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阿蘇大橋の再建の場所が決定した。現在の場所の 600メートル南側。
国土交通省の「国道325号ルート・構造に関する技術検討会」は5日、熊本地震で崩落した阿蘇大橋(熊本県南阿蘇村)の復旧について、現在の位置より約600メートル下流で架け替える方針を決定した。橋の長さは600―700メートルとなる予定。現在の約200メートルから約3倍になり、川底からの高さも約20メートル高くなる。
検討会は、橋の架け替え位置について4案を議論した。現在の場所は大規模な土砂崩れが起きており危険性が高く、上流は熊本市方面と南阿蘇村方面を接続する交通路としては回り道となり利便性が低い点などを考慮し、下流での架け替えを決めた。橋の構造や着工時期は今後検討する。
( → 日刊工業新聞 2016-07-06 )
場所は下記だ。

他の案を含めた4案はどこかというと、NHK のニュース(動画)にチラリと映っているので、それを転載しよう。

上流に一つ。(短い)
現在の阿蘇大橋の場所に一つ。
下流に一つ。(決定案・長い)
さらに下流に一つ。(すごく長い)
これらは、Google Earth の 3D画像と対応させることができる。
( 黄色、オレンジ、黄緑の ● 印が付いている箇所。計3箇所。)

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さて。情報はすでに示した。このあと、私の評価を下そう。
今回の決定箇所は、黄緑の ● のある箇所だ。ここだと、谷の深さも幅も現状より大幅に増すので、かなり大工事になる。巨額の費用がかかるだろう。
それは金の問題なので、まだいい。困るのは、山が崩れる危険性だ。Google Earth で画像をいじるとわかるが、ここは、崩れた山と同じ山のそばで、崩れた箇所の隣だ。

この山の東側が崩れて、阿蘇大橋を埋めた。
そのすぐ南側に、新たな阿蘇大橋を建設するという。しかしそこは、やはり同じ山のそばなのだから、やはり地震で山崩れの可能性がある。きわめて危険だ。
こんなところに橋を建設するなんて、狂気の沙汰だ。頭がどうかしているのではないか?
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私はこの点を考慮して、前に、別の案を出した。上流側に建設するべきだ、という案だ。
・ ここならば、山のそばではないので、山崩れの危険はない。
・ 谷の幅が狭くて浅いので、建設費が格安だ。
・ 交通の便は少し悪いが、800メートル程度。自動車では、
1分間ぐらいの距離だ。往復で 2分ちょっとぐらいだけ。
詳細は、下記。
→ 阿蘇大橋を再建する場所
ここがベストだ、と私は思う。
ではなぜ、政府は新たに、高コストで危険な場所を選んだのか? 理由は予想通り。再掲しよう。
上流は熊本市方面と南阿蘇村方面を接続する交通路としては回り道となり利便性が低い
これが理由だ。たったの 800メートル(自動車で片道1分間、往復2分間)の回り道を面倒くさがる。そのために、命を失う危険を冒す。
まったく、地震の被害で、ちっとも懲りない。福島の津波でも、ちょっとばかりの時間を惜しんで、命を失った人が多数に上る。それも忘れて、わずかな手間を惜しんで、山崩れの危険がある場所に橋を建てる。
まあ、橋を建てても、数十年は大丈夫だろう。その間に地震が来ることはないだろう。しかし、震災は忘れたころにやって来る。またいつか、(百年以上たったころに)地震が起こりそうだ。そのころ、また同じ場所に新・阿蘇大橋が再建されるだろうし、そのときには、今度は特別に大きな大被害が発生するかもしれない。
先の熊本地震は、夜中に起こったので、通る自動車は1台だけだった。被害は最小限で済んだ。しかるに、次の地震は、昼間に起こるかもしれない。そのとき、どうなるか?
この山は、先の熊本地震で、すでに崩れかけている。地盤は緩んでいる。そもそも、もともとが火山灰地であって、きわめて崩れやすい山だ。それが、次の中規模の地震で、一挙に崩壊しそうだ。そして、そのとき、昼間で交通量が多ければ、百人ぐらいの死者が出ても不思議ではない。それだけの人数が、一挙に谷底に落ちるのだ。
( ※ 橋の長さは現状の3倍であるから、被害もそれだけ大きくなる。)
これほどの危険のあるところに、あえて橋を建てようというのだから、まさしく狂気の沙汰だ。
[ 付記1 ]
人々は事故の記憶を忘れやすい。
谷底にバスが転落して死者が多数、という事故は、過去にもあった。
《 飛騨川バス転落事故 》
1968年(昭和43年)8月18日に、岐阜県加茂郡白川町の国道41号において生じたバス事故である。乗鞍岳へ向かっていた観光バス15台のうち……2台のバスが、集中豪雨に伴う土砂崩れに巻き込まれて、増水していた飛騨川に転落し、乗員・乗客107名のうち104名が死亡した。
( → Wikipedia )
こういう事故が実際にあったのだ。そして、阿蘇大橋がこの場所に再建されたら、今度はそれを上回る事故が起こりかねないのだ。飛んで火に入る夏の虫のごとく、あえて特別に危険な箇所に橋を建てるのだから。
[ 付記2 ]
経済的には、「全額国費負担」というのが、決定的によろしくない。最低でも、5%の地元負担にするべきだ。
また、望ましくは、有料にして通行料を取るべきだ。そうすれば、高コストを利用者が負担することになり、公平である。国の補助金は、せいぜい 50%程度でいい。あとは利用者負担にするべきだ。(たとえば通行量 100円)。
こうすれば、人々は「金を払うのはいやだ。低コストで建設してくれ」と言い出す。すると、自動的に、上流側の建設でまとまる。つまり、私の案の場所だ。ここなら、安全となる。安上がりにすると、同時に安全となるわけだ。めでたし、めでたし。
で、それで浮いた分の金を、被災者の住宅の再建費にでも回せばいい。三方一両損ならぬ、三方一両得、みたいな。
工事中にも大雨で土砂崩れを引き起こすかもしれません。紀州十津川郷の山体崩落跡を実際に見た者の感想です。
納税者が損して、業者と政治家が得する、こういう絵図ではないかと。w
→ 三方一両損の真相
http://nando.seesaa.net/article/76852767.html