ。
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以上で、テーマは示した。次に、実状を示そう。
まずは、農水省の解説記事。[このページには、詳しい報告書(PDF)もある。]
《 フードバンク 》
食品企業の製造工程で発生する規格外品などを引き取り、福祉施設等へ無料で提供する「フードバンク」と呼ばれる団体・活動があります。
農林水産省では、まだ食べられるにもかかわらず廃棄されてしまう食品(いわゆる食品ロス)を削減するため、こうした取り組みを有効に活用していくことも必要ではないかと考えています。
( → 農林水産省 )
次に、朝日の報道。
《 広がるフードバンク 自治体との連携進む 》
暮らしに困っている人たちへ食料支援をするフードバンクの活動が広がっている。昨年4月に生活困窮者自立支援制度が始まり、自治体が支援窓口を設けたことが背景にある。もとは草の根の活動だったが、自治体などと連携することで需要が高まってきた。
従来のフードバンクは独自に食料を福祉施設などに届ける活動が中心だったが、新設団体の大半は自治体などと連携する。生活困窮者自立支援制度で設置が義務づけられた自治体の支援窓口に、生活に困った人が相談に訪れるためだ。
自治体側のメリットも大きい。静岡県藤枝市の担当者は「相談に足を運んでも行政は何もしてくれない、という印象を持たれがちだ。まず食料を渡して相談を続ければ、スムーズに支援できる」と強調する。
既存の団体も活動を広げている。セカンドハーベスト・ジャパン(東京都台東区)は、東京、神奈川、埼玉の3都県の80自治体・社協と連携。生活困窮者自立支援制度が始まる前の五つから、一気に増えた。昨年から連携を始めたセカンドハーベスト名古屋(名古屋市)の連携先は、愛知、三重、岐阜3県で90を超えた。
( → 朝日新聞 2016-08-18 )
自治体との連携が増えているということだ。これ自体は好ましいことだが、あまりにも数が少ない。今のところは「先駆的な事業」という「さきがけ」扱いだ。普及には程遠い。
ではなぜ、普及しないか? 自治体はその費用を支出するのに尻込みしているからだ。「事業は推進したいが、金はない」というありさまだ。
では、どうする?
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ここで、困ったときの Openブログ。名案を出そう。
その案は? 金は1円も必要ない。いや、それどころか、金はかえってどんどん浮く。やればやるほど金が出て行くのではなく、やればやるほど金が入ってくる。
そんなうまい方法があるか? ある。その方法は、こうだ。
「目を開く」
つまり、閉じていた目を開くだけでいい。すると、あらふしぎ。フードバンクの事業を進めれば進めるほど、金が出て行くのではなく、金がどんどん入ってくる。「そんな馬鹿な!」と思うかもしれないが、本当だ。単に目を開くだけで、そうなるのだ。まるで、魔法だ。
では、どうして? そのわけを以下で記そう。
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「フードバンクの事業を進めれば進めるほど、金が出て行くのではなく、金がどんどん入ってくる」
というのは、何も不思議ではない。実はもともとそうなっているのだ。それが真実だ。
なのに自治体の人々は、逆だと思う。
「フードバンクの事業を進めれば進めるほど、金がどんどん出て行く。そのための支出となる金が必要となる」
しかし、それは勘違いなのだ。それが勘違いだということを知るためには、目を開けばいいのだ。目を開けば、次のことがわかる。
「右手の金がどんどん減っても、左手の金がどんどん増える。差し引きすれば、左手の金の増える方が多いので、トータルでは金はどんどん増える」
要するに、右手だけを見て「金が減るぞ」とあわてるべきではない。右手と左手の双方を見れば、「金が増えるぞ」とわかる。つまり、右手だけを見るのでなく、右手と左手の双方を見ればいい。一部だけでなく全体を見ればいい。……これが「目を開く」ということの意味だ。そして、目を開けば、「金は減るどころか増えている」とわかる。
では、なぜか? 右手は「フードバンクの費用」だが、左手は何か? それは「生活保護費の出費」だ。
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一般に、困窮者の支援には、フードバンクのほかに、生活保護費もある。困窮者の支援のためには、その総額を考えるべきだ。そして、そういうふうにすれば、次の事実がわかる。
「フードバンクの支出が増えれば増えるほど、生活保護費は削減できる。食糧支援のための微小な額を出費するだけで、毎月 20万円ぐらいになる生活保護費を大幅に削減できる」
このことから、「フードバンクで微小な額を出費することで、生活保護の出費を大幅に削減できる」とわかる。
( ※ ただし、既存の出費を減らすのではなく、将来の出費を減らすことを意味する。生活保護費をもらえていない困窮者が対象だ。彼らが生活保護認定されるかわりに、フードバンクで支援するわけだ。)
