2016年06月20日

◆ 難民を解決するには 2

 欧州では移民・難民が話題になっている。この問題をどう解決するか?

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 移民をどんどん流入させることは、英国でもドイツでも問題となっている。特に、被害を受ける底辺層の反発がひどい。
 一方で、迫害された難民を放置するのも、人道的ではない。
 この対立する問題を、どう解決するか? 困ったときの Open ブログは、どう答えるか? 

 ──

 まずは、本日の朝日新聞を見よう。(夕刊 2016-06-20 )


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 一面がほとんど難民特集という感じだ。次の三つの記事がある。
  ・ 難民を助けようとする人道的なボランティア
  ・ 世界の難民は、過去最多の 6530万人になる
  ・ 日本は難民申請 2356人で、認定は1人だけ


 この三つを並べると、次の印象を受ける。
 「民間では難民救済のために頑張っている人道的な人もいるのに、政府は難民救済を拒否している。世界で 6530万人もいる難民たちは救済されないままだ。かわいそうに」

 だが、これをよく見ると、難民問題の本質も見えてくる。

 ──

 ドイツなどの欧州では、「難民救済は人道的だ」と考えている人々が多い。しかし、彼らの頭には、重大な点が抜けている。それは「数字を数えることができない」という点だ。
 ドイツなどの欧州がいくら人道的に難民を救済しても、その数はたかが知れている。欧州全体で受け入れ可能なのが、せいぜい 100万人。その大部分をドイツとスウェーデンが占めるらしく、他の国々は多くて数万人程度。いずれにしても、全体で 100万人ぐらいでしかない。
 一方、朝日の記事(上記)にあるように、難民は 6530万人もいる。
 《 難民・避難民・亡命申請、世界で6530万人 》
 国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)が、世界の難民らの動向に関する年次報告書を公表した。2015年末現在で、難民や国内避難民、亡命申請者からなる「避難を余儀なくされた人々」は 6530万人に達し、過去最多を記録した。
 内訳は難民が 2130万人、国内避難民 4080万人、亡命申請者320万人。全体で前年と比べて580万人増えた。1996年は3730万人だったのが、20年間で1.75倍になった。
( → 朝日新聞 2016-06-20

  欧州は難民を受け入れて、「おれたちはこんなに人道的だ」と威張る。そして、「難民を受け入れない日本は身勝手だ」と憤る( → BBC )。また、朝日は「日本も難民を受け入れて人道的にふるまおう」という記事を何度も掲載する。
 しかし、欧州が 100万人ぐらいの難民を受け入れているといっても、焼け石に水なのだ。 100万人のまわりには、6530万人の難民が救われずに残っているからだ。これらの大多数の難民を無視して、たったの 100万人ぐらいを救済しても、とうてい問題の解決にはならないし、威張ることもできないのだ。
 欧州人にせよ、朝日にせよ、何も問題を解決しないまま、自分がちょっとだけ善行をしているからといって威張る連中は、「偽善家」と呼ぶにふさわしい。

 このことは、今回の朝日報道の圏について、国連自身のプレスリリースと比べると、いっそうはっきりする。
 6530万人のうち先進諸国で庇護申請を行なったのは320万人、難民は2130万人(2014年から180万人増)、国内避難民は4080万人(2014年から260万人増)でした。
 強制移動は1990年代半ばからほぼ全ての地域において増加してきましたが、過去5年間は特に増加傾向にあります。その理由は主に3つあげられます。それは「人道問題の長期化(例:ソマリア、アフガニスタン)」「新たな危機の頻発(例:シリア、南スーダン、イエメン、ブルンジ、ウクライナ、中央アフリカ共和国など)」「冷戦後、難民、国内避難民に対する解決策が減ったこと」です。
 難民のうち最大の難民出身国はシリア(490万人)次いでアフガニスタン(270万人)、ソマリア(110万人)の3ヶ国です。国内避難民はコロンビア(690万人)シリア(660万人)イラク(440万人)の3ヶ国に集中しています。
 2015年は地中海を経て欧州に渡る難民、移民が 100万人を超え、国際社会の注目が集まりました。しかし難民の大多数は欧州以外の地域にいます。UNHCRが支援する難民の 86%は、紛争が起こっている国の周辺国である低所得国または中所得国に集中しているのです。UNRWAの支援対象であるパレスチナ難民を含めると、その割合は90%に上昇します。最大の難民受け入れ国は250万人の難民を受け入れているトルコです。
 難民の半数は子ども

