2016年05月01日

◆ オスプレイは必要だったか?

 熊本地震でオスプレイが物資輸送のために投入されたが、これは必要だったか? 実は、ネット情報を調べると、真相が判明する。

 ──

 熊本地震でオスプレイが物資輸送のために投入されたが、これは必要だったか? ── この話題が、ネットをにぎわした。

 まず、話のきっかけは、これだ。
  → オスプレイ熊本派遣「災害の政治利用」社民・照屋氏が批判 | 沖縄タイムス

 国会の質疑応答で、政府答弁を報じて、「オスプレイの派遣は政治投入だった」と批判している。その趣旨は、「自衛隊のヘリコプターがいっぱい余っていたから、オスプレイは必要なかった」というもの。

 これに対して、2ちゃんねるなどで、ネトウヨが噛みついた。
 「ないよりは、あった方がいいだろう」
 という趣旨。

 同趣旨は、次にも見られる。
  → はてなブックマーク
 ただし、ここに見られる多くのコメントは、誤読に基づくものだ。
 「ないよりは、あった方がいいだろう」
 というのは、冒頭の質疑応答については成立するだろう。だが、はてなブックマークの元記事の趣旨は、投入の「是非」を論じているのではない。
 では、元記事は何を論じているか? 投入の「効率性」を論じている。「投入してはいけない」と述べているというよりは、「投入しても無効だった(もしくは逆効果だった)」と述べている。
  ・ 輸送した物資は1回あたりたったの 1.8トン。(小型トラック並み)
  ・ オスプレイを待ったので、かえって遅くなった。
   (別の輸送手段がすでに用意されていたのに、あえて待った。)


 「ないよりは、あった方がいい」というのが、ネトウヨや、はてなブックマークなどの意見だった。だが、それは誤解に基づくものだった。実は、オスプレイは、「あればあるで役に立つ」ということはなくて、「あってもほとんど役立たず」であったのだ。また、「不要なものをあえて使おうとしたせいで、かえって輸送が遅れた」という逆効果のことさえあったのだ。
 というわけで、「ないよりは、あった方がいいだろう」ということは、ほとんど成立しなかったのだ。
 
 ただし、それでもまあ、全体としては、「ないよりは、あった方が良かった」と、少しだけは言えるかもしれない。少しだけは。……そう受け止めることもできそうだ。

 ──

 ところが、である。ここで、ネットを調査すると、以上とは異なる真相が判明する。

 (1) 必要性

 まず、ヘリコプター輸送の必要性を調べる。すると、必要性はまさしくあった、とわかる。
 《 南阿蘇村で1000人が孤立 阿蘇大橋が崩落 》
 4月16日午前1時25分ごろ、熊本県熊本地方を震源とする強い地震があり、熊本市などで震度6強を観測した。NHKニュースによると、南阿蘇村では、黒川地区にある東海大学のキャンパスにつながる道路が土砂崩れなどで寸断され、午後2時現在、大学の体育館に避難している学生約700人と住民約300人、合計約1000人が孤立した状態になっているという。16日、南阿蘇村では全長約200メートルの阿蘇大橋が崩落した。
( → Huffington Post: 2016年04月16日 15時32分

 このように、ヘリ投入の必要性は、まさしくあった。

 (2) オスプレイ投入

 その後、オスプレイが投入された。
 米軍の新型輸送機オスプレイが18日、熊本地震の被災地へ物資輸送を始めた。
 防衛省によると17日に4機が米軍岩国基地に到着。そのうち2機が18日午後、熊本空港と被災地の熊本県南阿蘇村を2往復し、水や食料、簡易トイレといった救援物資を運んだ。
( → ハフィントンポスト/朝日新聞: 2016年04月19日 09時26分

 18日午後には運搬活動をしたので、有益であったように見える。

 (3) 道路開通

 では、その間、道路はどうなっていたか? ここが重要だ。
 《 南阿蘇村の孤立状態は解消 》
 警察庁によると、熊本県で16日に震度6の地震が続発した影響で、道路の寸断などで孤立状態となっていた同県南阿蘇村内の約10カ所の旅館や住宅などは、17日朝までに全ての地区で孤立が解消した。迂回路などを通じて救助部隊が到達、救助活動が行われている。
( → 産経ニュース 2016.4.17 13:23

