──
賞味期限と消費期限は、発音が似ている。「しょうみきげん/しょうひきげん」。
そのせいもあって、両者は混同されがちだ。特に、「賞味期限が来たら、もう食べられなくなるから、食品を捨ててしまう」という人が多い。
→ 賞味期限が1日でも過ぎたら、捨てる?捨てない?
しかし、賞味期限と消費期限は、まったく別のものだ。
(1) 賞味期限
賞味期限は、「味の期限」であるに過ぎない。その期限を過ぎると、味がいくらか劣るが、食べられなくなるわけではない。
一般に、賞味期限のある食品は、長期保存が可能なものであり、「食べられる期限」というのは、かなり長い。即席麺、スパゲッティの乾麺、インスタントコーヒー、砂糖、レトルト食品、……などは、数カ月の賞味期限だが、未開封なら1年以上たっても食べられることが多い。ちょっと生ものっぽいものとして、漬け物、味噌、などもあるが、これらも数カ月後に食べることが可能だ。
(2) 消費期限
消費期限は、「利用できる期限」だ。肉や魚や果物などの生ものに適用される。生ものをそのまま食べるケースはそう多くはないが、とにかく、加熱するにしても、利用できる期限がある。この期限を過ぎると、腐敗の可能性が高まり、危険だ。
したがって、消費期限については、かなり厳密に守った方がいい。
(とはいえ、熟練の主婦なら、自分の鼻を頼りに、「食べられるか否か」を判定できる。「消費期限」は、そういう能力のない人向けに、安全率を高めに見込んでいる。)
(実を言うと、牛肉は「腐る寸前が一番美味しい」と、美味しんぼに書いてあった。だから、本当に優秀な料理人は、消費期限なんか無視して、自分の目と鼻を信用する。)
──
こういうふうに、両者は異なる。だから、はっきりと別の名称にするべきだ。私としては、名称を次のように変えることを提案したい。
・ 賞味期限 → 味の期限
・ 消費期限 → 利用期限
このように変えれば、もはや両者を混同することはあるまい。
──
なぜ今それを言うか? 実は、この混同のせいで、人命が奪われかねない事案が生じたからだ。
それは、熊本の被災地だ。被災地のミネラルウォーターについて、「賞味期限が来たものについては、受け取り拒否するべきだ」という人が登場した。(本サイトのコメント欄。)
この人は、「賞味期限が過ぎたミネラルウォーターを飲んだら、下痢をしかねない」と述べている。これは、賞味期限と消費期限を混同したものであろう。
そして、こういう混同のせいで、「ミネラルウォーターの受け取りを拒否するべきだ」と主張している。この(誤った)見解に従えば、水不足のせいで、健康被害が発生しかねない。
ま、この人は、熊本にはいないから、実害はないだろう。とはいえ、熊本にいる人も、同じように考える可能性はかなりある。というのは、冒頭で述べたように、賞味期限と消費期限を混同している人は、すごくたくさんいるからだ。
こういう懸念があったので、本項では名称変更を提案する。混同のせいで、人命が奪われかねない事態になっているからだ。後述 [ 付記 ] を読めばわかる。
──
ついでだが、「消費期限」の「消費」という後は、ちょっと不適切だ。経済学で言う「消費」とは、消費者による「購入」のことを指すことが多いからだ。
たとえば、「消費税」というのは、「購入したときにかかる税」であり、「買ったものを食べたときにかかる税」ではない。購入したあとで、食べずに廃棄しても、消費税はかかる。「腐ってしまったので捨てたから、消費税を払いたくない」と言っても、そんな言い分は通らない。「消費税」とは「購入税」のことなのだ。
こういうふうに、「消費」という言葉は「購入」という意味で使われることが多い。実際に消耗することを示すには、あまり適した言葉ではない。
それゆえ、「消費期限」(「購入期限」?)よりは、「利用期限」の方が、言葉としては適切だと思える。
[ 付記 ]
コメント欄の問答は、次の通り。該当項目 から転載しよう。
十分に賞味期限があればいいですが、しばしば「善意」の物資には賞味期限ギリギリか切れてしまっていることもあるようです。そのあたりのQCがネックでしょう。下痢にでもなれば、エコノミークラス症候群どころではない致死率になるでしょう。食中毒になれば一気に集団がやられることもありえます。行政が慎重になることは無理もありません。
かのタレントさんの善意は疑うようもありませんが、無知なるが故の蛮勇ともいえます。
Posted by 通りがかり at 2016年04月21日 11:04
> かのタレントさんの善意
もとのブログを見てください。タレントではなくて、ファンです。また、食品ではなく、ミネラル・ウォーターです。賞味期限なんて、1〜2年も先でしょう。
Posted by 管理人 at 2016年04月21日 12:10
今回の差し入れのために購入したのであれば、賞味期限も余裕あるでしょうが、一般論として一般人の差し入れに「もう賞味期限も近いし、惜しくないから困っているところに送ろう」というのが珍しくないようですよ。最近は3.11を期にミネラルウォーターを用意している家庭も多いですから。
そういう事情を考えると、賞味期限をチェックする手間など、諸々考えれば行政の対応は理解できます。
むしろ中央政府からミネラルウォーターを作っている会社に他の地域が品薄になっても九州に送るよう「要請」すべきでしょう。総理からであれば会社は逆らわないと思いますよ。逆らったらあとが怖いですし。
Posted by 通りがかり at 2016年04月21日 13:34
> 賞味期限をチェックする手間
このような情報が出回ると、きわめて有害なので、指摘しておきます。
ミネラルウォーターの賞味期限は、消費期限ではありません。賞味期限を過ぎても、十分に飲めます。
https://www.alpina-water.co.jp/blog/mineralwater/991.html
