2016年07月14日

◆ ミリ波レーダーの限界(自動運転)

 自動運転で、ミリ波レーダー方式には、原理的な限界がある。(テスラなど)

 ──

 ステレオカメラ方式は別として、単眼カメラ方式には、ミリ波レーダーを併用するのが標準だ。
 ただの自動ブレーキなら、安価な場合には「単眼カメラだけ」で「ミリ波レーダーなし」という例もある。しかし、高価な自動運転の装置ならば、ミリ波レーダーを省くと、コストはいくらか下がるものの、機能の低下がひどすぎるので、ミリ波レーダーを省きにくい。そんな馬鹿げたことをやっているのは、世界広しといえども、日産セレナぐらいしかない。(狂気の沙汰だ。)
  → 日産セレナの自動運転は欠陥品

 一方、テスラを初め、他社は、自動運転にはミリ波レーダーを採用する。特にトヨタは、安価なミリ波レーダーを開発したので、単眼カメラとセットでも5万円という激安価格を成立させた。
  → 日産セレナの自動運転は欠陥品

 ──

 では、ミリ波レーダーがあれば、単眼カメラ方式でも大丈夫か? 少なくとも自動ブレーキに関する限りは大丈夫だ、と思えたのだが、現実には、テスラが事故を起こした。
 「ミリ波レーダーがあれば、自動ブレーキがきちんと作動するはずだ。なのに、どうして作動しなかったのか?」
 という謎がある。これは、当初から指摘されていた謎だ。
  → 自動運転車で死亡事故 1 (コメント欄で言及)

 その後、「このミリ波レーダーは不十分なものだった」という報道があった。
 レーダーは前の車に追突するのを防止する機能しかない、横から出てくる車との衝突を回避することはできない、
 
 先に「自動運転車で死亡事故 2」の項目で、こう引用した。要するに、ミリ波レーダーは(検出の範囲の点で)機能が不十分だ、ということになる。
 
 一方、新たに、次の報道も出た。
 テスラのイーロン・マスクCEOのツイートによれば、Autopilotはミリ波レーダーの情報から、トレーラーの車体を「高速道路上の道路標識」と勘違いしたという。
 トレーラーは、一般的な車両よりも車高が高い。このためレーダーの電磁波がトレーラーの車体の下をすり抜け、「上方に標識はあるが、前方には障害物なし」と誤認した可能性がある。この結果、Model Sはフロントガラス部がトレーラーと衝突し、車体はトレーラーの下を突き抜けた。
( → AIは勘違いする―テスラとトヨタにみる自動運転カー戦略の違い:ITpro

 仮にそうだとすれば、テスラの自動運転車は、ミリ波レーダーの作動範囲を極端に狭くしていたことになる。通常ならば、ミリ波レーダーの作動範囲は、自動車のぶつかりそうな範囲の全体を含むはずだ。なのに、とても狭い特定領域だけをレーダーで検知していたことになる。
 しかし、そんな馬鹿なことをするはずがない。だいたい、それだったら、ミリ波レーダーを使う意義すらない。ミリ波レーダーは、対象の形状をミリ単位で測定できるというメリットがある(解像度が高いわけだ)。そのメリットをなくすようなミリ波レーダーでは、意味がない。
( ※ 特別に安上がりな、いい加減な性能のものでも使っていたのだろうか? まさかね。トヨタ・カローラの[ミリ波レーダーのかわりの]赤外線レーダーじゃあるまいし。)

 ──

 はっきりとしたことはわからないが、私の推定は、こうだ。
 「ミリ波レーダーには、原理的な弱点がある。それは、対象がステルス機能をもつ場合には、検知できないということだ」


 ミリ波レーダーは、レーダーであるからには、ステルス機を検出することはできない。そして、トラックというのは、場合によっては、ステルス機能をもつことがありそうだ。
 たとえば、このトラックでは、下端の部分が下向きなので、反射したレーダー電波は、自動運転車には戻ってこないで、道路に乱反射してしまいそうだ。そうなると、正確な距離測定ができなくなる。
 また、このトラックでは、隙間がいっぱい空いているので、レーダー電波の反射が断続的になり、正確な位置測定ができなくなったのかもしれない。
 つまり、隙間があって、レーダーの反射が断続的になると、機械が判定できなくなって、立ち往生してしまう、というわけだ。
 こういうことは、ミリ波レーダーでなら、起こることもありそうだ。


