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宇土市役所が半壊となった。下記に画像がある。
→ 【熊本地震】宇土市役所、4階部分潰れる【 産経 】
朝日の記事には、こうある。
16日未明の地震で震度6強が観測された熊本県宇土市の市役所本庁舎は、鉄筋コンクリート造り5階建ての建物の4階部分が押しつぶされて、崩壊寸前になった。
市によると、本庁舎は約50年前に建てられた。十数年前の耐震試験で「震度6や7の地震には耐えられない」との結果が出ていたが、財政上の理由から建て替えを先延ばししてきた。
( → 宇土市役所が崩壊寸前 熊本地震:朝日新聞 2016-04-16 )
耐震性がないと判明しているのに、「金がない」というだけの理由で、ずっと放置されてきた。今回はたまたま被害者がいなかったが、昼間ならば、死者が出ただろう。最悪の場合には、市役所の中枢の人々が死んでしまって、市の機能を喪失して、被災者の救済もままならないことになったかも。
これと同様のことが、連発地震のせいで、今後も他の都市で起こるかもしれない。しかも、それは、夜間に起こるとは限らない。今度こそ、昼間に起こって、多大な死者が出るかもしれない。
では、どうする? 「金がない」という問題を、どうする?
実は、金なら、たっぷりとある。防潮堤を建設するための金だ。こんな無駄金が莫大にあるのだから、この莫大な金を、全国の市庁舎のために投じればいい。(特に、建て替えが必要な、耐震性のないものを優先する。)
とりあえずは、国が建て替えて、あとは 40年分割で、少しずつ返済してもらえばいい。今は低金利の時代だから、40年のローンも低利で可能だろう。(昔ならば、40年のローンなんてやったら、利息を払うばかりで、いつまでたっても返済が済まないことになったかもしれない。しかし今なら、ゼロみたいな金利だから、低利の固定金利による長期のローンが可能だ。)
とにかく、金はある。防潮堤建設という無駄金だ。この無駄金を、危険な市庁舎の改築のために使うべきだ。それが結論だ。
[ 付記1 ]
防潮堤建設という無駄金については、何度も言及した。最近の項目では、下記の話だ。(転載する。)
そもそも、地震の周期からして、次の地震が起こるのは、50年以上あとだろう。そのころに防潮堤ができればいいのであって、今すぐ防潮堤を建設する意義はないのだ。
また、防潮堤は、内陸部に作れば、低コストで有効なものができる。海岸に作った防潮堤なんて、あっさり破壊されやすい。無駄なものを作るために超巨額を投入するくらいなら、首都圏の高速道路の高架について、倒壊対策をするべきだろう。
( → 高架の耐震工事の問題 )
[ 付記2 ]
古い住宅や建築を「居住禁止」にするべきか? この件は、次の項目のコメント欄で話題になった。
→ 瓦の住宅を居住禁止にせよ
私の見解は、「居住禁止」には、次の2条件が必要となる。
・ 重い瓦を屋根に乗せている
・ 建築の構造に耐震性がない
この両者をともに満たす場合が、「居住禁止」となる。
ただし、市庁舎のような公共建築物では、「建築の構造に耐震性がない」というだけのことで、「使用禁止」となるのもやむをえない。
では、耐震性の有無は、どうやって判断するか? 次の三つの基準がある。( → Wikipedia ,参考ページ )
・ 耐震基準(1971年)
・ 耐震基準(1981年)
・ 耐震基準(2000年)
古い住宅では、1968年に十勝沖地震があったあとで、世間では耐震性の重要性が広く認識された。だから、この時期以降に設計されたものでは、耐震性がいくらかは導入された。
逆に言えば、1968年以前に設計されたものでは、耐震性はろくにないと考えていいだろう。おおむね、1970年に竣工したものよりも古ければ、耐震性はほとんどないと見なせる。ゆえに、1970年以前に竣工したものについては、「建て替え」の対象となるだろう。(最優先で。)
今回の宇土市役所は、どうか? 昭和40年5月の竣工とのことだ。
→ http://medism.info/uto-city-883/
1965年(昭和40年)竣工なので、1968年にあった十勝沖地震のことは意識されていない。したがって耐震性はまったく不十分だと見なせる。そして、実際に、半壊となった。
というわけで、「1970年以前に竣工したものについては最優先で建て替える」という方針でいいだろう。
では、1970年以後に竣工したものは、どうか? もちろん、耐震性は十分ではないが、いくらかは耐震性がある。とすれば、「ただちに使用中止」というのは無理っぽい。
一般に、「倒壊」と「部分破壊(不可逆的破壊)」とは別のことだ。倒壊は,建物がつぶれるので、人命が失われる。部分破壊は、つぶれるわけではないので、人命は失われない。壁や柱にひびが入ったりするので、「今後はもう住めない」というふうになるだろうが、「実際に地震で破壊されるまでは住むことができる」とも言える。(地震が来ても、建物が壊れるだけで、人命は失われないから。)
というわけで、1970年以後の竣工の建築は、そこそこ耐震性があるので、当面は使ってもいいだろう。その後、余裕があったら、建て替えることにすればいい。
今はともかく、「1970年以前に竣工したものについては最優先で建て替える」という方針を取るべきだろう。
> 1970年以前に竣工したものについては最優先で建て替える
わかっちゃいるけど、先立つモノが……と言っているばかり。
管理人様ご提案のようにすれば、かなりペースが上がってくると思います。
巨大防潮堤なんかよりも関連建設業の裾野が広いので、自民党的にもオイシイ話なんじゃないでしょうか。全国が対象になるので、「国土強靭化」という大義名分も立ちます。
問題は……バブル崩壊後の建設業の衰退(経済的体力の低下、設計・施工技術者の不足と高齢化、技術継承の断絶等)で、担い手が不足していること。
今でも足りなくて、全国各地で『不落』の入札が相次いでいます。短期的にはどうしようもないのですけど。