保育園を設置したくても、保育園の適地が見つけにくい……と言われる。本当にそうか?
──
前項では、市川市の例を示した。
「閑静な住宅地の奥地に保育園を設置する」
という方針に、住民が反対したので、設置できなくなった。
これに対して、私は代案を示した。
「何もそんな不適なところに設置しなくても、適した土地は他にもいくつかある。ここや、ここだ」
というふうに、他の候補地をいくつか示した。
こうして、代案を示す形で、問題の解決を図った。
──
さて。前項の提案は、一般化できるだろうか? つまり、
「保育園の適地がいくつか容易に見つかる」
ということは、他の場所でも成立するだろうか?
この問題に対して、直感的には、次のように言えるだろう。
「そんなに簡単に土地が見つかるわけがないだろう。だからあちこちで土地探しに苦労しているんだ」
と。ま、それが常識だろう。
しかし、常識を打破するのが、本サイトのポリシーだ。ここで、上の常識を検証することで、常識に対して否定的な回答を与えよう。つまり、
「たいていの土地で、保育園の適地は、かなり容易に見つかる」
と言えるわけだ。以下、実証する形で示す。
──
(1) 東京近郊の住宅地
前項では、市川市の例を示した。では、他の都市ではどうか? 駅前の繁華街は別として、住宅地ならば、たいていの都市で空地としての畑地が見つかる。下記に具体例を示す。(いずれも航空写真。畑地が見つかる。)
→ 市川市
→ 横浜市
→ 川崎市
いずれも適当に場所を取ったものだが、どの領域でも、空地としての畑地がいくつか見つかる。
(2) 23区内の住宅地
東京近郊でなく、東京都内(23区内)の住宅地ではどうか? 典型的な住宅地として、次の二つを見る。
→ 杉並区
→ 世田谷区
やはり、駅前でなければ、たいていの住宅地で、半径1km の園内に、畑地や空地がいくつかある。
( ※ 本格的な畑地というよりは、広い家庭菜園みたいに利用されている感じだ。1ヘクタールよりずっと小さいから当然だが。)
(3) 都心部
港区みたいな都心部では、高層ビルたくさんあって、低層家屋はほとんどない。当然、空地や畑地もないようだ。
※ 場所はいちいち示さない。
(4) 近郊の繁華街
都心でなくて、近郊部でも、駅前の繁華街ならば空地はないのが普通だ。
※ 場所はいちいち示さない。
──
以上を評価して、次のように言える。
第1に、近郊部や都内の住宅地では、空地や畑地がかなりたくさんある。これらは家庭菜園などに使われていることが多い。これらの土地を有効利用する形で推進すれば、保育園の適地はいくらでも見つかる。行政と立法の対応次第で、いくらでも解決は可能だ。
第2に、都心や駅前繁華街では、空地がないので、保育園の適地はない。しかし、これは特に問題ではない。なぜなら、これらの土地に居住している人は、(高額の住居費の負担ができるがゆえに)高所得者であるからだ。高所得者ならば、高額の保育園料を払える。だから、高額の保育園料を取る形で、高コストの保育園を設置すればいい。
都内の多くの自治体は、「地価が高いので保育園の設置が難しい」と唱えることが多い。しかしこれは勘違いだ。地価が高いのならば、補助金をたっぷり出すのではなく、保育料を引き上げればいい。港区や渋谷区の交通至便なところに済んでいるのは、年収 2000万円クラスの人々なのだから、保育料も 20〜40万円ぐらいにすればいい。それでも十分に支払えるはずだ。
・ 月額 20万円で、ビル内に設置した保育室(園庭なし)
・ 月額 40万円で、園庭つきの認可保育園
どちらでも好きな方を選べばいい。
このような形にすれば、都心であれ、繁華街であれ、十分に保育所を設置できる。そして、たとえ月額 20万円を取られるとしても、年額 240万円にすぎないのだから、年収 500万円以上の女性なら、文句はあるまい。「繁華街に保育園があって、そこに入所できて、幸せ」と喜ぶだろう。お金がかかることなんか、特に気にしないだろう。
( ※ 保育料の高低を気にするのは、貧乏人だけだ。金持ちはそんなハシタ金のことを気にしない。仕事を失うかどうかだけを気にする。)
高額の保育料を請求するなら、保育所はいくらでも設置できる。なのに、「保育所の料金は低めにしないといけない」というふうに思い込んでいるから、自治体はなかなか保育所を増やせないのだ。
ここでは、自らの発想に縛られて、行動が制約させているわけだ。自縄自縛。
ここに、東京都内の保育所不足の根源があると言える。
《 参考 》
保育料を引き上げることで、需給を均衡させる……という方針は、すでに先に示した。
→ 保育所不足の完全解決 の (3)
価格を上げれば、需要を減らして供給を増やすことができるので、需給は均衡する。つまり、保育所不足は解消する。
ここでは、高価格の S席と、低価格の A席、B席、C席を用意する……というふうに、モデル的に説明した。
特に都心部では、「 S席のかわりに SS席というプレミアム席を用意する」という感じで、特上の保育所をすごい高価格で用意すればいいだろう。(どうせ周辺に住んでいるのは、富裕層ばかりだ。)
[ 付記1 ]
近郊の住宅地ではどうするべきか?
