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今回の大量殺害事件を見て、「例のない異常な事件だ」と見なす見解がある。
河合幹雄・桐蔭横浜大教授(法社会学)も「類似の事案が思い浮かばない事件」と語る。
「他に類似の事案がすぐに思い浮かばない、珍しい事件です。被害者の人数からしても、戦後最大級の大量殺人事件といえます」
( → BuzzFeed Japan - Yahoo!ニュース )
似た例として、酒鬼薔薇事件や池田小事件もある。
01年の大阪教育大付属池田小学校(大阪府池田市)での児童殺傷事件や、08年の秋葉原無差別殺傷事件は、社会や周囲への不満を一方的に募らせた人物が、無差別殺傷に及んだとされた。
( → 朝日新聞 2016-07-26 )
このような突発的事件と見なされることが多いようだ。そうだとすると、「予見不能」ということになり、何ら対処の方法がないことになる。
では、本当に「お手上げ」なのか?
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私の見解を言おう。こうだ。
「今回の事件は、十分に予見できたし、予防も可能だった。この大量殺人事件は、警察の不手際が問題だ」
つまりは、「警察の無能のせい」である。以下では、論拠を示そう。
(1) 予見可能
今回の事件は、十分に予見可能だった。というのは、犯人が予告していたからだ。衆院議長の公邸に、殺人予告の手紙を書いていた。(以下の文章は記事から一部抜粋)
→ 事件のあった施設を含む複数の施設名を列挙し、障害者を殺害すると予告
→ 津久井やまゆり園を名指しし、「障害者470人を抹殺する」と
→ 「津久井やまゆり園」を名指しして、職員の少ない夜に決行すると
→ 手書きで、住所と氏名も記されていた。
これほどにも明白に予告されていた。ならば、警察は逮捕できたはずだ。
(2) 逮捕せず
警察は、逮捕できたにもかかわらず、逮捕しなかった。
植松容疑者は施設に勤務していた2月18日、職員に「重度障害者を殺す」と発言。施設は翌19日に同署に連絡した。
同署員が19日に面談した際には「重度障害者の大量殺人は、日本国の指示があればいつでも実行する」と話した。医療機関で診察した医師は「そう病」と診断。緊急措置入院となった。
同22日の再診察では「大麻精神病」や「妄想性障害」などと診断され、改めて措置入院の処置が取られた。しかし、その後の診察で措置入院の必要性は消失したとされ、3月2日に退院した。
施設側は2月19日に「大変危険な考えだ」と伝えたが、植松容疑者は「自分は間違っていない」と激しく主張、その場で「ならば辞める」と退職願を提出したという。
植松容疑者は措置入院前の2月14日には衆院議長公邸(東京都千代田区)を訪れ、障害者殺害を予告する内容の手紙を渡そうとしていたことが既に判明している。
( → 時事 2016-07-26 )
犯人は非常に危険な発言をしていたにもかかわらず、警察は逮捕しないで、措置入院の処置を取るだけだった。ま、これで精神病院に閉じ込めることができたのなら、まだいい。現実には、22日以降に入院となり、3月2日に退院した。たったの 10日間で解放だ。(∵ 今年はうるう年 )
たったの 10日間で解放なら、もともとたいして重症ではなかったことになるのだから、その時点で逮捕するべきだった。なのに、警察がやったことは、
・ 逮捕しないで病院へ
・ 病院から退院しても逮捕せず
結局、危険な猛獣を世間に野放しにしたことになる。これが警察の対応だ。この警察の対応が、今回の結果を招いたと言える。(ずさんすぎる、と言える。)
(3) 小女子事件
一方、警察は、過剰に逮捕することもある。ただの冗談で「小女子(こうなご)を焼き殺す おいしくいただいちゃいます」と掲示板に書いただけの市民を、逮捕してしまったのだ。「小女子(こおなご) イカナゴの別名」と記して、冗談であると明示していたにもかかわらず、だ。(しかもこの件では、掲示板に書いて1時間後には「ごめんなさい」と言って、訂正・謝罪していいる。)
→ 橋下市長を逮捕せよ: Open ブログ
この事件では、有罪判決が下った。
→ 懲役1年6月、保護観察付き執行猶予3年(
この記事によると、6月29日に事件があり、まもなく逮捕され、9月29日に判決があったということだから、約3カ月も勾留されていたことになる。(保釈されたはずがないので。)
