2016年08月08日

◆ JDI の再建問題

 JDI(ジャパンディスプレイ)が、有機ELの設備投資のために 2000億円を融資してくれ、と産業革新機構に頼んでいる。どうする?

 ── 

 まずは毎日新聞の報道から。
 液晶パネル大手のジャパンディスプレイ(JDI)が筆頭株主の官民ファンド、産業革新機構に数百億円規模の金融支援を要請したことが6日、分かった。主力のスマートフォン向け液晶が販売不振に陥っており、支援を元手に次世代パネルの有機ELの開発を加速させたい考え。しかし、有機ELは韓国勢が先行し、狙い通りに巻き返せるかは見通せない。
 既に16年3月期まで2年連続の最終赤字に陥っており、革新機構はシャープとの経営統合による再建案を推進した。しかし、シャープは台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業の傘下に入ることが決まり、単独での立て直しを余儀なくされた。

 主力取引銀行は、当面の資金繰りを支える短期の融資には応じているが、「設備投資に回せる長期の新規融資は困難」と慎重。このため、革新機構の支援を仰ぐことになった。
 JDIも18年度の量産を目指し開発を進める。ただ、韓国のサムスン電子は既に自社製スマホ向けの有機EL量産に成功し、15年の有機EL世界出荷額で9割のシェアを占める。有機ELテレビを販売している韓国のLGグループもスマホ向けの生産ライン新設を発表。厳しい競争の中で生き残れるかは不透明だ。
( → 毎日新聞 2016-08-08

 見通しは明るくないが、産業革新機構は出資するつもりらしい。
 政府系ファンドの産業革新機構が出資先の中小型液晶大手のジャパンディスプレイ(JDI)への金融支援を検討していることが6日、分かった。支援は、数百億円規模になるものとみられる。JDIは、スマートフォン向け液晶パネルの販売不振などで資金繰りが悪化。革新機構はJDIの財務の健全性を高めるため、融資、債務保証などによる支援を視野に検討を進める。
( → JDIへ金融支援検討=液晶販売、不振―革新機構 (時事通信)

 金額は、上記の記事では「数百億円」だが、実際にはこれっぽっちで済むはずがない。これっぽっちだとすれば、途中まで進んで、倒れるだけだ。途中で倒れないためには、追加出資が必要となる。その額は? 総計で 2000億円は必要となるらしい。
 機構も出資を軸に支援を検討する構えで、数百億円規模の支援になるとみられる。
 ただ、有機ELの量産体制を整えるには「2千億円規模の投資が必要」(業界関係者)ともいわれる。取引銀行にはJDIの戦略を疑問視する見方もあり、支援の手法や規模をめぐる交渉には曲折も予想される。
( → 液晶大手のJDIに革新機構が支援検討 有機EL量産へ出資軸:朝日新聞

 数百億円を出させてから、「足りないので、2000億円に増やしてください。そうしないと、先の数百億円も無駄になりますよ」と脅迫する手口。
 こういう詐欺的商法に引っかかる阿呆が多い。本サイトみたいに、詐欺を指弾する指摘を読まないと、阿呆はあっさり引っかかる。(詐欺師の言葉を真に受けるせい。おめでたいね。)

 ──

 さて。金を出すのは、産業革新機構だ。産業革新機構というと、名前からして、政府系でない民間ファンドみたいなふうに見える。だが、実質的には、政府系のファンドだ。方針は政府が牛耳っているし、金も政府が9割以上を出す。
 機構には、2014年11月現在で官民が合わせて3000.1億円を出資している。内訳は政府が2860億円(平成25年度補正予算で健康医療分野への投資のため200億円を追加出資)、民間企業26社が140億円、個人2名が1000万円である。
( → 産業革新機構 - Wikipedia

