2016年06月17日

◆ 準衛星 2016 HO3

 月のように地球のまわりを周回する天体( 2016 HO3 )が発見された。これを「準衛星」と呼ぶそうだ。しかしこれは、衛星の一種ではなく、惑星の一種である。

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 まずはニュースを紹介しよう。
 《 地球に寄り添う「準衛星」発見、一緒に太陽を周回 》
米航空宇宙局(NASA)は、地球を周回しながら一緒に太陽の周りを回っている小型の小惑星が見つかったと発表した。
 この小惑星「2016HO3」の直径は推定で約37〜91メートル、地球からの距離は最接近時で1400万キロ。地球に衝突する恐れはないという。ハワイにある小惑星探査望遠鏡「パンスターズ1」を使って今年4月27日に発見された。
 もう1つの月と見なすには地球との距離が離れすぎているため、NASAでは「準衛星」と呼んでいる。月は地球からの距離約38万4000キロ、直径は3219キロある。
 NASAの地球近傍天体研究の専門家は、「2016HO3は地球をループ状に回りつつ、地球とともに太陽を公転する際に決して遠くに離れ過ぎないため、準衛星と呼ぶ」と説明。
( → CNN.co.jp

 もっと詳しい情報は Wikipedia (英語版)にある。一部抜粋しよう。
 2016 HO3 (also written 2016 HO3) is an asteroid, discovered on 27 April 2016, that is possibly the most stable quasi-satellite of Earth.

* Orbital period = 1.00 yr (365.9309688008125 d)



精密動画

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 これは、見かけ上は地球のまわりを周回するので、衛星の一種(月の兄弟)のように見える。しかし、そうか? 
 衛星の一種であるのならば、地球の重力圏内にあることになる。しかし、「地球からの距離は最接近時で1400万キロ」だから、地球と月との距離(38万キロ)の 40倍ぐらいとなる。その公転周期は、月の公転周期(30日)の 40倍で、1200日(3年以上)となる。(※)
 これは、この天体の公転周期(365日)よりもずっと大きい。これではとても地球の衛星であるとは言えないだろう。地球の引力圏にあるというよりは、太陽の引力圏にあることになる。

 ※ 半径が 40倍ならば、公転周期も 40倍となる。その場合のみ、軌道を保てる。
   仮に、半径が 40倍で、公転周期が 40倍以下なら、遠心力で外側へ吹っ飛ぶ。

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 もっと強力な根拠がある。
 この天体が、地球の衛星ではないとしたら、太陽の惑星であることになる。(小さいので、小惑星だが、とにかく惑星の兄弟だ。)
 その場合、次の条件を満たす。
  ・ 地球とは(惑星としての)公転周期がピッタリ同じである。
  ・ そのせいで、たまたま、地球とは衝突しなかっただけだ。


 要するに、その本性は、小惑星である。ただし、その軌道が、地球とほぼ等しい。つまり、太陽からの距離が、地球とほぼ同じである。しかも、地球とはぶつからないような、特殊な位置にある。

 このように判断した場合、この天体の公転周期は、地球とはピッタリ同じである必要がある。では、本当にそうか? 調べてみたら、やはりそうだ。Wikipedia (英語版)のところに、公転周期は1年であると、記してある。再掲しよう。

   Orbital period = 1.00 yr (365.9309688008125 d)

 このデータがあるがゆえに、この天体の正体は上記であることが裏付けられる。(偶然によってピッタリと同じ数値になる確率は限りなく低いからだ。何らかの必然によって同じ数値になったと推察される。)

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 真相は? 
 おそらく、もともと小惑星帯のあたりにあった無数の小惑星のうちの一つが、たまたま何らかの変動要因(彗星との衝突など)によって起動が変わって、地球の近辺に来たのだろう。そういうものがたくさんあったうち、たまたま一つが、地球との関係で特殊な位置に来たので、
  ・ 太陽のまわりを周回する
  ・ 地球から離れない
  ・ 地球とは衝突しない

