2016年07月24日

◆ 連星の誕生・形成

 連星の誕生を考える。太陽のような恒星が形成されるとき、1個でなく2個の連星となることが多い。なぜか?

 ──

 恒星が形成されるときには、連星となることが多い。……このことは、天文学ではよく知られていることだ。では、なぜか? その説明を求めたが、ネットではなかなか情報が見つからない。そこで私なりに説明してみる。

 ──

 まず、話のきっかけは、下記だ。
  → 発見!3つの太陽をもつ奇妙な新惑星

 二つの太陽がある連星どころか、三つの太陽がある三重星の例だ。(少し前に報道されたが、本日の読売新聞でも報道された。)
 これはまあどうでもいいのだが、これを読んで、「多くの恒星は連星であるはずだが」と思った。
 そこで、「連星はどうして形成されるのか?」という疑問が生じた。さっそく、ネットで調べたが、うまい回答が見つからない。Wikipedia は日本語版にも英語版にも適切な説明がない。

 Google で検索すると、最初のあたりにあるのは、次のページ。引用しよう。
 連星はどのようにして形成されるのでしょうか?
 二つの星が別々の場所で生まれて、その後、たまたま近くを通りがかるのか、それとも、最初にビッグバンの後の塵かなにかが渦を巻いて星を形成する時に、二つ同時にできるんでしょうか?

 現在、考えられる恒星の標準的な誕生モデルは、散光星雲の中で数十個かそれ以上の星の集団が同時に誕生して、まず散開星団を形成するのです..
 やがて散開星団は、広い空間に散らばっていくのですが、各恒星のアトランダムな動きの中で、連星系を構成していくモノも少なくありませんね..!
( → 知恵袋

 という回答が見つかったが、例によって、知恵袋はまったく当てにならない。 (^^);

 そのあと、専門家のページを見たが、こちらは役に立った。(難解だが。)
  → Masahiro Machida's Web Page
  → 星形成の理論研究: 最近の進展とこれからの課題[PDF]

 どちらも同じ研究者(町田正博・准教授)の研究だ。他のページも探してみたが、どうやら、この人が日本では第一人者らしく、他にはめぼしい Webページが見出せない。
 で、その内容は、「恒星の形成の3次元シミュレーション」だ。その研究(上記)を見ると、恒星の形成の3次元シミュレーションによって、連星が形成される過程が推察できる。

 ──

 とはいえ、3次元シミュレーションなんて、モデルと数値による計算だけだ。たぶん正しいのだろうが、どうしてそのモデルが出たのか、ということは、直感的には理解しにくい。初心者向けではない。
 そこで、もうちょっとわかりやすい話として、下記がある。(大学受験生向けのガイドページ。)
太陽系はどのようにしてできたのか
 宇宙で最初にできる「ファーストスター」と呼ばれる星が超新星爆発を起こすと、水素とヘリウムより重い元素(重元素)がばらまかれます。すると、宇宙空間には水素、ヘリウムのほかに重元素も存在することになります。ガスの濃い場所では重力によって物質が引き寄せられ、やがてガスの固まりになります。その固まりはさらに収縮しますが、収縮と同時に徐々に回転速度が大きくなって円盤のような形になっていきます。その後、中心に太陽のような恒星ができるのです。一方、地球のような惑星は、太陽ができた残りのガスの中の重元素が円盤の赤道面に集まってできたものと考えられています。

星が遠心力でちぎれる?

