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これまで主流だった抗癌剤は、あまり効果がないことが多かった。(効果がある場合もあるが、限定的だった。)
ところが、このたび、まったく新たな原理による治療薬が出て、めざましい効果を上げているそうだ。生存率が大幅に向上しているという。また、有効である癌の種類も多いという。
その種類は、「免疫療法」だが、これまでの免疫療法とはまったく異なる原理に基づいているという。
私は、週刊現代の記事で読んだのだが、同じ話はネットにもある。ぜひ読むといいだろう。
→ がん治療「革命」の旗手! 夢の薬「オプジーボ」はこんなに効く
同種の解説は、他にもネットで見つかる。
→ がん治療が変わる 〜日本発の新・免疫療法〜 | NHK
→ 「がん征圧」の初夢、実用見据える「免疫療法CART」「遺伝子エクソーム解析」
→ ニボルマブを現場でどう使うべきか:日経メディカル
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ついでだが、癌の免疫療法については、私は前に批判したことがある。
→ 癌と免疫療法 (2010年11月16日)
→ 癌と免疫療法 2 (2013年12月21日)
いずれも、否定的に評価している。「すごい、すごいと言われているが、たいしたことはない」というふうに。
では私は、評価を間違えたのか? いや、そうではない。読めばわかるように、以前の免疫療法は、効果はたいしたことがなかったのだ。
「イピリムマブで腫瘍が半分以上縮小した患者の割合は、メラノーマで31%、腎臓がんで29%、肺がんで17%だった。」
と記してある通り。
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一方、本項で新たに紹介したものは、まったく原理が異なるもので、効果もめざましい。
「オプジーボは免疫治療薬の一種ですが、これまでのクスリとは、仕組みがまったく違います。これまでの免疫療法は科学的な根拠のない、効果の怪しいものがほとんどでしたが、オプジーボは科学的に効果があることが証明されている」
「従来の免疫療法は、キラーT細胞のアクセル部分を強化させようという発想で作られてきました。ところがオプジーボは、『どんなにアクセルを踏んでもブレーキがかかっていれば動かない。ならばブレーキを外してしまおう』という発想で開発されたクスリです。その結果、今までとは段違いによく効く免疫薬が生まれました」
「免疫療法の有効性はこれまでずっと『眉唾もの』だと言われてきました。実際、効いていると思われる症例もありましたが、統計学的に有意な差がなかなか出てこなかった」
( → 現代ビジネス [講談社] )
なお、ネット上にはないが、週刊誌の記事には、重要なデータがある。5年生存率が大幅に向上している、ということだ。
従来の抗癌剤は、「腫瘍が縮小している」ということをもって「効果がある」と見なしてきた。だが、生存率を見るとほとんど変わらないことが多かった。その意味で、「抗癌剤は効果がない」というケースがかなり多かった。(あらゆる癌で効果がないというわけではないが、効果がある癌はごく限られていた。) 要するに、見かけ上だけは癌が治りつつあるように見えるが、実際には延命効果がなくて、そのくせ薬代だけは超高額だ……という、詐欺みたいなものが、従来の抗癌剤だった。
ところが、本項で言う新・免疫療法による新薬では、生存率が大幅に向上している。その効果は、あまりにもめざましいので、対比試験が中止になったほどだ。どうしてか? この新薬を投与された患者は大幅に延命されるのに、この新薬を投与されない(従来の抗癌剤を投与された)患者はどんどん死んでしまうからだ。二重盲検で対比をされるために、最善の治療を受けられず、どんどん死んでしまうことになる。これではあまりにも非人道的だ……ということで、対比試験が途中で中止になってしまった。これほどにも画期的な新薬というものは、滅多にない。
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しかも、である。この新薬の誕生秘話というのが、すこぶる興味深い。この画期的な新薬は、日本の大学で基盤が開発され、日本の製薬会社で製造されているのだが、その開発は、紆余曲折で、もうちょっとのところで断念というありさまだった。
この話は、週刊現代に詳しいが、下記にも少しだけ記事がある。
→ 京都大学大学院医学研究科 本庶佑客員教授(NHK)
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ともあれ、とても興味深い話なので、今週号の週刊現代は、是非お読みになるといいだろう。
→ 週刊現代 | 現代ビジネス [講談社] (今週号・目次)
→ 週刊現代 2016年 4/9 号 [雑誌]
→ 週刊現代 2016年 4/16 号 [雑誌]
【 追記 】
あとで調べてみたら、2013年の過去記事では、リンク先に本項の新薬が登場していた。「画期的な新薬」という触れ込みで。……とすると、私は当時、評価を誤ったことになる。
しかし、これは仕方ないね。私は癌の新薬のことについては完全な素人だし、情報だってネットで通信社の記事をちょっと見かけたぐらいだ。情報量が全然ないので、評価を誤っても仕方ない。(誤りの原因は情報不足。)
また、元の話が「画期的な超のつく新薬」という触れ込みだった。これでは、眉唾になって、信じかねるのも仕方ない。
逆に言えば、眉唾に思えるほどの画期的な新薬が、このたび本当に実現したことになる。STAP 細胞もビックリの、歴史の分水嶺となるような画期的な出来事だろう。
人類は多くの重病を克服してきたが、癌だけは難攻不落だった。そこをとうとう崩せるようになったらしい。嘘みたいな話だが、それがとうとう実現しているのだ。
とはいえ、これは、実に困った結果をもたらしかねない。このあと、癌で死ぬ人が大幅に減少すると、(体はまともなまま脳だけが劣化したせいで)人間は痴呆老人だらけになりかねない。少子・高齢化だけでなく、少子・高齢痴呆化が社会を覆い尽くす。こうなると文明社会そのものが崩壊しかねない。
どうする?
【 関連項目 】
上の「どうする?」に関して、費用の面での方策を考える。
→ 混合診療の是非
→ 抗ガン剤と混合診療
タイムスタンプは 下記 ↓
最後の一説の通り、文明社会≒西洋倫理感的社会であるとすれば、その崩壊の引き金の性質を帯びている薬だと思いますね。