 UNHCRが把握しているデータでは、2015年末時点で難民の51%が子どもです。親と離ればなれになった子どもや、一人で避難している子どもたちの庇護申請者数は9万8400人に上ります。これは過去最多 であり、地球規模での強制移動が子どもたちに与える悪影響を反映したものと言えます。
( → 【UNHCR Japan】【プレスリリース】

 欧州は、自分のところに押し寄せる難民のことばかりを考える。しかし、それは全体のごく一部にすぎないのだ。
  ・ 難民の大多数は欧州以外の地域にいます。
  ・ 難民の半数は子どもである。

 つまり、欧州ではない遠隔地で、欧州まで来られない(体力のない)子供がいっぱいいる。こちらの難民こそ、よりひどい境遇にあるのであって、こちらの難民こそ救済するべきなのだ。
 一方、欧州に来る難民は、多くは体力屈強の若い男性である。前にも述べたが。
  → 難民の性的暴行事件 (難民は男ばかり)

 一般に、船舶の遭難などの事故では、「女・子供を優先的に救う」という原則がある。これは男としてのたしなみだ。このことは、難民についても当てはめるべきだろう。ところが、現実には、「欧州にやって来る難民だけを救う」という方針を取るせいで、「若い男ばかりを救う」ということになり、「故郷に留まっている女・子供は見捨てる」という結果になる。特に悲惨なのが子供だ。
 「2015年末時点で難民の51%が子どもです」

 と上のプレスリリースに書いてある。これらの子供こそ、最優先で救うべきだ。なのに、欧州人は、若い男性ばかりを救って、「おれたちって、すごく善人だなあ」と自惚れている。
 偽善家ぶりには、呆れるほどだ。

   *   *   *   *   *   *   *   *   *

 では、どうすればいいか? 欧州に来た難民を救うのでなければ、いったいどうすればいいのか?
 以下では、この問題を考えよう。

 この問題を考えるには、「目先にある問題を手っ取り早く解決する」という近視眼的な方策では駄目だ。物事の根源(本質)を考えるべきだ。すると、どうなる? 

 まず、目先の問題(押し寄せる難民)のことは忘れる。楚々いて、目を閉じて考える。すると、欧州に来た難民よりも、各地の現地に留まっている難民こそ、解決の課題だとわかる。まずは、こうして目標を据えよう。

 目標を据えたら、解決法を探る。解決するには、どうしたらいいか? 論理的に考えよう。
 6530万人もの人々を欧州に招き入れるわけには行かない。
 とすれば、現地で救済するしかない。
 しかし現地では、ひどい混乱や戦乱が起こっている。
 とすれば、解決策はただ一つ、混乱や戦乱を収束することだ。

 では、混乱や戦乱を収束するには、どうすればいいか? それには、混乱や戦乱の原因を考えるといい。では、原因とは?
 それは、次のことを理解するとわかる。
 「このような混乱や戦乱が起こっているのは、もともと欧州の旧植民地だった国々である。一方、旧日本軍が介入したせいで(植民地を脱して)独立したアジア諸国では、このような混乱や戦乱が起こっていない」


