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ホテル不足の対策として、民泊という方針が検討されている。これについては、前にも論じた。
→ 東京のホテル事情
→ 民泊と特区
→ 民泊と規制緩和
関連する話題もある。(外部サイト)
→ 東京五輪、ホテル1万室不足 「民泊」ルールづくりへ
→ 民泊、その最前線にうっすらと迫る
→ 民泊営業「年180日以下」 全面解禁へ規制改革会議答申
→ 民泊の不都合な真実。フランス宿泊業界関係者が緊急来日で悲痛な訴え
参考:はてなブックマーク
要するに、ホテル不足なので、政府は「規制緩和」の方針の下で、民泊を解禁する方針だが、民泊をすでに実現したフランスでは、とんでもないことになっている。 具体的には……
・ 住居が民泊に転換されて、賃貸住宅の住民が追い出される。
・ 法的規制(年間営業日数)は守られない。違法状態。
・ 所得隠し。脱税の蔓延。
・ テロリストなどの犯罪者のねぐらになる。
・ ホテルの客は減って、ホテル業界が困る。
まあ、滅茶苦茶の極みらしい。一部抜粋しよう。
「アパートなどの所有者がより利益の上がる民泊営業に物件を回したため、パリ市内の家賃相場は数年で急上昇していきました。民泊物件へ回すために賃貸契約の約25%が契約更新されず、住人は住居を失い高額な物件を探してやむなく賃貸し直すか、郊外へと引っ越しを余儀なくされた」
年間の民泊営業数は120日までと決められているが、全く遵守されていないのが現状だと言う。なぜ全く遵守されていないのか? それは、厳密に捜査ができないためだ。
「宿泊先は客が選ぶものではあるが、そこにほとんど経費やイニシャルコストもかからず、多くの脱税を生み、業界の雇用を奪い、必要な人が普通にパリに住む環境を不当な競争によって破壊しているのは明白だ」
ホテル事業者の粗利が売上の5〜10%程度なのに対し、民泊の場合は60〜70%となる。
「確定申告し納税しているのは、フランスの民泊ホストの15%」だ。
パリ同時多発テロでは、その主犯格が潜伏先として民泊を利用していた。
フランスでは、民泊が死亡事故・性的暴行・盗難・火災・売春の温床になっている事実、薬物使用・騒音など、民泊のマイナス面として知られるようになった。
「Airbnbのイメージ戦略とその実情は全く違う。匿名性を徹底的に潰して下さい。すでにフランス全土に拡がり、取り返しがつかないほどAirbnbにやられてしまったフランスとパリの現状をよく見て下さい。日本はまだ今なら間に合う、フランスと同じ轍は踏まないで下さい」
( → 民泊の不都合な真実。フランス宿泊業界関係者が緊急来日で悲痛な訴え (HARBOR BUSINESS Online) - Yahoo!ニュース )
かくも惨憺たるありさまだ。先人の失敗に学ぶべきだろう。
※ とはいえ、ボロ儲けできる方法だ、というのも明らかだ。安全性や衛生や納税で、デタラメの限りをやり尽くす。そういう犯罪的な手法で、ボロ儲けする。ヤクザが違法な手段でボロ儲けするのと同じだ。いかにも、自民党の関連業界のやりそうなことだ。(最後に自民党に賄賂を出す、という話が抜けていたが。)
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こういう難点に気づいたのかどうか、政府はホテル業界について、「容積率の緩和」という方針を出した。
→ 宿泊施設の「容積率」 原則1.5倍に緩和を決定 | NHKニュース
→ ホテル容積率1.5倍に : 読売新聞
具体的には、こうだ。
・ ホテルの容積率を 1.5倍に。
・ 増加分は 300% を上限に。
現状の容積率が 600%なら、その1.5倍の 900% までアップする。(300%のアップ。)
600%以上の場合には、1.5倍でなく、300%のアップが限度となる。たとえば、800%だったなら、その 1.5倍は 1200% だが、そうはならず、300% アップの 1100% となる。
この案はいいか?
「交通渋滞などを引き起こしかねない」
という懸念もある。たしかにそうだ。一方、「ホテルを利用する人数は、面積あたりでは少なめだ」という点もある。店舗やビジネス事務所では、1人あたりの面積は小さいが、ホテルだと、1人あたりの面積は大きいのが普通だ。二人でかなり広い一室を専有するのが普通だからだ。
( ※ カプセルホテルみたいなのは、都心の高層ビルには来ない。繁華街の場末になるのが普通だ。そういうのは、今回は対象外だろう。たぶん。)
というわけで、「小さな劣悪なホテルについては対象外」という条件つきでなら、そう悪くはない、と思える。
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しかし、である。私としては、別の判断がある。もっとうまい方法があるのだ。
一つは、前にも述べたが、ラブホをホテルにすることだ。このことは、すでに実現しつつある。政府が推進しているのだ。
→ ホテル不足解消… 「ラブホテル」を一般ホテルへ改装
→ 渋谷区/ラブホテル条例改正、客室不足解消へNew!