 つまり、16日の午後には「孤立して大変だあ」と騒いでいたのだが、17日の朝には道路は(迂回路などが)開通していて、孤立状態は解消していたのだ。
 だから、この時点で、ヘリコプターの投入は必要なくなっていたのだ。物資はすでにどんどん運搬されていた。
 それから1日半も遅れて、ようやくオスプレイが投入された。いわば、病気が治ったあとで、医者と薬が来るように。(出遅れ。)
 しかし、そのときにはもう、多くの物資が搬入済みだったのだ。今さらオスプレイが来ても、運ぶべき物資はろくになかったのだ。
 といっても、空荷を運ばせるのでは、政府のメンツが立たなくなる。だから、オスプレイのための物資として、1回あたり 1.8トン分だけの荷物を、わざわざ残しておいてあげたのだろう。
 その意味では、「オスプレイが来たせいで物資の搬送が遅れた」というのは正しい。ただしそれは、「自衛隊のヘリでも運べたから」というよりは、「オスプレイを使うというセレモニー用に、トラックで運ぶべき荷物を残しておいたから」だ。実は、自衛隊のヘリも、もともと必要なかったのだ。トラックで足りていたのだから。
 また、「オスプレイのせいで迷惑を被った」ということもなかった。どうせ1日半もあとになってから送る、最後の物資だから、遅れても遅れなくても、今さらどうでもいいような物資だった。オスプレイが来たことの効果もなかったが、オスプレイが来たことの逆効果もなかった。ただのセレモニー(政治的示威)があっただけだった。別に、良くもなく悪くもなかった。無意味なだけだった。……それが真相だ。



 [ 付記 ]
 自衛隊のヘリコプターや、災害救助隊のヘリコプターは、当初からかなり大量に投入されたが、そのほとんどは、被災者の救出のために投入された。
  → 地震と通信途絶 の (6)
 ここでは、「2人保ゴ要」と書いて救助された例が記されている。こういう救助活動のために、ヘリコプターは投入された。物資搬送は、後回しにされた。それはそれで正解だろう。1日ぐらいは水や食料が搬送されなくても何とかなるはずだ。そばに何らかの食べ物などはあるはずだし。1日分ぐらいは。
 報道では、次の例が危機的と報じられた。
 市内ではライフラインが寸断された。高齢者29人が入所する特別養護老人ホーム「ひのおか順心館」では、電気と水道が止まり、部屋からのナースコールができなくなった。ベッドをリビングに持ち込むなどして対応しているという。水はペットボトルが計120リットル分あるほか、小型のタンクもあるが、何日もつか分からないという。職員の山本博子さん(35)は「停電してラジオも聞けず、情報が入らない」と話した。
 阿蘇市永草の永草公民館には1家族5人が避難した。公民館で住民の対応をした高藤拓雄さん(69)によると、一帯では水道と電気が止まったが、公民館に水や食料の備蓄はないという。高藤さんは「市役所に何回か電話したが、つながらない。救援物資を早く頼みたいのに困っている」と話す。
( → 朝日新聞 2016年4月16日11時47分

 確かに大変だと思える。しかし、これから1日もたたずに、翌日(17日)の朝には、道路が開通しているし、トラックも投入されている。物資不足はこの時点で解消した。だから、ヘリコプターの必要性はこの時点でなくなった。もちろん、オスプレイの投入も必要なくなった。

 なのに、安倍首相は、オスプレイの受け入れを決めた。
  米軍の輸送支援については、首相が17日午前11時過ぎ、米国から中谷元・防衛相を通じて協力の申し出があったと記者団に説明。「速やかに具体的な輸送ニーズを調整し、整い次第ただちに実施したい」と述べた。
 中谷氏は 17日夜、記者団に「早く物資を送るためには、垂直離陸能力を持ったオスプレイの能力は必要であるということで調整した」と述べた。
( → オスプレイで物資輸送へ 熊本地震でアメリカ軍の支援を受け入れ

 17日の朝には「道路が開通してトラックで運んでいる」という事実があるのに、17日の夜になっても「早く物資を送るためには……オスプレイの能力は必要である」と述べている。現地の事情を把握していない。新聞情報もテレビ情報も得ていない。つまり、情報収集能力が一般国民以下だ。間違った情報に基づいて行動している。
 こんな政府の情報収集能力こそが問題だろう。災害時には、最低限、テレビや新聞やネットにある情報を理解するべきだ。それもできずに、事実とは正反対の情報に基づいて行動するなんて、あまりにもひどい。ここが最大の問題だろう。
 