 民間が名目的に少額を出しているが、実質的には政府のファンドだ。国民の税金を、政府が勝手に使うために、こんなインチキファンドを作っている。
 そもそも、これは、国営企業ではないので、共産主義ではないのだが、政府が経済政策を主導するという意味で、社会主義の政策だ。あまりにも馬鹿げている。
 また、黒字化が見込めるなら、民間の融資または出資が見込めるのに、民間が手出しをしないとしたら、赤字事業になると見込まれるわけだ。そんな事業からは、さっさと撤退するのが最善なのに、撤退を何とか拒もうとして、政府が出資しようとするわけだ。(名目は政府ではなく、民間ファンドみたいな名目にして。詐欺同然。)
 こういうふうに「赤字事業に無理に融資して存続させる」という方針は、一般に、赤字をどんどん拡大させるだけだ。その典型的な例は、シャープだ。経営悪化した時点では、株価はまだ 500円を大きく上回っていたのだから、その時点で、ホンハイあたりにでも売却しておけばよかった。なのに、あえて赤字会社を赤字のまま存続させたから、赤字がどんどん拡大して、最終的には、1株 130円ぐらいで売却することになった。大損だ。
 一般に、赤字会社を無理に存続させると、こういう結果になる。

 ──

 JDI も同様だ。銀行が融資をしてくれないとしたら、もはや事業成功の見込みはないということになる。だったら、さっさと会社を解体して、倒産させるべきだ。資産があるなら、黒字倒産になるから、被害も最小で済む。
 仮に、存続させるとしたら、融資ではなく、出資の形にするべきだろう。それならば、「ハイリスク・ハイリターン」なので、「成功したら大儲け」と思った人が、出資してくれるかもしれない。(現在の株をゼロみたいに安い株価で売り出す。そのあと、大幅増資となる。)
 
 ──

 では、JDI に出資してくれる民間会社は、あるか? 「ないだろう」というのが、私の見込みだ。
 第1に、記事に書いてあるように、韓国の2社が技術的に圧倒的に上回っているからだ。日本が今から出ても、勝ち目がない。有機EL の技術が大事だということは、私も前に書いたことがあるが( → 該当項目 )、私がこれを書いた 2005年以降、日本企業は有機ELに力を入れるどころか撤退していき、逆に、韓国企業は有機ELのどんどん力を入れていった。その程度は、取得特許の件数を見れば明らかで、韓国企業と日本企業との間には、技術レベルで大差が付いていった。
( ※ その理由は、研究開発費の量。日本企業は貧すれば鈍す。貧しくて研究開発費が出せない。)
 第2に、日本企業が今から頑張るとしても、金はあっても、人がない。産業革新機構がいくら金を出すとしても、肝心の研究者が日本にはいない。もともといた有機ELの研究者は、他部門に配転されるか、希望退職に応じてやめてしまった。
 というわけで、民間の側から、出資する見込みはない。「だから政府が出資する」というのが、政府の理屈なのだろうが、そんなものは理屈ではなくて屁理屈であるにすぎない。ただの社会主義政策だ。馬鹿げている。

 ──

 では、どうするべきか? このまま JDI を倒産させるべきか?
 「そのとおり」
 と答えたいところだが、そう答えると、読者から文句が来そうだ。
 「困ったときの Openブログ、というのは、どうした? 何とか名案を出せ!」

 ううむ。それもそうだ。そこで、(かろうじて)名案を出そう。こうだ。
 「全日本の国力の総力を上げる形で、日本に一つだけ、有機ELの会社を残す。現状では、シャープがあるから、2社となる。この2社を1社に絞る」


 具体的には、次のいずれかだ。
 (1) JDI を解体して、その設備や人員をシャープに移す。
 (2) JDI をシャープに売却する。(捨て値で。)
 (3) シャープのディスプレイ部門を独立させて、JDI と合併させる。


 それぞれ、経営的には、方式は異なる。とはいえ、実体は、同じである。JDIと、シャープのディスプレイ部門が、合体して、日本で唯一のディスプレイ会社となる。それが、液晶および有機ELの生産をになう。
 こうして、日本で一つだけ、有機ELの生産をする会社が残る。

 上の (1)(2)(3) のどれがいいかというと、どれでも大差ないので、どれでもいい。とにかく、一つだけ残す、というのが要点だ。
 現状では、二つの会社が残ることになるが、どうも、共倒れになりそうだ。とすれば、ホンハイとしても、(3) の案は十分に飲めるだろう。