http://www.lifehacker.jp/2015/08/150807bottled_water.html
基本的に水は腐らないものです。ちょっと気になるとしても、沸騰させて調理に使うのなら何の問題もない。また、どうしても気になるなら、飲用以外の用途(皿洗いや赤ちゃん洗浄用など)にも使えます。
したがって、行政としては、賞味期限のチェックなどという余計な作業は、絶対にしてはいけません。そんなことをすれば、余分な作業が加わるので、配分量が減ってしまいます。無意味なこと(配分しないこと)をするより、配分するという仕事に専念するべきです。配分するために労力を割くときに、配分しないために労力を割くのは有害無益です。それは被災者の死をもたらします。賞味期限切れのミネラルウォーターを飲んで死ぬことは絶対にありませんが、賞味期限をチェックすることで配分量を減らせば死者が増えます。そういうことをやってはいけません。絶対に。
とにかく、基本的に「腐らないもの」については、賞味期限のチェックなどは有害無益です。絶対にやってはいけません。やれば、死者が増えます。
別項では、「公平にならないから分配しない」(餓死させる)という愚行を示しましたが、「味が劣るから分配しない」(水不足で死なす)という愚行が上の例です。どっちも、狂気の沙汰だ。
「赤ん坊のミルクに水が必要なんです。そのミネラルウォーターを下さい」という母親の目の前で、「いや、駄目だ」と言って、ミネラルウォーターの水を流しに捨ててしまう、という役人。赤ん坊殺しの悪魔にも等しい。
Posted by 管理人 at 2016年04月21日 14:00
ええと、書いてありますよね、「保存状態による。」と。それがわからない以上、賞味期限以上に品質の不確定性が高いでしょう?
一般人が持ち込んでくるミネラルウォーターの保存状態がわからない以上、行政が慎重になるのは無理ないでしょう。
「ミネラルウォーターは、直射日光や高温にさらしたり、殺虫剤やガソリンに触れたり、ボトルが汚れていたりしない限りは、かなり長い間安全に飲むことができるそうです。」
殺虫剤やガソリンはともかくそれ以外は保存しているときに十分起こりうる事態です。
それこそここ1〜2週間以内に購入したということを証明できるレシートでも添付してもらわないと安心できないでしょう。
本当に下痢になるとまずいですからね、この手の事態では。それこそ、赤ちゃん殺しになってしまいかねません。
さきに書いたとおり、これは中央政府=安倍の無策だと思いますよ。サントリーでもなんでもメーカーの社長を総理官邸に呼びつけて一言「よろしく」と鶴の一声でメーカーは動きます。メーカーは少なくとも一般人以上にはQCに気をつかっていますから、一般人から募るよりは安全だし、輸送路も確保しているでしょう。ひとえに安倍総理にかかっています。
Posted by とおりがかり at 2016年04月21日 14:40
> 殺虫剤やガソリンはともかくそれ以外は保存しているときに十分起こりうる事態です
それは、保有期間には関係がないので、賞味期限までの時間が長かろうが短かろうが、どっちみち別のこと。
ここ1~2週間以内に購入したということを証明できるレシートがあっても、駄目なものは駄目です。新しければ安全だという保証はない。古ければ駄目だという保証もない。まったく別のことです。
そもそも、「ここ1~2週間以内に購入したということを証明できるレシート」なんて言い出したら、ほとんどの品物が不可になるし、また、チェックの手間も大変だ。その一方で、品不足は深刻化する。
> 本当に下痢になるとまずいですからね、この手の事態では。それこそ、赤ちゃん殺しになってしまいかねません。
なるわけがないでしょ。たかがミネラルウォーターの賞味期限で。
どうせ心配するなら、ミルク不足や、哺乳瓶を洗う水の不足の心配をすればいいのに、そっちの方はまったく知らんぷりで、どうでもいいミネラルウォーターの賞味期限なんかを気にしている。
もうちっと、衛生状態とは何かについて理解してください。衛生状態を改善するのに最大の効果をもたらすのは、水洗いです。水不足ではそれができない。
あなたみたいに水不足状態をめざすと、ひどい伝染病さえ発生しかねない。ミネラルウォーターの味(賞味)を気にしすぎて、衛生状態はほったらかし。
これじゃ、人が死にますよ。
Posted by 管理人 at 2016年04月21日 18:58
> 本当に下痢になるとまずいですからね
賞味期限と消費期限を混同しているんですね。
そういう人は、結構多い。賞味期限が来た食品を捨ててしまう、という人。何が何だかわかっていないんですね。
→ http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1070363790
Posted by 管理人 at 2016年04月21日 22:41
https://www.nichirei.co.jp/koras/category/knowing/001.html
上のページに書いてある図(ベン図)を見てください。「腐敗していなくとも食中毒になることはある」と書いてあります。
「においで食物の腐敗状況を判別することはできません」
ではなくて、
「においで食中毒になる状況を判別することはできません」
が正しい。
腐敗すれば、においを放ちますが、腐敗したからといって、食中毒になるとは限らない。奈良漬けや醗酵みたいな状況になることもある。
あと、食中毒の判定基準は、においや腐敗ではなくて、保存状況でしょう。見た目がいくらきれいでも、高温に数時間さらしていたら、一発でアウト。(消費期限よりずっと前でも。)
食中毒は、本項では話題になっていません。
でもまあ、参考意見としては、有益でした。