 [ 余談 ]
 余談だが、はてなブックマークのコメントは、誤読がひどい。
 「日本中のヘリコプターを、すべて熊本に投入するわけには行かない」
 と批判しているが、誰も「すべて投入しろ」とは言っていない。「4分の1未満の 65機ででなく、過半数を投入しろ」と言っているだけだろう。実際、「東日本大震災ではヘリコプターを 200機投入した」そうだ。ならば、そのくらいは可能だろう。
 「ヘリコプターの過半数投入」を批判している人たちは、「東日本大震災ではヘリコプターを 200機投入したのは駄目だ。投入する機数を、3分の1に減らすべきだった」と主張していることになる。呆れる。
 はてなブックマークって、アホばかりなのかもね。……いや、「東日本の震災被害者は救うべきだったが、熊本の人々は救うべきではなかった」という差別論者なのかな。
 
 ただ、実際は、「ヘリコプターは物資輸送のためには必要なかった」というのが真相だから、どっちも茶番みたいなものだが。
 とはいえ、政治的には、「オスプレイの投入は大成功だった」と言えるだろう。なぜなら、「オスプレイは必要だ」というふうに思わせて、国民の大多数をだますことに成功したからだ。はてなブックマークには、だまされた連中が大量にあふれている。これほどにも国民をだますことに成功したのだから、安倍首相は、政治的に大成功したと言えるだろう。ペテン師の面目躍如というところだ。

 本項を読むと、真相がわかる。
 


 【 関連サイト 】
 道路の寸断箇所の地図(画像)がある。
  → 阿蘇地域の道路寸断 影響長期に<地図付き> 2016年04月26日

  ※ いまだに寸断しているらしい箇所もあるが、それでもとにかく、
    迂回路を通じて、孤立状態は解消した、とわかる。
  ※ 「ひのおか」の「助けてくれ」情報は、「2016年04月16日 16時07分」
    のものがある。( → 出典 )。これ以後はない。 解決したようだ。
 


 【 追記 】
 阿蘇への孤立状態の解決は、南側ルートだ。(かなり遠回り。)
 一連の地震のあと、熊本市内から阿蘇方面に向かうには大きく南を回る山都町や高森町を通らなければなりませんでしたが、今回う回路が通行できるようになったことで、熊本市と阿蘇方面をつなぐ道路状況が大きく改善されました。
( → NHK記事の転載 2016-4-18

 山都町や高森町という南側ルートで、阿蘇の孤立状態は解決していた。
 その後、18日の正午になると、北側のミルクロードが開通して、状況は大幅に改善したそうだ。(上記記事)
 ま、救援物資というのは、とりあえず1〜2日分の水や食料があれば間に合うから、17日の時点ですでに問題は解決したことになる。
 
posted by 管理人 at 10:34| Comment(11) |  震災(東北・熊本) | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
阿蘇市永草は最初から一回も孤立していない。なので本項とは関係ない。
Posted by 永草 at 2016年05月01日 11:36
>。「4分の1未満の 65機ででなく、過半数を投入しろ」と言っているだけだろう。実際、「東日本大震災ではヘリコプターを 200機投入した」そうだ。ならば、そのくらいは可能だろう。

被害面積の違いを考えろ。
Posted by 巫女の竜 at 2016年05月01日 18:49
 被害面積は関係ないでしょう。「ヘリコプターを遊ばせておくかどうか」という問題なんだから。

 一方、論者の多くは「本土防衛のためにヘリコプターは必要だ」という理屈。なるほど、本土防衛のためなら、そっちの方が優先されますね。
 で、今は、日本はどこと戦争中なんだっけ? 今は戦争中でヘリコプターが稼働中だとは、ちっとも知りませんでした。平和だから軍事用ヘリは遊んでいるとばかり思っていたんだが。

 そもそも、本土防衛なら、そっちの方にこそオスプレイを使うべき。「自衛隊のヘリコプターが災害救助用に出払ってしまって、本土防衛がおろそかになるから、その分、オスプレイに来てもらう」のなら、わかる。それなら、合理的判断だ。
 こっちの方が軍事的にまともだろう。災害の二日後にオスプレイで 1.8トンを1回だけ運ぶなんて、不合理だと思わないの? 災害の当日に自衛隊ヘリで何十回も何十トンも運ぶ方が合理的でしょう? 
Posted by 管理人 at 2016年05月01日 19:35
オスプレイを被災地の救援に使って何が悪いんだ?
平和的利用なんだし。
Posted by 進撃のヤクルト at 2016年05月01日 19:56
> オスプレイを被災地の救援に使って何が悪いんだ?

 日本語読めないのかなあ? 
 上の意見は、左翼の意見でしょ。私はそんなことは言っていませんよ。「出遅れて役立たずだ」と述べているんです。来るなら早く来ればいいのに、来るのが遅すぎ。
 火事が終わったあとで消火活動をしても仕方がない、という意味は、わかりますか? 日本語、わかる? 