この冗談の犯人については、3カ月も留置場にぶち込んだわけだ。
その一方で、小女子でなく、人間を 470人も大量殺人すると予告した犯人については、たったの 10日間の病院送りだけで解放する。
警察の処置は、あまりにもデタラメすぎる。(裁判所もひどいが。)
(4) 酒鬼薔薇事件との共通性
だが、もっと重要な点がある。酒鬼薔薇事件や池田小事件との共通性だ。
上記記事では、
一方、先に「酒鬼薔薇事件の犯人による著作」という話題があったが、このとき、犯人の精神異常性が指摘された。異常性格と言ってもいい。サイコパスと言ってもいい。
→ 酒鬼薔薇 精神異常 - Google 検索
今回の事例を見ると、酒鬼薔薇事件との共通性が非常に大きいことに気づく。まともな人間の発想ではない。頭のネジがイカレてしまった人間の発想となっている。
そして、こういう精神異常ないし異常性格は、治療によっては容易に治癒しないことが判明している。
にもかかわらず、病院は「大麻精神病」や「妄想性障害」などと診断して、そのあとは、10日たったら「もう治りました」と言って解放してしまった。
相手が潜在的な大量殺人者だということをまったく理解できていない。こういう無能な病院( or 医師)もひどいが、それに任せきりで、あっさり手を引く警察もひどい。
(5) 対策
では、どうすればいいか? まずは、事実をきちんと認識するべきだ。それは、
「精神異常者(異常性格者)による大量殺人が、近年はときどき発生する」
ということを、きちんと認識することだ。
そして、このようなタイプに対しては、予防的な入院をさせるべきだ。特に、
・ 精神病者だから、犯罪の刑罰を免除
・ 精神病者でないから、病院から解放
という二本立て(つまり矛盾)を避けるべきだ。今回は、この二本立て(つまり矛盾)を採用した。殺人予告をしたときには、「精神病者だから」という理由で刑罰を免除した。そのくせ、10日間たてば、「精神病者でないから」という理由で、措置入院から解放した。
ひどい矛盾。あまりにも滅茶苦茶だ。こういうデタラメをやめることが必要だ。
(6) 具体的処置
具体的には、どうすればいいか? 次のことを提案しよう。
「殺人予告などをしたときには、きちんと逮捕する。精神異常が疑われたときは、きちんと裁判で有罪としたあとで、懲役のかわりに措置入院を命じる」
これならば、懲役にはならないかわり、長期間の措置入院となる。社会に解放されることはない。したがって、社会は安心できる。
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《 訂正 》
「退院は 10日後」と記したが、「12日後」という報道がある。
→ 逮捕の男 ことし2月に措置入院 12日後に退院
※ まあ、どっちでもいいが。数え方の違いだし。
[ 付記 ]
この犯人のツイッターがある。
→ 聖(@tenka333)さん | Twitter
これを見ると、精神異常っぽくはない。普段の日常生活はまともであるようだ。
その一方で、殺人予告をしたり、言動がおかしくなったりする。特に、一定時期以後、おかしくなったらしい。
「津久井やまゆり園」を辞めた後に変化があった。
「おとなしい子だったんですけど、辞めた後は髪を染めたり雰囲気が変わった。長く付き合わないとわからないと思うが言動も少し変わったと友達の間で話題になっていた」
( → BuzzFeed Japan - Yahoo!ニュース )
園長は植松容疑者について、「(2012年に)就職したころは普通の人だった」と説明。しかし、突然、障害者を殺すという趣旨の言動をするようになったという。
( → 時事通信 - Yahoo!ニュース )
かなり急激に精神の変化があったようだ。
このような急激な変化があったことと、年齢が若いということからして、私としては、「統合失調症」の症状が悪化しつつある過程だ、と見なしたい。(明白な統合失調症というよりは、その傾向が多くあるという程度だが。)
そして、この病気であるからには、改善するということはほとんどなく、どんどん悪化するばかりだと思える。「ちょっと良くなったから」という認識で、社会に解放することは、非常に危険である、と思う。特に、大量殺人を予告しているような場合には。
( ※ 被害の期待値が非常に高くなるからだ。)
現在、「精神病者の罪は問わない」という風潮がある。しかしそれは、「精神病者を社会に解放していい」という意味ではない。ろくに治療もしないで、潜在的な殺人犯である精神病者を社会に解放すれば、リスクは非常に高まる。