 実際、東南アジア諸国では、第二次大戦後、(日本軍に敗北したせいで)欧州の軍事力が弱まったことを突いて、次々と独立運動が発生して、独立を勝ち得た。これらの国は、安定した政体の下で、急激に発達した。だから今日では、難民などは発生していない。
 一方、アフリカ諸国は、第二次大戦後も欧州の支配下にあった。その後、かなり時間がたってから、独立運動が起こったが、これが不十分なものだった。
 具体的に言うと、1960年代に、次々とアフリカ諸国の独立が起こった。
  → アジア・アフリカ諸国の独立年表 - Wikipedia
 しかし、欧州諸国の引いた国境線に基づく独立であり、部族(民族)に基づく独立ではないがゆえに、残された人々の間では部族紛争が発生した。
 要するに、欧州は、勝手な植民地化をしたあとで、あとは勝手にほっぽり出しただけだったので、混乱だけを置き土産にしたわけだ。結局、欧州がアフリカに与えたものは、混乱だけだった、と言える。そして、その混乱が、現在の難民を発生させているわけだ。

 中東はどうか? こちらは、欧州のせいではなく、米国のせいだ。米国(特にブッシュ親子)が、中東を徹底的に混乱させた。父ブッシュは、イラクを崩壊させ、混乱させた。子ブッシュは、アフガンとイラクを崩壊させ、混乱させた。
  → イスラムテロの根源:  nando ブログ
 そして、こういう混乱が、今日のアルカーイダやタリバーンや IS による難民(シリア難民・イラク難民・アフガン難民)に結びつく。

 以上からわかるだろう。
 結局、アフリカや中東を徹底的に混乱させた、欧州や米国のデタラメな政策が、今日の大量の難民発生をもたらしたのだ。
 一方、そういうことがなかったアジアでは、大量の難民発生はなかったのだ。実を言うと、第二次大戦前なら、東南アジア諸国はアフリカ並みの貧困状態だったとも言える。日本の植民地化がなされる前のアジア諸国は、未開人の地にすぎなかった。朝鮮半島は文盲だらけだったし、台湾は野蛮人の住んでいる国だった。ところが、日本の植民地化によって文明化がもたらされた。そのあとは、文明化した知能によって、独立運動も可能となった。
 一方、アフリカでは、植民地化は文明をもたらさなかった。現地人は未開人の奴隷のままだった。だから、欧州諸国の軍が去ったあとでは、現地人が利権競争に走ったのだ。部族ごとに鉱山資源の利益の独占を狙い、勝利した部族のボスが富を独占した。その後、反乱軍が生じて、反乱軍が勝利すると、反乱軍の部族のボスが富を独占した。……この繰り返しだ。
 ここでは、表面的には部族の争いがあるから、「アフリカは部族の争いがあるから大変なんだ」なんていう解釈をして、知ったかぶりをする人もいるが、見当違いだ。大事なのは、部族があることではない。部族がなくならなかったことだ。つまり、文明化がなされなかったことだ。それはつまり、植民地政策として、現地人への教育がなされなかったという、植民地政策の失敗に原因がある。(基本的には、欧州による収奪を優先して、現地の文明化を軽視した。)

 といっても、アフリカは広い。国によっては、教育制度がうまく行った例もある。そのせいもあって、今日では十分に発達した国もある。
 その一方、今日でも混乱したままの国もある。……本項で話題にしているのは、この失敗国家の方だ。ここから難民が生じているからだ。

( ※ アフリカで成功した国というのは、実は、ほとんどない。鉱物資源があるせいで、GDP が高い国はあるが、富が遍在しており、白人または黒人部族長が富を独占していることが多い。一方、未開状態が長く続いた国は、たくさんある。ゾマホンの国もそうだ。ほんの少し前まで、ゾマホンが「現地に小学校を」という運動をしていたありさまだ。実際、自腹で小学校を建設した。→ リンク

 ──

 ともあれ、こうして原因がわかった。とすれば、対策もまたわかる。こうだ。
 「現地の文明化を推進する」

 これを第1目標とする。

 これを実現するための方策は、次の二通り。
  ・ 現地が平和であるならば、文明化のための資金援助をする。
  ・ 現地が戦争状態であるならば、戦争状態を収束する。


 後者の対象諸国は、上記の国連プレスリリースによると、次の諸国だ。(内戦で難民が発生している国々。)
 《 ソマリア、アフガニスタン、シリア、南スーダン、イエメン、ブルンジ、ウクライナ、中央アフリカ共和国 》


