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図書館が本を貸し出すと、作家の売上げが減ってしまう、という問題がある。
そこで、貸し出す本について、作家に金銭補償する、という制度がある。ドイツで実現済みだ。
《 税金で作家に補償金 貸し出し回数に応じ生計支援 》
旧西ドイツでは1972年、作家らの要請を背景に著作権法が改正され、図書館で貸し出された書籍の著作者に一定の補償金を支出する仕組みが導入された。「公共貸与権」だ。
作家の著作権管理団体「VG WORT」……には毎年、連邦政府と各州政府が税金から計1200万ユーロ(約14億3千万円)を拠出。うち50%は作家の老後の生活を支える「著作者年金機構」に出資され、残りの600万ユーロが、公共図書館での貸し出し回数に応じて作家に配分されている。
昨年最も多く配分を受けたのはミュンヘンの児童文学作家。年間約2万ユーロを受け取ったという。貸し出しが少なくても、「VG WORT」に加盟していれば最低年100ユーロは配分される。
公共貸与権について、団体代表のライナー・ユスト氏は「作家の仕事に対価を支払い、社会保障を支える。この制度で生計を立てることはできないが、出版物には税金で賄うだけの公共性があるという理念が、国民の間に共有されていることが大事」と語る。同様の仕組みは、ドイツに先んじて北欧でも導入され、今では英国やフランスなど欧州各国に広がっている。
( → 朝日新聞 2016-06-15 )
うまいアイデアですね。感心した。私はしばしば「うまいアイデア」を出すが、このアイデアは思い浮かばなかった。シャッポを脱ぎます。
ただし……
記事の後半に書いてあるが、日本では、この制度を導入する動きがないそうだ。文化庁も乗り気でないという。
日本という国は、著作権を大事にする風潮がないようだ。困った国だ。
[ 付記 ]
実は、たいていの財産には「私的財産権」が認められるが、唯一、著作物だけは、私的財産権に時間的な制約がかかる。「死後 75年」というふうな。
こういうことは、他の財産には当てはまらない。たとえば、土地について「死後 75年で没収」というようなことはない。著作物に限り、「死後 75年で没収」というような厳しい没収制度が存在する。ひどいね。
なお、「相続税があるぞ」という声もありそうだが、相続税は、著作権にも等しくかかるのだから、ここでは問題外だ。「著作物の収入には相続税がかからない」というのなら、話は別だが、そんなことはない。
著作物については、こういう没収制度があるのだから、著作者に対しては、生前において優遇するべきだろう。
また、特に、「図書館」という制度は、死後でなく生前においても私的財産を部分的に没収するのだから、やはり、補償という形で、生前において優遇するべきだろう。
ま、こういうのは、文化意識の問題ですね。欧州はさすがに文化の発達した先進国だ。日本は文化の遅れた後進国だ。
で、文化を創る著作者を冷遇するから、いつまでたっても日本は文化的に一流になれない。
情けない。国家自体が、国家衰亡の政策を取っている。一種の文化的自殺。
まるで中国か北朝鮮みたい。
日本って、中国・北朝鮮・韓国を馬鹿にすることが多いが、欧米から見たら、「目くそ鼻くそを笑う」というふうにしか見えないだろう。
これらの国々は、いずれも文化的には後進国なのだ。なぜなら、文化を創る人々を冷遇するからだ。一方、欧州は、文化を創る人を優遇する。なぜか? 文化を創る人への敬意があるからだ。
( ※ 日本にあるのは、何か? 賃下げ意識だけだ。「人をなるべく安価にこき使ってやろう」という意識があるばかり。敬意とは正反対だ。……後進国の特徴ですね。)
* 共産主義的な肉体労働賛歌(=文革)
* 文化人は拝金ではなく清貧であるべきという理念
(良寛さんや西行法師を理想とする)
* 独創性や創造性を和を乱すズルいものとみなす嫉妬
* 印税への嫉妬
* 金持ちの道楽だから金持ちが支援すればいい
* 文化と称して好きなことして遊んでる奴らはそれをよしとしろ。
こんなところでしょうか。
研究も文化活動への支援(=メセナ)と同じく、すぐに「それは儲かるのか」という判断で切り捨てようとします。儲かりそうなら飾り立てて周りを煽って嘘でも本当のようにする演出家に食われます。
いずれにせよ、文楽をどうこうしようとした誰かさんと同じなんでしょうね。
朝日新聞 http://www.asahi.com/shimbun/chizai/
讀賣新聞 http://www.yomiuri.co.jp/policy/copyright/20130711-OYT8T00837.html
日本新聞協会の見解 http://www.pressnet.or.jp/statement/copyright/971106_86.html
私の引用範囲は、正当な引用の範囲を超えています。したがって、私が自分の著作物(有償の出版物)に掲載した場合には、これはアウトです。新聞社にとっては一円の利益にもならない上に、勝手に営利活動に利用されているからです。
一方、本サイトの引用では、必ず元ページへのリンクが記載されています。これが決定的に重要。これによって新聞社は PV を稼ぐことができて、新聞社は利益を得ます。似た例で言うと、新聞社の記事を Yahoo が転載して、それによって新聞社がリンクで PV を稼ぐようなものです。
その一方で、私は何ら利益を得ません。
したがって、新聞社がこれに気づいたとしても、新聞社がめくじらを立てるはずがない、という範囲内で掲載しています。
なお、本サイトがアフィリを目的としている場合には、営利目的となるので、新聞社に怒られてしまう可能性は十分にあります。しかし、本サイトは、2ちゃんねる転載みたいなアフィリ目的のページとは異なり、公共の利益が目的です。新聞社としては、腹を立てる理由がないでしょう。
なお、一度、新聞社の記者からメールが来たことがあります。「当社の記事を掲載してくださってありがとうございます」と記してあった。なぜお礼を言うのかは知らないけど。 (^^);
ともあれ、
・ リンクが記してある
・ 営利目的ではない
・ 全文転写ではなく一部のみ
という点から、(合法というよりは)おめこぼしの状態にある、と考えられます。
ただし、本サイトを書籍にして有償販売したら、アウトでしょう。
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p.s.
あとで本項の引用記事を調べ直したら、大丈夫みたいです。なぜなら、ただの事実の報道だけだから。
著作権法で守られるのは、思想・感情の表現であって、事実報道は対象外です。上の記事は、誰が調べても同じ結果になる事実報道なので、著作権法違反とは言えないでしょう。特に、出典を明示している限りは、おおむね大丈夫です。
※ 独自の調査報道ならばアウトかも。