2016年06月09日

◆ 災害時の食料備蓄

 災害時の食料備蓄が心許ないそうだ。3日分もある自治体は少ないそうだ。では、どうする? 

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 熊本地震でこの問題が露見したので、読売新聞が独自に調査した。その結果が本日朝刊で報道されたが、ようやく版はネットにもある。一部抜粋しよう。
 《 食料3日分」備蓄21自治体のみ 》
 避難所などの食料難が問題になった熊本地震を受け、47都道府県と20政令市の公的備蓄について読売新聞が調査したところ、食料3日分を確保するとの目標を定めているのは約3分の1の 21自治体にとどまり、他の自治体は2日分以下とするなど備えが不十分なことがわかった。
 国は道路の寸断が予想される大規模地震に備えて3日分程度の備蓄を促しているが、熊本地震では発生から2日間で各自治体の備蓄が底をついた。
 調査はアンケート形式で、5月に計 67自治体に対して実施した。備蓄のうち一定部分を「流通備蓄」でまかなうとして、現物で保管する量をあいまいにしているケースもあった。
( → 「 : 最新ニュース : 読売新聞(YOMIURI ONLINE)

 というわけで、現状はお寒い限りだ。

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 さらに情報を探そう。熊本地震の気には、食糧不足は発生したか? 発生した。今でも当時の記事が見つかる。
 熊本地震。配給待ち2時間「きつい」「並べぬ」。食べ物不足は、特に高齢者や病弱な人に直撃しています。「今朝は1時間半並んでおにぎり2個。1個残して、これをお昼に食べます。もう1度並ぶのは体にこたえるからね…」
( → 老婆は一日にして成らず
 熊本県益城町の被害の大きさが伝えられているが、東側に位置する西原村も、どこを歩いても崩れた家ばかり。村内の約2300棟の住宅のうち344棟が全壊し、1087棟が半壊。6割強が崩れたことになる。住民の大半は西原中学校に身を寄せていた。
 避難生活が3日を過ぎ、「食とトイレ」問題が鮮明になっていた。
 西原中で支給される食べ物は、15日から1日3食、おにぎりだけ。それも1人に1食1個。近くに住む古庄キヨコさん(67)は「塩も利いてないし、漬物もない。水だけで食べなくてはいけない」と話した。
 それでも 17日には、給水車1台と炊事車2台とともに自衛隊が到着。キヨコさんは「おにぎり1個は同じだけど、大きさが2倍くらいになった」と笑顔を見せた。馬場侑翔くん(11)は「大きくなったのはうれしいけど、おかずも欲しい。唐揚げが食べたい」と話した。
( → スポニチ Sponichi Annex
 富田みえ子さん(74)は16日夜以降、お茶とスナック菓子の「ポッキー」1袋、せんべい2枚を口にしただけという。「コンビニやスーパーにも食料品がなく、おなかが減った。避難所に行けば何かあると思ったのに」。17日夕になり、水と乾パンが届いた。
 17日午前10時、熊本県益城町の町総合体育館では自衛隊の炊き出しに約80人が並んでいた。4カ月の子どもを抱える熊本市東区の白川ミカさん(34)はおにぎりを受け取った後、「1時間並んだ」と疲れた表情で話した。車で炊き出し2カ所を回ったが、13歳までの子ども4人を優先し自分はあまり食べていない。そのためか母乳も出なくなったという。( → 朝日新聞 2016年4月18日

 というわけで、被害は確かにある。
 読売の記事では、今後起こりそうな大地震で、本州の各地で大被害が起こることを想定して、そのときのための準備が心許ない旨を伝えている。

 ──

 では、どうすればいいか? 
 「避難所に備蓄するだけでなく、家庭にも備蓄すべき」
 という指摘もある。なるほど、そのとおり。ただし、そのような備蓄なら、すでに家庭にもあるはずだ。即席ラーメンなどがそうだ。
 熊本では、それがあまり使われなかった。なぜか? ガスと水道が止まったからだ。これでは即席ラーメンを作れない。

 逆に言えば、お湯さえあれば、食糧不足の問題はかなり改善する。つまり、外部から大量の食料を持ち込むかわりに、現地にもともとガスを用意しておけば、あとはミネラルウォーターや給水車だけで足りるわけだ。
 とすれば、避難所に置くべきは、大量の備蓄食料ではなくて、プロパンガスのボンベとコンロだろう。これと水があれば、鍋やヤカンを使って、熱湯を作れる。熱湯があれば、即席ラーメンを作れる。これだけで、食糧不足の問題は大幅に改善するはずだ。