 ガスの固まりの回転は、その大きさが縮むほど速くなります(角運動量保存の法則)。この回転が速くなると遠心力が働いて、円盤状になるのです。遠心力が強くなると、ガスの固まりは2つにちぎれてしまうことがあります。その後ちぎれたガスは2つの星になります。これは「連星」と呼ばれ、2つの星が互いに引き合いながら回る様子が、これまでにたくさん観測されています。誕生した星の半数以上が連星であるとされているのです。ガスの固まりが3つ以上にちぎれて3つ以上の星になることもあります。実は、もともとは太陽も連星だったのかもしれません。ほかの星が接近することで片方がどこかにはじき飛ばされてしまったか、ほかの何らかの重力相互作用によって一方が離れてしまったのではないかと考えられているのです。
( → 夢ナビ : 町田正博による解説

 「遠心力が強くなると、ガスの固まりは2つにちぎれてしまうことがあります」
 というのが、わかりにくい。遠心力が強くなれば、遠くの方に四散してしまうはずだ。2つに固まるというのは、話の方向が逆だ。とても納得できない。

 とはいえ、3次元シミュレーションの研究を見ると、「遠心力が大きいときには連星になり、そうでないときには連星にならない(1個になる)」という結果が得られている。では、これをどう解釈するか? 

 ──

galaxyz.jpg
イメージ画像

 ──

 私の考えを述べよう。(私見)
 まず、上の引用部のように、初期の形成時には次のようになる。
 「収縮と同時に徐々に回転速度が大きくなって円盤のような形になっていきます」
 ここまではいい。
 このあと、円盤状の物質は回転する。長期的には、どんどん中心に吸い込まれていく過程もあるが、それはゆっくりしているし、部分的だ。残りの物質は、そのまま円盤状の各位置に残って、惑星を形成する。
 では、中心部では? 中心部には太陽に相当する質量があるので、周辺の物質の一部は中心部に吸い込まれていく。しかしながら、中心部そのものである質量(恒星になるはずの質量)は、それより内側にあるものは特に存在しない。(太陽の内側の太陽というのは存在しない。)
 とすればそこにある物質は、他の惑星と同様で、単に周回しながら、少しずつ固まっていくだけだ。(中心に向かって吸引されるのではない。)

 このあと、そこにある質量が十分に多大であるなら(というか質量密度が高ければ)、そこに重力が強く発生して、物質はしだいに固まっていく。…… (1)
 逆に、そこにある質量があまり多大でないなら(というか質量密度が低ければ)、そこに重力があまり発生しないので、物質はなかなか固まらない。 …… (2)


 (1) の場合には、質量密度が高いせいで、重力が強く発生するので、あちこちでどんどんかたまりが発生する。質量密度がものすごく高ければ、かたまりがいくつもできるので、多重星になるだろう。(三重星、四重星、五重星など)。質量密度がちょっと高ければ、かたまりは二つぐらいできるので、二重星(つまり連星)ができるだろう。
 (2) の場合には、質量密度が低いせいで、重力があまり発生しないので、かたまりは発生しないだろう。円盤か、リングか、渦巻きみたいなものができて、そのまま時間が経過する。そうするうちに、長い時間がたって、中心に収縮する。ここでは、連星でなく、単体の星ができるだろう。

 (1)(2) からわかるが、要するに、質量密度が低いときには、中心で単独星ができる。一方、質量密度が高いときには、質量が中央に収縮する前に、比較的早い段階で各所で質量が集まって、各所で星になる。質量が集まる過程は、惑星が形成される過程と同様である。ただし、惑星よりも、比較的中心部において同様のことがなされるわけだ。

 なお、ここでは、回転速度も重要だ。回転速度が高ければ、中央に落ち込むのに時間がかかる。時間がかかれば、その間に、連星ができる余裕が生じる。
 一方、回転速度が低ければ、中央に落ち込むのが早い。そうなると、連星が形成される余裕もなく、あっというまに中央に落ち込んで、中央で単独の星ができる。

 結局、質量の密度と、回転速度という、この二点の影響で、連星になるか単独星になるかが決まる。そして、多くの星が連星または単独星になっているということから、ちょうどこれらの中間あたりのところに、分布が多く集まっていた、と推定できる。
 
 ──

 以上で、私なりの見解を示した。これなら、初心者にもわかりやすいだろう。
 上の見解は、先の3次元シミュレーションの研究とも、おおむね合致する。ただし研究では、「質量」のかわりに「磁力」が重視されているようだ。そこがちょっと異なる。

