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その理由については、本人が語っている。
孫氏は社長をアローラ氏に譲ると決めていた60歳が近づくにつれて「もう少しやっていたいという欲望が出た」と打ち明けた。約1年後に60歳になればアローラ氏に禅譲するつもりだったが「急にさみしくなった」とも語った。一問一答は次の通り。
――社長を続けたいと思い直したきっかけはなんでしょうか。
孫氏「創業者は往々にしてクレージーだ。いつまでも若く、まだまだやれると思っていたい。自ら経営の一線から引退する、いざその時期が近づくと、やっぱりもう少しやっていたいという欲望が出た」
「ニケシュには迷惑をかけた。申し訳ない気持ちでいっぱいだ。でも現役を続けたい気持ちを抑えるのは正直よくないと思う。長い目で見たときに、気持ちが成熟していないのに社長を譲って後でもめるのもいやだった。正直に話した方がよいと思った」
――アローラさんに思いをいつ、どう伝えたかのでしょうか。
孫氏「この数週間のことだ。最初にニケシュをスカウトしたときは60歳ぐらいで社長を渡すつもりでいた。彼にもその前提で来てもらった。だが僕自身の中で、あと1年で60歳だと思うようになり、葛藤が出てきた。髪の毛はだいぶ減ってきたけどまだ若いぞと(笑)」
( → 日本経済新聞 2016-06-22 )
以前は「 60歳なんてジジイだから、ジジイになったらやめよう」と思っていたのに、60歳になっても元気かくしゃくだから、前言を撤回して、もっと頑張る……ということらしい。
まあ、今の 60歳は昔の 60歳とはかなり違うから、 60歳で引退しないとしても、おかしくはない。
これが 70歳だと、かなり怪しいが、60〜65歳ぐらいなら、別におかしくはあるまい。
ということで、他人がいちいち言うことはないのであった。「勝手にすれば」というところだ。
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それはさておき。思い出したことがある。
孫正義は、東日本大震災のとき、「 100億円の私財を投じてソーラー事業をやる」と大見得を切った。それは、どうなったか?
もちろん、実行していただろう。6000億円(当時)の資産からすれば、どうってことはないし、菅直人は再生エネ法案を通して、「ソーラー電力を超高額で購入する」というふうにしてしまった。あらゆる方面が順風である。「自然エネルギーという慈善事業のために私財をなげうつ」のではなくて、「私利私欲のために国民の金を食いつぶす」という形で、どんどん事業を実行していたはずだ。
で、その結果は? まさしく、それを実行している。一応、下記で確認できる。
→ SBエナジー - Wikipedia
→ 事業内容 | SBエナジー
→ 発電所一覧 | 事業内容 | SBエナジー
というわけで、発電事業をどんどん実施中だ。(日本全体で見れば、その規模はたいしたことはないが。)
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ちなみに、日本の太陽光発電の量は、こうだ。
日本の2014年の電力事業者が行っている発電のうち、新エネルギーが占める割合は3.2%。震災前の2009年には1.1%でしたので多少は増えましたが、それでも微々たる数値です
( → 【エネルギー】日本の発電力の供給量割合[最新版](火力・水力・原子力・風力・地熱・太陽光等) | Sustainable Japan )
2016年の報告書では、2014年のデータがあって、上記の数値となっている。2015年も、大差はあるまい。
ちなみに、ドイツはこうだ。
2015年(暫定値)の太陽光発電の発電量は、全体の 5.9%
( → ドイツのエネルギー源別発電量‐ドレスデン情報ファイル )
ドイツの再生エネの買い取りは、1991年の電力供給法(StrEG)が施行されて以来、25年も実行しているが、それでも太陽光はたったの 5.9% にしかならない。再生エネの主体は、太陽光ではなく、風力発電である。たいした量にはなっていないのだ。
では、このあと、大幅に増える見込みはあるか? ありそうだが、ない。なぜなら、次の事実があるからだ。
→ ドイツ、再生エネルギーによる発電量が一時的に総需要量の95%に到達
太陽光発電の発電量は、あまりにも変動が大きい。太陽光発電の発電量そのものは、トータルでは 5.9%にしかならないが、瞬間的な数値では、再生エネの比率が 95%にもなる。
ということは、これ以上はもう、再生エネ(太陽光発電)を増やす余裕はない、ということだ。もし増やしても、ピーク時にはその電力を捨てるしかない。……ま、実際には、電力網を通じて外国に販売する、という手はある。しかし、その手は島国である日本には使えない。
要するに、日本が今後どれほど太陽光発電を推進しても、その量はたかが知れている。太陽光よりは風力が優先されるだろう。また、太陽光の変動はあまりにも大きすぎて、拡大の余地が少ない。
太陽光発電は、経済的な事業としては、まともに進まないだろう。あくまで趣味的な事業としてやるしかない。
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で、それが、孫正義が経営を続けることにした、真の理由かもね。「アローヨに任せたら、太陽光事業を全部つぶされてしまいそうだ。そんなのやだよー、太陽光事業をやりたいよー」と。
ま、本当のところはどうだか、知らないけど。
なお、総需要の95%=再エネの発電量 というのはあくまで数字の比較であって、この時のドイツの総需要の95%を再エネでまかなったということではありません。
どういうことかというと、再エネはドイツ南部に多く、北部の需要地に送電する能力が不足しているからです。その結果余剰の再エネ電力はオーストリアとかに売電していたはずです。
いずれにしても、「要するに日本が今後どれほど太陽光発電を推進しても」以降の文章には同意します。
もちろんその通り……と思ったんですが、本文を読み直したら、間違った文章になっていますね。(主語が抜けていた。)
訂正しました。
ご指摘ありがとうございます。
以下、新聞記事の転載。
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《 九州エリア、太陽光出力が需要の5割超す 》
太陽光発電の急増に伴い、電力の需給バランスを保つ電力会社の系統運用で厳しさが増している。九州電力エリアでは、2016年度の軽負荷期に需要の5割を超える太陽光出力が発生する見込み。
太陽光は天候による出力変動が大きく、電力会社は出力の下振れには揚水動力の停止や火力の増出力、上振れには待機揚水動力の運転や火力の出力抑制で対応している。ただ、太陽光の導入が進むにつれて出力の想定誤差は拡大しており、今後は必要な調整力をどう確保するかが問われる。
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http://www.shimbun.denki.or.jp/news/energy/20160317_04.html