そういう制度的な欠陥があるのだ、と理解するべきだろう。
( ※ 警察と精神科医との連携がまずい、とも言える。ここを正すことで、将来の同種事件の再発を予防できるだろう。)
【 追記 】
医師の診断や判断が間違っていた可能性が高いようだ。
《 植松容疑者から大麻の薬物反応 》
松聖容疑者(26)が今年2月に措置入院した際、尿と血液から大麻の薬物反応が確認されていたことがわかった。
植松容疑者は2月18日、園の関係者に「重度障害者の大量殺人は日本国の指示があれば、いつでも実行できる」と発言。翌19日、園から連絡を受けた神奈川県警津久井署員が植松容疑者から事情を聴いたところ、同じ発言をしたため、署は精神保健福祉法に基づいて市精神保健福祉課に通報し、緊急措置入院となった。翌20日、尿と血液の検査から、大麻の薬物検体が見つかったという。
( → 朝日新聞 2016-07-26 )
植松容疑者の場合、相模原市精神保健福祉課の職員が2月19日に緊急措置入院の必要があると判断。22日に2人の指定医が植松容疑者を診察し、薬物反応や精神障害の症状があるとの結果が出たため、神奈川県内の病院に措置入院させた。
植松容疑者はその後、園の関係者に「大量殺人はいつでも実行できる」と発言したことについて「どうかしていた」と話したという。改めて行った薬物検査で反応が出なかったことから、医師が「他人に危害を加える恐れがなくなった」と判断。植松容疑者は3月2日に退院した。
( → 朝日新聞 2016-07-27 )
要するに、
・ 精神異常があると判定されて、大麻が検出された。
・ 大麻が検出されなくなったから、退院となった。
というわけだ。しかし、これは論理的におかしい。
(1) 精神異常が大麻によってもたらされた、という認識らしいが、論理的にありえない。大麻は精神異常をもたらさない。大麻はトリップをもたらすが、それは精神異常や異常性格とは異なる。
→ 大麻を吸うと一体どうなるの? 大麻を吸って何するの?
→ 大麻 トリップ - Google 検索
殺人をしたがるような精神異常は、明らかに大麻によるトリップとは違う。この人を診断して、「大麻が検出されたから大麻による症状だ」と結論した医師は、明らかに誤診と言える。むしろ、「大麻などは関係ない」と診断するべきだった。
(2) 大麻が無関係ならば、本質的な精神異常があったことになる。ならば、長期の措置入院が必要となる。ところが医師は逆に、「大麻が検出されなくなったから退院」と判断した。この判断は、二重の意味で間違いだ。
第1に、「大麻が原因」と見なしが誤診。(上記)
第2に、「大麻が検出されなくなったから退院」という結論を下した論理的判断。
特に、後者が問題だ。なぜなら、まともな論理的判断をするなら、次のようになるからだ。
「病院に入院している間に大麻が検出されなくなったのは、当り前である。入院中は大麻を取れないからだ。一方、退院すれば、ふたたび大麻を取るようになれる。そうすれば、ふたたび同様の症状が出る。ゆえに、入院中に症状がなくなったことは、退院の理由にはならない。むしろ、逆に結論を出すべきだった。『退院すれば大麻を取ってふたたび危険になる。だから退院させない』と」
この医師は、「病院内では問題がなかったから、病院街でも問題ない」と結論したわけだ。頭の論理が狂っているとしか思えない。病院内で大麻を取らなければ、大麻の症状が出ないのは当然だ。そのことは「病院外に出していい」(退院させていい)ということの根拠にはならない。むしろ、「病院外に出してはいけない」(退院させてはいけない)という結論にするべきだろう。
退院許可をした医師は、頭がイカレている。狂っているわけではないが、論理能力が低すぎる。こういう無能な医師が担当したことが、今回の事件の根本原因だったかもしれない。
( ※ 最も妥当な判断は、病院内で大麻を与えて、そのときの症状を判定することだ。これで殺人傾向が出たなら、退院不可。これで殺人傾向が出ないなら、大麻とは無関係で殺人傾向が出たということで、さらに精査する。どっちみち、即時退院という結論は出ない。)
待機患者が増えるぞ
規制緩和で病院を増やさないと
異なる個別事象から共通性を抽出する作業は、本質を理解するのに、必要な/不可欠な/避けて通れない作業ではないでしょうか。
今回の事件、私は「ラスコーリニコフ事件」とみます。
それだけ、ある意味「典型的な」事件であり、あまりにも典型的であるためにかえって対応が「杜撰」になってしまった、とは言えないでしょうか。