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以上のことから、さらに踏み込んだ結論も出せる。
「自治体は、支援活動のために微小の額を出費するだけでなく、大幅に補助金を出してもいい。活動の1〜2割ぐらいを出費してもいい。それでもまだ、生活保護費を負担するよりも、ずっと安上がりで済む」
このことから、次の提案も生じる。
「自治体は、企業が提供する不要食品を、有償で購入してもいい。企業としては、廃棄するかわりに定額で販売スレが、少なくとも利益が上がるから、企業にとっても有利だ」
たとえば、現状では、スーパーは売れ残りの商品を「5割引シール」を付けて売るが、それでも売れ残った分は、翌朝に廃棄する。
しかし、廃棄するかわりに、深夜にフードバンクに提供すれば、自治体から金をもらえるようになる。(95%引きだとして、5%の金が入る。それでもお得だ。廃棄物処理の費用負担もなくなる。)
フードバンクは、深夜に提供してもらったものを、加熱または冷凍する。それを翌日に調理すれば、安全かつ安価に食品を提供できる。
スーパーとしては、きちんとフードバンクの責任で調理してもらえるので、変に食品保存の問題が生じることもない。何らかの問題が生じたらフードバンクの責任だ、と念書をもらってあるので、問題ない。フードバンクとしても、全責任を引き受けることで食品を実質無償に提供してもらえるので、責任感は重大だ。(仮に問題を起こせば、以後はもう食品を提供してもらえない。)
自治体としては、企業に払う分(5%)と、フードバンクに提供する分(無料)との差額に当たる分だけを払えばいい。これによって、生活保護に相当する世帯の、食費に相当する額を、95%もカットできる。大幅にコスト削減だ。
そして、この大幅なコスト削減の分が、自治体にとっては得をする額(= 左手と右手との差額)となる。
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フードバンクの本質は何か? それは、「生活困窮者に対する現物給付」である。
前に、「生活保護世帯には、住居や食品を現物給付すればいい」という案が提案されたことがあった。これは、生活保護費の不正受給を防ぐ案だった。
これは、あまりにも非効率なので、その後は立ち消えになった。とはいえ、生活困窮者自身がそれを望むのであれば、それを実行してもいいのだ。特に、「生活保護費をまだもらえていない」というような人であれば、それを望むだろう。
だから、フードバンクという形で、「生活困窮者に食品を現物給付する」というのは、「生活保護費のコストを削減する」という方針に合致するので、自治体にとってはありがたいことなのだ。
したがって、この「現物給付」という方針を、さらに推進してもいい。フードバンクというふうに「食品」に限らず、「空き家の給付」という形で、「住居」を現物給付してもいい。空き家ならば、かなり安価に提供できるので、ここに数人の生活困窮者を共同で住むように仕向ければ、自治体による住居費の支援のコストは、大幅に低下する。ここでも「現物給付」によるコスト削減効果が出る。
また、生活困窮者にとっても、「賃貸住宅を借りようとしても、(保証人がいないせいで)借りることができない」という問題を回避することができる。
※ 保証人が必要なことについては、下記項目を参照。
→ 生活保護者を地方へ移せ
→ 生活保護者に居住移転の自由を
上の二項目では「地方へ移転させよ」という提案がある。これにしたがって、同じ県内でも、県庁所在地から遠い郊外の空き家に移転させれば、生活困窮者は(交通は不便でも)かなり広い住居に住むことができるので、生活水準は向上するだろう。
例示的に言えば、千代田区の物置小屋か犬小屋みたいな狭い住居に住むかわりに、多摩地区の広い1K(単身)か、2LDK(家族持ち)みたいな部屋に住むことができる。もっと広くてもいい。かくて、自治体にとっても、生活困窮者にとっても、どちらにとってもありがたい win-win みたいな関係になる。
「現物出資」という方針を取れば、こういうふうに金を有効に使えるのだ。
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結論。
フードバンクのような「現物出資」は、強制するのはまずいとしても、任意の形で給付するのであれば、生活困窮者にとってはありがたい。生活保護費の審査に手間をかけて生活保護の認定を拒否するよりは、安価なコストを払って「現物出資」で福祉を増やす方がいい。
ここでは、まるで「天から金が降ってきた」というような、圧倒的に素晴らしい効果が生じる。それはまるで手品か魔法のようだ。だが、その理由は、手品や魔法ではない。「無駄をなくす」ということから生じる。
・ 有効な食品を無駄に廃棄していた
・ 有効な家を無駄に空き家にしていた
こういう無駄をなくすことで、まるで「無から有が生じる」というふうに見えることが発生するのだ。
そして、それを実行するためには、何ら特殊な技術は必要ない。単に「目を開く」ことだけでいいのだ。……つまり、本項を読むだけでいいのだ。

魔法使い 魔法使いサリー