2016年07月14日

◆ 単眼カメラ方式の限界(自動運転)

 自動運転で、単眼カメラ方式には、原理的な限界がある。(日産セレナやテスラなど。)

 ──

 自動運転では、スバルのアイサイトと Google はステレオカメラ方式だが、他社はほとんどが単眼カメラ方式だ。特に、単眼カメラで画像解析する Mobileye という会社の技術を採用する例が圧倒的だ。先に死亡事故を起こしたテスラも、この方式を採用していた。……以上は、下記で記したとおり。
  → 自動運転車で死亡事故 1

 単眼カメラ方式は、なぜ人気があるか? ステレオカメラに比べて、カメラが1台分コストが低いことと、画像解析をしやすいことだ。特に、人工知能ふうに画像解析をして、位置を検出する技術があるので、これを単眼カメラ方式で使うと、比較的容易に位置検出ができる。
  → 動画

 だが、この方式を技術的にじっくり考えると、致命的な難点があることがわかる。

 ──

 そもそも、この方式はどうやって、2次元の情報から3次元の情報を引き出すのか? 原理的には不可能なことではないのか? 
 仮に、2次元から3次元を推測するのだとしたら、そこでは「錯視」のような勘違いが起こるはずだ。下記のような図を見てほしい。
  → 錯視1
  → 錯視2
 こういう錯視をもたらすような方法で、2次元画像から3次元画像を推定しているのではない

 では、どうやっているのか? ある1瞬の静止画像を使うだけでなく、連続的な静止画像(つまり動画)を見て、動画における図形の変化から、対象の位置を検出する。
 要するに、遠くのものが近づくにつれて、だんだん大きくなって、そばまで来ると急激に大きくなる。そういう「大きさの変化」を経時的に調べることで、対象の位置を知る。……これが、単眼カメラ方式の技術だ。

 しかし、この方式が成立するためには、次のいずれかが必要となる。
  ・ 対象は、静止している。
  ・ 対象は、動くが、あまり位置を変えない。
  ・ 対象は、動くが、向きをあまり変えない。
  ・ 対象は、大きさをあまり変えない。
  ・ 対象は、動きや大きさを変えることがあっても、連続的に変える。


 上から下に行くにしたがって、条件は厳しくなる。しかしとにかく、このような「当り前の変化」であるならば、画像から計算によって対象の位置を推測することはできるだろう。

 しかしながら、以上の条件にまったく当てはまらない条件もあるはずだ。次のように。
 (1) 対象が回転していて、次々と形状を変える。
 (2) 対象が、隠れた場所からだんだん姿を現して、形状を変える。
 (3) 対象に光と影が当たって、対象の明るい部分の形状が刻々と変化する。


 そんなことがあるか? ある。一例として、次の場面を想定する。

 
 ───────────────────────────
               ■← ← ← ← ← トラック
   テスラ → → → ●   ■

 ─────────────┐┌────────────


 これは、テスラの自動運転車が事故を起こした場所を示す模式図だ。
 (1) トラックは、上の車線から下の車線へと移行しながら、回転しており、刻々と形状を変えている。
 (2) テスラの左前に先行車があったとすれば、トラックの一部は先行車に隠れていたので、トラックはだんだんと姿を現すことになる。すると、トラックの形状は、刻々と変化する。
 (3) そこにはビルの陰が当たっており、トラックの形状は光と陰によって次々と形状が変わっていく。(トラック自体の形状は変わらないが、画像センサーに映っている明るい部分の形状が変わっていく。陰が光となり、光が陰となる。)

 こういうふうに複雑な状況だと、形状の変化が甚だしいので、形状の変化から距離を推定するということは、もはや著しく困難となる。どうやれば大丈夫なのか、技術的な解決策があるかもわからない。
 どっちにみち、自動運転技術が未熟な現状で、こういう難問を解決できるはずがない。

 というわけで、「形状の経時的変化から、対象の位置を(人工知能の計算で)推定する」という方式は、技術的な困難にぶつかる。この困難は、あまりにも解決しがたい。
 要するに、通常の平凡な状況では問題ないが、テスラが事故を起こした箇所のような特別な状況では、単眼カメラ方式には原理的な困難(または限界)があるのだ。
 それゆえ、「単眼カメラ方式には将来がない」と断言してよさそうだ。

 ひるがえって、日産自動車は、自動運転について、次の計画を立てている。
  ・ 2016年 …… 高速道路の単一車線で
  ・ 2018年 …… 高速道路の複数車線で
  ・ 2020年 …… 一般市街地で

 しかし、単眼カメラ方式を取る限り、高速道路の単一車線が限界だろう。高速道路の複数車線で使うには、ちょっと無理がある。また、一般市街地で使うのは、とうてい無理だと言える。強行すれば、事故続発になりそうだ。
 