もう一つは、ホテルの稼働率を上げることだ。ホテルの稼働率は、現状では、90%近くである。
→ 東京や大阪のホテルの稼働率は90%近く
ずいぶん高い稼働率のように見えるが、これではまだ 10%ぐらいが余っていることになる。「不足だ、不足だ」と言いながら、空き室がいっぱいあることになる。無駄だ。
この無駄(空き室)の理由は何か? たぶん、こうだ。
「週末は満杯(100%)だが、平日は 80〜85%ぐらいのことが多いので、全体としては、90%ぐらいになっている」
そこで、方針としては、次のことをめざすといい。
「平日の客を増やす。国内の旅行客については、それは無理だが、外国人の旅行客については、平日を主体とすることは可能だろう」
たとえば、「日曜・昼から、金曜・昼まで」というプラン。5泊6日の旅行だ。こういう旅行プランを、外国人に割り当てる。(平日であれば、もっと短くて、2泊3日や、3泊4日でもいい。)
では、どうやって、そういうふうに誘導するか? 簡単だ。単に市場原理に従えばいい。要するに、「平日の客が少なければ、平日のホテル料金を引き下げる」というふうにすればいい。
このような「宿泊料金の変動制」は、すでにあちこちで実現している。特に、ネットで予約するサイトでは、日替わりふうに料金がどんどん変動するので、平日では安くなることが多い。
こういう方針は、中小のビジネスホテルではけっこう多くなされているが、格式のある一流ホテルでは、あまりなされていないようだ。
それでも、アパホテルというけっこう大手のホテルでは、「宿泊料金の変動制」を実施している。そのおかげで、宿泊率は常に 100%に近い。その効果もあって、利益率がとても高い。ボロ儲けしている、という感じだ。
かくて、「宿泊料金の変動制」を実行すると、
・ 空き室率がほぼゼロにまで減る。
・ おかげで、ホテルの収容人数の総数が増える。
・ 平日の客は、料金引き下げで、大喜び。
・ 週末の客は、(高い金を払えば)宿泊できて、大喜び。
・ ホテルは利益率が大幅にアップで、大喜び。
というふうに、いいことずくめとなる。
この方法で伸ばせる室数は、1割程度だ。だから、「爆泊」と呼ばれるほどの旅行客急増までは、対応できない。それでも、ちょっと工夫するだけで、部屋数を大幅にアップしたのと同様の効果が得られるのだから、この方針をなるべく推進するべきだろう。
( ※ 問題は、「値引きするとホテルの格式が落ちる」と感じている一流ホテルのプライドだな。ま、超一流なら、数は限られているから、それでもいいが。ニューオータニや、オークラぐらいなら、大規模な業者としてふるまうべきだ。格式なんかにこだわるほどのことはあるまい。超一流というのは、一泊 20万円以上のことを言うものだ。ちなみに、舛添が借りた部屋も、1泊 20万円。)
【 関連サイト 】
アパホテルの状況。
→ アパホテルは他のホテルチェーンと何が違うのか?
※ 非常に高成長を遂げている。利益率もすごく高い。
アパホテルへの批判。
→ アパホテル、ホテル不足便乗で料金3倍値上げに批判殺到
※ 需要の多いときには値段が高いので、文句を言う客が出てくる。
上記記事への反響。
→ はてなブックマーク
※ 市場原理なんだから当然だ、という声が多い。
アパホテルの料金の実態
→ アパホテルの予約(公式サイト)
※ 高い日だと \16,900 だが、安い日だと \4,900 。
日によっては、とんでもない激安料金となる。
うまく使えば、とても有利なお買い得となる。
【 追記 】
「稼働率が 90%ぐらいあるのなら、売れ残りの分を直前に格安で販売すれば、売れ残りがゼロになって、儲かるのでは?」
と思った。
「ならば、直前販売の空室を売るためのサイトを作ればいい」
と思ったが、
「そんなサイトはすでにあるはずだ」
と思い直して、検索してみた。
→ ホテル 直前 格安 - Google 検索
→ ホテル 直前 格安 - Google 検索(直近)
これで調べたら、次のような例が見つかった。
→ 東京都のホテル・旅館 宿泊予約 - 【直前お値打ちプラン】
いやはや。安いのなんの。2000円前後で宿泊できる。アパホテルでさえ 2500円程度だ。7割引ぐらいになっている。
結論。
格安で宿泊するには、当夜の直前に、売れ残りの空き室をネットで探せばいい。探し方は、上記。
教訓。
スーパーとホテルは、閉店間際の売れ残り商品を買えば、高価なものを格安で買える。
( ※ 好きなものを選ぶ自由はないが、多少の自由はある。)
例外。
土曜の夜だけは、空き室は残っていない。空き室狙いだと、どこにも泊まれなくなる。土曜の夜だけは、きちんと予約しておこう。
シティホテル、ビジネスホテルいろいろありますので一概には言えませんが、ビジネスについては平日の稼働がほぼ100%、金曜から日曜が50~30%程度というのが一般でございました。これで平均稼働率80%程度です(きわめて優秀な部類のホテル)。昨今、外国からの旅行者が増加した結果週末の稼働が大幅に上がり90%近い稼働を得ております。でもこのところ非常に盛り上がっていた特定の外国の方々が減ってきております。円高の影響でしょうか。またオリンピックしろ超短期間しか開催しないイベントの為に初期投資が非常に大きなホテルを建設するのは事業投資として非効率です。そうすると民泊という話になったのでしょうが、これはおっしゃる通りあまりよい制度ではなく、またかなり厳しい旅館業法が適用となっている私どもにとっては、ざるのような許可制度です。旅行を日本の産業としていきたいと考えておりますが、なかなか難しい問題です。