2016年06月05日

◆ 九段会館の改築

 九段会館の改築され、低層階を残して高層ビルとなるそうだ。「腰巻きビル」というやつ。

 ──

 この件は、読売新聞などが報じた。
 東日本大震災で天井が崩落する死亡事故後に廃業した東京都千代田区の宿泊・会議施設「九段会館」の建物について、財務省関東財務局は3日、有識者でつくる検討委員会が「できる限り保存していくべきだ」との結論をまとめたと発表した。
 今後は外観や内装の一部を残し、民間事業者によって建て直されることになる。
 九段会館は1934年、昭和天皇即位の記念事業の一環で「軍人会館」として完成。陸軍の青年将校らが首相官邸などを襲撃した36年の2・26事件では戒厳司令部が置かれ、戦後は57年まで連合国軍総司令部(GHQ)に接収された。返還後は国が財団法人「日本遺族会」に無償で貸し、宿泊や会議施設として使われてきた。
 しかし、2011年3月11日の東日本大震災では1階大ホールの天井が崩落し女性2人が死亡、20人以上がけがを負う事故が発生。老朽化が進んでいたこともあり、遺族会は廃業を決め、会館を国に返還した。今後は入札を行い、民間事業者が土地を国から借りて開発することが決まっている。
 今年1月から、大学教授らでつくる検討委員会が、会館の今後のあり方を議論。その結果、「希少性や歴史性から、建築物を継承する社会的意義は高い」との結論に達した。開発を担当する事業者に対しては、〈1〉歴史的な価値が認められる範囲の外装、内部空間の保存〈2〉保存が難しい場合は創建時の姿に忠実に復元〈3〉増築する建物は高さ約75メートル以下――などを求めている。
( → 読売新聞 2016-06-05

 話を整理すると、こうだ。
  ・ 日本遺族会が無償で貸与されてきた。
  ・ 東日本大震災で、老朽化して、崩落事故。
  ・ 日本遺族会は返上して、国有財産に。
  ・ 利用法を検討委員会に委ねる。
  ・ 委員会は「なるべく保存」を答申。
  ・ 75メートル以下の高層化も許容。「腰巻きビル」が条件。


 腰巻きビルというのは、低層が旧建築の外装で、高層が新建築になるもの。
  → なぜニッポンから「腰巻きビル」は無くならないか - るたろぐ
  → なぜニッポンから「腰巻きビル」は無くならないか - Togetterまとめ

 で、九段会館もこうなることについて、批判の声が上がっている。同時に、「認める」という声もある。
  → 昭和史の舞台「九段会館」半分壊して高層ビルに。また「腰巻きビル」にするのか…の声多数 - Togetterまとめ

 歴史的意義については、NHK ニュースに詳しい。(以下に引用するが、いちいち読まなくてもいい。)
 九段会館は、戦争の時代、そして終戦から占領期に至るまでの日本の昭和史を象徴する歴史的な建物として知られてきました。
 昭和9年に軍人会館として建てられ、直前の昭和6年には満州事変があり、前年の昭和8年には国際連盟を脱退するなど、日本が国際社会のなかで孤立を深めつつあった時代でした。
こうしたなか、容姿は国粋の気品を備え荘厳雄大の特色を表現することが条件とされ、洋風のコンクリートの建物に和風の屋根を組み合わせる「帝冠様式」と呼ばれる建築様式が選ばれました。
 当時、ヨーロッパではナチス・ドイツが台頭しつつありました。日本では昭和11年、「昭和維新」を掲げて決起した陸軍青年将校らが部隊を率いて首都・東京の中枢を占拠し、政府要人ら9人を殺害した「二・二六事件」が起きました。この事件で軍人会館には、青年将校らの部隊の鎮圧に当たった戒厳司令部が置かれていました。
 その後、昭和史は、昭和12年の盧溝橋事件、昭和16年の真珠湾攻撃と戦争の時代に入っていきます。東京も空襲を受けるなか九段会館は焼け残り、昭和20年の終戦後、建物は、一時GHQ=連合国軍総司令部に接収されました。
 そしておととし、日本遺族会が九段会館を運営する根拠となってきた法律が改正され、建物を建て替えて高層化し効率的に利用することが決まりました。また、この法律の改正に当たり、国会では、歴史的に価値のある建物の保存や外観の活用などについて検討することなどを求める付帯決議が可決されました。
( → 昭和史の舞台「九段会館」 半分以上残し高層ビルに | NHKニュース

