2016年08月01日

◆ 東京の水害対策(荒川・江戸川)

 東京の水害対策はどうなっているか? どうするべきか?

 ──

 東京都知事に小池百合子が決まったので、「新知事に何を望むか?」というような記事も出た。そのなかで、「東京の水害対策を。特に荒川で」という話もあった。

 そこで思い出したが、この件は、前にも論じたことがある。昨年秋の鬼怒川の氾濫のあとで、東京近辺の氾濫を論じたシリーズだ。特に、次の項目が重要だ。
  → 東京水没のシナリオ
  → 東京の地下鉄駅の水没
  → 日本中の堤防が危険だ

 上記では、荒川や江戸川の氾濫による水害が具体的によそされている。とんでもない被害が生じそうだ。


edo-tonegawa.jpg
出典:東京建設業境界



 上記の記事を書いたときには、「堤防をきちんとやれ」というふうに示した。特に、「越流堤」という発想を示した。
  → 洪水防止の画期的な方法
  → 洪水対策の越流堤
 
 さらに、「遊水池」という発想も記した。
  → 堤防よりも遊水池

 この延長で、最近も、新横浜の遊水池を紹介した。
  → 新横浜の遊水地

 その関連で、遊水池が渇水対策になるとも示した。
  → 渇水と洪水にダム(利根川)

 以上は、過去記事の話だ。

 ──

 ここで、東京都の水害対策という話に戻る。
 「荒川と江戸川では、どうすればいいか?」

 この質問には、次のように答える。
 「前は、荒川と江戸川で堤防の対策をすればいいと述べたが、シリーズのあとの方では、越流堤と遊水池という案を示した。そこで、荒川と江戸川についても、越流堤と遊水池で対処すればいい。ちょうど、新横浜の遊水地と同様に」


 これでいい。残る問題は、具体策だ。つまり、土地の決定だ。遊水池を作るような広大な場所は、荒川と江戸川のそばに余っているか? 
 これを調べるには、Google マップを見ればいい。ちょっと調べたところ、川のそばには膨大な農地があるとわかった。特に一箇所でなく、あちこちにたくさんの農地がある。これらを遊水池にすれば、いくらでも遊水池を作れる。何も問題はない。

 具体的には、特に次の場所がお薦めだ。(とても広大な農地がある。)

 (1) 荒川の川沿い(さいたま市)





 (2) 江戸川の川沿い(利根川との分流点)





 上に二つの地図を示した。
 それぞれ、地図を縮小して、広い地域を表示すれば、「周辺には農地がいっぱいある」とわかる。だから、上記の場所に限らず、他にも遊水池の候補地はいっぱいあるとわかる。
 それらの土地を遊水池にして、渡良瀬遊水池みたいにすればいいのだ。
 そうすれば、莫大な堤防建設費を投入することなく、ごく安価に洪水回避ができる。しかも、そのことで、渇水対策にもなる。一石二鳥。
  → 渇水と洪水にダム(利根川)

 費用はごくわずかで、効果は最大だ。一石二鳥にもなっている。これこそ、ベストの策だろう。東京都知事は、この策を取るべきだ。

( ※ 都内における水害を防ぐには、都内で対策すればいいのではなく、埼玉県や千葉県で対策すればいいのだ。このことに気づくことがポイント。一種の発想の転換が必要だ。)



 [ 付記 ]
 本項では、東京都の水害について示したが、鬼怒川も同様だ。
 鬼怒川は、昨年は水害だったが、今年は逆にひどい渇水になっている。
 国土交通省下館河川事務所は27日、現在鬼怒川水系で行われている10%の取水制限を28日から20%に引き上げると発表した。20%の取水制限は1997年以来19年ぶり。
 同事務所によると、五十里、川俣、川治、湯西川ダムの鬼怒川水系上流4ダム合計の貯水率は27日現在、44%で平年比で57%にとどまる。
( → 下野新聞「SOON」

 水量は下記のグラフ。危機的と言える。

kinugawa-mizu.gif
出典:国土交通省 関東地方整備局



 鬼怒川は、去年は大量の水があふれて、「水が多すぎる」というありさまだった。一転して、今年は渇水で、「水が少なすぎる」というありさまだ。皮肉なことだ。
 しかし、この問題は、(渡良瀬遊水地のような)遊水池を作ることで、その貯水池としての機能で解決することができる。
  ・ 水が多いときには、遊水地に水を流す。
  ・ 水が足りないときには、貯水池の水を利用する。