悔やまれるのは、あいも変わらぬ行政の事なかれ主義です。
事件を予告されていながら、何の対処もしなかった施設。
「完治?」とみなして、拙速に社会復帰させた(似非?)医師の判断。
その後の津久井署/県警の事案放棄?・・・
(あまり関わりたくない。)「こと」が起こったら対応し、あとから「検証する」と言えば(うそぶけば)いい。
火種を発見しておいて消さずに、火事になってから消防車で駆けつけるようなもの。
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専門家からは「植松容疑者は当時、性格の極端な偏りから生じる精神障害と、薬物による症状の両方が出ていた可能性がある」との指摘が出ている。
http://www.yomiuri.co.jp/national/20160727-OYT1T50074.html
 ̄ ̄
これは、本項の趣旨と合致する。(同じというほどではないが。)
重度障害者の介護はとても大変だと思います。それこそ、健常者からしたら、なぜこんな当たり前のことができないのか?と思うほどだと思います。
で、被告もそういう思いが日に日に強くなって、生かすことが可哀想と思ったのだと思います。
それに普段の仕事のきつさも相まって鬱憤が爆発したのでしょう。
で、暇になったものだからその時の思い出にイライラした時に大麻を吸ったのでしょう。
そうすると強く思い込むことを大麻で覚醒した脳が、より強く脳に思い込ませたのではないでしょうか?
そして急激におかしくなり、かつ、自分は正しいと思うようになったのでしょう。(この辺はテロリストの洗脳でも使う手段だと思います。)
で、入院したら大麻とも隔離されて特に不満があるわけでもないから普通におとなしく過ごしていたのではないでしょうか? 不満もくすぶる程度で燃え上がることはなかったのでしょう。
で、退院して日常に戻ったら今の自分の境遇に目がいって、さらにイライラが募り、さらに障害者に対する不満が溜まったのではないでしょうか?
そしてどこにも怒りを発露する先がないままに向かいたい先に向かったと推測します。
予見可能だったか? というと少し難しいのではないかな? 変な人には警察だって関わりたくないでしょうし、しかも、ずっと続くからね。ずっと見ていてあげないといけなかった案件なのでしょうが、なかなか抱えることは専門にしていないと難しいと思います。
現状の状態で警察に責務を求めるのは少し酷では?
今回は警察沙汰になったから警察に責任を求めていますが、結果責任ですよね?
そうではなく、そういうのを専門に取り扱う専門家を整備するべきというのが、建設的な意見というものではないでしょうか?
責任を求めたら責任を否定しようとするものです。特に大きな組織であればなおさら。
欲しいのは責任を取ることではなくて、再発を防ぐ環境づくりです。
本人は手紙で「心神喪失による無罪」という点を指摘しているので、本当の統合失調症ではなく仮病かも。
だったら転職すればいい。老人介護施設とか何とか、働き先はいくらでもある。
そもそも、解雇されたのを恨んでいたのだから、解雇されずに、そこで働きたがっていた。
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あと、心神喪失と統合失調症は全然違うので、免責の理屈にならない。
また、統合失調症の偽装は、ときどきあるが、すぐにバレる。
また、偽装するほどの知能があれば、わざわざ殺人をして死刑 or 無期懲役になりたがるはずがない。自首するはずもない。
以上の矛盾を解くには、次項を参照。
介護殺人などせず、親を施設にでも入れればいい。
ストーカーもさっさと別の相手を探せばいい。
しかし、そうはせずに、親を殺し、女性を殺すこともある。
人はいったん思い込むと、最悪の行為を選択する場合があるのでは?
そもそも「事件のあった施設を含む複数の施設名を列挙し」なので、本人ですら、特定の施設にこだわったわけじゃないです。
反論してもきりがないデスナ
自己投影の件も読みました。今後、裁判で正しい精神判定が下されるのだろうか?
忘れなかったら、留意しておこう。
2月頃からおかしくなったようですが、ダウナー系の大麻ではなく、何かちがうクスリ(特に合成系)もやっていたのかもしれません。それで大脳皮質の理性のタガが壊れたのかも。異常性欲者とか、キレやすいとか、になりそうなんですが、そうではないところが怖いです。