──
環境省がようやく、ウナギ絶滅回避のため、重い腰を上げたようだ。読売のスクープ記事がある。(公式には未発表。)
《 ニホンウナギに「優しい川」を…保全指針策定へ 》
絶滅の恐れのあるニホンウナギの生息数を回復させようと、環境省は河川の環境改善に向けた保全指針を策定する方針を決めた。
ウナギが身を隠す場所を確保し、海と川とを行き来しやすいようにしてウナギの生息地を広げる狙いがある。同省が魚類の単一種について指針を策定するのは初めて。専門家らによる検討会を近く設置し、来年3月に指針を公表する。
指針策定に先立ち、環境省は2014年度から、天然のニホンウナギについて初の全国調査を実施。その結果、生息地は北海道の沿岸と青森県の日本海側をのぞく日本の沿岸全域に分布していることがわかった。さらに関東地方の利根川や、青野川(静岡県)、西郷川(福岡県)など6水系で計約250匹を捕獲。生態を調べたところ、夜行性のニホンウナギは日中、川底の大きな石やコンクリートブロック、ヨシなどの植物のすき間に身を潜めており、この「隠れ場所」が生息に重要であることが明らかになった。
( → 読売新聞 2016-05-09 )
わかったとか、明らかになったとか、今ごろになってそんなことを言っているが、このことはとっくの昔にわかっていた。実態にしても、対策にしても、既知の方針ばかり。「何を今さら」だ。
──
まず、ウナギの絶滅寸前の理由だが、それは、「稚魚を捕りすぎたから」だけではなく、「環境の悪化こそが原因だ」と私はとっくに指摘した。また、対策は、「稚魚を捕りすぎないこと」よりも、「環境を改善することだ」とも指摘した。
→ ウナギの減少と環境悪化 (2007年12月19日)
これは 2007年 の記事だ。この時点で、すでに「環境悪化」という根本原因を指摘した。それから 10年近くかかって、ようやく同様の結論を出したわけだね。
なお、この件は、近年の項目でも説明した。
→ ウナギ絶滅を避けるには?(2014年07月29日)
ここでは、ウナギ大幅減少の理由を、「国民が食べ過ぎたから」ではなく、「環境の悪化が原因だ」と指摘した。また、対策は、「食べるのを我慢すること」ではなく、「環境を改善することだ」とも指摘した。
また、環境改善の具体策としては、「日中に休むための場所(砂の中や岩の割れ目など)が必要だ」と指摘した。「特に、穴は大切だ。長い穴があると、ウナギは好んでそこにもぐりこむ」とも指摘した。
その点、記事の記述は足りない。
川底の大きな石やコンクリートブロック、ヨシなどの植物のすき間に身を潜めており、この「隠れ場所」が生息に重要であることが明らかになった。
これは私の記述と比べて、二点、異なる。
・ 「穴」でなく「すき間」と記している。
・ 「休む場所」でなく「隠れ場所」と記している。
この二点については、私の方が正しいと思う。(私の意見というより、私の調べた専門家の意見だ。というか、専門家の常識だ。)
(1) 隙間ではあるまい。縦の隙間や横の隙間では、水の流れが激しすぎるだろう。むしろ、水の流れのない「穴」の方が好ましい。「穴釣り」という言葉があるくらいだ。
(2) 隠れ場所ではあるまい。別にウナギを補食する捕食者がいるわけじゃない。人間や動物の目を避けているわけはあるまい。単に休んでいるだけだろう。
川底の大きな石やコンクリートブロック、ヨシなどの植物のすき間
記事には、こういう記述もある。だが、これは「隙間の隠れ家さえあればいい」という認識をもたらし、「土が大切だ」ということを見失わせる。
ウナギが生きいるためには、餌となる小生物が必要であり、そのためには、水草が生えている土壌が大切であるはずだ。そういうところでは、水生の昆虫などがいて、ウナギの餌となる。また、水の浄化も可能となる。
環境省は、国交省に逆らえないので、河川のコンクリ護岸を是認するしかないのかもしれない。しかし、河川のコンクリ護岸はウナギにとっては有害なのだ。コンクリ護岸を部分的に制限して、ところどころに水の「よどみ」となるような小さな池のようなものを作ったり、コンクリのかわりに土を置いたりすることで、ウナギの成育に好適となる。こういうビオトープ を河川の一部に設置することが大切であるはずだ。
──
結論。
環境省はようやく、ウナギ減少の原因が環境の悪化であると認識するようになった。しかし、それは時期が 10年も遅れているし、内容は不足気味だ。ゼロよりはマシだとはいえ、環境のために働くことで給料をもらっている集団としては、あまりにも動きが鈍い。どうしてこれほど遅々とした動きでいるのか、その理由を知りたいくらいだ。呆れる。
[ 付記 ]
上記のネット記事には記されていないが、紙の新聞には、別のことも記されている。
「ウナギの遡上を妨げる取水堰も有害だ」
という話。
この件は、私も記したことがある。かなり詳しい。
→ 多摩川の鮎の遡上と取水堰
この項目は、鮎の遡上が妨げられる、という話が記されているが、後半ではウナギのことも記されている。
[ 余談 ]
ここから教訓を得ることができる。こうだ。
「本サイトの提言は、稀に実現されることもある。ただし、早くても 10年はかかる」