 なお、この方式を取ると、JDI の出資者である産業革新機構は、JDI にこれまで出資した金の大部分が戻ってこないので、大損をすることになる。
 しかし、JDI はもともと存続する価値のない会社なのだ。出資してもらった金を、生かすどころか、食いつぶしているだけだ。2012年に、産業革新機構に 2000億円を出資してもらったあとで、株価は 800円から 170円へと下がるばかり。

 はっきり言って、現状の JDI はゾンビ企業であり、以前のシャープと同様だ。とすれば、この会社が生き残るすべは、たった一つ。新たな経営者(ホンハイ)の主導の下で、「台湾企業の傘下の、日本のIT会社」として生き残ることだけだ。これならば、日本の技術を、台湾の経営者の下で、かろうじて生き延びらせることが可能かもしれない。
 逆に、現状のように、日本の経営者のままで会社を維持するならば、遠からず、完全破綻するのは明らかだ。シャープの二の舞。
 なのに、この時点で「産業革新機構に出資してもらおう」なんていう発想は、狂気の沙汰だろう。社会主義政策の推進という、狂気の沙汰。数字を見れば、失敗続きだとわかっている方針を、なおかつ維持しようとする、無知蒙昧の方針。

 ま、これは、あれだね。戦争中の日本。負けるとわかっていても、白旗を揚げることができず、どんどん状況を悪化させる。最終的に完全破滅するまで、敗北を認めることができない。そして、最悪の結末を迎える。
 歴史的には、よくある。(日本では。)

  ※ 株式用語で言うと、損切りできないタイプかな。
    数年後、大損したあとで、しきりに後悔するタイプ。



 [ 付記 ]
 みずほ銀行では、システム開発が行き詰まっている。広く話題になっている。
  → みずほ銀行の次期大規模システムの開発大炎上について思うこと|終わらないデスマーチ
  → みずほ銀行はどうすれば救えるのか・・・なあ - shi3zの長文日記
  → みずほから学ぶなぜIT業界でデスマーチが起こるのか
  → 良く分かる「みずほ銀行デスマーチ」

 日立、富士通という大手がやっていながら、このありさまだ。両者の対立があることが根源だとはいえ、こんな状況をいつまでも放置するところからして、日本の IT企業には根本的な難点があることがわかる。賠償請求されたら、日立と富士通は一挙に倒産しかねないありさまだ。
 JDI の心配をしてたら、実は、日立と富士通こそ、実際には破綻していてもおかしくない、という状況だ。(賠償請求されていないから、今のところは平然としていられるが。)
 ともあれ、日本の企業の経営は、世界水準から見て滅茶苦茶だ。IT産業の労働者の待遇も、世界的に見て大幅に劣っている。(やたらと残業のしすぎ。生産性が低すぎ。)
 IT企業の売上げの根拠が、製品の出来ではなくて、労働コストの投入量である「人・月」に依存している限りは、低賃金労働者を投入する劣悪な企業ほど、金儲けができることになる。(低コスト化で。)
 産業構造そのものが狂っているとも言える。
 こういうことがまかり通っているのが IT産業であるからには、日本が経営している限り、まともなIT産業はまともに育つまい。

 ──

 シン・ゴジラの CG がひどいのも、その一例かもね。
 ついでだが、自動運転技術では、日本の技術にさっさと見切りを付けたトヨタは、賢明だ。必死に国内技術にこだわっている日産自動車は、出発点からして方向を見誤っているので、とんでもない方向(低コスト・低技術という、安かろう悪かろう路線)に進みつつある。この会社も破綻しかねないな。
 日産自動車は、ひところ、「電気自動車に集中して、ハイブリッド車の開発を捨てる」という暴挙をなした。ゴーン社長の決断で。……技術に無知な経営者が経営をすると、こういう滅茶苦茶なことになる。
( ※ ゴーン社長は、コストカットだけは上手だが、自動車技術のことは何もわかっていない。素人が経営方針を決めるのだから、呆れるしかない。自動車のことをよくわかっていて、自分でもレースに参加するような、トヨタとは雲泥の差だ。)