空地や畑地はいっぱいあるのだから、「アメとムチ」で農地転用を促すべきだろう。次のように。
「その土地を特別用地に指定する。指定された土地は、次のいずれかとなる。
・ 保育所建設地として提供すれば、免税。
・ 保育所建設地として提供しなければ、高額課税。
通常、畑地の税率は低いので、これを商業用地並みに、高率の固定資産税で課税する」
もう一つ、次の措置も取る。
「どうしても土地を手放したくない、という人向けに、近所にある別の人の農地を、交換の形で提供する」
つまり、Aという土地を保育園にしようとするが、その土地の地主は土地を売りたくない。ならば、その人には近くにあるBという土地を与える。つまり、AとBとを交換する。Aの地主は、Bという土地を持ち続ける。損得なし。一方、Bという土地の地主は、Aという土地を(交換で)入手してから、その土地を免税で売却することで、免税分の利得を得る。本当ならば高額の不動産売却税が課税されるところを、免税(または減税)という形で、大幅に得をする。本来ならばAの地主が得をするはずだったのだが、その権利を放棄したので、かわりにBという地主がその権利を頂戴する。
( ※ それを知ったAの地主は、あとで地団駄を踏むが、仕方ない。意地を張ったせいで、損をする。ざまあみろ。)
とにかく、こういうふうにして、住宅地の空地・畑地を、「農地転用」の形で保育所にすればいい。土地の面積が広い場合には、土地をまとめて、準商業地域や準工業地域にしてもいい。
( ※ 容積率アップの効果が見込める。)
[ 付記2 ]
都心部では、原則として、保育園はビル内の保育室となるだろう。園庭を付けるのは、コスト的に困難だからだ。
となると、「園庭がほしい」という要望が出そうだが、それはぜいたくというものだ。都心部ではそもそも、一戸建てはなくて、高層のマンションに住む。つまり、「庭なし」の家が原則だ。なのに、自分は「庭なし」の家に住みながら、保育所に「庭あり」を望むのは、ぜいたくというものだ。
それはいわば、年収 2000万円の人が、年収 20億円の人の豪邸に住みたがる、というようなものだ。それも、自分で金を払わないで、自治体の金で。
そういうぜいたくは、原則、認めるべきではあるまい。
とはいえ、ビル内の保育所にするにしても、小規模保育室では規模的に高コストになって、無駄が多い。ゆえに、ビル内の保育所であっても、規模はある程度大きいことが好ましい。
具体的に言えば、20人以下(小規模)は不適切であり、100人程度が適切だろう。
( ※ 規模が大きいと、園長とか事務員とか調理師とかの人件費を分散できるし、トイレなどの共用部も効率的意ぬんようで着る。だから低コストで済む。……というか、規模が小さいと、非効率で、コストが上がる。)
[ 付記3 ]
園庭の有無は、あまり大きな留意点とはならないだろう。
現在、認可と認可外に分けて、補助金で大きな差を付けているが、これはおかしい。園庭なしで認可外であるとしても、保育士の数は増やすべきでし、そのために補助金を出すべきだ。
現状では、「園庭がないから、認可外となって、補助金も減らす」というふうになるが、これは補助金の出し方がおかしい。こんなことをするから、「保育士不足で園児の死亡事故が続発する」というふうになる。
→ 前項 の[ 付記1 ]の最後
その一方で、富裕層のためには、都心の保育園に高額の補助金を出そうとする。千代田区の場合は、莫大な補助金を出す。公費で。
→ 千代田区の補助金 (PDF)
結局、認可外保育園の貧困家庭にはろくに補助金を出さないくせに、富裕層には巨額の補助金を出す。まったく、金の出し方を、根本的に間違えている。
( ※ いや、金持ちを優遇して、低所得者を冷遇するというのは、自民党政府の元来の方針ではある。その意味では、狙い通りというべきかも。)
2016年04月14日
過去ログ
改修工事費用も一校あたり平均4500万円と格安。
推進に消極的な意見を見てみても、説得力のある意見は殆ど見当たらない。