 ──

 結論としては、「ミリ波レーダーには誤認の余地がある」と言える。
 単に「レーダーの電波が戻ってくるかどうか」ということしかわからなない。そのせいで、前方の状況が複雑になると、たちまち判定に迷ってしまう。
 前方にあるのが、ただの固定的な障害物であるのならば、単に「レーダーの電波が戻ってくるかどうか」だけを調べればいいが、もっと複雑な形状のものが対象となると、断続的に戻ってくる電波を受けて、どう判定するか、人工知能が迷ってしまうのだ。
 これは、測定で得られた情報が貧弱であることから来るものであって、原理的に解決が困難な問題だ。
 この意味で、自動運転には、「ミリ波レーダー」という情報不足の測定装置は、適さないと言える。

( ※ これもまた、ステレオカメラ方式とは違う原理のせいだ。ステレオカメラ方式との比較は、前項を参照。)



 【 追記 】
 ミリ波レーダーには限界があるが、赤外線レーダーよりはずっといいので、搭載するなら、ミリ波レーダーが好ましい。
 問題は、価格だ。価格は、赤外線レーダーの方がずっと安くて、トヨタの場合で4〜7万円もの価格差がある。ミリ波レーダーにすると、価格が4〜7万円も高くなってしまうのだ。

 しかし、である。「ミリ波レーダーも技術革新で安価なものが開発されているはずだ」と思って、検索してみたところ、さっそく見つかった。
  → ドイツの独立メーカーのミリ波レーダー
 どんどんコストが下落して、2014年7月発売のものでは約250ユーロ(3万円弱)となっている。格安ですね。それから2年たった現在なら、2万円ぐらいになっていると推定される。
 この会社は、独立系の会社なので、自動車会社に縛られることはない。どの自動車会社も、このミリ波レーダーを購入することができる。
 だったら、日産セレナも、このミリ波レーダーを搭載すればいいのだ。それで問題はすべて解決する。



 【 関連サイト 】

 本項の続編があります。そちらもお読みください。
  → ミリ波レーダーの最新技術 (2016年07月21日)

   ※ ミリ波レーダーの難点を克服しつつある、という話。
posted by 管理人 at 23:12| Comment(4) | 安全・事故 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
 最後に 【 追記 】 を加筆しました。
 安価な(格安の)ミリ波レーダーがある、という話。
 タイムスタンプは 下記 ↓
Posted by 管理人 at 2016年07月16日 15:39
日本の自動運転の歴史は比較的長いことはあまり知られていないようです。
1980年代に日産自動車(元プリンス自動車工業)が通商産業省主導の機械化
運転技術開発事業で「道路の白線をカメラで認識し自動運転する技術」を
実用化しています。運輸省と建設省はICチップを道路に埋め込む技術(道路に
電波を発信する機械を埋め込み誘導する方式)を目論み予算を大量確保した。
日産の技術を認めると道路にICチップを埋め込む利権が消えることと通産省に
先を越されたことが気に食わなかった建設省が運輸省を焚き付けて「安全性」を
理由に日産の自動運転技術を不認可にすることを決定したため、白線認識型
自動運転技術を作った日産は研究費がかさみ倒産寸前まで凋落して、通産省
主導でフランス政府直営のルノーに自動運転技術ごと売り渡すことになった。
ICチップ誘導型自動運転技術も「安全性」がネックになりお蔵入りが決定した。
自動運転技術を搭載した欧州車が(当初はクルーズコントロール)発売される。
外圧に晒され国土交通省は自動運転技術搭載車を認可して、いままで不認可
認定を食らってた日本車メーカーは自動運転技術を研究する必要性がなかった
ため開発が出遅れることになった。1990年には追浜の日産中央研究所構内で
無人の自動運転車が走行していた。結果として、自動運転を認めなかった国土
交通省が悪いことになる。
Posted by 夢の時 at 2016年07月20日 02:08
> 白線認識型自動運転技術を作った日産は研究費がかさみ倒産寸前まで凋落して

 いくら何でも、倒産寸前になるほどには開発費はかさみません。倒産寸前になったのは、別の理由。会社の組織が全般的に停滞していて、売れない車ばかりを発売していたから。シェアも激減していた。こっちが理由です。
 そもそも、白線認知をするぐらいでは、当時の技術では自動運転は不可能でした。日産だって、来月にようやく発売できるという程度。2010年以前の技術では、とうてい不可能。1980年代なら、まだパソコンも普及していなかった。Windows95 もなかった。自動運転の発売なんて、夢のまた夢。ただの研究だけです。白線認識でオートクルーズができるとしても、自動ブレーキがなければ、危険すぎて、発売できたものじゃない。いずれにせよ、実用化は近年になってから。