 ここで、参考のために航空写真を示すと、こうなる。




 次の航空写真もある。
  → Bing 地図( 3D写真)
 
 ──

 さて。この件についての私の見解は、次の通り。
 高層化して土地の有効利用を図る……というのは、民間企業ならば当然だ。だから、民間企業がこういう方針を取るのであれば、それに国が口出しすることはできない。
 しかしこれは、国有財産だ。国有財産を営利事業のために利用するというのは、正しい方針ではない。まして、それが歴史的な建物であるならば、なおさらだ。
 
 仮に、これを認めるのであれば、次のことも認める必要がある。
  ・ 国会議事堂を、高層化して腰巻きビルにする。
  ・ 赤レンガの東京駅を、   〃   〃
  ・ 迎賓館を、        〃   〃
  ・ 桂離宮を、        〃   〃
  ・ 皇居を、         〃   〃


 馬鹿馬鹿しいですね。歴史的建築物を次々と破壊して、コンクリの四角い箱にして、何の意味がある? 愚の骨頂だろう。
 というわけで、「高層化して腰巻きビルにする」という方針は、歴史的建築物については「ノー」だ。まして、国有財産であれば、なおさらだ。

 ──

 では、代案は? 
 当然ながら、「外装を残して、内部は低層のビルに改築する」となる。つまり、
 〈1〉歴史的な価値が認められる範囲の外装、内部空間の保存
 〈2〉保存が難しい場合は創建時の姿に忠実に復元
 〈3〉増築する建物は高さ約75メートル以下

 のうち、〈1〉〈2〉を忠実に求める。〈3〉は、大幅に高さを制限する。現在の高さと同じにする。
 これがベストだろう。

 ──

 ここで、次の反論が来ることが予想される。
 「都心の一等地で建物を低層化したら、経済効率が低くなり、金を失うのと同じだ。もったいない。その損失をどうしてくれる」

 いや、損失が出るわけじゃない。単に「得られるはずの利益が得られない」だけであって、赤字になるわけじゃない。現状維持と同様だ。
( ※ 正確に言えば、家賃が入るだけ、ほんのちょっと黒字になる。現状みたいに「無償貸与」するよりは、よほどマシになる。)

 しかし、世の中には、守銭奴が多い。金のなる木が目の前にあるとなると、「金がほしい、金がほしい」とわめきたてる人々が多い。特に、自民党と財務省がそうだ。何事も「カネ、カネ、カネ」と言い張る。
 「文化は金じゃない」
 と一喝したいところだ。

 だが、それでは彼らは納得するまい。彼らはきっと、こう文句を言うだろう。
 「困ったときの Openブログという標語を掲げているくせに。何とかしろ。こっちは困っているんだ!」

 そう言われたら、逆らえないな。しょうがない。うまい名案を出そう。こうだ。
 「高層ビルを建てなくても、高層ビルを建てたのと同じだけの金が入るようにすればいい」
 つまり、九段会館の上に、バーチャルな建物を建てるわけだ。バーチャルな建物ならば、現実には何も建たないから、何一つ迷惑は生じない。その一方で、建物は建てたから、金はいっぱい入ってくる。

 「ふざけるな! それで手に入る金もバーチャルだろ!」
 と文句を言われそうだが、さにあらず。ここには、手品みたいな、うまい名案があるのだ。それは、こうだ。
 「九段会館の容積率を、近辺の建物に売り払う。近辺の建物は、九段会館の容積率を購入して、その分、高層化ができる」


 これは、嘘ではない。すでに東京駅でなされている。だからこそ、東京駅は低層で改築できたのだ。低層のまま、容積率をきちんと利用できたのだ。
 長らく先延ばしされてきた建て替え計画は、1999年(平成11年)から2000年(平成12年)にかけて、創建当初の形態に復原する方針がまとめられ、500億円とされた復原工事の費用を丸の内地区の高層ビルへの容積率の移転という形で捻出することで、丸の内地区の高層ビル建て替え事業と並行して、東京駅の復原工事が行われることとなった。
( → 東京駅 - Wikipedia