 という三つの条件をたまたま満たしたのだろう。

 なお、それが起こった時期は、遠い昔だとは思えない。1億年以上前ということはありえないだろう。比較的、新しい時期に起こったと思える。
 NASA の予想では、この天体は、今後数百年は同じ位置にありそうだという。せいぜいその程度の期間しか、安定性は見込まれていない。
 とすれば、過去に遡っても、あまり古い時代にまでは遡れまい。
 
 ──

 まとめ。

  ・ 地球のまわりを周回する小天体が発見された。
  ・ それは「準衛星 2016 HO3」と名付けられた。
  ・ しかしこれは衛星の兄弟ではなく、惑星の兄弟である。
  ・ その正体は、小惑星の一種で、位置が特別なものだ。
  ・ その公転周期は、地球とピッタリ同じだ。だから存続する。
  ・ この天体は、あまり安定的ではない。一時の偶発的なものにすぎない。


 《 参考 》

 参考で言うと、似た事例として、「ツングースカ大爆発」の天体がある。この天体は、「質量約10万トン・直径60-100メートル」と推定されているので、今回の準衛星よりも、もうちょっと大きいようだ。
 逆に言えば、今回の準衛星は、ツングースカ大爆発の天体よりもいくらか小さいわけで、大きさの点では特に珍しくもないとわかる。ただ、位置がちょっと特別なだけだ。
 


 ※ 以下は細かい話。専門的だし、面倒なので、読まなくてもよい。

 [ 付記 ]
 文中の「公転周期」というのは、地球を回る衛星としての公転周期であり、太陽を回る惑星としての公転周期ではない。この件は、下記( Wikipedia )からわかる。

 In its yearly trek around the sun, asteroid 2016 HO3 spends about half of the time closer to the sun than Earth and passes ahead of our planet, and about half of the time farther away, causing it to fall behind. Its orbit is also tilted a little, causing it to bob up and then down once each year through Earth's orbital plane.

 ただし、現実には、両者は一致する。(ともに1年である。)
 この小天体が、純然たる衛星であるならば、双方の公転周期が一致している必要はない。(たとえば、月ならば、地球のまわりの公転周期は 30日だが、太陽のまわりの公転周期は1年だ。)
 しかるに、この小天体が小惑星であるならば、両者は一致する必要がある。そして、まさしく、両者は一致する。このことからして、この小天体が小惑星であることは明らかだ。
( ※ 論理的には、必要十分条件を満たしてはいないが、偶然的に一致する確率が非常に低いがゆえに、偶然ではないと見なされるからだ。)




 【 追記 】
 あとで調べ直したら、Wikipedia (日本語版)に、本項とだいたい同趣旨の話がもともと記してあった。私がいちいち書くまでもなかった。損した。 (^^);
 CNN の記事を見て、新たな特別な話だと思ったが、そうではなかったようだ。
 専門家は、「2016HO3は……準衛星と呼ぶ」と説明。

 と記事に書いてあったので、新たに「準衛星」という言葉を作り出したのかと思ったら、実は、ずっと前からこの語はあったのだし、日本語版 Wikipedia にもちゃんとした解説があった。英語版よりも詳しいぐらい。びっくり。
 Wikipedia 日本語版は、天文学に関する限り、けっこう充実しているようだ。(充実しているのはアニメだけかと思ったが、そうじゃなかった。)



 【 関連サイト 】

 Wikipedia に、次の項目がある。
  → 準衛星
  → アテン群
  → クルースン

 
posted by 管理人 at 20:36| Comment(2) | 物理・天文 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
こういう人っていますよね

惑星なのに
たまに衛星っぽい動きする人
Posted by 先生 at 2016年06月17日 21:21
 最後に 【 追記 】 を加筆しました。
 タイムスタンプは 下記 ↓
Posted by 管理人 at 2016年06月17日 22:29
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