 こうして、問題を回避できる。

 実際、渡良瀬遊水地のある利根川系は、その分、鬼怒川系よりも状況がマシだ。
  → 利根川水系のダムの貯水量 リアルタイム情報

 というわけで、鬼怒川系でも、遊水池を作ることで、「洪水回避」と「渇水対策」という二つが、同時に可能となる。しかも、とても少額で。

 一方、政府がやっているのは、超巨額を投入して、ほとんど効果がない、という方策だ。
  → 鬼怒川堤防工事 600億円は無駄
 これは無駄だ。
  ・鬼怒川の 洪水回避の機能はあっても、渇水対策にはならない。
  ・ 鬼怒川の洪水は回避できても、大量の水が江戸川に流れて、かえって被害拡大。


 小池都知事としては、「鬼怒川の新規堤防(上乗せ分)をすべてやめよ」と要求した方がいいだろう。鬼怒川領域で田んぼへの氾濫がなくなれば、その分、東京都の下町で多大な洪水が起こりかねない。被害は大幅に増加する。
 それだったら、鬼怒川で氾濫してくれた方が、東京としてはずっとありがたい。
 そして、鬼怒川自体で氾濫を防ぎたいのであれば、堤防という「先送り策」なんかを取らずに、「遊水地に水を流す」という方策をとるべきなのだ。
 政府はやるべきことを根本的に間違えている。小池都知事は、そのことを指摘するべきだ。
 東京都がなすべき水害対策とは、堤防工事でもないし、避難用のボートを用意することでもない。鬼怒川における堤防工事をやめさせることだ。それこそが東京都の水害対策として最重要なことだ。



 【 追記 】
 コメント欄で情報を得た。
  ・ 荒川にはすでに巨大な遊水地がある。
  ・ 利根川と江戸川の分流点は、遊水地には不適。


 なるほど。有益な情報だ。これを得て、次のように方針を修正したい。

 (1) 荒川については、すでに巨大な遊水地があるということなので、対策の優先度は下がる。この遊水地だけで足りるかどうか、という問題になるが、いずれにせよ、対策の優先度は下がる。当面は、荒川については対策しないでいいようだ。(いちおう安心していい、ということ。世間で大騒ぎしたら「心配するな」と告げればいい、ということ。)
 
 (2) 利根川については、上記の場所は不適なので、かわりに別のところに遊水地を定めればいいだろう。特に、次の2箇所が好ましい。
  ・ この分流点よりも上流の場所。(羽生市のあたり)
  ・ この分流点よりも下流の場所。(中央学院大のあたり)

 後者は、ざっと見たところ、「しばしば洪水が氾濫したせいで田畑になっている」というような感じだ。だから、そういう地点を遊水地にするといいだろう。
 以上のほか、江戸川の川沿いの土地にも遊水地を設置したいが、特にこれといって目立つ場所はなさそうだ。広域に田畑があるので、どこでもよさそうに見える。適当に決めていいだろう。

 なお、単に水を流すだけだと、地域一帯が氾濫してしまうので、遊水池を作るときには、川の堤防以外の場所を、新たな堤で囲む必要がある。  の字形に。( 上辺の部分は、あいているのではなくて、もともと川の堤防がある。かくて遊水地は   型になる。四辺を堤で囲まれる。)

 ──

 なお、渡良瀬遊水池(渡良瀬貯水池)の場合、地面を深く掘削して、貯める水量を増やしている。利根川や江戸川の川沿いでも、そうやって水を貯めると、夏の渇水対策がうまく行きそうだ。
 荒川の遊水地は、現状では水を貯めていないので、貯水機能はない。夏の渇水対策にはなっていない。底を掘って、貯水機能を付けるとよさそうだ。渡良瀬貯水池みたいに巨大な水面ができると、鳥も来るし、環境面でもメリットがある。

( ※ 掘削はお金がかかるので、深く掘るのはコスパが悪いが、浅く掘るのならば、何とかなる。掘ることで、十分な貯水機能ができるのなら、投じた金は無駄にはならない。)
 


 【 後日記 】( 2019-10-14 )
 荒川については、(糠田橋のあたりに)すでに遊水池みたいなものがあるので、「いちおう安心していい」というふうに結論づけたが、どうやらそれでは不十分だったようだ。今回の台風 19号(2019)では、荒川が波乱寸前 or 氾濫したというふうに報道された。