 ま、直感的な理解でなく、もっと専門的な理解を知りたければ、専門分野の文書を読むといいだろう。先にも示したが、下記が詳しいようだ。
  → 星形成の理論研究: 最近の進展とこれからの課題[PDF]



 [ 付記 ]
 別の解説もある。
 メリーランド大学のマンデイ(Mundy, L.)によりますと、星形成のごく初期の非常に若い原始星は、連星、三重あるいは四重連星が一般的で、星形成領域に単独星はめったにないということです。 しかし、このような三重以上の連星は一般に力学的に不安定で、進化の過程で単独星を放出し、安定な形に落ち着きます。 二つの星の連星になれば必ず安定します。 一方放出された星は、その後単独星として進化を続けます。 したがって、若い星の方が連星である可能性が大きいのです。
( → 星は連星として誕生する

 似た趣旨の話は、Wikipedia 英語版にもある。
 The outcome of the three-body problem, where the three stars are of comparable mass, is that eventually one of the three stars will be ejected from the system and, assuming no significant further perturbations, the remaining two will form a stable binary system.
( → Binary star - Wikipedia

 三つの星があると、そのうちの一つが はじき出されて、残りの二つで安定状態を保つ……ということが、三体問題から結論できる。かくて、連星として残る例がとても多いのだ、ということになる。
 また、はじき出された一つは、単独星となる。だから、単独星も多く存在するわけだ。(初めはほとんどが連星や三重星になるとしても。)
 


 【 関連サイト 】

 イメージ動画(想像)がある。下記画像をクリック。

rensei.jpg

 動画の和文解説は → Wikipedia
 
posted by 管理人 at 21:40 | Comment(5) | 物理・天文 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
>宇宙で最初にできる「ファーストスター」と呼ばれる星が超新星爆発を起こすと、水素とヘリウムより重い元素(重元素)がばらまかれます。

ということはファーストスター形成前には宇宙には水素とヘリウムしか存在しなかったわけですよね。
その状態でどうやって水素やヘリウムが集まってファーストスターを形成したのでしょうか?
水素やヘリウムはそれだけでは重力で集まれるとは思えません。超低温ならファンデルワールス力で集まれますが、初期宇宙はそんなに超低温だったのでしょうか?
以前から疑問に思っていますが、納得いく回答は見つかりません。
Posted by のぐー at 2016年07月25日 01:15
> どうやって水素やヘリウムが集まってファーストスターを形成したのでしょうか?

ググると、解説が見つかる。
  http://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/web/15/031000004/041600001/
  http://member.ipmu.jp/naoki.yoshida/kagaku_first.pdf

 単に、勝手に物質が集まった、というふうに書いてある。
 まあ、これで、わかる人はわかるんだろうが、説明不足ですね。
 私が解説すると、次の通り。

 ──

 この時期は、宇宙の誕生直後なので、宇宙のサイズは今よりもずっと小さかった。だから、勝手に集まってファーストスターを形成した。

 その後、100億年以上たったのが、現在だ。この時点では、宇宙は大きく膨張しており、かつ、温度は低い。(ほぼ絶対零度)
 現在の宇宙は、冷たくて、スカスカだ。だが、ファーストスターの誕生時の宇宙は、そうではなかった。物質が勝手に集まってファーストスターを形成できた。また、宇宙の晴れ上がりの直後なので、宇宙全体の温度も高かった。

 ──

> 超低温ならファンデルワールス力で

 高温でした。また、力は重力です。
Posted by 管理人 at 2016年07月25日 06:52
正体不明のダークマターが関連していませんか?
よって、本系の正確な描写は無理かな?
∵連星がビックバン初期に多くできたという証明もありませんので・・・
Posted by yomoyamapage at 2016年07月25日 09:43
 ダークマターは、連星でなく、ファーストスターに関係する。(二つ前のコメントのリンクを読めばわかる。同じリンク。)

  → http://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/web/15/031000004/041600001/
Posted by 管理人 at 2016年07月25日 12:59
連星の誕生、興味深いです!

勉強させていただきます!
Posted by 師子乃 at 2017年11月05日 00:27
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