 これと似た話は、以前、下記項目でも記した。
  → 地震に備蓄食料は不要
 ここでは、「ガスコンロがあれば、生鮮食品を(腐る前に)食べることができる」というふうにしている。
 確かに、そうだ。(停電で)冷蔵庫の中身が腐る前に、さっさと焼いて、サランラップにでもくるんでおけばいい。ついでに、ワサビ粉を添えておくといい。これで腐敗を防いで、2日間程度は保つこともできそうだ。(ただし外気温しだい。夏場は苦しい。冬場は楽勝。冬場なら、外気が冷蔵庫並みだ。)

 この項目では、「家庭用の携帯ガスコンロとガスボンベ」という方式を示した。一方、避難所ならば、プロパンガスを用意しておくべきだろう。「大量のアルファ米や乾パンを備蓄すべし」というのが、読売の記事の趣旨であるようだが、そんなことより、プロパンガスボンベの方が、はるかに有効だと思える。(設置面積も、金銭負担も、ずっと少なくて済むだろう。)

 ──

 読売の記事では、「震災で交通が遮断されて、物流が滞り、外部からの物資の流入が来なくなるのが問題だ」という話もあった。しかし、これはピンボケだ。

 熊本の事例から、教訓を得るとすると、こうだ。

 (1) 交通が遮断された特定の場所で、不足が起こる。物の不足というよりは、交通の問題だ。そして、それが起こるのは、経路がごく限られた僻地に限られる。たとえば、阿蘇大橋が崩れると孤立した南阿蘇など。……一方、益城町などでは、高速道路の普通という問題はあっても、一般の国道までが普通になったわけではないから、交通遮断の問題は起こらなかった。交通の遮断の問題は、特定の僻地だけで考えればいいのだ。「交通の遮断のせいで食糧不足で餓死する」なんていう心配は、特にしなくていいのだ。

 (2) 熊本の教訓は、物資の絶対量の不足ではなくて、物資の配給の問題だった。つまり、熊本には物資がいっぱい届いたのだが、それが避難所まで配られないのだ。なぜなら、人出がないからだ。物の不足というよりは、人出不足の問題があった。
 水、食料、毛布――。熊本地震の被災地で、物資の不足を訴える声が相次いでいる。国や近隣の自治体から救援物資は集まりつつあるが、行政の混乱などもあり、被災者の手元まで行き渡らない。

  ■続々到着、でも集積所に山積

 支援物資が避難所や被災者に行き届いていないのは、道路事情の悪さに加え、行政の混乱や人手不足なども要因になっている。
 支援物資が避難所や被災者に行き届いていないのは、道路事情の悪さに加え、行政の混乱や人手不足なども要因になっている。
 市には17日から水や毛布などが大量に届き始めた。ただ、管理場所の手配が間に合わず、市内唯一の保管所では荷受けと搬出作業が混乱。午後6時には物資を積んだトラックが15台ほど並んだ。鹿児島県から水を運んできたという男性運転手(53)は「5時間たっても荷下ろしできていない」。市の担当者は「初めての事態で、混乱している」と話した。
 被災地支援対策本部も熊本県の要請で、飲料水約2万4千リットルや毛布約1万8800枚などを陸路で届けた。しかし、受け入れ先の一つの県庁ロビーは企業からの支援物資も含む段ボールが積み上がり、満杯状態だ。
 県の担当者は「市町村はニーズ把握にまで手が回らず、県も何が求められているか把握できないでいる」と語る。物資が届いてもさばききれないため、県は個人からの送付希望は断っている。
( → 朝日新聞 2016年4月18日

 物資が足りないのではない。物資はありあまっている。ただし、それを避難所に届けるシステムが欠落しているのだ。だから、役所などに物資が山積みにされたのだ。
 こういう事実を無視して、「備蓄をいっぱい用意すればいい」という発想だけを取っても、また同じことを繰り返すハメになる。備蓄を増やすことばかり考えずに、その先のことも考えるべきだろう。
 ま、いくらかは考えているようだが、現状では、ろくに計画を練っているようには思えない。そもそも、誰が届けるのか? 市役所の職員は手がいっぱいなので無理だ。となると、物流業者やボランティアの組織をしっかりと整備しておく必要がある。なのに、その体制は、まだまだできていないようだ。




 [ 付記1 ]
 個人レベルの対策を考えよう。
 個人の場合、備蓄食料の設置場所に注意する必要がある。熊本の場合、余震の続くなかで、崩れた家には入りにくい、という問題があった。同様のことが起こるとまずいので、食料備蓄は、取り出しやすいところに置く方がよさそうだ。たとえば、戸外の物置とか。あるいは、(余震が来ても逃げ出しやすい)玄関先とか。