 肝心なのは自動ブレーキの方。こちらも国交省は規制していた。しかしボルボの発売で壁に穴があいて、同時に、研究していたスバルはアイサイトを発売した。
 他社は、国交省の規制を真に受けて、研究していなかったから、大幅に立ち遅れたようだ。
  http://www.corism.com/special/other/2649.html
  http://trendy.nikkeibp.co.jp/article/pickup/20140401/1056319/

 アイサイト
  http://www.subaru.jp/eyesightowner/care/control.html
Posted by 管理人 at 2016年07月20日 06:58
これはネットの記事を編集しないで書きました。
「実用化」「倒産寸前まで凋落」は間違ってます。

確かに日産の倒産の理由は売れていた「901活動」の車種のフルモデルチェンジの
失敗による販売不振が主な原因です。当時の約2兆円もの有利子負債は報道されま
した。

自動運転車 - Wikipedia
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%87%AA%E5%8B%95%E9%81%8B%E8%BB%A2%E8%BB%8A#.E6.97.A5.E6.9C.AC

「日本における自動運転の歴史は比較的長い。1980年代にはすでに車線を認識し走行
するシステムを試作していた。実用化し市販されたものはほとんどなかったものの、
各社で研究は継続され、現在のスバルのEyeSightなどにつながっていく。
しかしながら、2010年代に入り、欧米、特に欧州の自動車メーカーで開発が進展し、
また米国でもグーグルが街中で試験走行行うなど、法整備の遅れた日本は出遅れて
しまった。危機感を抱いた国土交通省では自動運転システムを「オートパイロット
システム」と呼称し、検討会を2012年から開始し2013年に中間とりまとめを発表し
た[56]。 法制度の問題については、国際協調を図りつつ、既存制度の見直しや責任
の所在等について検討を行うとしている。」

Wikipediaには「1980年代にはすでに車線を認識し走行するシステムを試作していた。」
と書かれていますがどの程度の物かは分かりません。国土交通省が自動運転の開発を
遅らせたと書かれています。

1980年代に自動運転の試作は可能かを次の点で調べてみました。
・組み込みリアルタイムOS
・画像処理用LSI
・クルーズコントロール

組み込みリアルタイムOSは1980年代に「VxWorks」「pSOS」などが既にありました。
1980年代に自動車に搭載されていたようです。
「自動車用のソフトウェアのプログラム行数はうなぎのぼりに増加し、
トヨタ自動車によると、1978年ごろは2,000行程度だったが、2001年
には200万行にも膨れ上がり、2006年では1,000万行にも増えたという。」

画像処理用LSIもあったようですが実際に試作に使われたかは分かりません。

富士通のアナログIC
画像処理用LSI(No.22)
「当社は、1980年から画像処理用LSIとして、社内向けにビデオ用の
20MSPS8ビットADコンバータ(MB4054)と10ビットDAコンバータ(MB4074
)を開発しました。1981年には超高速バイポーラメモリ用に開発されたIOP (*1)
プロセスを使用して、0.9Wに低電力化した世界トップレベルとなるMB4054を
完成させました。開発では、当時のアナログLSIでは大規模となる約1万素子の
レイアウトや20MSPSの高速変換レートでの評価と試験に苦労しました。評価
では専用の設備がないためロジックアナライザで行い、試験でも専用テスタが
ないため手作りの治具とオシロスコープを使って目視で変換精度性能の選別を
しました。」

アクセルペダルを踏み続けることなくセットした一定速度を維持する機能
(クルーズコントロール)は1964年にトヨタ・クラウンエイトにオプション装備
としてあり、実用化されていました。

「1980年代にはすでに車線を認識し走行するシステムを試作していた。」は
衝突被害軽減ブレーキなしの自動運転の試作のようです。現在の自動ブレーキ
も状況により作動しないことがあり、不完全なものです。どのような状況でも
作動する自動ブレーキが自動運転には必要になります。国は2025年を市場化の
目標にしています。

関係ない話ですが私は自動ブレーキ搭載車に乗っています。自動ブレーキが
作動して、急ブレーキがかかり、自動ブレーキが搭載されていない後続車に
追突される可能性があるのを気にしていたのですが調べると十分な車間距離を
とっていなかった後続車に100%の責任があるようです。
Posted by 夢の時 at 2016年07月21日 01:27
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