 [ 補足 ]
 みずほ銀行の開発プロジェクトは、(意外なことに)ちゃんと進行している、という声明が出た。
  → News & Trend - 「全てのプロジェクトが予定通り総合テスト入り」、みずほ銀行の次期勘定系開発が大詰め:ITpro
 現場からは悲鳴の声が続出しているのに、こういう発表が出るとは、どうなっているんだか。トップが現場を理解していないのか、それとも、マンパワーを大量に投入して、何とか解決したのか。( ※ 人員募集の広告は大量に出た。)
 あとは見てのお楽しみ。半年後にどうなることやら。
「開発完了」を掲げる2016年12月まで残り半年となった6月14日、結合テストの終了と総合テストへの移行を役員会が承認した。

 とのことだが、2016年12月には大混乱になるという方に、私としては賭けたいね。(ただし大金をかける気はしない。トマト1個分しか賭けない。1個分なら、損したことにならないし。前々項 のコメントを参照。)




 【 追記 】( 2016-08-10 )
 産業革新機構からの出資がほぼ決まったそうだ。
 《 革新機構から「支援確約」 JDI、有機EL投資へ 》
 中小型液晶パネル大手のジャパンディスプレイ(JDI)は9日、筆頭株主の政府系ファンド、産業革新機構から、金融支援を含む全面的な支援の確約を得たことを明らかにした。 今後、機構から数百億円規模の支援を受けるとみられる。
 JDIには有機ELの量産実績がなく、生産設備を整えるには数千億円規模の投資が必要になる。
( → 朝日新聞 2016-08-10

 2000億円かと思ったら、数千億円も出すつもりらしい。国民の金を勝手に投資する。そして最終的には、紙屑となる。(現状の株価を見ればわかるとおり。数年間で数分の1にまで下落した。最後は破綻する。シャープと同様に。)
 よくもまあ、国民の金で、これほどの「投資ごっこ」というお遊びをするものだ。「血税を FX で溶かしちゃいました。数千億円も」というのと同様だ。いや、FX より、まだひどい。FX なら、丁半バクチみたいなものだから、勝つ確率は 50% ぐらいはある。一方、JDI の方は、負ける確率がほぼ 100%だ。こんなに分の悪い投資は、滅多にない。
 なのに、なぜ、こういう馬鹿げたことをやるのか? そのわけは…… Openブログを読まないからだ。シャープだって、Openブログに書いてあることを読んでいれば、破綻しないで済んだはずだ。それと同じ。つまり、シャープの失敗と同じことを、JDI はこれから実行するわけだ。
 数年後に、破綻したころ、本項を読み直すといいだろう。予告が実現したとわかるはずだ。

  ────────────
  【 参考記事 】

  → 将来のiPhone搭載に向けてLGが1兆円超の有機ELディスプレイ設備投資を決定

 韓国の LG が有機ELに1兆円超の設備投資。ここでは、有機ELの開発はすでに済んでおり、世界最高の水準にある。
 一方、JDI は有機ELの開発が済んでいない。これから開発する。しかも、開発費と設備投資費の込みで、2000億円プラスアルファだ。( 5000億円には達しないだろう。国が出すわけがない。)
 これはまあ、次の比喩に該当する。
 「自動車メーカーのない沖縄が、光岡自動車を招いて、沖縄で新たに自動車生産を始める。そのために 2000億円を投資する。必要な技術者は、日本国内の在野の技術者を寄せ集める」
 これでポルシェやベンツのいるル・マンで戦おう、という感じ。あるいは、F1 レースか。……どっちみち、惨敗は確実だ。(自動車販売と違って、トップの3チームぐらいしか生き残れない感じの争い。)
 こんなこと(惨敗確実の必敗レース)のために、数千億円を出すとしたら、狂気の沙汰だ。で、それと同じことをやろうとしているのが、産業革新機構だ。数千億円を溶かそうとしている。
 アベノミクスのつもりかな。
 
posted by 管理人 at 23:48 | Comment(15) | コンピュータ_04 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
 最後に [ 付記 ] を加筆しました。
 タイムスタンプは 下記 ↓
Posted by 管理人 at 2016年08月09日 06:28
さっき見た東洋経済の記事によるとシャープの買収予定株価は88円らしい。
また下がった? しかも中国側の意向でまだ出資していないという
Posted by かーくん at 2016年08月09日 07:07
>JDIと、シャープのディスプレイ部門が、合体して、日本で唯一のディスプレイ会社となる。それが、液晶および有機ELの生産をになう。
 こうして、日本で一つだけ、有機ELの生産をする会社が残る。