 [ 付記2 ]
 避難所となる学校に食料をたくさん備蓄しよう、という趣旨も、読売の記事にあった。ただし、それを(使用期限が来たときに)どうやって使い切るかが問題となっているようだ。
 ま、アルファ米や乾パンなんて、使用期限が来たときにもらっても、使い道がないことが多いあろう。そのまま廃棄されてしまうかもしれない。もったいない。
 そこで、私の提案を示そう。

 第1に、缶詰だ。缶詰なら、賞味期限が製造後 36カ月(つまり3年間)。これは賞味期限なので、消費期限とは異なる。実際には、10年ぐらいたっても食べられるらしい。(缶が錆びていない、という条件で。)……ならば、3年にいっぺん、備蓄の缶詰を生徒に配布すればいい。または、給食で使い切ってしまえばいい。
 品物は、製造から2カ月ぐらいした商品を、秋頃に納入してもらう。それから 36カ月たつと、製造後 38カ月だ。冬場ならば、2カ月ぐらいの超過は、問題ない。そもそも、賞味期限だから、味の問題があるにすぎない。
 お薦めは、サバの缶詰だ。サバならば、安いし、缶詰に最適だからだ。

 第2に、プロパンガスがあることを前提に、即席ラーメンを大量に用意しておくといいだろう。袋麺の賞味期限は8カ月ということだから、半年ごとに使い切ってしまえばいい。使いきる方法は、生徒へのプレゼントでいいだろう。(たいした金額ではないし。無駄になるわけでもないし。)

 第3に、学校に給食の設備があるのならば、小麦粉や乾麺などを大量に備蓄しておくのもいいだろう。このあと、プロパンガスでお湯を沸かすことができれば、災害時にもいろいろと調理ができる。また、小麦粉の賞味期限は(薄力粉・中力粉なら)12ヶ月なので、この期間のうちに、給食として使い切ることは可能だ。だから、小麦粉ならば、「備蓄」と「使い切ること」の双方が、高度に両立する。お薦め。(給食設備のある施設に限られるが。)

 ※ 余談だが、小麦粉は最近、ものすごく高価格になった。昔の2倍ぐらいの価格だ。デフレ時代なのに、小麦粉ばかりが猛烈に高価格だ。それというのも、農水省が余計な高率関税をかけているせいだが。……その対抗策は? うまく安売り店を探すことだ。普通のスーパーや 100円ショップだと、全滅に近い。イオンの「まいばすけっと」だと、700グラムのが 91円で買えるので、ほぼ昔の価格で買える。(お得情報でした。)
 
posted by 管理人 at 00:18| Comment(5) |  地震・自然災害 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
 熊本地震では、少なくとも市街地では、地震の3日後にはコンビニに物資があふれていた。
 → http://j.mp/1tiZuzG

 交通が遮断された特別な場所を除いて、物資不足についてはあまり心配しなくていいようだ。本文中に述べた通り。
 物資がくるまでの2日間をしのげば、それで十分だ。
Posted by 管理人 at 2016年06月11日 19:48
サバ缶、大賛成。
加工しなけれは食べられないコメや小麦よりも、缶を開けたら即食べられ&即栄養チャージできるサバ缶。うちでは災害用に備蓄しています。
Posted by たかし at 2016年06月13日 12:10
決定的なのは水です。食料ではない。3日ぐらいは水だけで十分に行きられる。
各家庭や避難所には、ポリタンクに水を入れて、密封しておくだけでいいんじゃないでしょうか。10Lあったら1日2L飲むとして5日はもつ。
Posted by inoueakihiro at 2016年07月05日 03:08
> 決定的なのは水です。

水は別の項目で話題にしています。
 http://openblog.seesaa.net/article/437776879.html
 http://openblog.seesaa.net/article/435848883.html

 現実にはどうか? 熊本地震の場合には、避難所に給水車が来たので、特に問題はなかったようです。当面は、冷蔵庫にある飲料などがあるし、数時間後には、給水車が来る。

> ポリタンクに水を入れて、密封しておく

それは、やってもいいけど、必要ないでしょう。実際にやっている人はほとんどいないでしょうし。半日をしのぐだけの飲料を冷蔵庫に入れておくだけで十分です。飲み水は。

実際、過去の地震でも、飲み水の不足が問題になったことはありません。どこでもすぐに給水車が来る。

ただし、トイレの水不足で、トイレが使えなくなったことは、どこでも深刻な問題となりました。

Posted by 管理人 at 2016年07月05日 04:07
災害時に関してはトイレは水洗式より汲み取り式、ガスは都市ガスよりプロパンってことでしょうか。
Posted by 横断中 at 2016年07月05日 10:16
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