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EU は難民問題で苦しんでいる。これに対して、私は以前から、「難民をすべて収容するのは無理だから、無理に難民を受け入れようとはするな」と述べてきた。
ドイツなどの欧州がいくら人道的に難民を救済しても、その数はたかが知れている。欧州全体で受け入れ可能なのが、せいぜい 100万人。その大部分をドイツとスウェーデンが占めるらしく、他の国々は多くて数万人程度。いずれにしても、全体で 100万人ぐらいでしかない。
一方、朝日の記事(上記)にあるように、難民は 6530万人もいる。
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欧州は難民を受け入れて、「おれたちはこんなに人道的だ」と威張る。そして、「難民を受け入れない日本は身勝手だ」と憤る( → BBC )。
しかし、欧州が 100万人ぐらいの難民を受け入れているといっても、焼け石に水なのだ。 100万人のまわりには、6530万人の難民が救われずに残っているからだ。これらの大多数の難民を無視して、たったの 100万人ぐらいを救済しても、とうてい問題の解決にはならないし、威張ることもできないのだ。
欧州人にせよ、朝日にせよ、何も問題を解決しないまま、自分がちょっとだけ善行をしているからといって威張る連中は、「偽善家」と呼ぶにふさわしい。
( → 難民を解決するには 2 )
これが現実だ。まずは現実を見るべきだ。「小さな力で巨大な岩を持ち上げたい」と夢想する前に、「小さな力では小さな石しか持ち上げられない」という現実をわきまえるべきだ。そうすれば、「小さな力で巨大な岩を持ち上げようとした結果、巨大な岩に押しつぶされて死んでしまう」という愚を避けることができる。
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さて。これに関連することがある。本日、別項( nandoブログ)で、トルコのクーデターについての記事を書いた。そこに次の文章を、余談ふうに記した。
( ※ EU は「難民に親切です」というフリをしているが、それは、トルコの独裁者が、汚いところを引き受けてくれるからだ。汚いところを独裁者に面倒を見てもらって、それでいて「自分たちは難民に親切です」というフリをしているわけ。
こういう欧州の偽善[エセ人道主義]が、物事の根源だ、とも言える。「できないことはできない」とはっきり言えばいいのに、できないことをできるというフリをするから、悪党の世話になるハメになる。
マフィアの世話になって善人のフリをする馬鹿市長、みたいな話。バットマンの世界に似ている。)
( → トルコのクーデターと独裁者 : nando ブログ )
欧州は「難民を救います。自分たちは善人です」と唱える。そのことを、私は Openブログで何度も批判してきた。「偽善者め。できないことを、できますと言って、嘘をつく嘘つきめ」というふうに。
ただし、欧州は、完全なる嘘つきではなかった。ある前提のもとで、語ったことを実現していた。では、ある前提とは? こうだ。
「汚い部分を、すべて独裁者に押しつける」
ではなぜ、独裁者は、そんな面倒を引き受けるのか? こうだ。
「独裁者は、おのれの独裁という悪を見逃してもらうのと引き替えに、欧州の汚い部分を引き受ける」
こうやって、両者は持ちつ持たれつの関係となっている。
・ 欧州は、汚い部分を引き受けてもらえる。
・ 独裁者は、独裁の悪を見逃してもらえる。
しかし、裏返して言えば、これは多大な弊害をもたらす。
・ 欧州は、受け入れ不可能な難民を、受け入れ可能だと勘違いする。
・ 独裁者は、独裁という悪を善であると勘違いする。
こうして、真の解決とは別の方向に、現実が進んでいく。本来ならば、
・ 難民は欧州では受け入れ不可能だとして、受け入れを拒否する。
・ 独裁制は悪であるとして、独裁制に制裁する。
という方針を取るべきなのに、逆に、独裁者に頼りながら悪を見逃すという道を取る。
欧州はこういうふうに、皮肉な矛盾ともいうべき、歪んだ政策を取りつつある。そのことを彼らは理解していない。
そういう現実を、今回は露見させた、と言えるだろう。
【 関連サイト 】
→ トルコのクーデターと独裁者 : nando ブログ