液晶と有機ELで別会社、そして互いに競争というわけにはいかないのでしょうか?つまりJDIがELをやりたいなら液晶を他社に売却せよ(それを融資の条件とする)みたいな。
Posted by のぐー at 2016年08月09日 15:45
 液晶と有機ELの関係というのは、アナログまたはADSL回戦と、光回線みたいな関係です。
 前者から後者へと徐々に移り変わっていきます。前者は数年間のうちに滅びるか、大幅に減少します。
 こういうときに、前者だけを分離しても、それを買ってくれる人はいません。一時的には利益を得ることができても、会社清算のときに莫大な退職金などを払うハメになり、大赤字です。

 一方、同一の会社内で移行すれば、人材を有効活用できるので、無駄な清算費用が発生しません。
 液晶会社の資産や人員を購入してくれる可能性のある会社は、ただ一つ。有機EL を生産する会社だけです。つまり、自分自身だけです。自分以外の他人に売却すれば、大幅に無駄が発生するので、持参金付きでないと無理でしょう。会社を 100億円で売るのではなく、持参金を 100億円付けるのでもらってください、と頼む状況。
 
Posted by 管理人 at 2016年08月09日 19:52
当然、
シャープ片寄せ
液晶もELもシャープ

yes、安倍
イコール、おおさか維新
Posted by 当然、 at 2016年08月10日 12:37
OLEDにはいまのところ致命的な欠点がある
南堂さんのページには書かれていない
もちろん山形大の城戸先生は分かっている
5年前にもわかっていたがいまだ解決できていない
もう5年後にできなければあと20年はかかるかな
これができなきゃSamsungもLGも大損失
 
何か
業界に身を置けば一瞬でわかるよ
Posted by 桜 at 2016年08月28日 20:29
 致命的な欠点があるなら、困るのはアップルでしょ。さらに、世界中の iPhone ユーザーが致命的な欠点にぶつかることになってしまう。
 SamsungもLGも大損失、じゃなくて、世界中のiPhoneユーザーが致命的な事態になって、世界の終わりだね。人類 オワタ。
Posted by 管理人 at 2016年08月28日 20:35
 有機ELについて調べてみました。
 致命的な欠点があるどころじゃなくて、何もかも液晶より大幅に劣っている。寿命、コスト。この2点で、およそ2倍ぐらいの性能比が付いており、とうてい液晶には勝てない。
 ただ一つ勝てるのは、曲げられる点。だからアップルが出すのは、普通のiPhoneじゃなくて、特殊な曲面形態のものだけらしい。たとえば、腕に捲くタイプ。
 あくまで特殊製品に限った話だけらしいから、大騒ぎするようなことじゃないね。

 とはいえ、別情報によると、最近では有機ELのコストが激減しており、液晶並みまで下がったという。ちょっと信じがたい。これが本当なら、将来的には有機EL の方が大幅にコスト安ということになってしまう。

 ──

 有機EL の有利な点は、原理的には液晶の3分の1まで消費電力が下がること。しかし実際にはとてもその水準にはなっておらず、液晶よりいくらかは良いという程度。これでは特別な場合以外は市場性がない。
 
 まあ、技術の進歩の早い分野なので、門外漢としては、黙って見守るしかないね。
 JDI は、沈没を免れるために、やたらと新分野に投資したがるが、その方式をやって大失敗したのが、三菱重工の造船部門だ。ひどいていたらく。
  → http://www.asahi.com/articles/DA3S12530104.html
  → http://toyokeizai.net/articles/-/113297

 ──

 
 なお、焼き付きの問題もある。これは致命的というほどではないが。
 → http://j.mp/2buuglo
Posted by 管理人 at 2016年08月28日 20:48
海外に行っていたのでコメント遅れました
ネットに規制の多いあの国