 単眼カメラ方式というのは、距離を知るといっても、実際に距離を測定するのではなく、演算によって推定するだけだ。これは、距離を測定するのではなく、疑似的に測定するだけだ。2Dの画像から、疑似的に3Dの情報を構成するだけだ。
 とすれば、この方式による自動運転は、あくまで「疑似的な3Dデータによる、疑似的な自動運転」にすぎないのである。そこには原理的な限界がある。
 単眼カメラ方式による自動運転は、袋小路に入るようなものだ。それは、最初は(高速道路で)容易に自動運転を実現できるが、市街地走行は原理的に不可能なのである。途中までは楽に進めるが、最終的には行き止まりの袋小路なのだ。(原理的に。)
 こんな方式を採用して、「これを発展させれば市街地での自動運転もできる」と思うような日産自動車は、先のことをまったく見通せていない、と言えるだろう。
 日産の経営能力は、単眼カメラ並みに低性能だ。視力だけでなく思考力が単眼カメラ並みなのだ。あまりにも低機能。これでは、先を見る能力の不足で、将来的に倒産かもね。



 【 補説 】

 ここまで単眼カメラ方式を批判してきたが、どうしてここまで批判するかというと、ステレオカメラ方式には、上記の難点がまったくないからだ。
 ステレオカメラ方式ならば、単に対象の位相差を知るだけで、距離を測定できる。その容易さは、レンズシャッター式カメラ レンジファインダー カメラで距離を測定するのと同様の、お手軽で正確な距離測定だ。(装置を変化させて二重像が合致するときの部品位置から、距離を測定する。)
 これは、二つのカメラの画像を重ねて、位相差を検出するだけだから、ごく簡単に正確な位置を知ることができる。
 しかも、重要なのは、次のことだ。
 「像の各点ごとに位置を検出することが可能である」


 ここでは、ごく小さな部分ごとに、別個に位置を測定することが可能だ。たとえば、次のような例がある。
 「十人の人がバラバラに立っている。各人が勝手にくるくると回転してダンスしている。位置関係も、たがいに前に出たり後ろに下がったりする。しかも、各人が誰かの陰(裏)に隠れたり出現したりする」
 ここでは、図形の変化はあまりにも複雑なので、単眼カメラ方式ではとうてい位置は推定できないだろう。しかし、ステレオカメラ方式ならば、各人の各部分ごとに、位置を検出できる。要するに、正確な3Dデータを構築できる。(3Dプリンタを使えば、現実世界のプラモデルを作れるぐらいだ。)

 ステレオカメラ方式ならば、これほどにも圧倒的に正確な情報をリアルタイムで入手できる。とすれば、市街地であれ何であれ、どこでも正確に現実の情報を知ることができるから、自動運転も可能なのだ。
 これは、単眼カメラ方式とはまったく異なることであり、性能的にはまったく上のレベルにある。性能的には、月とスッポンの差だ。それでいて、コストはたいして変わらない。(ミリ波レーダーが不要なので、コストはかえって安上がりになるかも。)



 [ 余談 ]
 そもそも、人間はステレオカメラで立体視する。その方式を取ればいいのに、勝手に貧弱な方式を取れば、人間様よりは圧倒的に劣るのは、当然のことなのだ。「ちょっとだけ安上がりだから」なんて思っていれば、死亡事故が起こって、すべてを無駄にする。
 テスラの被害者の死亡事故1件だけでも、単眼カメラ方式の罪はすでに途方もないものになっている。)

 なお、日産は、生物を模倣した自動運転技術を開発中だ。 ( → 出典 )その発想はいい。しかし、それなら肝心の距離測定の技術で、生物を模倣して、ステレオカメラ方式を採用するべきだった。なのに、下らないところで昆虫の真似なんかをして、肝心の所では哺乳類の真似をしない。あまりにも低レベルすぎる、と言える。
 そもそも「生物の真似をする」という発想が、物真似好きで、二番煎じで、独創性不足だ。いかにも日産らしいが。……しかし、どうせなら、「生物に学ぶ」という謙虚な発想をするべきだった。そういう謙虚さから、独創性は生まれるものだ。

 ま、親分が「コストカッター」という異名の持主だから、技術よりはコストのことしか考えられないのだろう。「ハイブリッド技術なんか不要だ」と判断して、ハイブリッドの技術開発の停止(停滞)を命じて、日産のハイブリッド技術を時代遅れにしただけのことはある。(トヨタの先進的な社長とは正反対だ。)
 ゴーンがいる限り、日産の技術開発は、停滞するしかなさそうだ。ゴーンが去ったあとで、次の社長が技術開発を促進するのだろう。(それまで日産が存続していれば、だが。)



 【 関連項目 】
 本項の続編として、次の項目があります。重要な記述があるので、是非、お読みください。
  → 単眼カメラ方式の欠陥(自動運転)
  → 自動運転車で死亡事故 3(単眼カメラ)

 他に、次の項目もあります。
  → マツダ・アクセラの自動ブレーキ
 
posted by 管理人 at 22:28| Comment(2) | 安全・事故 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
レンズシャッター式カメラじゃなくてライカに代表されるレンジファインダーカメラですね
Posted by nuvolari at 2016年07月15日 12:24
あ、そうでした。一眼レフじゃない方、と覚えていたので、用語を混乱していました。修正します。

ご指摘ありがとうございました。
Posted by 管理人 at 2016年07月15日 12:50
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