 このうち、解決が容易なものから順に、武力行使で、軍事的に制圧するといいだろう。小規模な紛争の国ならば、何とかなる。
 一方、アフガニスタン、シリア、ウクライナは、相手がちょっとデカすぎて、武力敵に制圧することはできないだろう。ここには、あまり介入しない方がいい。戦力の無駄遣いはやめた方がいい。(とはいえ、IS だけは、何とかした方がいいが。)

 ともあれ、各地の紛争国家のうち、弱そうなものから順に、紛争を終息して、平和な状態にするといい。そして、国家を上手に発展させるといい。そうすれば、その成功を見た他地域でも、平和協定を受け入れるようになるだろう。

 現実にはどうだったか? それとは反対のことをした。
  ・ 子ブッシュは、アフガニスタンとシリアに介入した。
  ・ ロシアはウクライナに介入した。
  ・ 欧州は、アフリカ各地を収奪したあと、急に撤退して、混乱状態だけを残した。

 こうして、欧米諸国は、大量の難民を発生させた。その原因のすべては、欧米諸国にあるのだ、と理解するべきだ。

 欧州が何かをするのであれば、まずは、自分たちの罪深さを理解するべきだ。
 ひるがえって、「難民を救済するおれたちって、何て善人だろう」と威張るような偽善家ぶりを発揮している限り、いつまでたっても、難民問題を解決できるはずがない。
 なぜか? その方針では、100万人を救うことはできても、6530万人を救うことはできないからだ。



 [ 付記1 ]
 国連の統計では、(国外の)難民と、国内難民とを、区別して数えている。しかし、この区別は意味がない。難民が国境を越えれば、その区別は変わるが、国境を越えたかどうかということは、意味がないからだ。どっちにしろ、難民は難民だ。
 つまり、住所不定の難民に対して、「住所の登録地はどこですか?」と質問しても、無意味だ、ということだ。(ほとんど言語矛盾。)
 
 [ 付記2 ]
 シリア難民には、偽装難民がかなり含まれているようだ。真の難民ではなく、「徴兵忌避」という理由。
 「難民にならないと、日本へ留学できないんですか?」
 5月下旬、シリアのダマスカス大やアレッポ大で日本語を学ぶ学生から、メールやSNSで問い合わせが相次いだ。
 男子学生の多くは徴兵を逃れ、難民として欧州やトルコで暮らす。
( → (特派員メモ イスタンブール)留学するなら難民に?:朝日新聞 2016-06-21

 シリアの軍事攻勢による被害者が難民になるのかと思ったら、軍事攻勢をしているシリア国民の側から、難民が出ているわけだ。偽装難民という形で。(真相は徴兵忌避)

 [ 付記3 ]
 中東やアフリカの難民は多いが、アジアでは難民はごく限られている。
  → ロヒンギャ族難民 困惑するマレーシア、インドネシア 背後に難民ビジネス
 ロヒンギャ族難民というのがあるが、これはミャンマーとバングラデシュの中間あたりにいて、両国政府から迫害された(追い出された)もの。これは難民と見なせるが、経済的に困窮したバングラデシュ人が「ロヒンギャ族難民です」と偽称して、他国に入国しようとしているらしい。(上記記事)

 実は、Wikipedia によると、ヒンギャ族難民というのはビルマ独立時にもともとあった部族対立が根を引いているようだ。となると、「アジアのなかで起こったアフリカ問題」というふうにも見なせる。欧米の植民地支配のあとの混乱が問題を起こした、ということは、アジアでも一部では生じていたわけだ。
( ※ ここはアジアの辺境であって、日本軍が植民地化・文明化しなかったことも理由かもしれない。この地域を日本軍が植民地化・文明化していれば、今日のロヒンギャ族難民の問題は生じなかったかもしれない。)



 【 関連項目 】

 → 難民問題を解決するには? (2015年09月06日)

  ※ 本項と似た話。
 
posted by 管理人 at 22:56 | Comment(0) | 一般(雑学)3 | 更新情報をチェックする
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