2016年07月09日

◆ 米国の警官銃撃事件

 米国で警官の銃撃事件が起こっている。銃撃するのと、銃撃されるのと。

 ──

 米国で警官が銃撃されて、5名が死亡した。その前には、黒人市民が警官に銃撃されて死亡した事件が2回もあったのが原因だ。
 《 テキサス州で警官5人撃たれ死亡 》
 米テキサス州ダラスで7日、今週相次いで発生した警官による黒人男性射殺事件に抗議するデモの最中に、警官5人が何者かに銃で撃たれ死亡し、6人が負傷した。米史上最悪の大量警官銃撃事件となっている。
 ルイジアナ州バトンルージュで5日夜、コンビニエンスストアの前でCDなどを販売していた男性(37)が、白人警察官2人によって地面に押さえつけられ、胸を撃たれて死亡した。動画によると、1人の警察官が至近距離で男性に向けて5回発砲。通行人が撮影した別の動画では、警察官2人のうち1人が男性に地面に伏せるよう命じた後、2人が男性にタックルし、1人が銃を取り出し男性の胸に向ける様子が撮影されている。
 一方、ミネソタ州セントポールでは6日夜、車を運転していた黒人男性(32)が停止を求めた警官に銃で撃たれて死亡した。車に同乗していた女性が事件直後に動画を撮影し、交流サイトのフェイスブックに投稿。動画には血を流して意識を失っている男性の様子が生々しく記録されている。
( → ニューズウィーク日本版

 ルイジアナ州バトンルージュの動画は下記。





 これは、時間が長くて、不鮮明なので、下記を見た方がよさそうだ。(あるいは、見なくてもいい。)
  → Baton Rouge police shooting looks like a murder

 ミネソタ州セントポールの動画は下記。かなり鮮明だ。





 これを見てもいいが、英語なので、何を言っているのかわからないかもしれない。日本語の翻訳つきで動画を見るなら、下記だ。(こちらがお薦め。)
  → 恋人が警官に撃たれ……直後の様子を車内から中継 - BBCニュース

 状況については、下記の説明がある。
 《 また警官が黒人男性を射殺、恋人が死の間際を動画配信 》
 米ルイジアナ(Louisiana)州で黒人男性が警官に射殺された動画が怒りを巻き起こした翌日の7日、今度は、ミネソタ(Minnesota)州で黒人男性が警官に撃たれて死ぬ間際の様子を捉えた動画がインターネットで広まった。
 レイノルズさんは動画の中で「(キャスティルは)身分証と財布をポケットから取り出そうとしていた。警察官に対して銃を所持していることを明らかにして、今は財布を取り出そうとしているところだと説明して、そして警察官が彼の腕を撃った」と語っている。
 キャスティルさんがうめき声を上げる中、警察官は車の窓からキャスティルさんに銃口を向け、「くそっ!手を伸ばすなと言っただろ!手を上げろと言っただろ!」と叫んでいた。
( → AFPBB News

 ──

 さて。これらのニュースを見て、たいていの人の感想は、こうだ。
 「米国の銃社会が根源だ。銃社会をなくさない限り、事件は絶えない」
 本当にそうか? なすすべはないのか? ここで、困ったときの Openブログ。

 なすすべはない、ということはない。手はある。
 たしかに銃社会が根源だが、根源からすべての結果が説明されるわけではない。根源と現象との間には、何段階もの過程がある。そして、その過程の一つをつぶすだけで、現象を阻止できる。
 つまり、「どうしようもない」と諦める前に、「できることがある」と頭を働かせるべきだ。

 そうすれば、次の案が思い浮かぶ。
 「警官が無闇に発砲するのを阻止すればいい。特に、相手が一般市民の場合には、単純な発砲を禁止すればいい」

 警官はやたらと銃を構えたがるが、相手が逃走中の凶悪犯ではなくて、単に自動車を運転しているだけの一般市民であるなら、いちいち銃を構える必要はないのだ。もっとおっとりしていていいのだ。
 特に、警官が二人でペアを組んでいる場合には、二人そろって銃を向けている限り、相手が発砲することはありえない。(発砲すれば、その相手はすぐに射殺されるからだ。もう一人の警官の銃で。)……だから、警官が二人でペアを組んでいる場合には、もっとおっとりしていていいのだ。ゆえに、単純な発砲を禁止すればいい。

 その具体策は? こうだ。
 (1) 相手が市民なら、銃を見せるまでは発砲してはいけない。
 (2) 前項に反した場合には、殺人罪で訴追される。


 この二項目を制度化すれば、今回の大事件(警官5人殺害)は阻止できたはずだ。なぜか? 初めの二つの事件が起こった段階で、黒人市民を殺害した警官は、殺人罪で訴追されるからだ。たとえ黒人市民が警官に射殺されても、その警官が殺人罪で訴追されたなら、市民は納得する。それゆえ、のちの報復的な警官殺害事件は阻止できるのだ。