> 平和的利用なんだし。

 私は、オスプレイは平和利用でなく軍事利用するべきだった、と言っているんですよ。勘違いしないでほしいね。
 平和利用するべきだったのは、自衛隊のヘリコプター。一方、あなたを含めたネトウヨは、「第1優先は、遊ばせておくこと」だ。
Posted by 管理人 at 2016年05月01日 20:11
自衛隊のヘリを使うって、あんた・・・

パイロット三交替制ってご存知ですか?
ヘリコは自動操縦ではなくパイロットが操縦してるんですよ

地上整備ってご存知ですか?
ヘリコは飛んだら整備するんですよ

まあ、ヘリ以前に車でもいいから8時間運転を連続で2回、つまり16時間ぶっ通しで走らせて見てください
のこり8時間は睡眠と食事と車のメンテをしていいです
それを2週間してみてください

無理でしょ、そんなの

Posted by 机上の空論だなとしか at 2016年05月01日 22:49
そういう無理な行動を避けるために、一度に全部飛ばすのではなく三分の一ずつとか飛ばすんですよ

これ、軍事常識以前に社会生活でも同じですよね
8時間休憩して16時間仕事しろっていうブラック会社と同じ理論ですよね、貴方の言っていること

また別記事のコメ欄閉じているのでここで書かせてもらいますがオスプレイについて、
何故後方支援輸送機のオスプレイと敵戦闘機が対決する前提になっているのでしょうか

トラックを買う時に、この装備では10式戦車どころか旧軍のチハ以下の防弾能力しかないというレベルで的外れなことをいっていますよ
Posted by 机上の空論だなとしか at 2016年05月01日 22:57
> by 机上の空論だなとしか

 机上の空論? ならば、ヘリは投入されなかったことになる。ところが、実際に 65機は投入されている。あなたの理屈だと、この 65機も投入されなかったことになる。事実に反する。矛盾。論理破綻。

 そもそも、きちんと文章を読みましょう。「連続運転させろ」なんて、どこにも書いてないでしょうが。三交替制も当然でしょう。そうじゃないというのは、あなたの勝手な妄想。どこにも書いてないのに。

> それを2週間してみてください

 2週間もかかるわけないでしょ。17日朝にはトラックが通っていて、ヘリはお役ご免なんだから。せいぜい、1日。
 16日の夕方まで働いたら、それでおしまいで、あとは温泉にでも行って、休んでいてください。お疲れ様でした……となる。(実質、半日の仕事。任務完了。)

> 何故後方支援輸送機のオスプレイと敵戦闘機が対決する前提になっているのでしょうか

 [ 付記1 ]で説明済み。ちゃんと読んで。
 要するに、私が言っているのは、F4 の代替機が必要だ、ということ。F4 の代替機としてはオスプレイは役に立たない、ということ。
 対決するんじゃなくて、ただの餌食になるだけだ。対決するなんて書いてない。対決できるわけがない。

> トラックを買う時に

  旧式の74式戦車が退役したら、新型戦車が必要でしょう? だから「かわりに新型を買え」というのが私の主張だ。
 それに対してはあなたは、「旧式の74式戦車が退役しても、かわりに最新鋭のトラックを買えば大丈夫。敵の陸軍が来ても、こちらはトラックがあればいい。新型戦車の導入に反対! 10式戦車なんか不要だ。輸送能力ならトラックの方が上だから」と主張しているわけ。わかった?
 私は輸送機の話をしているんじゃない。F4の代替機の話をしている。

 以上、日本語を読めない人向けの、日本語講座でした。軍事知識は関係ないね。
 
Posted by 管理人 at 2016年05月01日 23:25
1回あたりたったの 1.8トン
すら怪しいようです。

http://matome.naver.jp/odai/2145491582792293301?page=2
Posted by 新型 at 2016年05月07日 15:15
 上のページからリンクされた動画。
  → https://youtu.be/IyPh2v2enKs

 自衛隊ヘリが荷物を運んで、ひゅうがに着艦して、荷物を積み替えて、オスプレイに渡す。オスプレイが離陸して、被災地へ。

 しかし、自衛隊ヘリが直接的に被災地に向かえば、もっとずっと効率的だった。訪問先も、一箇所でなく、あちこちをめぐることもできたし。
 オスプレイにいちいち積み替えたのは、ただの無駄手間だった。軍事アピールをするだけ。
Posted by 管理人 at 2016年05月07日 16:05
関連かな? 置いておきます
http://bit.ly/23VsFnW (はてブ)
http://bit.ly/1TkvRqs (imgur)
Posted by 匿名 at 2016年05月17日 08:47
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