焼きつきは城戸先生がテレビや講演会でさんざん言っているから
わかりやすいけど致命的な2つじゃない
焼きつきじゃないよ って書こうかと思っていたけど
まあ

消費電力の問題は正解に近いけれどもう1歩深く考えてみて
こうなるとどうなるか
 
あと一個はなかなか難しいかな
あまりネットには出てない話だし
特許(公開も)をいろいろ見ていればわかるかも
これを解決しないと量産も歩留まりも全くダメ
Posted by 桜 at 2016年09月19日 13:49
iOS 10はOLED採用を予測してか「時計」を黒背景にしました。ユーザーの反応を見てるんでしょう。
OLEDの焼付きは画素の不均一劣化。IPS液晶にも焼きつきはあるけど引用にあるような放置では直らんし(熱かけな無理だわ)。
消費電力は黒背景に白文字表示なら液晶より小さくなる。これは自発光型は全部同じ特徴。白っぽい画面だと多分大きな差は出ない。
曲面表示やフレキシブル化はメリットかどうか微妙。物理的・機械的強度の問題で製品がぶっ壊れる。画面タップで操作を考えるとフラットの方が便利。まぁ土台がふにゃふにゃやとその上に精密な絵は描けない。
Posted by 京都の人 at 2016年09月19日 22:10
> 白っぽい画面だと多分大きな差は出ない

白っぽい画面で3倍になるはずですけど。
今の液晶の3色は、白色のバックライトに対して、カラーフィルターをかけて、光量を3分の1に減らしています。
LED の画素ならば、そういうことはないが、白色LED に液晶のフィルタをかけると、光量は3分の1に減ってしまう。
Posted by 管理人 at 2016年09月19日 22:30
白表示の時、白色LEDバックライトにRGBカラーフィルターの1/3と偏光板二枚をパラで透過する時の透過率が1/2で照度はおよそ1/6になります。
さて、無機LED光源と比べたらOLEDのディスプレイは画素内で発光するがゆえに光取り出し効率が低くなります。
画面の垂線と直交する方向へ出る光は画素内のブラックマスクによる吸収で混色を避け1/3に減少(z/(x+y+z))、垂線方向から入射する外光が裏面反射する事を避ける為(コントラストを上げる為)に円偏光板があります。これで1/2。
結果として光取り出し効率が1/6に下がります。これはプラズマディスプレイでも生じた問題です。あの頃主流のバックライトはLEDではなく冷陰極管でしたが、大きな違いはないでしょう。
よって、元の光の1/6しかつ
Posted by 京都の人 at 2016年09月20日 06:34
↑ なるほど。情報ありがとうございました。
 ネットで参考情報を探してみたが、同種の記述は見つからないので、かなり専門的な話のようですね。

 ただ、
> 画面の垂線と直交する方向へ出る光は画素内のブラックマスクによる吸収で混色を避け1/3に減少

 という件ですが、画素の端っこの方はマスクによる吸収があるとしても、画素の中央部はその影響がないはず。一般に、発光体はかなり薄い薄膜であるから、ひらべったくて、外周部の影響は少ないのでは? 

Posted by 管理人 at 2016年09月20日 12:58
なんか途中で切れていました。すみません。(しか使えません)

画素中央部とエッジでの影響度合い
光源は電子殻間遷移によるエネルギー放出ですから「点」です。ゆえに点から出た光は画素のどこにあろうがxyzの3方向に進みます。そのためブラックマスクの寄与は画素内の点光源の位置とは関係ないです。蛍光アクリル板の端面を想像していただければよろしいかと。(これは板が全反射導光板になっているので、端面の蛍光は強調されていますが)

この辺、文字で書くのは難しいですね。

特許ではすでに画素内に小さな突起を設けてXY方向の光をZ方向へ方向転換(単に屈折・散乱ですが)するアイデアがあったと思います。下手に配置するとZ軸方向の光を曲げるし、突起が多層膜をぶち破ることになったりするので難しいと思いますが・・・。いずれも5-10年前のネタです。

Posted by 京都の人 at 2016年09月21日 00:07
 ニュースから。

 ──

 政府系ファンドの産業革新機構が、経営不振が続く中小型液晶パネル大手「ジャパンディスプレイ(JDI)」に500億円規模の金融支援をする方向で最終調整に入った。JDIが通常より返済順位が低い劣後債を発行し、革新機構が引き受ける案を軸に検討している。早ければ月内にも正式決定する。

 → http://www.asahi.com/articles/ASJC44HPKJC4ULFA00R.html
Posted by 管理人 at 2016年11月05日 09:32
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