2016年07月25日

◆ もみ殻の有効利用

 廃棄物のリサイクルの一環で、もみ殻を燃焼させるプロジェクトがある。熱を取り出し、残った灰は肥料にする。

 ──

 これは、読売・朝刊 2016-07-25 の記事。(ネットにはない。)
 要旨は、下記。
  • 米の収穫時に出る大量のもみ殻を利用する。
  • ボイラーで燃やして熱を取りだし、残った灰は肥料にする。
  • 富山県射水市(いみずし)で実証中。
  • 射水市、富山大、早稲田大、などの産官学プロジェクト。
  • 燃焼法は困難だったので、新規に完全燃焼の技術開発をした。
  • 灰の利用法も開発した。400〜600度で燃焼させると好都合と判明。
  • もみ殻の廃棄費用(年間 720万円)を削減できる。
  • 肥料の売上げ予想は年間 2000万円(将来)。
  • 燃料費の削減予想は年間 2400万円(将来)。
  • CO2 の排出削減は年間 1770トン将来)。
  • 2018年には全国初の実用機が完成する予定。

 いいことずくめですね。歓迎したい。

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 さて。どうしてこの記事をわざわざ引用したかというと、この技術が特別に優れているからじゃない。前に私が言及したことと対応するからだ。
  → 第二世代バイオエタノール
 ここで述べたように、政府は「麦ワラ・稲ワラからバイオエタノールを取り出そう」という方針を取っていた。「これなら、廃棄物から、宝の山を取り出せる。廃棄物処理と、燃料確保で、一石二鳥。うまい案だ!」というふうに。特に、「こうすればワラで長者になれる。わらしべ長者だ」なんていうダジャレを言うページまでも出る始末。
  → 稲わら長者続出?! 庭でバイオエタノールが作れる(pdf)
 しかしながら、こういう夢想は成立しない。大量の廃棄物からエネルギーをうまく取り出すなんてことは、原理的にできない。技術的にはともかく、コストが猛烈に高くなるからだ。(参照 → モモでバイオディーゼル
 では、バイオエタノールを取り出すことができないのなら、かわりにどうすればいいか? それには、「燃やして燃焼エネルギーを取ればいい」というのが、私の結論だった。
 そして、その結論と同じことを示して、現実に実証しているのが、冒頭の射水市のプロジェクトだ。
 つまり、私が示した「正しい方向」(2008年)をまさしく実証しているのが、冒頭のプロジェクトだ。その意味で、紹介する価値がある。……それが、ここでいちいち紹介した理由だ。
( ※ 麦ワラ・稲ワラと、もみ殻という違いはあるが、たいして問題ではない。)

 なお、射水市という自治体は正しいことをやっているが、政府は違うようだ。私が「正しい方向」(2008年)を示したあとも、相も変わらず「麦ワラでバイオエタノール」なんてことをやっているようだ。
  → ワラでバイオエタノール - Google 検索
 政府の助成金を得て、いくつかの企業が研究中であるようだ。たとえば、これ。
  → 大成建設、稲わらを材料にした高効率バイオエタノール製造技術を開発
  → 非食用バイオマスの稲わらから低コストなバイオエタノール製造技術を確立
 ここでは、「低コストで製造」と言っているが、まったく無意味だ。この点は、2008年にすでに示した通り。
 麦ワラなどの余り物を再利用する「第二世代バイオ・エタノール」には、技術的な問題がある。それは「効率が低くてコスト高になる」という問題だ。はっきり言って、「そのまま燃やして暖を取る」という方が、はるかに効率が高い。わざわざ莫大なエネルギーを投入して、麦ワラをエタノールに変えても、無駄が多すぎて、コスト的にもエネルギー的にも割に合わない。たしかに「無駄なものを再利用する」ということはできるが、「無駄をなくすために莫大な無駄をする」ということになる。

  ・ 通年ではなく、収穫期の一度しか、生産できない。
  ・ 大量のワラを効率的に運搬する方法がわからない。
  ・ 技術が開発されていない。(硫酸法で可能だが、高コスト。そこで、
   アルカリや高圧高温水を使う新技術を開発する、という方針。)


 最後の点に着目して、「政府が金を出して新技術を開発すればいい」というのが、政府やマスコミの立場だ。「そうすれば、現状よりもコストを大幅に削減できる」という見通しだ。
 しかし、目標が達成されても、こうして生産された第二世代バイオエタノールは、他の燃料に比べれば価格が大幅に高い。(石油の3倍ぐらい。)また、初めの二点の問題は解決されない。……この二点ゆえに、およそ採算ベースに乗りそうにない。

( → 第二世代バイオエタノール

 製造のための新技術は、数年をかけてようやく完成したようだ。しかしながら、「初めの二点の問題は解決されない」と言った通りになっている。
 (1) 通年ではなく、収穫期の一度しか、生産できない。そのせいで、設備は一年のほとんどの時期で遊休している。これでは、設備投資を回収できない。(上記の実証試験では遊休する設備のコストは計算に入っていない。)
 (2) 大量のワラを効率的に運搬する方法がわからない。(上記の実証試験では、大量のワラを運搬するコストは計算に入っていない。)

 ま、ざっと見て、設備費用と廃棄物運搬費用だけで、石油の2倍ぐらいの価格になるだろう。だから、バイオエタノールの製造コストがたとえゼロになっても、その販売価格は石油の2倍になる。バイオエタノールの製造コストが石油と同等になったら、その販売価格は石油の3倍になる。……いずれにせよ、石油には太刀打ちできない。
 なのに、設備費用と廃棄物運搬費用を無視して、「バイオエタノールは有望だ」というデタラメ研究をしているのが、政府だ。

 こういう馬鹿げた状況(政府の愚行)に比べて、富山県射水市ははるかに正しい方向を進んでいる。それゆえ、ここで紹介する意義がある。
 また、この情報は、政府の「バイオエタノール開発」という技術と一対にしてこそ、意義がある。もみ殻燃焼という技術は、とりたてて画期的な素晴らしい技術であるわけではなく、当り前の方向の技術であるにすぎない。しかしながら、それは、政府の途方もない愚劣さを浮き上がらせるためには、とても有意義なのである。
 
posted by 管理人 at 22:20| Comment(1) | エネルギー・環境2 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
バイオエタノールを作るよりは、籾殻を直接燃やす方が効率的ですよね。
コメ作りをしている農家では、
下記のような籾殻用ストーブを利用して調理に利用している所もあります。
(下記はただの引用です)
https://www.youtube.com/watch?v=eC6aKTh8O6A

私の祖父母も、秋の収穫の際の籾殻を、正月のもち米炊きに利用していました。
典型的な地産地消で、これは運搬費がゼロ、人件費もゼロでした。

もちろん、燃焼効率がどうだとか、大規模な稲作農家では籾殻を使い切れないだとかの問題はあると思いますが、
これも条件によって有効な手段の一つであると思います。
Posted by inasaku at 2016年07月27日 01:09
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