 今回の降水量を見ると、現状では対処はまだ足りないようだ。今回は彩湖が頑張ってくれたらしいが、それでもまだ足りない。(もっと大きな豪雨 or 集中豪雨が来たら、ひとたまりもない。)
 となると、さらに追加の対策が必要となる。では、どうする?
 私の提案は例によって、「遊水地を作る」だ。そのための場所は? 彩湖の北側に、かなり広大な田畑があるので、そこを遊水池にすればいいだろう。
 ただし、このあたりは田畑のところどころに住宅が散在しているので、これらの住宅には退去してもらう必要があるかもしれない。
 一方、住宅がない場所もある。ここだ。





 この「大宮けんぽグラウンド」のあたりは、住宅もないので、遊水地に適しているだろう。他の田畑も利用できそうだ。
 なお、現在の田畑やグラウンドを接収する必要はない。現在の田畑やグラウンドはそのまま使っていい。ただし、次の二点を処置する。
  ・ 荒川の側には「越流堤」をつくって、いざというときには水没させる。
  ・ 遊水地の周辺には土堤を作って、水が外部に流出しないようにする。

 あとは、「氾濫が発生した場合には補償金を払う」という契約をすればいい。これでOK。
 費用は格安で済む。地中に巨大空間を掘るのに比べれば、圧倒的な小額で済む。(正式な遊水地でなく、田中調節池 みたいな簡易版でいい。)

  ※ あとで本文を読み直したら、この遊水地候補の場所は、もともと本項の前半で紹介されていた。話は元に戻ったわけだ。

 ともあれ、こういう形で遊水地を作ることは是非とも必要だろう。今回は荒川氾濫の可能性が十分にあったことが示されたからだ。もうちょっと下手をしたら、実際に氾濫が生じたかもしれない。その上で堤防の決壊が発生したら、どうなるか? 被害は死者 3500人と予測されている。さらには地下鉄水没や、(水没による)停電・断水で、首都機能のマヒが起こりかねない。
  → 東京に迫る"荒川決壊"の危機 1400万人に影響も | ハフポスト

 
posted by 管理人 at 22:08 | Comment(4) |  地震・自然災害 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
荒川流域は、埼玉県吉見町と鴻巣市の糠田橋から、埼玉県と東京都の境にある笹目橋まで、最大幅2.5kmの巨大遊水地にすでになっています。

http://kitsunekonkon.blog38.fc2.com/blog-entry-6695.html

利根川と江戸川の分流点は、千葉県・茨城県側は台地なので、無理です。埼玉県側は、江戸川河川敷より低い低地なので、水が溢れると、幸手市から東京の江戸川区まで(カスリーン台風の水没地と同じ)水没します。

本当に危険なのは、鉄道の橋梁を通すため、堤防が低くなっている部分(京浜東北線・東北本線と京成線の上野方面)で、橋梁を持ち上げて、マトモな堤防にして欲しいです。
Posted by 王子のきつね at 2016年08月02日 13:46
↑ 情報ありがとうございます。これを受けて、
  最後に 【 追記 】 を加筆しました。

  タイムスタンプは 下記 ↓
Posted by 管理人 at 2016年08月02日 23:37
 台風 19号で荒川が氾濫しかけたのを受けて、最後に 【 後日記 】 を加筆しました。
 荒川にも遊水地を作れ、という趣旨。
Posted by 管理人 at 2019年10月14日 20:34
>他の田畑も利用できそうだ。

実際に行ってみるとわかりますけど、少し先の川越警察署の裏側、だだっ広い
空き地と田んぼだらけで、公共機関はいくつかありますけど人家はまばらです。

国道16号側は一段高くなっていて、鉄道も近くにありませんから、水没覚悟で
そこにも水を流せば、小さな湖レベルの貯水が出来そうです。


後、王子のきつねさんが紹介されていた額田橋から少し下がった鴻巣市の御成橋
周辺だと、河川敷が大きく膨らんでいて、鴻巣・吉見側いずれも一段高い所にある
ので(2年ほど前まで、仕事で車で頻繁に御成橋を渡っておりました)ここに
水を逃がせば巨大遊水地と言われた通りのレベルの貯水が出来そうです。

管理人様とコメントされている方々の情報を総合した対策を同様に練っている方が
公的機関におられると嬉しいのですが。
Posted by 参考になります。 at 2019年10月17日 08:44
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