 現状では、黒人市民を殺害した警察官は、たいていは免責される。
  → 白人の警察官に射殺された事件で、警察官に無罪判決

 それどころか、黒人市民を殺害した市民(白人)ですら、免責される事例が発生している。
  → ヒスパニック系白人の元自警団長に無罪評決

 こういう人種差別的な裁判が、問題を増幅させる。殺人犯に対する裁判制度が正常に機能していないから、「仇討ち」の形で市民が自力で懲罰を下そうとするのだ。

 ここまで見れば、問題の本質が明らかだろう。根源は、銃社会ではない。人種差別ゆえに、法制度が正常に機能せず、(黒人への)殺人行為が野放しにされていることだ。
 この本質を理解しないまま、「米国の銃社会が問題だ」なんて指摘して得意になっている人々は、物事を表層的にしかとらえていないのだ。
 銃という武器が問題なのではない。銃を乱射する心が問題なのだ。いや、違う。銃を乱射する人々を容認する、白人の差別意識が問題なのだ。……だからこそ、黒人たちの怒りは、あまりにも大きく燃え上がる。

  → 米 警察官による黒人射殺 事件相次ぎ各地で抗議(2016.07.08)
  → 米黒人少年射殺でまたも警察と衝突 ファーガソン近く(2015.8.21)
  → 黒人2人射殺の白人警官無罪に、抗議デモ (2015.05.25)
  → 全米170都市で抗議デモ 黒人少年射殺(2014.11.26)



米NYで大規模デモ(2016.7)





 [ 付記 ]
 警官は文句を言いそうだ。
 「そんな甘ったるい対応だと、銃を持つ凶悪犯に対抗できない!」
 しかしそれは詭弁だ。銃を持つ凶悪犯は、本項の方式では対象外だ。対象となるのは、あくまで、ただの一般市民だ。
 今回の事例では、被害者は単に自動車を運転していて、警官に停車を命じられただけだ。警官が勝手に市民の自動車を停めて、勝手に警戒している。こんなものは、凶悪犯の事件ではなくて、ただの妄想であるにすぎない。
 警官の妄想を理由として市民を殺害してはいけない、というのが、本項の趣旨だ。現実に犯罪をして逃亡中の犯罪者は、本項の対象外だ。
 
posted by 管理人 at 10:24 | Comment(4) | 一般(雑学)3 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
警官の質が悪いし、ビビりだし、そのような期待しても無理じゃないかな。

銃社会で相手が合法的に所持しているからなおさらビビる。
ビビってるので、動かれると銃を取り出して撃ってくるように見える。
人種差別意識と、人種間の様々な差が現実にあるので、犯罪発生率が高い人種には悲しいほどビビりまくり。

セントポールの警官の言動がもう哀れなほどビビってるし。
手を挙げろ、IDを出せ、動くな、バン!
矛盾だらけなのはビビりまくって混乱してるから(笑)
相手が「オレ合法的に銃持ってるんすよ」と最初に言ったので、パニクっちゃったんだろうね。
そんなこと言ってしまったのも、警官に銃を向けられたから、焦ってパニクったんだろうかな。
哀れ、負の連鎖。

ダラスで警官側のビビりはさらに上昇。
人種差別意識もあるけど、現実に犯罪発生率も高いので、なおさら黒人とヒスパニックに強く当たるだろう。

当然誤射が起こり、SNSでシェアされ、抗議、デモ。で済めばいいけど、前みたいに騒乱に発展したら目も当てられない。

ただのデモですらダラスの事で警官はビビりまくる。
もしかしたら平和なデモなのに、ビビりまくった警官にはちょっとしたことが不穏な動きに見える。
一部が合法的に銃を持ってきたり、モデルガンを持ってきたりしただけで強く当たる。
デモ隊は興奮もあって警官の対応に抗議する。
数が違うので、デモ隊の動きに警官はさらにビビる。
平和なデモが、勘違いと信用のなさと興奮とで、あっという間に騒乱へ。
なんてことがあっても、もう不思議じゃない。

もはや負のスパイラル。
互いに、互いの信用を失ってるのよね。
Posted by 南蛇井 at 2016年07月09日 15:44
 そんなにびびるなら、相手に近づかなければいいだけ。「止まれ。手を上げて外に出ろ」とパトカーからスピーカーで怒鳴ればいい。相手の背後にいる限り、こちらから発砲する必要はない。相手は背後を見えないんだから。

 だいたい、女連れのカップルを見て、いちいち止めさせる必要はない。

 こんなにびびるのは、白人だからからかもね。まずは黒人警官が近づくこと、という原則にするとよさそうだ。それなら、いきなり発砲することもあるまい。白人も、自分が危険に接近しないので、大喜びだろうし。

 ともあれ、大事なのは、きちんと訴追すること。これが何より大事。これで暴動は防げる。
 びびる警官の問題も、訴追されたくない白人警官は、やたらと相手に近づかなくなるから、大丈夫。黒人と黒人の関係になれば、馬鹿げた発砲も減る。


 
Posted by 管理人 at 2016年07月09日 15:57
対処法の一つの録画記録が出てくると詳細が分かるんだけど、セントポールのはまだみたい?

警察の信用向上に繋がるので、導入してないならさっさと導入すべきだね。
裁判でも証拠となるし。
Posted by 南蛇井 at 2016年07月09日 16:04
警察専用の110番作ればいい。発砲許可をもらうための110番。
発砲伺いをし、許可がでる前に撃った場合は正当防衛は成立しない。とりあえずのセーフティーはこれでいいんじゃない?
Posted by かーくん at 2016年07月11日 06:51
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