2016年06月11日

◆ 地震予測図は無意味

 政府は地震予測図を示した。しかし、無意味だ。

 ──

 政府は地震予測図を示した。
 政府の地震調査研究推進本部は10日、今後30年以内に強い地震に見舞われる確率を示す「全国地震動予測地図」の2016年版を発表した。
 予測地図は、防災科学技術研究所がつくるウェブサイト「地震ハザードステーション」( http://www.j-shis.bosai.go.jp/ )で、250メートル四方に区切って見ることができる。
( → 朝日新聞 2016-06-11

 該当の図は、これ。(朝日新聞に掲載された図)(政府の図[18MB]もあるが)


yosoku0.jpg


 これを見て、「おお、大変だ」とか、「ああ、一安心」とか、いろいろな感想が湧きそうだが、無意味だ。この図にはまったく意味がない。
 なぜか? 過去の実績が示している。これと同様の図は、40年ぐらい前からずっと示されてきたが、実際には、地震の確率の低いところでばかり大地震が起こった。
  ・ 兵庫県南部地震(阪神大震災)    :1995
  ・ 新潟県中越地震           :2004
  ・ 東北地方太平洋沖地震(東日本大震災):2011
  ・ 熊本地震              :2016

 いずれも、事前の予想では、「地震の確率は小さい」と見なされていた。にもかかわらず、現実には大地震が発生した。その一方で、「起こる、起こる」とオオカミ少年みたいに何度も警告していた東海沖の地震は、ちっとも起こらない。
 要するに、政府の事前の予測など、何の意味もない。「たまには当たる」どころか、「まったく当たらず、はずしっぱなし」ということだ。

 ──

 では、なぜこうなるか? それは、政府の予想が、ただのヤマカンみたいなものにすぎないからだ。過去のデータから、「そろそろ起こるだろう」と予想しているだけで、特に大きな根拠があるわけではないのだ。
 ま、実際には、「地殻のひずみ」というのを、根拠にしていることもある。それで、下記のように予測する。
 《 南海トラフ地震起こす「ひずみ」 初の実測分布図を公開 》
 南海トラフ巨大地震を引き起こす、海側のプレートが陸側に入り込んで蓄積された「ひずみ」の分布図を海上保安庁が作製した。海底の観測器による実測値を初めて使った図で、想定以上の大きなひずみも確認されたという。
( → 朝日新聞 2016年5月24日

syodahlh.gif


 ま、こういう「ひずみ」を観測したから、まったく根拠がないというわけではない。
 しかし、「ひずみ」と地震との関係は、はなはだ不確かである。「将来いつかは地震が起こりそうだ」とはわかるが、それが 10年後とも 20年後とも定かでないのでは、ほとんど意味がない。

 実は、海上保安庁のサイトには、より精密な図がある。


kaiho.gif
出典:PDF


 これを見ると、大きな「ひずみ」はあっても、単にプレートが移動しているだけで、どうってことはないのだ、とわかる。このようにプレートの移動があるだけでは、地震が起こることの根拠にはならないのだ。
( ※ いつか反動が来るだろう、とはわかるが、それがどのくらい先かは、まったく見当が付かない。)

 ──

 では、どうする? 単に政府の悪口を言って終わりか? いや、それではあまりにも非建設的だ。文句を言うだけでは、それこそ意味がない。
 代わりに、もっといいデータを示そう。二つある。

 (1) 「ひずみ」の集中

 熊本地震の前には、「ひずみ」の集中があったことがわかっている。下図だ。


hizumi.jpg
図の出典


 このように、ひずみの集中している地点で、熊本地震は起こった。しかも、ひずみは次善に観測されていた。その意味で、熊本地震は予測されていたとも言える。
 このように「ひずみの集中」を観測することで、地震の予測は、ある程度は可能になるのだ。
 詳しくは、下記項目を参照。(前に論じた。)
  → 地震は予知されていた
 
 (2) 電磁波の観測

 空中の電磁波を観測することで地震を予測できる、という研究がある。
 「地殻がひずむと、地殻がひび割れてラドンを放出し、そのラドンが空中の電離層を乱すので、電離層で反射される電波によって乱れを観測できる」
 という原理。これによって、茨城県の震度5の地震で、予測が的中したそうだ。(テレビ朝日の報道)
  → 地震予測の最前線 “電離層の乱れ”“地下天気図”

 これによると、熊本地震でも、(「嵐の前の静けさ」という形で)「九州北部」と「九州南部」の危険性を予知できたそうだ。


yosoku1.gif yosoku2.gif


 熊本は「九州中部」なので、熊本地震を的中させることはできなかった。とはいえ、「九州北部」と「九州南部」の危険性を予知できたのならば、「足して2で割る」という形で、「九州中部」の地震を予測していたと見なすこともできる。
 このあとは? 九州中部の活断層と照合すればいい。活断層のデータは、前出項目で示したように、下記にある。
  → 産総研:活断層データベース
 ここから九州のデータを取り出すと、下記の図を得られる。


sansokenmap.gif


 これを見ればわかるように、九州中部ならば、熊本と長崎に活断層があるとわかる。
 だから、先の「九州中部が危ない」という判断から、「長崎と熊本では地殻大地震が起こりそうだ」と、事前に予測できたわけだ。

 ──

 結局、実際には予測できなかったのだが、事後的に検証すると、「あのときにこうしておけば予測できたのだ」ということがわかった。
 とすれば、その知見を生かすべきなのだ。次の地震でも、その手法が必ず的中するとは言えないのだが、とても有力な予測手段であるとは言えるだろう。だから、その手法をとるべきなのだ。
 ひるがえって、政府の冒頭の地図データは、あまりにもヤマカンだ。そのヤマカンは、過去の数十年間、はずれっぱなしだ。こんな無意味なデータはさっさと捨てた方がいい。代わりに、もっと科学的なデータを研究するべきだ。
 
posted by 管理人 at 14:18| Comment(1) |  地震・自然災害 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
ロバート・ゲラー博士も地震予知は無意味だと言ってますね・・・
Posted by 丸義 at 2016年06月21日 19:17
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