 これなら、問題はすべて解決する。そこで最後に一言、大きな声で言おう。
 「困ったときの Openブログ」



 [ 付記 ]
 この案には、別の利点もある。
 「皇居のすぐそばに高層ビルを建てる」
 という不敬罪みたいな難点を避けることができるのだ。そもそも、「皇居のすぐそばに高層ビルを建てる」なんて、失敬な方針である。こんな方針を立てた連中は、国賊扱いされても仕方ないな。 (^^);
 


 【 追記 】
 容積率の移転をするためには、該当地域を指定するために、特別な立法措置が必要となる。(ちなみに、東京駅の場合も、特別に立法措置が取られた。)

 「たかが一つのビルのため、いちいち国会で立法措置がとれるか」
 と思うかもしれないが、東京駅の場合には、まさしくそうした。

 また、そもそも九段会館自体が、特別な立法措置によって、日本遺族会に無償貸与されたのだ。もともと特別な立法措置がとられた例外的な建物なのだから、あらためて特別な立法措置をするのも、不思議ではない。
 ただし、特別な立法措置のためには、数年間の時間が必要だろう。容積率の移転には、それなりの手間と時間がかかる。

( ※ それには政治家が奮闘する必要がある。では、政治家は、そんなことをやる気があるだろうか? サボりたがり屋の政治家が、たかが一つのビルのために、大奮闘するだろうか? 実は、する。なぜか? このビルが完成すれば、日本遺族会に、継続的に無償貸与されるはずだからだ。日本遺族会は、大東亜戦争の戦没者に関する作業をする団体だ。右翼の協賛団体だ。となれば、安倍首相が必死に馳せ参じて、協力したがるはずだ。
posted by 管理人 at 21:40| Comment(4) | 一般(雑学)3 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
現行案にその容積率移転が既に含まれてるってオチはない?
Posted by 通りすがり at 2016年06月05日 22:08
> 現行案に

 少しは含まれているかもしれないが、75メートルの高層分をすべて削るかどうかが問題なので、当面の問題とは関係ありません。
 
 あと、今はまだ提案の段階だから、容積率移転を認めてもらっているはずがない。認めるには、長い時間が必要です。
Posted by 管理人 at 2016年06月05日 22:30
名案じゃなかったの?
ちょっと返答の意味わかんないな

んで、探すとでるね

九段会館の高層化、歴史どう残す 二・二六事件で司令部 - ニッカン芸能!:
http://webcache.googleusercontent.com/search?q=cache:pL8p5GIFNmEJ:http://geino-smp.nikkansports.com/news/news_article_photo.zpl?topic_id%3D2%26id%3DASFASJ2Q3F27J2QUTIL00K%26year%3D2016%26month%3D2%26day

日埜直彦さんはTwitterを使っています。九段会館の余剰容積率を売って保存出来る可能性はないかという話、国際文化会館の空中権を六本木ヒルズは買ってるんじゃなかったかな。買う側がいないと始まらない話で、売りたい側から考えてもなかなかかもしれませんが、すこし広いエリアマネジメントで考える必要があるってことですかね。:
https://mobile.twitter.com/naohikohino/status/738937527201988608

そりゃ思いついてるか
既に案に入ってるか、買い手がいないかあたりっぽいね
Posted by 通りすがり at 2016年06月06日 09:14
む、書いといてなんだけど、上の二つでもないかもね

特例容積率適用区域制度
容積率 - Wikipedia:
https://ja.m.wikipedia.org/wiki/%E5%AE%B9%E7%A9%8D%E7%8E%87#.E7.89.B9.E4.BE.8B.E5.AE.B9.E7.A9.8D.E7.8E.87.E9.81.A9.E7.94.A8.E5.8C.BA.E5.9F.9F.E5.88.B6.E5.BA.A6

法律コラム|久保井総合法律事務所:
http://www.kuboi-law.gr.jp/sys/columns/detail/39

適用区域外というオチか?
適用することを怠ったのか、適用条件を満たせなかったのかというあたりは分からん
Posted by 通りすがり at 2016年06月06日 10:34
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